メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』  2003/07/02


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月刊小説メールマガジン         2003年7月1日 発行(でも遅れた)
『君が好き!』   増刊号vol.38
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 こんにちわ、篠原です。
暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。
篠原はすでに夏ばてばてで、ばてばて〜
クーラー病なのでクーラーは使えず、扇風機でも鳥肌立ちまくりで(゜ロ゜ ;)!?
 ビールが美味しいです。


 8月16日(土)西地区 ほ−21a  君が好き! ですぅ。


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増刊号 今月のラインナップ  
●愛の寸劇劇場 【ちょっとおかしな二人の話《背負うもの編》】瀬乃美智子
●『聖獣戦記』第9章 篠原美姫緒
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     【ちょっとおかしな二人の話《背負うもの編》】
                           by瀬乃美智子

ふっと目を覚ますと、そこにはまだ見慣れぬ天井。

体が覚醒するまで少し待ったあと、慣れた目が映し出したのは自分が横たわる
ソファーとクッションの海。

そこが最近通いだした彼女の家だと思い出したレイモンドはああ、また眠って
しまったのかと苦笑した。
しつこいようだが自分は力の使いすぎですぐに眠くなってしまうのだ。
だから、こうして眠ってしまう度に以前付き合っていた彼女たちを怒らせ、あ
きれさせてきたのだが…。


「あら、起きちゃいました?」

傍らから響いてきた声に、レイモンドは顔を傾けて声の主を見上げる。
対のソファーに座ったカミアは、にっこりと微笑んだ。

「よく眠ってたのに」

もう少し寝ていてもいいんですよという雰囲気の彼女に、レイモンドはほっと
息を抜く。
変わってはいるが、何よりありのままの自分を受け入れてくれる彼女。

「何してる――…っ。」

のと、訪ねかけたレイモンドの唇が止まる。
自分へニコニコと微笑みかける彼女の手には、黒光りするライフル銃。
その笑顔と変わらぬほどに磨き上げられたぴかぴかの銃は、カミアの自慢の愛
用品であった。

「…銃の手入れ?」

やや言葉に詰まりながらも問い掛けたレイモンドに、ええ、とカミアは至極当
然のようにうなずいた。

「君は…本当に熱心だねぇ」

半ばあきれ返りながら、レイモンドは体を起こす。
カミアは、暇さえあれば銃の手入れをし、その手の情報収集にも余念がない。
少なからずも予知家業に没頭しがちなレイモンドでさえ、舌を巻くほどの熱心
ぶりだった。

「…いつみても熱心だねぇ」

思わずレイモンドの口を言葉がついた。

珍しいとは思っても、今までさして気にしてこなかった彼女の職業だが、冷静
に見れば狙撃手というのはなかなかに大変な職業なはずだ。
銃を撃つことが大好きな彼女でも、それを仕事にするとなれば、嫌になる事も
あるだろう。
それでもここまで熱心になれるのだ、余程好きに違いない。

しかし、レイモンドの何の気なしに投げかけた言葉に、カミアはにっこり笑っ
て答え返した。

「それはそうですよ、私の腕に人の命がかかつているんですから」

その言葉に、レイモンドの心はびくりと震える。

「そっ、そうだね。きみが行く現場には、助けを求める人質がいるんだものね」
「私の腕にかかっているのは、人質の命ばかりではないですよ?犯人の命だっ
てかかってます」

カミアは、銃を磨き上げながら至極当然のように言う。

「1度はチャンスがあるものだから。そのチャンスに、私は彼らの銃や撃ちぬ
いても大丈夫な場所を狙撃するんです。でも、もしそれに失敗したら、次は彼
らを殺すしかないから。…だから、私は腕を磨くんです。私は人を殺したくは
ないから」

カミアの言葉に、レイモンドは何も言えず彼女の顔を見つめ続ける。
いつも、笑ってばかりで…好きなことを出来て、幸せな人だなと思っていた彼
女。
こんなにも、はっきりとした考えを持っているのだと知って、レイモンドは途
端にこの場から逃げ出したくなっていた。自分がこの場にいる事が、相応しく
はないのではないかという不安感。


「レイモンドさんは、今のお仕事お好きですか?」

カミアに訪ねられて、はっと我に返る。
レイモンドは少し言葉に詰まった後、決して大きくはない声で語りだした。

「私は、父の元から飛び出して…。」


東国の国の大家から、飛び出し、異国に国に来た父。
その父は占い師としては偉大な人で、予言通り母と知り合った父は、母と結ば
れ兄と自分を天より授かった。

なのに、父が占いの全てを伝授したのは兄ばかりで、同じく占い師としての能
力の開花の兆しを見せていた自分には見向きもしなかった。
どうしてですかと尋ねれば、父の答えは「お前は占い師には向かぬ」だった…。


「家を飛び出して、占い師として成功し、父を見返してやりたかったんだ。だ
からこうして私は…。」

占いというより、この地の人間はそれを予知夢という言い方をするらしいが、
そんな言葉の違いなど問題ではない。
要は、自分の事を父にどれだけ認めさせるかという事。
しかし、ある程度の成功を収めたといえる今、自分は、まだ父に連絡をとれず
にいる。


「…何故ですか?」

カミアの問いに、レイモンドは苦く笑った。

今まで何千と繰り返してきた未来視。
でもそれは父や兄を見返してやりたいと思ってこなしてきただけのそれで、彼
女のように、強い信念や愛情から来るものでもなんでもない。

自分は何をやっているのだろうと…、押しつぶされそうになるのを必死に耐え
る。
彼女のように、胸をはって仕事について語れるものがないのだと…、今更なが
らに思い知らされる。


「でも、レイモンドさんの予知能力がお父様譲りなら、私お父様に感謝しなく
ちゃですよねぇ」

重苦しい雰囲気を消し飛ばすように微笑む彼女に、レイモンドはどうしてだい
とかろうじて相槌を打った。

「あらだって…。」

カミアは手の中の銃をしまいながら、笑って見せた。

「だって、そうでなければ、あの日、私はレイモンドさんの病室に入れてもら
えたりなどしなかったの。私を将来のお嫁さんだと言え事だって分かっていた
からこそ、あなたは私を病室に呼んでくれたんでしょう? 私はこの奇跡に感
謝しなくちゃ」

上機嫌に微笑む彼女に、そえか…、そうだねぇとレイモンドは答えた。

あの時、…彼女の銃で撃たれたあの時。
自分は彼女に撃たれる事も、彼女が自分と結ばれる運命である事も知っていた。
だからこそ…、でも…。


「未来が分かってしまうのは、つまらないとは思わないかい?」
「そういう時は、そのまた先にとんでもないことが待っているんだと思う事に
してるんです」
「でも私には、そのまた先も分かってしまうんだっ!!」

レイモンドの声を荒げた答えに、カミアは一瞬言葉を飲んだ。

そしてそれから…、静かにそっと口を開いたのであった。

「では…、あなたがそんなにも苦しいというのなら、あなたはそのお仕事をや
めた方がいいと思う。 お父様への想いはあっても、それでも、あなたはもう
過去を振り向かずに自分が行くべき道を探し直すべきなのだわ」

カミアの言葉に、レイモンドはソファーから身を離すと、力なくカミアの素へ
と膝をついた。

「でも…、私は見る事を止められないんだ。自分では制御が出来ない!――父
上がいったとおり、俺は未来視には向いてないんだよ!」

見たくはなくても流れ込んでくる他人の未来。
寝ているのかおきているのか分からなくなって、自分と他人の未来までも見分
けがつかなくなっていって…。
自分がどれだけ弱ってきているのかも分かるのに、それを止めるすべすら知ら
ぬ自分。
だから、この道しか生きる道はないんだよと!…レイモンドはカミアにすがる
ように訴えていた。

「だとしたら…。」

カミアは少し考えた後、静かに、レイモンドの頭を撫で上げながら呟いた。

「その道が辛いなら、それでもあなたはそこから抜け出す道を探し出すべきだ
わレイモンドさん。それこそ、あなたの力を総動員とてでもね」

カミアの真剣な答えに、レイモンドは彼女を抱き寄せると強く、強く抱きしめ
た。
どうかこの彼女の強い信念が、自分にも宿ってくれますように…と…。


                                                        《おわり》


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      『聖獣戦記』            篠原美姫緒

   第九章 聖戦


「きた!!」
 オーカスと毅彦は同時に感じた。
 
 玄武が呼んでいる

 毅彦は、カレリニオとユイを連れて玄武の眠る魔法陣の前にやってきた。
 まるで生きているかのように鼓動を打つ魔法陣のまえに、ユイは生唾を飲み
込んだ。
 遅れること少し、オーカスも魔法陣の前にやってきた。

「見物人は多いほうがいい」
 毅彦はオーカスを見て、ニヤリと笑みを浮かべる。
「いやっ!」
 ユイは、声を上げてカレリニオにしがみついた。
 オーカスは、ユイとカレリニオの二人を見て首をかしげる。
「この娘、どこかで…」
「聖獣ラムウの娘だそうだ。巷では水境上人と呼ばれていたらしいがな」
「なに?!」
 自分が追いかけていた、あの水境上人の娘とここで出会えるとは。

 いやああああああああ 
 カレリニオ、助けて…

 ユイの必死の心の叫びは、カレリニオの心に届いたのか、ユイを抱きしめる
腕に力が入る。

「ラムウの娘であるなら、お前も聖獣?」
「わ、私は…。私も…。」
 ユイは一息いれてから、大声で叫んだ。
「わたしが本物のティーアよ!」
「クククククク。混血ってやつか。通りで聖獣臭いわけだ。俺らとは桁違いの
純粋ティーアか」
「どういうことだ?」
「大方、父親が聖獣で母親が人間ってことだろう」
 がたがた震えるユイにかわって、毅彦が代弁をした。
「そんなばかな! ティーアと人間では子供は生まれない!」
「ティーアと人間では生まれないが、聖獣と人間では生まれるのでは?」
 毅彦の挑発的な態度に、オーカスは怒りを感じていた。
「さてと、おしゃべりはおしまいだ。さあ、カレリニオ!」
 毅彦は、カレリニオを手招きした。
「嫌だ! 僕は鍵なんかじゃない!」
 すると、鳳凰がカレリニオに飛びかかった。
 片手で追い払おうとするが、鳳凰の羽の炎が熱く感じ、思わずユイを離して
しまった。
 すかさず鳳凰は、カレリニオの服の背中をつかみ、魔法陣へと運んでいく。

 が…

「やめてえええええええええええええええええええ」
「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 男女の大きな声が、城の中にこだまする。
「なに?!」
 オーカスの衣服は破られ、手足は足になり、馬のようで白い体、黒い尾、一
本角、虎の牙と爪があらわれた。その姿はまさに
「ハイン!」
 乙女のみに心を許すという一角獣。そう、聖獣ユニコーンであるハインの元
の姿であった。
「オーカス将軍は、ハインを喰らったのか?!」
 カレリニオは、隙をついて鳳凰の払い、地面に落ちた。
「ハインが、自分の命と引き換えに、オーカス将軍の中で生きることを選んだ
んだ…」
「ははははははははははは!」
 声高らか毅彦は笑う。
「おもしろい!」
「何が面白いんだ!」
 オーカスは、毅彦めがけて突進した。
 毅彦は避けようともせず、ユニコーンの角の餌食となった。
 角は、確実に毅彦の心臓を貫き、毅彦が刺さった角を振り回すと、魔法陣の
中へと、振り飛ばした。
 だが、毅彦は生きている。
「俺は死なない。」

 なんだ。そうだったのか。

 毅彦は、指をさした。
「ユイ。玄武が呼んでるぞ」
 魔法陣に落ちて、魔法陣の言葉が理解できたのだろう。
 玄武の封印を解く鍵は、他でもないユイ自身だった。


                              《続く》

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 あとがき
 新刊の予感♪
 っといいつつ、毎回毎回(以下略)
飲みすぎはほどほどにしましょ〜


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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2003/7/1 増刊号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
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 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
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