メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2003/9/18  2003/09/18


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月刊小説メールマガジン         2003年9月18日 発行
『君が好き!』  vol.67
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こんにちは^^ 
何だか季節の変わり目だけあって体がちょっとだるくはありませんか?
瀬乃はすっかりやられてしまったようで、気付くとついつい寝てしまっていた
りするので怖いです(汗) そんなこんなで今回ちょっと発行が遅くなってしま
い申し訳ございませんでしたm(_ _)m
今回はちょっと作品を練り直したりしていたので時間がかかってしまって…。
メルマガは後で書き直しがきかないだけにやっぱり今後の企て(?)を考えて、
ついつい慎重になってしまいます^^;
何はともあれ、遅くなってしまい申し訳ございませんでした。
どうぞお楽しみ下さいませ♪(*^ー^*)
(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼けだるい午後のひととき・02    篠原美姫緒
▼密やかな花・04         瀬乃美智子
▼あとがき
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        【けだるい午後のひととき】第二話
                             篠原美姫緒


 翌日、仕事から帰ると、父親は実に渋い顔をしていた。
「な、何? お父さんなんかあったの?」
「んーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
 父親は、ふっと息をついた。
「なあ、あたり。お前、事故の様子を詳しく説明してみろ」
「赤信号から青になたんで、発進して、交差点を渡りきる直前でいきなり対向
車がこっちに向かってきたんだよ」
「で、事故起こした車を修理するとかいったのか?」
「んなこと、なんもいってないよ」
「そうか」
 父親の話しによると、保険屋から電話があり、交渉したらしいが、
『8:2』
 の、一点張りでお話にならないという。
 しかも、
「修理してください」
 と言われたらしい。
「ちょっとちょっとまって。まだ傷の具合も見ていないんじゃ…」
 ぶつけられた車はまだ我が家にあった。
「なんかあの担当者、話しにならないんだが…」
 電話ぐちけんか腰になったらしい。
「あたりの言うとおりに、事故の状況話したら、『車を運転していたのはあな
たじゃないでしょ』と言われたよ。おまえだって運転してたわけじゃないのに
交渉してるだろ! 条件は同じだ! っと言ってやった」
 正論である。車の持ち主である父親が、代理に交渉して何が悪い。
「そんなこというなら、私が交渉するわ。明日から夏休みだし」
 検死官をしている天保は、夏には毎年長期休暇を取る。事件があれば出勤し
なければならないが。
 次の日、父親と一緒に、いつものスズキディーラーへとぶつけられた車を運
転していった。
 アクセルを踏めば、シュルシュルシュルとエンジン音がする。
 ブレーキはほとんど効かない。
 さらに、クーラーも入らないのでただでさえいらいらする。
「こ、この車…。修理して直るんだろうか…」
 だれもがそう思うほど、破壊されていた。

 このスズキの会社とは十数年来の付き合いで、すでにこの会社から3台ほど
車を購入していた。
 修理も車検もここに出しているので、お得意様待遇である。
「あらあらあら! 天保ちゃん、また派手にぶつけられたねぇ」
「そうなんですぅ」
「右側の前だから、対向車かなにかが突っ込んできたって感じだけど」
 初老の社長は、破損した部分をじっくりと見ている。
 ボンネットを開けると、運転手席側の前の部分が見事に押し込まれていた。
「交差点を青で直進してたら、対向車が右折してきたんです」
「見通しの悪いところだったの?」
「いえ、四方八方視界が開けてて、とっても広い交差点なんですけど。」
 青信号で直進をしていたら、右折レーンに入ってきた車がスピードも落とさ
ず、天保の目の前で曲がってきた、と説明した。
「相手、相当スピード出てたんじゃない?」
 修理工場の整備士が、車の傷を見ながら言った。
「直りそう?」
 父親が心配そうにボソっと聞いた。
「いやぁ、直して直らないことはないよ。傷は見た目のなおるけど、他がいか
れてたりするかもねぇ。これじゃ…」
 タイヤ付近の傷は、フロント硝子の脇を通り、天井まで亀裂が走っていた。
 良く見ると、タイヤも中に押し込まれて歪んでいる。
「下からみないとなんとも言えないけど、だいたい修理代は40〜50万。パ
ーツ交換してるうちに、他のんとこも変えないといけないくなってくるかもね。
まぁ、それ以上はかかるかな」
 修理代にあと30万ほど足せば、隣に置いてあった最新の新古車が買える。
「保険会社どこ? 明日あたり調査に来る?」
「M井S友K上です。たぶん、明日かなぁ」
 社長は、相手の保険会社を聞いくと渋い顔をした。
「あそこはたち悪いからねぇ…。絶対、10:0にしない会社だ。噂では追突
事故でさえ、10:0にしないみたいよ」
「うげ…」
「良くて9:0かな。あっちは絶対0にしないらしいから、自分が0になった
ら落しどころだね」
 相当、あくどい会社らしい。
「自分の保険使わなくて正解」
 保険会社同士だと、どんなに過失がなくても8:2にされてしまうという。
痛むのは契約者の財布だけで、保険会社にはなんの損失もないから、そうなっ
てしまうんだそうだ。
 そして最後に社長はこう言った。
「それにしても、よくここまでこの車を運転してこれたねぇ。無事ついて本当
によかった」
 そうだよなぁ。婦警さんも『レッカー呼ぼうか?』って心配したぐらいだ。
 その車の傷のひどさは誰がみても分かる。
 父親は新車のパンフをいっぱいもらって、ほくほくしていた。


 翌日。
「なんだあのボロいマニュアルの軽自動車は。」
 天保の兄、松岡夢路(めろ)が、お盆ということもあってか、帰省してきた。
「んー代車〜」
「セルボはどうした?!」
「ぶつけられた。」
「またか…」
「またってどういうこと?! 事故はこれがはじめてよ!」
「いや、あのセルボ。有栖も水晶も俺も事故られてるんだ。」
「?!」
 天保は4人兄弟(4つ子)の一番下で、3人の兄がいた。
 一番上の有栖は、突然、前を走っていた車がバックしてきてぶつけられたと
いう。二番目の夢路は、信号がない交差点で、右から来た車が一時停止しなかっ
たため、右の後ろを追突された。三番目の水晶は、私有地の駐車場から出る道
で、突っ込んできた車と衝突した。
「あの車、事故られ車なんだ…」
 水晶の事故以外は、全部10:0で解決しているという。
「色的に見にくいんじゃないか?」
 ダークなネズミ色というか、アスファルト色というか。
 夕方5時少し手前に、保険会社から電話がかかってきた。
「M井S友K上の新井と申します」
 声の主は、いかにも若く、新人っぽい。
「本日、車の調査の担当者から報告いただきまして、修理代の試算額がでまし
た。」
 こういう、いかにも切ったあとに苦情の電話をかけなおしそうな交渉事項は、
わざと営業時間ぎりぎりに電話をするんだろうか。
「修理費は大体、40万ほどとお見積もりさせていただきました。松岡様とし
ては、修理なされるんですよね?」
「いいえ、まだ決めていません。」
「新車を買われるんですか?」
「まだ、なんとも決めていません。新車を買う場合は、当然諸費用を出してい
ただけるんですよね?」
「それはできません。修理するということが大原則ですので。諸費用はうちは
だしませんよ」
 すると、隣で聞き耳を立てていた夢路が「はぁ?!」と大きな声を上げた。
天保はあわてて、シーーーーーーーーッと、兄を威嚇する。
「修理費はいくらかかってもよいので、必ず修理してもらわないと困ります」
 と担当者は言い切った。
「とりあえず、過失割合も決まっていないのに、賠償のことを持ち出されても
家としては、まだなにも決めていませんので。とりあえず過失割合を決めてか
らそういう話しをしてもらわないと」
「ええ。過失割合は8:2ですので。これに納得がいかないようでしたら、調
停でも裁判でもご自由にやってください」
 と、よっぽど裁判がしたいらしい。
 やるならとことんやろうじぇ! と後ろで元検事の夢路が目を輝かせながら
言っている。
「今後の交渉日程ですが、会社がお盆で一週間ほど夏休みになりますので」
 はあああああああああああああああああああああああああああああああ?
 これだから大会社は…。
 この、わけのわからない担当者新井さんとのバトルは、夏休み明けに行うこ
ととなった。

                             《つづく》
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            「密やかな花・4」
                           by瀬乃美智子

魔族たちの成せる業は人の考えの及ばぬほどに多いもの。
しかしそんな彼らであっても成す事が出来ない事もあった。
それはすなわち、人間が最も欲する不老不死の体を与える事…そのもの。

簡単であって難しい。
時を止めればその人間は動く事も叶わぬ人形と化し。
傷ついてもいくらでも再生する体を与えても、老いる事は止められぬ。

天界が支配する寿命…命ばかりは、魔界の者にはどうにもできぬテリトリーで
あった。
たったひとり、――イグルーツが所有するその秘宝を除けば。

魔界でたった一人だけ、イグルーツだけが所有するという伝説の命の宿る花―
― ベルベットロウズ。
その花を一輪口にすれば人は10年分の寿命を手に入れるという。
老いぬまま、その姿のまま、10年分の命が手に入るという伝説の花。

魔族の中でも…いや、魔王の中でも決して巨大な力を持っているわけでもなく、
さりとて後ろ盾もなく、仲間を持つ器用さも持たぬ彼が今の地位を維持できる
のは、一重にこの花を所有しているからだと言われている。

どんなに気に食わない相手でも、人間たちが欲する寿命を与えてやるには、彼
が持っている命の花を売ってもらわねばならぬのだから。


今まさに病床の床にある王カウネルも、そんなイグルーツの恩恵を手にした一
人であった。
彼が作り出した命の花を口にしたカウネルは未だその効力は続きつづけ、老い
るという事を知らず、二十代半ばの姿をとどめているという。

一体どれだけの花を彼に与えてやったのだと…、貴重な花を惜しげもなく主に
与えたイグルーツに、皆驚いたものだった。
だからこそ、それ程までに惚れぬいた主と大喧嘩をした上に、魔界へ返ってき
てしまった彼に魔界の者たちは大変驚いたのだった。


「おまえはカウネルにベルベットロウズを惜しみなく与えた。…しかし今はそ
れがあだとなし、彼が長い寿命を持ってしまったが為に、お前は他の人間と契
約も出来ずにいる。そうだな?」

確かめるようにオーカーはイグルーツへと語る。
しかし目の前に座るイグルーツは不機嫌に口許を歪めるばかりで、答えようと
はしない。

そんな彼にオーカーは軽く溜め息をつき、契約書を丸め直して懐にしまうと、
再び語りだした。


「…そんな彼でも…、今、死にかかっているのだ」
「なら私には好都合だ。奴が死ねば、契約は消滅する」

オーカーの言葉に、にやりとイグルーツが口許を歪める。
そんな秘密を漏らして、私が付いてゆくと思ったのかと…見下したようなその
笑み。しかしそんな彼に、オーカーは決意と共にお前の思うようなはならない
と告げた。

「カウネルを助ける手助けをしなければ、…あれが死ぬ前に時を封印する」
「っ!」
「そうすれば、カウネルは死なぬまま永遠に生き続ける。彼にとっては死んだ
も同じ事だろう、…しかしお前にとっては違う。彼が真の意味で死なぬ限り、
契約も解けずお前は永遠にカウネルとの契約に縛られるのだ」


オーカーの言葉に、イグルーツはぎりぎりと歯を食いしばる。
そして、公明正大で有名な貴様が、こんな汚い手段を使うとは恐れ入ったと毒
づく。


「…あれを助ける為なら、私は手段を選ばない」
「―――…っ。」

オーカーの決意を秘めた声音に、イグルーツはただ黙するだけであった…。




「…あれは今でも私を起こっているのだよ」
「は?」

王カウネルの言葉に、侍女は尋ね返す。
あれとは一体どなたの事ですかと…。

「ああ、あれとはね、イグルーツの事だ」


まおえたちがまだ生まれるずっと以前に、私に使えてくれた魔族なのだとカウ
ネルは笑って言った。
その目許は懐かしむように細められていて、決してイグルーツに対する恐怖や
嫌悪に歪められる事はなかった。

「かれは私の『過去』だ。ひどく冷たく、…人を人とも思っていなかった私の
過去そのもの」

その目元が少しだけ哀しそうに影を落とす。
そんなカウネルに、侍女は、王の限ってそんな事…と、慈悲深い事で諸国に知
れ渡っている王の言葉を否定する。


「いや、そうであったのだよ過去は。――イグルーツは…きっと私を許さぬだ
ろう」

少し寂しげに語る王は、しかしそれでよいのだという表情で、遠い魔界―――
オーカーが迎えに行ったであろう金髪の魔王…イグルーツに想いを馳せるので
あった…。




「馬車を出せ」
オーカーの言葉に、牛車にうづくまっていた配下の魔物が、軽い鞭の一振りと
共に馬車をゆるやかに発車させる。
オーカーの前の席には変わらずイグルーツが腰掛けており、勝手に人間界の主
の下へと向かう彼に腹を立てながらも、無理矢理馬車から降りる気配もなかっ
た。

「これから、カウネルの元へと向かう」
「―――――…。」
「イグルーツ。お前にはそこで、カウネルに対峙してもらう事となるぞ」

オーカーの真剣な声が、狭い馬車の中に厳かに響き渡っていったのであった…。


                               《続く》
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あとがき
ああ、もう朝の3時だ―――っ!Σ( ̄□ ̄;) 
と焦りつつ、でも発行しちゃうのでした♪
よーし、明日も会社がんばるぞv 皆様も元気にお励み下さいね♪

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2003/9/18 67号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
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