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■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ New York Black Culture Trivia #168 ニューヨーク・ブラックカルチャー・トリヴィア 嵐の中のJB/ハーレムロケ 2003/09/21 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 嵐の中のJB 木曜の正午前、ハーレムの音楽プロデューサーの事務所でミーティン グをしていた。(前回のメルマガに登場したプロデューサーとは別人) ブラウンストーンと呼ばれる、クラシカルな外装を持つ古いタウンハウ スだ。内装は明るすぎないオレンジに塗り直されているけれど、階段の 手すりなどは古いものをそのまま使っている。1920〜30年代の古き佳 きハーレムを思い起こさせるロマンチックさだ。 そんな雰囲気にもかかわらず、サクサクと打ち合わせを進めている と、開け放した窓からジェームズ・ブラウンの声が聞こえてくる。ハー レムではよくあることだ。みんなラジカセやカーステで音楽をヴォリュ ユーム全開でかけるのだが、最新のヒップホップに混じってJBも基本中 の基本ナンバーなのだ。 けれど、今日のJBはラジカセなどと違い、明らかに大型PAシステムか らの音だ。打ち合わせを終えたスタッフ全員で、125丁目に建つハーレ ムの数少ない高層ビル、ステイト・オフィス・ビルディングに駆けつけ ると、なんと、そこでJBが無料コンサートを開くということが判った。 聞こえてきた歌声は音合わせだったのだ。 やがて鮮やかなブルーのユニフォームに身を包んだバンドとコーラス 隊(今時、こんな前時代的なスーツを着ているのはJBバンドくらい か?)、そしてカツラまるだしの老齢な司会者が登場し、インストで1 曲披露したあと、御大JBの登場と相成った。すでに70代のJBだが、おな じみの黒いスーツを着込み、腰さばきも軽い。大型ハリケーン“イザベ ル”による強風が吹き荒れる中、あのヘアスタイルも風になびいていた。 JBはマジック・パワーを持っている。彼の音楽を聴く人すべてをハッ ピーにしてしまうのだ。ラジオから彼の曲が流れてくるだけで、ハーレ ムでは一体どれほどの人が「オー、イエー!」と声を上げ、踊り出すこ とか。それが、今日は目の前に本物がいるのだ。まったくのシークレッ ト・ギグだったため、偶然125丁目の居合わせた人だけがこのラッキー に授かれた。しかも、タダ。「私って、今日はめちゃくちゃツイて る!」 こんな思いも加わって、オーディエンスはみんな、とてつもな く嬉しそうな顔でJBマジックを楽しんでいた。私たちと同行していたプ ロデューサーが言った。「ほらね、これがハーレムなのよ。毎日、なに かが起こるの!」 興味深かったのは、総勢12名のバンドとコーラス隊のうち、4人が白 人だったこと。途中で出てきたダンサーのお姉さんもブロンドの白人 だった。なお、この野外無料ライヴは、11月にアポロ・シアターで行わ れるJBのコンサートのプロモーション企画だった。 ※以下にコンサートの写真があります http://www.nybct.com/2-132-jb.html ハーレム・ロケ 現在、日本の某テレビ局が、ハーレムのゴスペルをテーマとしたテレ ビ番組を収録中で、私も番組構成および現地コーディネイトのためにロ ケに参加している。テレビ番組の制作過程はとても面白い。まず、チー ムワークで成り立つ仕事であること。私は普段、ほとんどの取材はひと りで行い、写真も自分で撮影することが多い。原稿を書くこと自体は、 もちろん完全な単独作業だ。 けれど、ロケにはプロデューサー、ディレクター、カメラ、音声、 コーディネイター(NYには、日本のテレビ局に番組や映像を提供する日 系プロダクション会社があり、そこのコーディネイターが全体の進行を 管理する。私はハーレム内のみをコーディネイト)、通訳、スチールカ メラ(ロケ対象やロケ風景を写真撮影する)、ドライバーなどが参加 し、今回は総勢12名のクルーとなっている。 次に、「予定とキャンセル」のせめぎ合いが面白い。今回は5日間の ロケで、しかもメイン・スタッフは日本から来ているわけで、あらかじ め綿密なスケジュールが組まれている。以前、フリーランスのジャーナ リストや新聞記者の取材に同行した際には、スケジュールはもっと流動 的だった。記者は単独だし、誰かひとりを取材した結果、そこからヒン トを得て次の取材対象を決めるということもあった。(これは私も同様 だ) なにより、カメラなどの機材がないから身軽なのだ。しかし、テ レビは所帯が大きい分、そうはいかない。けれど、いくつかの予定が取 材対象の都合や天候などでキャンセルまたは変更となることも、あらか じめ予想済み。スタッフは、いわゆるドタキャンにもまったく動じず、 臨機応変にスケジュールを調整していく。 しかし、私にとってもっとも興味深いのは、「視覚」で番組が構成さ れていく点だ。ロケにはいくつものインタビューが含まれているし、映 像の編集後にはナレーションも入る。しかし、テレビである以上、当然 のことなのだけれど、番組は「映像の連続」で綴られていく。 私自身が普段から通っている店、歩き慣れているストリート、記事や エッセイに書いた場所、友人や知人などが「映像」として登場する。同 じハーレムという街を表現するにも、文章と映像ではその手法がまった く違うのだ。ディテールを追って読み手に情報を伝える文章とは違い、 テレビは映像によって視聴者のイメージをかき立てるものだということ が、今回、改めて分かった。 さて、この番組。これまで散々使われてきた「怖い、汚い」というス テレオタイプなハーレムのイメージではなく、日々変わっていく現在の ハーレムを見てもらえる優れたものになると思います。オンエア日が決 まったら、お知らせします。 ※ホームページの「リンク」のコーナーに、たくさんのサイトを追加し ました。面白いサイトが見つかるかもしれません。チェックしてみてく ださい。 http://www.nybct.com/10-link.html ================================ お知らせ ●ハーレム・黒人史・黒人文化を撮り続けているドキュメンタリー・ フィルム作家ビル・マイルズ氏のウエブサイトがオープンしました。 フィルム、写真をメディアへ貸し出ししています。 http://members.aol.com/milesef/ ●連載エッセイ「NYエスニック事情」 10/5号は「ギリシャ系コミュニティ」の巻 (映画「マイ・ビッグ・ファット・ウェディング」の世界は真実?) 在米邦人向け雑誌 U.S. FrontLine 毎月5日号掲載 ※東京の有隣堂書店・各支店でも販売開始 http://www.nybct.com/8-profile_yurindo.html ※入手希望の方は有隣堂もしくは以下に問い合せてみてください U.S. FrontLine News Inc. http://www.usfl.com toiawase@usfl.com(日本語) ●連載エッセイ「125th Street, Harlem」 ファッション雑誌 LUIRE(ルイール) リットーミュージック刊 毎月26日発売 11月号(9/26発売)「ビッグ・ママにダイエットを!」 (黒人は太りすぎという伝説は本当なのか?) ================================ ●ホームページに新しいコーナーを作りました こちらには ハーレムの日常、ニューヨーク事情、 ブラックカルチャー以外のエスニック事情、 英語や日本語にまつわる考察 などを軽く書いています。時々のぞいてみてください。 http://www.nybct.com → <日々の考察>コーナー ================================ 発行人:堂本かおる Keideee@aol.com バックナンバーはホームページで http://www.nybct.com ================================ |