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★★★★★★★★天使になりたかった私★★★★★★ ９ ★★★★★★★★★★ つい最近、３年ぶりに兄貴に会った。 兄貴は放浪の旅人である。 兄貴は私よりも３歳年上。 小さいときからちょっと変わった兄貴だった。 うちは、我が家の長女である姉貴が母親のようにしっかりしていたので、 私と兄貴はいつも姉貴のノリちゃんに頼りっぱなし、 好きなことを自由奔放にやってノビノビと育ってきた。 ノリちゃんと私は７歳も年が離れているのに対し、 兄貴とは３歳だったので、どちらかというと双子のように育った。 ノリちゃんとはケンカしたことなど一度もないのに対し、 兄貴とは毎日のようにケンカをしていたし、それが時には殴り合いにもなり、 いっぱいいっぱい意見や体をぶつけ合いながら育った。 だから、今でも兄貴は私の一番の相談相手であり、 私のことを一番にわかってくれる、私のよき理解者でもある。 そんな兄貴は、ノリちゃんに似て頭はとてもよい人だった。 でも、私はわかっていた。 兄貴がいつも私にぶつかってくるのは、 本当は頭がいいということから逃れたかったんだと。 私のように、本当はオバカな子とつきあい、オバカなことをしたかったんだと。 でも、父親、母親は口癖のようにいつも言っていた。 「お姉ちゃんとお兄ちゃんは頭が良いんだから、 咲楽みたいにバカしないで、しっかりお勉強してね」 ノリちゃんは素直にその言葉を受け止め、今もいい子ちゃんしている。 しかし、兄貴は、 表では「わかりました」と有数な進学校まで通ったものの、 本当はそれがイヤだったし、プレッシャーになっていたんだ。 兄貴が勉強していた姿なんて見たことなかったし、いつも私と遊んでいた。 でも、テストの成績は常に上位だったし、 東大、慶応、早稲田、上智に多数の卒業生を送り出している高校にも らくらく合格してた。 結果しか見ない父親と母親はそれにかなり満足していたし、 兄貴の将来にはかなり期待していたんだと思う。 でも兄貴は違っていた。 本当はそんなお堅い道なんて歩きたくなかったんだ、 小さいころから私にだけは兄貴は本心を語ってくれていた。 高校を卒業したら、医者や弁護士や一流企業の偉い人になるのではなく、 世界中を旅したいって。 世界の恵まれない人たちの役に立つ仕事につきたい、世界を見て回りたいって。 私は、目を輝かせて話すそんな兄貴の話が大好きだった。 でも、なんとなくもったいないなって思ってた。 せっかく頭がいいんだから、大学くらい行ったらいいのにって。 しかし兄貴は、なんと、高校の卒業を待たずに家を出たのだった。 私が中学３年、兄貴が高校３年の２月の終わりころだったと思う。 兄貴は、早稲田大学の理工学部への進学は決まっていた。 しかし、卒業式を間近に控えた日、突然姿を消したのだった。 「自分の道をすすみます」 そう私たちに置き手紙を残して。 自分と共に頑張ってきた友人の友哉を亡くしたことも原因の一つだったと思う。 大切な友人のいない日本にはいたくなかったんだろう。 （詳しくはバックナンバー★4★見てね） 兄貴は今、アフリカの小さな田舎村で日本語を子供たちに教えているという。 アメリカやイギリスなどの大きな都市ではなく、 小さな街で自分を必要としてくれる人と一緒に過ごしている兄貴が私は好きだ。 「お前も頑張れよ」 そう言い残して、兄貴はまた旅に出かけた。 父親にも母親にもノリちゃんにも会わず、 私に会うためだけに日本に戻ってきてくれたのだ。 ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ ご購読ありがとうございます。 咲楽でございます。 私が言うのも変ですが、兄貴はとてもかっこよい人です。 男らしいというか、正義感にあふれているのがよくわかります。 好きなことをして生きていくのはすごく素敵なことだけれど、 それだけすごくリスクも大きくて、失うものもたくさんあるんだよなぁ〜 兄貴を見ているとそう思ってしまいます。 でもきっと、そんな大きなリスクを背負うからこそ輝いて見えるんでしょうね・・・ ★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★ |