メルマガ:風のひとり言――マスコミの裏を読む
タイトル:「風のひとり言――マスコミの裏を読む」第37号  2003/12/26


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         「風のひとり言――マスコミの裏を読む」vol.37
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□■□ 「風のひとり言」その37□■□-----------------------------------
「自衛隊イラク派兵の憂うつ」
私の立場は
基本的には派兵支持

 12月18日に、イラク特措法案に基づく自衛隊イラク派遣実施要項を小泉
首相が承認して、いよいよ陸・海・空自衛隊派遣が動き出しています。まさに、
今日26日は航空自衛隊の先遣隊が出発する日とのことです。

 今、この問題を巡って国論はほぼ真っ二つに分かれているといっていいでし
ょう。もう10年も前だったら「戦争反対、戦地に行くな!」の声が圧倒的だ
ったでしょうから、この間に国論や一人一人の意識もかなり変化しているのだ
と思います。それでも、やはり知識人といわれる人の間では「とにかく戦場に
人を送るようなことは、平和憲法を持つ日本国としては許されない」との意見
がかなり強いのだと思っています。

 アメリカが9・11のあとにやつぎ早にテロ国家攻撃を仕掛けた時にも、ア
メリカの専横さを批判する声は強くありました(今でもあります)。その際に
も、私が「基本的にアメリカを支持する」と書いて、随分と抗議のメールをも
らったことを思い出します。

 もちろん、私とて個人の立場としては、アメリカなんて好きな国ではありま
せんよ。「な〜んて底の浅い国なんだろう」ぐらいには思っています。しかし、
これが国家・国際関係の立場からすれば、そうとばっかりも言っていられない。
今でも「基本的には派兵を支持する」などというと、恐らく強烈な反発を受け
るでしょうが、意識して欲しいのは、私たちの国の現在の成り立ちや枠組みが、
アメリカ(米国)を抜きにしては考えられないことです。

小泉首相は
何も説明していない

 私の論理は、こういうことです。

 小泉首相は、今回のイラク戦争に対して、同盟国としていち早く「米国支持」
を表明しました。もともと、米国との同盟を最重視する立場の人ですから、こ
れは当然でもあるでしょうし、今は隠れている憲法改正志向の部分でも、真の
独立国になるまではアメリカの傘からは離れられない、との気持も働いている
のかもしれません。

 ですから、そうした同盟関係にある国としては、戦後復興支援について軍隊
(自衛隊は軍隊です)を出さないということは、当然に許されないと思うので
す(この際、イラクが危険だとか憲法違反だとかいう議論は措いておきます)。
これは、あくまで筋論です。対イラク戦争を支持したのだから、戦後の復興支
援にも、積極的に加担するのは同盟国として当然のありようだとの意味で言っ
ているわけです。

 ただ、ここで全面的には誤解して欲しくないのは、“情勢の変化”をどう捉
えるかによって、態度を変化させることは不可能ではないと私も考えているこ
とです。

 今年4月末までに終息を宣言した、“イラク戦争”の際に死んだアメリカ兵
より、その後のゲリラ戦の中で亡くなった死者の方が遥かに多いという異常さ。
この異常さをどう捉えるかによっても、事情は変わってくると思うのです。

 恐らく欧米の指導者なら(米国と対峙していれば)言うでしょう。「確かに
我々は仲間だ。しかし、わが国の法律では直接、戦闘行為に関わる場所になる
恐れのある地域に人を出せない事情がある。ついては、側面からの支援は出来
る限りのことをするから、事情が変わったことをもって派兵を少し遅らせても
らえないか」と。

 国家の最高責任者なら、当然のことだと思います。実際にそうする道も、私
は決してないわけではないと思うのです。しかし、その際でも決定的に求めら
れるリーダーの条件は、「説明責任」です。今、どういう前提があって状況が
こうだから、我が国としてはこうしなければならない――というMUSTの部
分については、とにかく国民が分かるように説明しなければならない。

 小泉さんには、それが決定的に欠けているのです。情緒的にはいろいろと言
いたいことはあるようです。しかし、もともと政策や信念を持ってリーダーに
なった人ではないから、言葉が続かない。“情念”だけで生きてきた人ですか
ら、そうした言葉を持ち得ないのだと思います。

 国民の我慢もそろそろ限界に近づいているのかもしれません。

 クレグレも裏から操られる、暗愚の政治家に陥らないことを願うばかりです。
右翼チックな私(決して右翼ではないと思う)のやや後ろ向きのひとり言です
が……。

□■□ 後書きのつぶやき□■□----------------------------------------
残った借金は
誰が返し続けるのか 

 今月22日に例の道路4公団民営化で、政府・与党案が提出されました。し
かし、これを批判する委員(道路関係4公団民営化推進委員会)である田中一
昭・委員長代理と松田昌士委員(JR東日本会長)が即座に辞任するという騒
ぎに発展しています。

 一方で、あれほど国交省や政府の及び腰を批判していた猪瀬直樹氏が「ある
程度の成果があった」としてこれを可とする会見を行い、際立った動きを見せ
たことに、意外の感を持たれた人も多いのではないでしょうか。

 一般の人にとっては、何が何だか分からないでしょうね。ここでは、一応問
題の骨格を皆さんが知っているとの前提で話を進めますが、やはりこの問題は、
新会社が財政的・経営的な自主権を持っていないため、民間企業の発想や経営
効率が生まれ得ないということではないでしょうか。

 40兆円の借金を45年で返すなどと言っていますが、これはそれこそ絵に
描いた餅。金利4%で計算して可能などといって、その金利がこれを大きく上
回ったりしたら、返すことなんぞ不可能です。

 結局、国交省の役人も道路族議員も「道路を作ること」を最終目的にしたの
であって、初めから借金をなくすなんて発想はないのだと、ツクヅク思います
ね。「経営自主権を与えた」なんて言ったって、実際のところはまだ未知数。
役人と道路族議員はほくそえんでいるのに違いない(実際、古賀誠道路調査会
会長は「ハハハ、ホホホ」とほくそえんでいましたな)。道路を作ることさえ
可能になれば、彼らのメンツは保てることになるわけですから……。

 一方での、小泉首相と猪瀬直樹氏。特に猪瀬氏がちょろちょろしたことへの
批判もあるようです。しかし、私はこの人の道路問題に対する取り組みと、何
とか「無駄な道路は作らせまい」とする姿勢には、頭が下がる部分があると思
っています。実際、その気持で働いていたことも間違いないでしょう。

 しかし、しかしねぇ〜といいますかねぇ。やはり、ここに来て、この人も少
し政治的な人間になりつつあるのかもしれない。政治的であることの甘い蜜は
ありますからね。もとより、小泉さんが首相にならなければ、こんなタイプの
人が政府の委員会の委員になるなんてことはあり得なかったことです。ですか
ら、その意味で、この人も時の政府=小泉首相を頭から否定できないのだと思
います。

 小泉さんは改革の姿勢とその過程をアピールできたわけだし(実際に改革さ
れるかどうかは別)、猪瀬さんにしても、自分の言論人としての思いが、いく
らかでも実現することは、大変な名誉であるに違いない(実際に自分が政治的
に動いたのだから余計です)。

 これが政治の恐ろしいところ。当選1、2回の若手議員で、清新で頭も良く、
他人に対する思いやりのある人がたくさんいることを知っています。ところが、
それも時間とともに薄れてきてしまう。政治家だけの責任とは思いませんが、
今回の民営化委員会の議論にしても、骨抜きになったことは事実なのだから、
その辺の“落としどころ”はきっちりつけるべきでしょうな。国民はそれこそ、
監視する義務があるのでしょう(資産を持つ保有・債務返済機構の解散は45
年後だそうですが、そこまで皆が覚えているわけはない。3年後には皆さん、
この問題は忘れているでしょうが)。

今月のことば……「道路関係4公団民営化推進委員会」
 ことのついでといいますか、この民営化推進委員会が今後、どんな形になる
のか少し考えてみましょうか。もともとはご存じのように、日本道路公団など
4公団について、それに変わる新組織と採算性について具体案をまとめ、首相
に対して意見を述べる国家行政組織法上の機関でした。すでに、意見書も提出
していますが、それが骨抜きにされたことは述べたとおり。
 今現在、“7人のサムライ”がどうなっているかを、書いておきます。
 今井敬(日本経団連名誉会長)=昨年12月、委員長辞任、田中一昭(委員
長代理、拓殖大教授)=辞表提出、中村英夫(武蔵工業大教授)=昨年12月
以来欠席、松田昌士(JR東日本会長)=辞表提出、大宅映子(評論家)=政
府与党合意を評価、猪瀬直樹(作家)=政府与党合意を評価、川本裕子(マッ
キンゼー・アンド・カンパニー勤務)=政府与党合意を批判。
 とこんなところですが、一応まだこの委員会を開くことは可能のようです。
しかし、実態がもうなくなってしまっていることと、将来にわたって監視する
権限も与えられてはいるようですけど、今の状況ではそれも無理でしょうな。
大山鳴動してネズミ一匹というところになるのかどうか?

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