メルマガ:屋久島発 田舎暮らし通信
タイトル:屋久島発 田舎暮らし通信  2004/01/03


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  2004/01/03
『世界自然遺産の島』   屋久島発・田舎暮らし通信(第93号)

      http://www.yakushimapain.co.jp/  屋久島パイン株式会社
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このメールマガジンは、北海道から屋久島に移住し、現在弊社屋久島支店の社員が
本人の移住経験を踏まえまして、屋久島の日常を発信しています。


●元朝芋

[アーコア、ナゴーミランカッタネ。]、「ああ、これは長く見ていなかったね。」と、
久しぶりに会ったAさんに言われた。
[ンノガとこのダイダイをモッテイカンコテー。]、「私のところのダイダイ(柑橘類
で酢の代わりに使うお正月時期にとれるもの)持って行きませんか?」と、もら
ったダイダイ。

お正月の酢の物に使われるダイダイは、酢の代わりに昔はよく使われていたそうだ。
今では、お正月におせち料理を作る家庭も少なくなり、[ヒッチメンドカ]、「めん
どうくさい。」といって、特別なものはつくらないという人が増えてきた。

でも、私が屋久島のおせち料理を作ってみようという気になったのは、「今では市
販のもので間に合わすけどね。」と言うAさんから、昔の屋久島のおせち料理の
話を聞いてみたからだ。
[元朝芋」(元旦に食べると頑丈になるという人もいるそうだ)というものを、元
旦の朝に食べるという。

サトイモの一種で、モチ芋(正式名称かどうかはわからないが)といわれるモチ
モチとした食感のサトイモ。
細かく切らずに、丸ごとのまま皮をむく。
それを砂糖と醤油の味付けで時間をかけて、丸のままで煮つけにする。
それを吸い物のおわんに、丸ごと入れていただくそうだ。
決して吸い物ではないが、吸い物のおわんに入れるのがポイント。

モチ芋は今の時期に採れ、スーパーでも地元野菜のコーナーで売っていることも
ある。
私は、無人市で見つけたので、さっそく買った。
確かにモチモチしていて、モチの代わりに元旦の朝に食べるにふさわしかった。

「うちは元旦の朝に、朝日を見ながら東西南北という順序で、手を叩いて拝んで
から[元朝芋]をみんなで食べる。元旦には、雑煮は食べないよ。雑煮は、2日目
に食べるもの。今の人は、食べたいときに、食べたいものを食べるから、地元の
人でも[元朝芋]を知らない人も居る。奥さんがよそから屋久島に嫁いだ人だった
場合は、奥さんの実家の風習が取り入れられたりして、屋久島の風習が薄らいで
いくのではないか。[元朝芋]を食べ終えてから、神社に初詣に行くから、夜の暗
いときには、初詣はいかないよ。明るくなってから行って、みんなの顔を見て、
挨拶をしたいからね。」とBさん。

夫婦共々移住者のCさんの場合のように、長い間屋久島に住んでいても「屋久島
風のおせち料理じゃなくて、自分の出身地のおせち料理を作るよ。」とのこと。
定年後に移住してこられた方なので、地元のおせち料理に馴染む期間の方が短い
ということもあるかもしれない。

私が、地元の人から聞き取って、作ったおせち料理は次の通り。
(集落により多少の違いはあるようだが)
(1)ダイコンの酢の物(酢の代わりにダイダイを使う)
(2)刺身(そのときにある地元の魚の刺身。ここではミズイカ、カンパチを使用)
(3)サバの昆布巻き(サバ、ダイコン、ニンジンを巻いてある)
(4)黒豆の煮豆
(5)かき揚(サツマイモ、ニンジン、たまねぎを千切りにしたものを使う)
(6)煮しめ(サトイモ、ニンジン、こんにゃく、厚揚げ、シイタケ、竹の子、インゲン)
(7)寒天(お正月には特に使わないけれどお祝い事のときに赤い色の寒天を添える風習があると聞いたので、ポンカン果汁を使って寒天を作った)

今と比べると、質素なものだったようだが、昔としては豪華なものであったそう。
それと、元旦に食べる[元朝芋]、2日に食べる雑煮(雑煮の具は、白菜と鶏肉、
網で焼いた丸もちを入れて、汁はしょうゆ味で食べる。)昔は、おせち料理がメイ
ンなので、雑煮はあっさり目で、人によっては、具を何も入れずに、餅だけ入っ
た雑煮を、食べるという人もいたようだ。

私は、いつも元旦に雑煮を食べていたので[元朝芋]を食べたあとにでも、雑煮を
食べようと用意をしたのだが、[元朝芋]が餅よりも、食べ応えがあること。
「元旦には[元朝芋]。雑煮は食べない。」という風習の理由が、分かった年の始ま
りだった。



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発行責任者  角谷和雄   kakutani@yakushimapain.co.jp
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