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======================================================================== ━┓→ N┃→ 仮想力線電磁気学 ━┛→ ======================================================================== ------------------------------------------------------------------------ ●第10回 概要(その10) ------------------------------------------------------------------------ 当メールマガジンを御購読いただき、誠にありがとうございます。 今回から、場の実在性に関する説明をします。 **************************************** 33.近接作用と場 **************************************** マックスウェル電磁気学のような近接作用理論の場合、空間が重要な役割を果た します。 空間は、作用を伝える担い手とされます。 そこで、『場』という概念が出てきます。 『場』とは、簡単に言ってしまえば、空間の緊張状態のことです。 たとえば、電荷Aから電荷Bへ作用が及ぶ現象では、まず電荷Aによって空間が 電磁気的に緊張し、それによって電荷Bが空間から作用を受けると考えます。 この空間の緊張状態が『場』というわけです。 近接作用では、場は実在性あるものとされます。 **************************************** 34.遠隔作用と場 **************************************** これに対し、遠隔作用では、空間自体は、何の役割も果たしません。 このため、場は実在性あるものとはされず、あくまで『見かけ上のもの』、『仮 想的なもの』とされます。 見かけ上や仮想的にとはいえ、空間が何の役割も果たさないのに、なぜ場という 概念を認めるのかというと、繁雑な多体問題を単純化することができて便利だか らです。 とはいえ、近接作用があらゆる場を認めるのに対し、遠隔作用では、基本的には 以下の二種類しか認めません。 1.電荷(磁荷)の存在によって生じる電場(磁場) 2.電荷の運動(電流)によって生じる磁場 これ以外の電磁場は、仮想的にすら価値を認めません。 電磁誘導やローレンツ力のような、磁場から電荷が受ける電気力については、そ の作用を受ける電荷にとってだけ、(電)場は仮想する価値があります。 そうした電荷が存在しない場合は、仮想する価値がないとされます。 これは電磁気作用の特徴から、帰納的に導かれることです。 **************************************** 35.場は力に他ならない **************************************** では、なぜ、そのような考え方が可能なのでしょうか? それは、遠隔作用では、場は単位量あたりに働く力に他ならないとされているか らです。 たとえば、電場や磁場を表す概念として、それぞれ、『電界』と『磁界』があり ますが、これらは要するに、『単位電荷(磁荷)あたりに働く電気力(磁力)』 に他なりません。 わかりやすい例として、電荷qが、電界Eの場において、電気力Fを受ける場合、 F = q・E から、 E = F / q となり、まさに単位電荷あたりに働く電気力となります。 磁界についても同様です。 **************************************** 36.重ね合わせの理 **************************************** 遠隔作用で場を考える際に注意しなければならないのは、重ね合わせの理が成り 立たないことです。 もちろん、静的つりあいの問題のように、問題の種類によっては、結果的に成り 立つ場合もありますが、一般的には成り立ちません。 たとえば、今、二つの電荷があって、一方が(相対的に)静止しており、もう一 方が(相対的に)運動している場合、これらの電荷によって生じる電場を重ね合 わせてはなりません。 というのは、電荷が運動すると磁場が誘導によって生じ、さらにその磁場から電 荷が電気力を受けることがあるからです。 電場を重ね合わせてしまうと、こうした誘導によって生じる電磁気作用を算出で きなくなってしまいます。 こうしたことから、重ね合わせの理は成り立たないことになるのです。 **************************************** 37.疑似近接作用と場 **************************************** 遠隔作用でも、疑似近接作用、すなわち、仮想エーテルによる近似が可能な問題 については、近接作用の問題に置き換えて考えることができます。 そして、この場合、場についても、近接作用と同様に、実在性あるものとするこ とができます。 近接作用の場合、連鎖反応的に、電磁場から新たな電磁場が次々と誘導されてい くことを、以前(第5回に)説明しました。 これは、近接作用では、場が実在性あるものとされているから可能なことなので す。 一方、疑似近接作用では、全空間の全物質(を構成する荷電粒子)が疑似エーテ ルとなって、作用が伝わります。 この疑似エーテルと等価の働きをするものとして、作用を及ぼす物体と及ぼされ る物体の途中の空間に仮想された疑似エーテルが、仮想エーテルです。 仮想エーテルは、本当は実在しないものです。 このため、見かけ上は、近接作用のごとく、(何もない)空間で、電磁場が次々 と連鎖反応的に誘導しているように見えるわけです。 こういうわけで、近接作用の問題に置き換えることができるわけです。 しかし、注意しなくてはならないのは、疑似近接作用は、本来、遠隔作用であっ て、本当の近接作用ではない、ということです。 すでに述べたように、仮想エーテルも、本当は実在しないものです。 ですから、場も、本当は実在性のないものなのです。 このように、疑似近接作用は、近接作用と全く同じというわけではないのです。 疑似近接作用(や仮想エーテル)という概念は、あくまで問題を単純化するため のテクニックにすぎず、実像を描くものではないのです。 こうしたことから、疑似近接作用における『場の実在性』は、近接作用とも、遠 隔作用とも異なる考え方をしなければならないことがあります。 つまり、ある時は場を実在性あるものとし、また、ある時は場を実在性のないも のとするという、一見、恣意的で御都合主義的とも受けとめられかねないところ があります。 こうした事情も、疑似近接作用が、本当の近接作用ではないことを知れば、十分 理解できると思います。 ======================================================================== 発行者 : tarkun(たーくん) mailto:tarkun2@yahoo.co.jp 配信 : MailuX http://www.mailux.com/ バックナンバーの閲覧、購読の解除、配信先の変更は、下記のHPへ。 http://www.f8.dion.ne.jp/~tarkun/mm/mailux.htm 購読の解除や、配信先の変更は、御自分でお願いします。 ======================================================================== |