メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』  2003/11/09


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月刊小説メールマガジン         2003年11月1日 発行
『君が好き!』   増刊号vol.42
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こんにちわ〜。篠原ですぅ
  11月だというのに、ぽかぽか陽気ですね。早いもので、今年も残すところあ
と2ヶ月となりました。2004年はすぐそこまで来てます。。。。。
 日々、歳を感じる今日この頃w(:_;)w

★随時、HPは更新しております♪
ハーボット置きました! 遊んであげてください(。-_-。)
新BBSを設置しました。ぜひ書き込んでくださいね〜
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増刊号 今月のラインナップ  
●緊急企画【けだるい午後のひととき】第四話 篠原美姫緒
●愛の寸劇劇場 【ちょっとおかしな二人の話《兄弟編2》】瀬乃美智子
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    けだるい午後のひととき】第5話
                           篠原美姫緒

 新井氏の上司である東井氏との交渉は比較的好調であった。天保の話をよく聞
き、その上で確認をとって見ます。と、良好な返事をする。だが、石井氏とのM井
S友側の交渉の窓口はあくまでも新井氏であるがゆえ、だんだんとありえないよう
なことを言ってくるのだ。
「はぁ‥。なんで被害者の私が加害者よりひどい扱いを受けなきゃいけないん。」
 ここのとこの交渉が難航を見せ始め、天保のいらだちはピークに来ていた。
「イタタタタ」
 胃がきりきりと痛む。
 おそらく神経性胃炎だろう。
 これも、交通事故による損害にならないかしら、と思いながら胃薬を飲んだ。
「おい、あたり。いつまでも車借りてると代車代かかるから、車直らないんだ
から買え。」
 父親が、車のチラシを手に、ホクホクと話し掛けてきた。
「あい。買うよ。頭金くらいならなんとかなるから、あとはローンでもいいよ
ね。」
「それしかないだろう。じゃあいこう」
「えええええええええええ! いまから買いに行くの?」
 父親と天保は午後の丁度眠たい時間帯(14時くらい)だというのに、スズ
キディーラーへと足を運んだ。
「で、どれどれ」
 父親は、ディーラーと事前に交渉ができていたようで、薦められた車に見入っ
ている。
 いたたたた
 天保は胃のあたりをさすりながら、ほかの車を眺めていた。
「あたし、この車がほしいんだよなぁ‥。」
 だが、天保の給料ではとても買えない値段である。
「おい、これにしておけ」
 と、父親に進められるまま、その車を買うことになった。サインをし、ロー
ンの手続きをする。
「今日木曜日だから、月曜日あたりには車乗れるよ」
 と言われた。
 で、どお?と、保険の話を聞かれるものの、進展なしと答えておいた。中古
車とはいえ、新古車といわれるほど新品に近い。
「去年車検払って、また重量税とられるのか。。。」
 被害者なのにふんだりけったりである。

 

 月曜日には、新車が届いた。仕事から帰ると、シルバーメタリックの軽自動
車が車庫に入っていた。
「事故に遭わないように」
 天保は、職場の近くの神社で買ってきたお守りを方向指示バーにつるした。
 翌日、早番だった天保は、夕方 早くの帰ってきた。
 母親が誰かと電話をしている。
「いいえ、そんなこと一言もいっていませんよ。おかしいですね。あ、今帰っ
てきました。あたり、ディーラーさんから電話よ」
「ん? はい、変わりました。」
「ああ、あたりちゃん。あのね、たったいまM井S友から電話があって、『8:
2で決まったので、いくらかかってもいいから修理してください』って発注の
電話があったんだけどさ」
「はあああああああああああああああああああ?! あっ、すみません」
 思わず大きな声を出してしまったことに愛らしく詫びをいれる。
「昨日、新車納車したじゃん。だからさ、一応、保険屋には修理するまえに確
認取らせてくださいって言って切ったんだけどね。あの車修理するの? 修理
しても元には直らないよ。」
「しないしない。保険会社の担当者誰でした? 新井とかいう人だったら、そ
の人のいうことは絶対信用しないでください。」
「それにしてもさ、長年この仕事やってるけど、こんな保険会社初めてだよ。
直らない車を直せだなんて。ねぇ」

  もし、このディーラーと知り合いではなかったら‥‥
 昨日、車をここのディーラーで買っていなかったら‥‥

 ほぼ間違いなく、保険会社の悪巧みどおり修理されていたかもしれない。
 
 頭に来た天保は、M井S友へと電話をする。
「新井さんではなくて、東井さんをお願いします。」
 当然、このような不祥事は上司に報告をするべきである。
「はい。東井です。」
「あの。たった今、修理工場のディーラーから電話がありまして、M井S友さん
から電話があって、『8:2で決まったので、いくらかかってもいいから修理
してください』って発注の電話がありました。と報告を受けましたが、一体ど
ういうことですか?」
「ちょちょちょっと待ってください。当方はそのような電話は一切しておりま
せんし、修理するかしないかはあくまでも松岡様のご自由ですから‥」
「いいかげんにしてください!! 今、おたくへ電話をかける前に、かかって
きたんですよ! それなのにシラをきるつもりですか!」
「いえ、当方はそのようなことは一切いたしませんので‥」
「でも、発注をかけた人物がいるから、わざわざディーラーは確認の電話をく
れたんです。それでは、スズキが嘘をついているとでもおっしゃるんですか?」
「決してそのようなことは‥。大変申し訳ありません。」
「こんな姑息な手段を使うということは、正当な損害賠償をする気はないとい
うことですか?」
「いいえ、確認を取らせてください」
 といって、東井は一方的に電話を切った。
 まったくもって、どういう会社なんだろう。。。と、痛む胃をさすりながら、
ため息をつく天保であった。

                              《続く》


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     【ちょっとおかしな二人の話《兄弟編4》】
                           by瀬乃美智子


「だからね、お料理はできるかと思って。…いえ、私は人の食べ物を食べない
ものだからいいのだけど、竜彦がね…ああ、あなたが会ったあの男性、彼に何
か食べさせて上げたくてでも私は料理が出来ないから、どうにかしなくてはい
けなくて…。」

一生懸命事態を説明しようとするのだが少女の説明はあまりに要領を得ない。
しかしそれでも分かるのは、要するに自分に料理を作って欲しいという事だ。


「………っ。」

自慢ではないが、某国情報部の狙撃手を務めてきたカミアは、相手のテロリス
トからの様々な要求を耳にした事がある。
しかし、料理を作れと言う要求はいまだかつて…。

「では、私が料理を作った場合、その代償として私は何をいただけるのでしょ
う?」

対テロ組織所属のさがか、カミアはついつい交渉をしてしまう。

「…ええと…、ではあなたは何を欲するのかしら?」

しかし驚いた事に相手は素直に応じる様子だ。

カミアの願いはもちろん一つ。
自分を解放して欲しい。

しかしそれを聞いてもらえるわけもなく、まずは交渉の初歩の初歩。

「あなた方の素性と目的が知りたいの」
「それは…。」

答えても大丈夫かしら?
さして悩んでいるふうもなく、ではこれではどうかしらと少女は答えた。

「あなたに料理を作って頂いて、それを食べながら一緒にお話をするというの
はどうかしら?」

いいアイデアだわというように微笑む少女。
カミアは少し呆れ、でもそれでは食べるだけ食べてあなたがたが喋らないと言
う可能性のあるわと食い下がる。

「その時は、テーブルごと料理をひっくり返して頂いてかまわないわ。…大丈
夫、竜彦は少し変わっているけどジェントルマンよ。レディーにそんな行いを
させる事は絶対しません」

少女の言葉をカミアは溜め息と共に受け止める。
この少女に変わり者呼ばわりされるという事は…。

(どっちにせよ、一筋縄ではいかないということじゃない)

早々の開放は期待できそうもないようであった…。



「…今まであなたって何を食べて生きてきたの?」

キッチンに案内されたカミアは、冷蔵庫の中身を見て頭を抱えた。
ジャガイモ、人参、肉にソーセージ…。
それなりに食材は揃っているのだが、ただ一つ大事なものが…。

「調味料は一体何処…?」
「ああっ!」

カミアの言葉に、少女はそれね!それが足りなかったのだわとぽんと手を打つ。
どうやら買い物に行って他の奥様方が買い物をする姿を見、見よう見まねで買
い物をしてきたらしい彼女は、それに味をつける調味料まで頭が廻らなかった
らしい。

いっその事インスタント食品でも買ってくればよいのにとカミアは溜め息をつ
きながら、この事態をどうやって乗り切ろうかと頭を捻る。

「…あなたって今までお台所に足を踏み入れたことがないのかしら?」
「ええ、料理は侍女の皆さんが作ってくださるから」

…いいとこのお嬢様?

読めない!先が読めない!と頭を抱えつつ、カミアは冷蔵庫の中にあったアン
チョビ(何でこんなマニアックなものを買ってあったかは不明だが)を手にとっ
た。とにかくこの塩味を使えばアンチョビパスタぐらいは出来るかもしれない。

「ああ、ダメだパスタがない…。」

もろくも計画が崩れ、くじけそうになったカミアだが、ニョッキは無理でもジ
ャガイモを茹でてアンチョビソースで食べようと立ち直り、ひとまずジャガイ
モをむき出した。

「彼は料理をしないの?」
「ああ竜彦? どうかしら…、さっき目を離したらそれをかじろうとしてたけ
ど…。」
「ジャガイモを生で…。」

危険だからやめて。
ああ大丈夫、もう少しで美味しい料理ができるからって止めたからという少女
の言葉を聞いてカミアはほっとする。

自分を攫った悪人たちだが、まぬけな…いや、少々変わり者なだけに、自分を
襲った理由ぐらいは知りたかったのだ。

「…少しは覚えてみる?」

ずっと自分の料理を見つめている少女に、カミアは苦笑と共に尋ねたのであっ
た…。



「これはどういうことだ!?」

電話に出ぬ彼女を心配して彼女の部屋を訪れたレイモンドは、破壊された室内
を前に呆然とたたずむ。
室内の破壊のされ方は尋常ではなく、しかし上下の部屋に目立つ被害が出てい
ない事からして大規模な爆発などではないとは分かっていた。
何より、室内に焼けた後はひとつもない。

「くそっ!やっぱり太刀見の竜だ!」

レイモンドが失意のうちに実家を出たあと、家業を継ぐはずの兄が突然日本に
旅立ったという噂を聞いたのは数年前。
元々父が属していた日本の一族の長に納まり、生活していると聞いた時は、な
らば父は自分を必要としてくるだろうと確信し…しかしいつまでたっても自分
を呼び戻す事はなかった。

そこまでして自分の事を認めようとしないのかと恨んだ時期もあったが、それ
もやっと忘れようとしていたときなのに…。


この世に竜が何匹もいるはずがない!
俺が夢で見たのが火竜でないとしたら、噂で聞く本家の竜だ。
なら、カミアを連れ去ったのはそれを支配する兄貴…。

「竜彦兄さん、どこまで俺の邪魔をしたら気が済むんだ!」

やり場の無い怒りを抱え、レイモンドは誰もいない部屋で一人兄へと怒りの言
葉を吐くのだった…。



                              《続く》

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 あとがき
  何度もいいますが、「けだるい午後」に出てくる、保険会社と天保のやりと
りは、事実です。小説として、天保の設定に少し脚色はしてあるものの、スト
ーリーは、事実ですよ! 
 そして、篠原は現在、M井S友と調停中。M井S友の示談とは、裁判のことらし
いです。事故にあった時、相手がM井S友だったら、示談交渉をすべて録音する
ことが必須です。裁判(M井S友的示談)になったとき、必ず勝てる証拠となり
ます。泣き寝入りはいけません。うまく言いくるめられてしまったら、警察に
保険金詐欺の被害届と、金融監督庁に告訴文を送りましょう。

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2003/11/1 増刊号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
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