メルマガ:屋久島発 田舎暮らし通信
タイトル:屋久島発 田舎暮らし通信  2004/01/17


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  2004/01/17
『世界自然遺産の島』   屋久島発・田舎暮らし通信(第94号)

      http://www.yakushimapain.co.jp/  屋久島パイン株式会社
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このメールマガジンは、北海道から屋久島に移住し、現在弊社屋久島支店の社員が
本人の移住経験を踏まえまして、屋久島の日常を発信しています。


●二十三夜祭

お供え物は、鏡餅のような大きめの丸い日型の白い餅、月型の紅色の餅。
それから、紅白の計24ヶの手のひらに乗る位の大きさの丸餅。
それと、一口大の餅が、日の数だけの365ヶ。
更に、みなさんに差し上げる丸餅も、たくさんも用意。
他にお供え物の、焼酎の御神酒、米、塩、昆布、野菜、魚。
他に長芋のようなもので、長芋ではないので、食べられない芋状のもの。
 
集落から二人選ばれた神様役の人が、縄に囲まれた神様の座布団の上にすわる。
羽織袴が習わしなのだが、最近では簡素化され、礼服になっている。
二十三夜祭自体が、簡素化されている集落もあるという。
神様役の人は、トイレに行く以外には、その場を離れることはできないと言う。
でも彼らの前には、暖を取るための火鉢がある。
 
二十三夜祭のはっきりした由来は不明だが、豊作、豊漁を願うお祭りごと。
旧暦の12月23日に(実際に行われたのは1月14日)、各集落で年一回行われ、
夕日を拝むところから始まり、月の出を拝むことで終わる。
しかし、お祭りのごちそう作りや準備などは、朝から始まり、お祭りの後片づけも
含めると、夜中の二時頃までかかりきりになるのだ。

集落内の班ごとに、持ち回りがくる。
小島は、三つ班があるので、三年に一度持ち回りが来る。       
お祭りに参加するのは、他の班の人でも、もちろん良い。
ただ、準備などの関係で、班ごとに持ち回りがまわってくるのだ。

朝から準備などに加わっている人は、とっても忙しいのだ。
お祭りに食べる、魚類を求めて海へ、鶏肉を求めてニワトリ小屋へ、供え物の食べ
られない、長芋のような植物を求めて藪へ。
ごちそう作りの婦人の方々は、台所でと、皆総出で行われる。

お祭りの準備をして、神様役の人とお供え物をまつり、宴会が始まる。
要するに、夕日を拝むことと、月の出を拝むのが、お祭りの主で、特に大切なフィ
ナーレを飾るのが、月の出を拝んだ後に、皆で食べる[サバの干物入りなます]なの
だ。

作り方は、お供えしたあとの塩サバの開きの干物を、骨を取り除き薄く切る。
それを、酢で洗いしめる。
あらかじめ作っておいた大根なますに、加えてあえるだけ。
「えー、火を通さずに、干物の魚を酢でしめて使うなんて、はじめて。」という声が、
あちらこちらで。

というのは、最近では簡素化されて、それは行われていなかったから。
しかし、区長さんが伝統行事を正確にやるようにということで、本来の[サバの干物
入りなます]が、復活したそうだ。

今の主婦の人たちは、それを知らなかったので、先輩主婦の方に、[サバの干物入り
なます]の作り方を披露してもらった。
「酢でしめるから、しめさばと同じで大丈夫。」という。
これを食べないと、家に帰ることができないという、とっても大切なフィナーレ。
月の出を見ながら、礼二回、手を二回たたいて、また礼を一回。
(全員が月の出を拝みに行くのではなくて、その間に、[サバの干物入りなます]を
作る人たちは残る。)
 
神様役のうちの一人で、移住者のTさんという方は、「初めて、神様役に選ばれてや
りました。ニワトリの毛をむしる手伝いもしました。この行事は、なかなかおもし
ろいです。神様役は座っているだけで良いはずでしたが、近くに火鉢があり、皆が
餅を食べたいというので、餅を焼くのに忙しかった。」
 
私は、朝から一部始終を体験したわけではないのが残念だったが、二十三夜祭が半
月の夜に行われ、餅の形が月というのが、とてもユニークでおもしろい。
神様役の二人が座っていた様子を、写真に撮りたかったのだが、神聖な儀式のよう
な気がして、つい写しそびれてしまった。
神様役のTさんがいただいた、お供えの紅色の月形餅を、翌日写すことにした。
「今から切って、食べようと思っていた。」とTさん。

お月様の形の、紅色の餅。http://www.yakushimapain.co.jp/tukigatamoti.htm
二十三夜祭以外では、おそらく作ることはまずないだろうとおもわる[サバの干物入
りなます]。
ただ座っているだけで良いはずの、神聖な神様役の人が、餅の両面に砂糖と醤油を
塗って、香ばしい香りの煙に包まれて、「次に待っている人、餅焼けましたよー。」
と、お祭りの出店のおじさん役みたいになったりと、神様らしくない場面も。

とにかく理屈ではなくて、こういうお祭りが二十三夜祭。
お月様がきれいだったからか、[サバの干物入りなます]を食べたからなのか、私は
眠れない夜を過ごした。



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発行責任者  角谷和雄   kakutani@yakushimapain.co.jp
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屋久島支店       鹿児島県熊毛郡屋久町原914番地
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