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======================== 仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜 ☆ 増刊第三回 耽美とやおいの関係 ********************************* ごきげんよう。葡萄瓜でございます。 では、此度も御付き合いの程宜しくお願い致します。 やおいと言う語の語源には、二つの通説がございます。 一つは故・手塚治虫氏が『初級まんが講座』なる著書 の中で触れた、と言う説。 今一つは『らっぽり』と言う同人誌に於いて『やおい 特集号』が組まれ、其の中で定義されたと言う説。 手塚氏発祥説と言うのは今だに探しておりますが、明 確にこれだと言う部分に行き当たっておりません。よ もやとは思いますが故人の威徳を借りた風説かも知れ ません(※1)。 片やの同人誌『らっぽり』定義説に於いては、其の号 の復刻版を幸い入手できましたので確認が取れました。 今回は其の復刻版を基調にそろそろ書き進めて参りた いと思います(※2)。 この『らっぽり やおい特集号』刊行時に参加してい た同人は坂田靖子・花郁悠紀子・橋本多佳子・磨留美 樹子、そして波津彬子の五名。そして、『やおい』の 定義等について話されたのは同誌収録の対談(と言い ますか鼎談)中に於いてです。この中の誰が明確に定 義を打ち出したと言う訳では無いのですね。 さて、この対談及びこの号の収録作品を見ますに、ふ と妙な感覚を味わいます。 「これって、耽美じゃないですか?」 はい。ここで定義されていた『やおい』は今日のもの とは微妙に違った定義だったのです。 該当定義部分を要約すれば、『(男性同士の絡みの) 卑猥な部分の抜粋=やおい』と言う事になっています。 更に事(※3)の後、前又は最中だけを描くだけと言う 展開も存在した様です。但しパロディが全く否定され ていた訳ではなく、寧ろ妄想を湧き立たせる源泉とし て肯定されているらしいと読み取れる箇所もあります。 確かに当時発行と思しき『UFOロボ グレンダイザー』 (※4)のやおい同人誌を古書店の店頭で見掛けた事は 在りましたしね。 閑話休題。ここできちんと書いて置きたいのは、其処 で定義されたやおいの登場人物には青年は居ても少年 は居なかった、と言う事です。少なくとも作品を見る 限りでは。 ここから一寸齟齬が出て来るんですね。 現代用語の基礎知識には91年以降『やおい』が漫画用 語として項目化されて登場しますが、そこに於ける定 義としては『少年愛(耽美/JUNE)とショタコンが合わ さって成立』とあります。で、『ホモアニ(メ)パロ (ディー)』の事を指す、と。 この定義が商業出版にも取り入れられたやおい(※5) と言う事ならば頷けないでもありません。が、全ての やおい同人に適用されるかと言えば少し強引では無い かと思うのですね。 時代の流れから見ますと「JUNE」によって啓発集成さ れた耽美と呼ばれる一群からやおいが生じ、其処から 更にBoysLove(※6)と呼ばれるオリジナルを基とした 一群が生まれ、耽美からはJUNE(※7)と呼ばれる一 群が更に分かれた、と言う認識になりましょうか。 この辺の時間推移と関係性がややこしいのでやおいの 歴史を纏める人も少ないのではと思います。私にした 所で正直な所、この概略認識で良いのか些か自信が在 りません。出来るだけ記憶と資料に基づき正確を期し ては居ますけれども。 では、此度はこれにて。 増刊第四回のテーマは全く何も考えておりません。 31日発行の本編第二回にて又お目にかかりとうござい ます。 ☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★ ※1 『やま無しオチ無し意味無しはいけません』云々と言 う引用例を見たりもする。そしてコメントは押並べて 『現在の意味とは違う』云々。 そして明確な著書名紹介の記事は今の所一例も見てい ない。本文に於いても風説を探す中で漸く著書名らし いものを見つけたのでそれを紹介しているに過ぎない。 ※2 「小説JUNE 通算129号(01年3月号/01.3.1発行)」 (マガジンマガジン刊)の巻末付録ページに於いてほ ぼ完全に復刻されている。オリジナルの刊行日は79. 12.20。波津彬子が編集責任者と言う事になっている。 なお、「JUNE/93年11月号」に於いて波津彬子が当時を 懐古したエッセイを掲載しているとも聞くがそちらに 関しては現在資料捜索中。 ※3 余計な注かも知れないが、決して性交渉一辺倒を指す のではない。接吻・愛撫等を含めた愛の行為の一群を 指して『事』としてみた。 ※4 75年から77年放映。永井豪原作のSFアニメーション。 「マジンガーZ」「グレートマジンガー」と連続した時 間軸の作品世界を持つ。其の為、「マジンガーZ」の主 役であった兜甲児がレギュラーとして登場と言う事に なっていた。のみならず主人公に矢鱈と甘え(やおいの 設定ではなく、兄分を慕う弟分の様に…にしては過剰な 甘えだったが)ていた。 ※5 やおい同人が商業出版に取り込まれたのは87年にキャプ テン翼の同人誌アンソロジーが出版されて以降だと筆者 は認識している。当時JUNEにも投稿コーナーはあったが それはあくまでも読者友好及びプロ育成の礎と言うべき ものであって、数多の同人作品のベスト版的存在を作ろ うと言う意図ではなかったからだ。 ※6 『(一部女性同人誌発行者、及び其の出身の創作者が用 いる)見目麗しい少年達を主人公にした同性愛関係を要 素に含む物語展開方法』と言う定義は暗黙の了解で存在 するものの、語源については証言が殆ど見当たらない。 強いて挙げるならば『Comicイマージュ』(白夜書房/92 年創刊?オリジナルシリーズアンソロジー)の表紙にあ った『Boy'sLove』が該当するだろうか? 肉体関係描写に関しては淡白なものが多く、傾向的には コメディを含むプラトニックラブと見て良いのでは。 ※7 『JUNE』本誌、と言うよりも増刊である『小説JUNE』を 発祥と考えるべき区分だろう。耽美の一派であるが、小 説にJUNEと冠される事はあってもコミックにJUNEと冠さ れた例を見たと言うのはとんと記憶に無い。 精神性を重んずるのは耽美の性質其の侭であるが、肉体 的表現に於いて耽美よりもやや直接的、いや、寧ろ肉体 表現を抑えるのに精神性を用いている面が強いだろう。 *ショタコンの注に関しては後日掲載。 増刊第一回傍注4を参照して戴けると有り難い。 ========================== 仇花の記憶〜ごく私的なやおい歴史記録〜 増刊第三回 2003.5.26発行 2003.11.10再発行 文責:葡萄瓜XQO website:『仇花の記憶』 http://kamakura.cool.ne.jp/xqo/ mail:xqo_gm@yahoo.co.jp このメールマガジンは melma! http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00090840/ Pubzine http://www.pubzine.com/detail.asp?id=22755 メルマガ天国 http://melten.com/m/14637.html Mailux http://www.mailux.com/mm_dsp.php?mm_id=MM3FAB47D02D533 のシステムを利用して発行させて戴いています。 ご意見ご質問等はmelma!内BBS http://bbs.melma.com/cgi-bin/forum/m00090840/ 他WebサイトBBS等にて承ります。 バックナンバーはサイト内にて公開しております。 再配信ご希望の場合はお手数ですがメール若しくは BBSにてご用命戴ければ幸いです。 ======================== |