メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2003/6/16  2003/06/16


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月刊小説メールマガジン         2003年6月15日 発行
『君が好き!』  vol.61
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ゲホゴホゴホゴホっ(>o<) 皆様こんにちは遅くなりましてすみません(汗)
何だか先月も同じ事を言っておりましたが、あのまま咳だけがずっと止まらな
いのです(汗)
季節の変わり目、皆様もお体だけは充分にお気をつけ下さいね♪

(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼君が御世に・18          篠原美姫緒
▼密やかな花・02         瀬乃美智子
▼あとがき
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              君が御世に18
                          篠原美姫緒

 夏も過ぎ、月明かりが美しく映える秋。
 山々は色付き始め、紅葉のたよりも一緒にやってくる。

 どこどこの誰々が車を出すからと、女房がたも誘われては、紅葉を楽しむ。
 無論、平家の公達が紅葉狩りをやるとなると、それはもう誘われた女房たち
は、気合を入れて化粧をし、着て行く服選びにも気合が入る。

 笙子は、少し心苦しい。

「叔父上のお付き合いだから」
 と資盛はいうが、重衡の催す行事には、必ず面子に入っているのだ。いくら
恋人同士とはいえ、他の御殿の女房かたと宴を一緒に…。となれば、心揺らぐ。
 忙しく、なかなか暇の取れない資盛ではあるが、こういう宴も仕事のうちだ
と、女は割り切らなければならない。
「宴も仕事…」
 今宵は中宮もお上の側で過ごすことになり、宿直の笙子は月明かりに誘われ
て筝を奏でる。
「あら、右京さま。今宵は番ですのね。」
 仲良しの女房が声をかけてきた。
「まあ、按察さま。紅葉狩りでは?」
「行きませんわ。八条院の女房かたとは相に合いませんの。って、今日はたし
か資盛さまも紅葉狩りへご一緒のはず…」
「ええ」
「こんな、番なんてしていないで一緒に行けばよかったのに!」
「そうはいわれても…」
「まったく、重衡さまもお人が悪い。今度言っておかなくては」
「そ、そこまでしなくても…」
「右京さま。甘いですわ!」

 平安の世の色恋沙汰は、日常茶飯事。
 昨日は誰と誰が契りを結んだとか、昨日と今日で契りを結んだ女が違うとか。

「資盛さまを狙っている女房方は多くてよ。」
「ああ、やっぱり…そうなのね。。。」
「資盛さまは、女子に興味を見せないのよねぇ。というか、ちょっぴり冷たい
感じがして。うかつに近づけない光というのかしら。そこがまた男の魅力とい
うのかしらねぇ。女房かたにはそれがうけて。あらどうしたの、右京さま。きょ
とんとして」
 按察の話しを聞いていた笙子は、少し驚いた顔をしていた。
「い、いえ。なんでもありません」
 微笑むように言った。
「あら、何その笑みは。なんか私はおかしいことをいいました?!」
「いえいえ、なんでもないって」
 
 少年のように甘えてくる資盛の姿を知っているのは私だけ

 ちょっとした優越感に心が満たされる。が、もしかしたら自分以外にもそう
いう姿を見せている女子がいるかもしれない。

 翌朝、というより、もう昼を過ぎてから笙子は目を覚ました。
 すると維盛の北の方建春門院新大納言から紅葉の枝が届けられてた。
「まあ、綺麗〜」
 青紅葉の薄葉に

 君ゆゑはをしき軒端のもみぢばもをしからでこそかくたをりつれ

 と歌が添えてあった。
 返しは紅の薄葉に、

 われゆゑに君が降りけるもみぢこそなべての色に色そへて見れ

 としたためた。
 と、今度は平忠度から、見事なまでの紅葉の一枝が届けられた。西山の紅葉
を見たという。

 君に思ひ深きみ山のもみぢ葉をあらしのひまに折りぞしらする

 昨晩、紅葉を見にいくことができなかった笙子のために、わざわざ枝を折っ
て君にぜひ見てもらいたいという。
 返しは

 おぼつかなをりこそ知らね誰に思ひふかきみ山のもみぢなるらむ

 資盛の恋人であるということは、平家の公達はもちろん、中宮や維盛の正妻
なども公認の仲である。
 憧れの方々が自分を気に留めてくれているのをとても嬉しく思った。


                             《つづく》
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            「密やかな花・2」

                           by瀬乃美智子
密やかな花・2


「ほ、本気なのか!?」

近衛隊長の言葉に、オーカーは軽くうなずくのみで答える。
あきれ返る彼を残し、オーカーは歩を進めた。


廊下の突き当たり…、オーカーの背の3倍はあろうかという大扉を片手の動き
一つで開け放つ。

ざわりと…。
部屋の空気がざわめいた。

部屋の中にいたのは数名の魔王たち。
元よりこの部屋の存在意義は、この館の中でも帝王に謁見を求める魔王たちの
控え室。


並み居る魔王たちは、ある者はオーカーに軽く頭を垂れ、ある者は無視を決め
込み反目する。

そして今、オーカーが訪ねようとしている魔王イグルーツは―――部屋の最奥
へその身を置き、どの魔王たちも寄せ付けぬ孤独さを身にまとった男であった。

その淡い金色の髪とは対照に、その目許はきつくオーカーを睨み上げる。
外見齢はオーカーよりやや若いだろうか?
まだ若々しさが残る面立ちは少々きつさが目立っていた。

…常ならばそんな彼を刺激せぬよう、穏やかに通り過ぎるオーカーだが、今日
は違う。
彼の目的はイグルーツ自身であり、その足は迷わず彼へと向かっていた。


まずいところにいらしたと…、最初はその2人の魔王の鉢合わせにざわついた
室内だが、オーカーの足がイグルーツの元へ近づくにつれざわめきは増してい
った。


並み居る魔王たちは全てオーカーへと道を空け、イグルーツとオーカーの間に
は目に見えぬ道が出来る。
相手が自分に向かって歩いているのだと悟ったイグルーツは、腰掛けていたア
ンティークの椅子の上で姿勢を起こした。

程なくオーカーは彼の元へと到着し、その高い身長からイグルーツを見下ろし
た。

「イグルーツ、謁見はもう済んだのか?」
「…そんな事、貴様には関係がないだろう」

冷たく返ってきた言葉に、オーカーは心の中で軽く溜め息をつく。
彼自身も全ての魔王とうまくやっているわけではないが、ここまで敵意を露に
され、…また、オーカー自身も苦手とする人物は彼ぐらいなものだった。


彼の番は次ですよという周囲からの小さな声に、オーカーは視線だけで礼を言
う。
そして、もしよろしければ待ったせてもらいたいというオーカーの言葉に、イ
グルーツは私の方には用がないと軽く抵抗の意を現す。

「…私の方に用事があるのだ」
「――…っ。」


どうやらオーカーの方に引く気がないことをイグルーツは悟ったのだろう。
良くも悪くも名を呼ばれたイグルーツは、席を立つ。

わずかな距離で2人が並んでみれば、イグルーツはやや小柄な体系である事が
よく分かる。
オーカーのがっしりはしているがすっきり整った体系に比べ、標準並みの体系
の彼は、そのきつい面立ちとその身を包む漆黒のローブさえなければ、やや迫
力負けしてしまうに違いない。


「待っている…。」

オーカーの言葉に、イグルーツは彼をねめつれながらも謁見室への扉の向こう
へとその姿を消していったのであった。



「…っ。」

やはり緊張していたのか…、普段の落ち着き払った彼らしくなく、ほっと息を
抜いたオーカーは、先程までイグルーツが座っていた椅子の対の椅子へと腰を
下ろす。
ここで、彼を待つつもりであった。


そんな彼を見て、謁見が終わった後もまだ部屋に留まっていた魔王の何人かは
部屋を後にする。
この後の2人の事が気にならなくもなかったが、相手があの気難しがり屋のイ
グルーツなだけに、巻き込まれるのはまっぴらでごめんあった。


廊下に出た彼らは、口々に2人のことを噂しあう。


「一体、オーカー様もあのイグルーツに何の用があるものか…。」
「そうそう。あの2人の仲の悪さ…、いや、イグルーツのオーカー嫌いは魔界
では知らぬ者はいないというのに」

「大体、そもそもなんだってイグルーツの奴はあんなにオーカー様の事を毛嫌
いしているんだ」
「おや、お前知らぬのか?」


ひとりの新参魔王の言葉に、古株の魔王たちは口をそろえて囁きあう。
噂話とは、魔界の者にとっても蜜の味らしい…。



「イグルーツは今でこそ人と契約を結ばないが、かつてたった一人、契約を結
び、使えた人間がおったのさ」
「しかし、その人間と奴はうまくいかなくてな。…それで契約を破棄された」
「――その後釜に座ったのがオーカーさ。イグルーツのやつは面白くない」

「しかしそれならば、ただの逆恨みではないか」

その通りよ!
古株の魔王たちは声をひそめて笑いあう。


「しかし、その事はオーカー殿も承知の上。少なくとも、奴が生きているうち
は、イグルーツの逆恨みも溶けまいて」
「…まだ生きているのか?」

新参者の言葉に、古株たちはうなづいた。

「大国ハマドヤルワ王国 真昼の古城を統べる王 カウネル=ハマイヤードは
まだ存命ぞ?」

                               《続く》
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あとがき
あ、そうそう。コミックマーケット・夏ですが、当サイトが運営しております
サークル「君が好き!」は当選いたしました♪
スペースナンバーは 8/16(土)『ほ-21a』です。
今回はなんと…、『サークル開設15周年』という事でかなりおめでたい年!
イベントに参加される皆様がいらっしゃいましたら、どうぞお立ち寄り下さい
ね^^

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2003/6/15 61号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
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