メルマガ:週刊フランスのWEB
タイトル:hebdofrance 16062003  2003/06/16


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                              Davide Yoshi TANABE
                                 vous presente

              ≪週刊フランスのWEB≫
                    第176号
                                          Tokio, le 16 juin 2003

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Index (目次)
        1.天使
        2.ファイアンス
        3.ホタル
        4.シャンソン ピアフ 「恋するってとても素敵」
        5.あとがき

フランス語のサイトの文字化けは
表示>エンコード>西ヨーロッパ言語の順で選択すれば修正することができま
す。

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1.Ange
  http://www.ville-caen.fr/mba/AngeGardien.htm

 サイトは、17世紀のイタリアの画家ポッツォAndrea Pozzo (1642 - 1703)の
「守護天使 Ange gardien」である。フランスではポゾ神父le pere Pozzoとも呼
ばれているジェズイット派の宗教人だが、画家であり建築家である。生まれは
Trento(フランス語でTrente)だから、北イタリアだが、ハプスブルグに支配さ
れた時期もかなり長く現在もオーストリアの面影が残る。たまたま僕の先生が当
地で学会があって来ていたときに、ルガノから会いに行ったことがあるので覚え
ている町である。

 この絵を所蔵しているのはノルマンディーのカーンCaen美術館。

 天使と言った時に、何をイメージするかは人によって様々であろう。フランス
語Angeの語源はギリシャのaggelosで使者という意味のようだ。新旧バイブルに
もコーランにも多数登場する。

 古典的映画では「歎きの天使」、例のデートリッヒMarlene Dietrichが出てい
る作品が有名か。フランス語題名は「Ange bleu」、青い天使。原題はDer Blaue
Engel。古い映画だけれども、ファンも未だ多いのかDVDでも発売されている。こ
れはトマス・マンの兄、ハインリッヒ・マンの小説「Proffesor Unrot」の映画
化。1930年だからナチスが台頭して来た頃のドイツ映画である。主人公のギムナ
ジウム(リセ)の先生の名前はRoth。Proffessor Unrotとは「堕落先生」といっ
た意味らしいから、UnrotとRothが懸けられているのかなと思う。映画の題名の
方が、いずれにせよ悩ましい。

 会話が途切れて気まずい沈黙が流れることを「天使が通るUn ange pasee」と
いうが、これは永井荷風の「フランス物語」にもでてきたし、他の明治の作家も
書いていたとおもうので古くから日本に紹介された言葉のようある。

 それよりもパスカルBlaise Pascal(「パンセPensees」のパスカルである)
が、天使と人について書いた有名な言葉の方が面白い。
 「パンセ」第6章にそれはあって、かの有名過ぎる「人は葦(あし)、自然の
最もか弱きものにすぎず、されど考える葦なりL'homme n'est qu'un roseau, le
plus faible de la nature, mais un roseau pensant」と同じ章にある次の言葉
である。
 即ち、「人は天使でも野獣でもないが、不幸にして、天使とならんとする者は
野獣とならんL'homme n'est ni ange ni bete, et le malheur veut que qui
veut faire l'Ange fait la bete」。この翻訳にはいろいろあって、多くの誤解
を日本で生んでいるようである。
 
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2.Faience
  http://www.sarreguemines-museum.com/F_pages/F_moulin.html

 土器、陶器、磁器と土を焼く温度で区別しているようだが、ファイアンスは陶
器になる。食器などで有名なリモージュLimogeは温度の高いポルスレーヌ
procelaineの中心地である。何れも朝鮮半島から日本が習得した技術と同じよう
にフランスはイタリアから技術が輸入された。

 ファイアンスの名はまさにイタリアの町ファエンツァFaenzaから来ている。
Faenzaはボローニャにの南東に位置する小さな都市で、12世紀頃から既に陶磁器
ceramiqueで有名になっており、16世紀にその最盛期を迎えたようである。
ここに「国際陶磁器博物館」Museo Internazionale delle Ceramicheがある。サ
イトは、
http://www.racine.ra.it/micfaenza/index.htm (イタリア語と英語)
代表的作品を見るには Da vedere > Selezione di opereとクリックすると時代
別に作品を見ることができる。「国際」という割にあまり海外の作品が無いよう
であるが、1938年来毎年、1987年からはビエンナーレとして現代陶芸国際コン
クールを催している。今年の第53回コンクールでは、西田潤さん(精華大学大学
院生)が優勝した。その作品の写真があったが、これは、どうも、コメントの仕
様のない前衛的な磁器porcellanaである。ご覧あれ!
http://www.racine.ra.it/micfaenza/premifaenza/2003nishida.htm

 フランスにおけるファイアンスは16世紀に、リヨンLyon、ルアンRouenあたり
から始まるようである。しかし、うわぐすりemail(e-mailではない、エマイ
ユ、エナメル)を使用するこの技術はイランに起こりシルクロードRoute de la
soieを通って東は中国へ、西はスペインに伝わったというから古い技術には違い
ない。

 この項のトップでとりあげたサイトはフランスはモゼルMoselle地方(ドイツ
に接するがドイツではない)の町サルグミーヌSarregueminesにある「陶磁器美
術館」である。フランス最大、いやヨーロッパ最大の陶磁器コレクションを持っ
ていると豪語する。というだけあって、全部見て廻るのに3kmほどほど歩かなけ
ればならないそうである。Manma mia ! サルグミーヌは確かに200年にわたって
陶磁器工業の一大中心地であった。このミュゼでつい6月初めまで、フランスの
作家による楽焼feux rakou展が開催されていた。

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3.lampyre ou ver luisant
  http://www.robert.desnos.online.fr/ver.html

 辞書によればホタルlampyreでも光を放つのはメスだけで、それをとくにver
luisantというのだそうである。verは虫だが、普通、ミミズのことをいうからあ
まりイメージがよくない。luisantは動詞 luire(光る、輝く)からくるのでこ
れはいいとして。もっとも詩と言うフランス語 versと同音ヴェールであるか
ら、ミミズというイメージを打ち消すことも可能であるが。

 ホタルというと日本では詩的で、詩にうたわれているのだけれど、フランスで
はあまりきかないなと、探してみた。

 発見したのが、デスノスRobert Desnos(1900-1945)の詩であった。子供向け
とあったが、このシュールレアリストとして出発した詩人からは想像できないで
あろう、優しいリズムのある詩である。

 デスノスは悲劇の詩人となった。悲劇的詩を書いたということではない。その
人生が、特に終末は悲劇的で、ナチスの犠牲者となって解放前に収容所で亡く
なっている。収容所から妻にあてた有名な手紙で、しかし、決して希望を失って
いないことを表明している。デスノスに待ちうけていた運命を知れば、全くジン
とくる手紙である。その手紙もホタルの詩のあったサイトに収録されている。
http://www.robert.desnos.online.fr/lettre.html

 デスノスの妻ユキYoukiはあの画家レオナール・フジタ(藤田嗣治)の妻で
あった女性である。Youkiの写真が次のサイトにあった。
http://www.thedrunkenboat.com/frdesnos.html
Youkiは日本女性ではない。本名はLucileといって、Youkiはフジタのモデルをし
ていた時につけられた愛称のようである。フジタとYoukiとの破局もドラマ
ティックで、フジタは煙草を買いにいくと家をでたまま、ブラジル行きの船に
乗ってしまったらしい。


 ホタルからデスノスの話になったが、ホタルのもっと科学的なことに興味があ
る方は、たとえば、
http://mapage.noos.fr/naturaliste/html/lampyre.htm
 なお、ホタルver luisantと似た昆虫にlucioleがあるが、これは異なる種類の
昆虫だそうである。仏和辞書ではいずれも蛍となっていたが。
http://mapage.noos.fr/naturaliste/html/lampyre.htm
しかし、どうも蛍の種類を調べてみると、ver luisantもlucioleも何れも蛍科で
あり、その科には100種以上のホタルがあるのだから、あまり厳密に考えること
もないと思いはじめた。

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4.Edith Piaf
  Il fait bon t'aimer
    Paroles: Jacques Plante. Musique: Norbert Glanzberg   1950


Un jour que j'avais du chagrin,
Tu l'as fait voler en eclats.
Prenant mes larmes dans tes mains,
T'as dit : "T'es trop belle pour ces bijoux-la !"
Pour toi, j'ai appris a sourire
Et, des ce jour la, j'ai compris
Qu'on puisse avoir peur de mourir
Quand on connait deja le paradis...

思い悩んでいた日 あなたは私の悩みを吹き飛ばしてくれた 私の涙をあなたの
手の中にとって こういったわね 「美しい君には涙なんか相応しくないよ」 
あなたのお蔭で にっこりすることを教わった あたたにあったその日から 死
ぬのが怖くなった 楽園を知ってしまったから、、、

bijouは宝石、ここでは涙のこと。真珠の涙といいますね。

Il fait si bon t'aimer.
T'as l'air d'etre fait pour ca,
Pour etre blotti, les yeux fermes,
La tete au creux de mes bras.
Ta levre appelle si fort mes baisers.
Je n'ai pas besoin d' me forcer.
J' n'ai qu'a m' laisser bercer
Et tout devient leger.
Il fait si bon t'aimer.

あなたを恋するってとても素敵 あなたってそうさせるみたい かくまわれて 
閉じた目 私の腕のなかに頭をつけて あなたの唇は私の接吻を待ち望む 自分
にいいきかせる必要なんてない 私をゆらせたままにしなければならないだけよ
 すべてが軽くなる あなたを恋するってとても素敵

n'avoir qu'a = avoir seulement a
bercerの意味がちょっとつかめない。berceur(揺りかご)のイメージなのだ
が。

Aupres de toi je n'ai plus peur.
Je me sens trop bien, a l'abri.
T'as ferme la porte au malheur.
Il n'entrera plus, t'es plus fort que lui
Et quand, par les rues, je m'en vais,
Je porte ma voix dans les yeux,
Comme si tes baisers me suivaient
Et que les gens se retournaient sur eux.

あなたの傍らでもう怖くない とってもいい気分 守られて あなたは不幸が
やってこないように戸を閉ざした 不幸は入ってこない あなたは不幸より強い
の そして私が出かける時 私の声を目に持っている あなたの接吻がついてま
わるかのように みんながふりかえってその接吻をみるように

Il fait si bon t'aimer.
T'as l'air d'etre fait pour ca,
Pour etre blotti, les yeux fermes,
La tete au creux de mes bras.
Ta levre appelle si fort mes baisers.
Je n'ai pas besoin d' me forcer.
J' n'ai qu'a m' laisser bercer
Et tout devient leger.
Il fait si bon t'aimer.

あなたを恋するってとても素敵 あなたってそうさせるみたい かくまわれて 
閉じた目 私の腕のなかに頭をつけて あなたの唇は私の接吻を待ち望む 自分
にいいきかせる必要なんてない 私をゆらせたままにしなければならないだけよ
 すべてが軽くなる あなたを恋するってとても素敵

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5.あとがき

 母は先週火曜日午後無事退院しました。ご心配ありがとうございました。

 「タダモノ論」ってわかりますか? 僕は何のことかわからなかったものだか
ら辞書を引いた。「タダモノ論」は辞書になく、ただもの(只者)ならあった。
「あいつはなかなか只者じゃないぞ」という用例にみるような使い方なら、それ
は分かる。
 だが、「タダモノ論的にマック、コカコーラの消費生活を送っている」という
文脈で使われるともう分からない。どうも「唯物(ゆいぶつ)」を「タダモノ」
といいかえたらしい。ただ「もの」だけがあって、人間がいない、主体がないと
いうことを批判する言葉として生まれたらしい。でもこれは、materialismeの訳
語である「唯物」のパロディーで、一般的ではないなぁ。変な日本語としか感じ
られない。このタダモノ論で共産主義なんとか派となんとか派が論争をしたのだ
という。不毛だね。

 湘南科学史懇話会が今月末29日藤沢で開かれる。前回は正直言って余り面白く
なかった。イラク問題と、テーマが生々しかったことと、講師には悪いが新しい
発見がなかったことである。今回は小倉金之助がとりあげられる。小倉は、数
学、科学、社会、歴史、人生を総合的に探求した自由主義者であったそうであ
る。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/shonan/nextprog.htm
本誌読者の諸姉諸兄のみなさん、ご興味があったら是非参加してみてください。
僕は必ず出席します。前回前々回ご出席いただいた方々も懲りずにお見えになっ
てください。


 僕は国立大学法人化に反対であるが、小倉金之助は東北帝国大学に助手として
入ったが、助教授、教授になれなかった。何故か。帝大出身でなかったためとい
われている。日本で始めて女性の学生を受け入れ、日本で始めて小学校しか出て
いなかったといわれた国語学の山田孝雄を教授としてむかえた東北帝国大学です
らである。
 こうした体質は少なからず現在の国立大学にはある。しかし、文部科学省の侍
女にしようとする国立大学法人化は許せない。反対意見広告を新聞に出したが、
参議院で審議中である。今週中にも強行採決されるかもしれない。この反対運動
で不思議なのは、先ず学生が殆ど騒がないことだ。
 1970年代になって学生が大学の主役ではなくなったというのだが、その経過が
わからない。東京大学安田講堂占拠等があった70年代初頭以降、学生は完全に大
学の「お客さん」になったようである。これは、運動に事件があったとしても、
経験として継承されなかったことを示す。事件は点として、バラバラな点として
過去に埋没される。それが線にならない。点の集りとしての面にもならない。だ
から、国立大学だけでなく私立大学にも呼びかける民主主義的運動となっていな
い。連帯がない。
 学生、卒業生よ、教職員よ、もっと僕たちは社会的責任があるのではないか。
今の政府をのさばらせておいて、大学についてだけ連帯することもできまい。国
立大学法人化問題は決して大学人だけの問題ではないのだがなぁ。

 「もう一つの世界は可能だ un autre monde est possible !」というのは単
なるスローガンではない。un autre mondeが何なのかを良く考えないと、次の世
代に禍根を残すことになる。

 僕のインターネットプロヴァイダーffnから報せが来た。帰国以来使っていた
peopleがffnに買収されたのが去年の2月頃である。今度はffnが来年3月でプロ
ヴァイダー・サーヴィスを中止するという。ffnはフジTV参加の企業である。プ
ロヴァイダー間の競争が激しく、この商売が決して儲からないことがはっきりし
てきたから引き上げるのに違いない。アメリカのAOLが大赤字で倒産寸前とも聞
いている。無料プロヴァイダーで有名だったlivedoorも身売りした。プロヴァイ
ダーが寡占化する。次に来るのは値上げか。その前に技術革新でプロヴァイダー
が不要になるか。

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