メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2003/12/2  2003/12/02


〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
月刊小説メールマガジン         2003年12月2日 発行
『君が好き!』  vol.71
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
こんばんは、この度は本号の発行が2週間ほど遅れまして大変申し訳ございま
せんでした。その上、今回は瀬乃の作品のみの掲載となり、大変心苦しいので
すが、少しでも楽しんで頂ければ幸いです。
尚、1日発行予定でした増刊号は、本号の遅れを受けまして、2〜3日発行日
がずれる予定ですので合わせてご了承下さいませ。
(瀬乃 美智子 拝)
======================================================================
今月の目次
▼密やかな花・06         瀬乃美智子
▼あとがき
======================================================================

            「密やかな花・6」
                           by瀬乃美智子

「………っ。」

何一つ変わらぬ部屋。
窓を覆っていた重いカーテンを開ければそこは懐かしい空気が今も詰まってい
るようだった。


壁に並んだ書棚を開ければ、あの頃まだ読みかけだった本がそのまま仕舞われ
ている。
あの時、どうして自分は…。

「悔いてもどうなるものでもない」

今、カウネルの横に立つのはオーカーで、自分ではない。
そして、今回自分を呼び寄せたのも、オーカーであって彼ではないのだ。

あの時、自分とカウネルの関係は終わってしまった。
契約がどうこうなどという事は関係ない、終わってしまった事なのだ。

「それをあの馬鹿が…っ!」

どんな手段を取ってでもカウネルを助ける手助けをさせると宣言したオーカー
の真剣な表情を思い出し、イグルーツは馬鹿馬鹿しい!一人誰もいない部屋で
毒づいたのであった…。



「イグルーツは嫌がっていただろう?」

ベッドに戻されたカウネルはオーカーに笑みかける。
よくもまぁ無理矢理にでも連れて来れたものだと、カウネルは感心した。
まさか、本当に来てくれるとは思わなかった…。


「お前の体を直すには彼が必要だ」

オーカーの言葉に、カウネルは苦笑する。
彼の与えてくれた花のおかげでここまで持ってくれた体だ、それを更に持たせ
ようというのだからあさましいものだ。

オーカーの言葉に困ったような笑みを浮かべるカウネルに、オーカーは1冊の
本を差し出した。

「何故、…この本を私にもっと早く見せなかった?」

カウネルの書斎で見かけた1冊の本。
読みかけたまま寝てしまったのだろう、その本を手にしたまま寝入ってしまっ
た彼の手からそれを取り、オーカーは書棚へと向かっていた。
そして何の気無しにぱらぱらとめくれたページ。
その中に、体はまだ若々しいままであるのに衰弱していくカウネルの命を助け
る方法が記されているのを発見したのだった。

「何故だ?何故…、助かる方法が分かっていながら」

その書物の中に記された一説。



人の命ははかなきもの。

しかしそれはベルベットの一輪の花の元、十の歳は延びるという。

それでも足りぬ愚か者は、剣を振りかざし罪人となる。

命を与えるその花の、幹に切り付け血をすすれば…

その者、永遠の命の宿主になるという。



「この一説によれば花の幹の血…ようするに樹液だろう、それを飲めば永遠の
命を得られるとある。私は一度ベルベットロウズを見たことがあるが、あれは
小さな種から咲く一輪の可憐な花だ。あれの茎を切ったぐらいでは永遠の命を
得られるわけがない。だからおそらくこれは…。」


ベルベットロウズの親株。
イグルーツが所有し、それがつける種がベルベットロウズの花を咲かせるとい
う噂は本当であったのだ。
確かに、人に十年もの寿命を与える種を生み出す魔性の花だ、その樹液を飲め
ば永遠の命を手に入れられるという話はまんざら嘘ではあるまい。


オーカーの言葉に、カウネルはしばし静かに目を伏せていた。
そして、少しのち…、一度だけイグルーツに言った事があるのだよと静かに語
りだしたのだった。


「もし私が永遠の命が欲しいといったら、お前は私に金づるのベルベットロウ
ズの親株を渡す気があるのかねと」

何故ならその幹に傷をつけるという事は、たとえその相手が永遠の命を得られ
ても、花を枯らしてしまう危険性も秘めているのだ。
だからこそ、花は増えず、希少の存在となり…。
その秘儀はやがて誰にも漏らされぬ秘め事となった。


そして今でも忘れない、イグルーツの返事。

「『永遠の命を得るという事は人の身を捨てる事。魔族に成り果てる、それ以
外他ならない。それでお前がよいというなら望むがいい。…だがこれだけは覚
えておけ、カウネルよ。我等魔族は人間としか契約はしない。魔族と成り果て
たが最後、私はお前を守ってなどやりはせんしないからな。』―――だって」

くすくすと笑ってカウネルはオーカーへと見つめ返す。
それはそうだ、永遠の命を持つ人間など最早人間などではない。
そして魔物に成り果てたが最後、大魔王が魔族になりたての青二才に仕えてく
れるわけがない。
見放されて一人ぼっち。
魑魅魍魎の跋扈する魔界で、生き抜いていく覚悟がなくてはいけぬという事だ。


「さあ、どうするオーカー? お前はそれでも私に、永遠の命を手に入れて欲
しいかい?」

カウネルの問いに、オーカーはしばしその口を開く事が出来なかったのであっ
た…。
                              《続く》
======================================================================
お疲れ様でした!(*^ー^*)
そうそう、実はこの度、バタバタしておりますのは色々諸事情あるなかで、冬
のイベント(コミックマーケット)に受かった事もその一つであったりします^^
毎回よく受かってくれるものと、くじ運に感謝している君が好き!ですが、当
日は下記の日程で参加させて頂いておりますので、ご参加なさる皆様には、ふ
るってお立ち寄り頂けますようよろしくお願い致します♪

12月29日(月) 西地区 え-42b 【君が好き!】創作(小説)----♪

君が好きはリンクフリーです。ご意見ご感想をお待ちしております♪
キリ番をGETされた方は、掲示板にご報告お願いいたします。
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓
 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2003/12/2 71号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
 君が好き!メールマガジンの、転載、複写など著作権法違反行為は禁止です。
 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
 マガジンID:0000025584 m00012567 ms00000142  loveyou
〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。