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物事には、限りがあります。 そして、時空間に規定されない人は、存在致しません。 全ての人に、平等に与えられているかの如く感じられる、唯一の物です。 多津蔵の挑戦は、此の制約を、乗り越えるべく戦いなのです。 言葉を変えれば、伝統の継承です。 日本は、明治以後、洋風化がスタンダードナンバーに成りました。 この事によって、全ての『和』の存在は、根底から変更を余儀なくされました。 日本の様式美が、激しい音をたてて、崩れ去っていきました。 此れと同時に、工芸の匠も、衰微を始めたのです。 今では、消えかかった小さな燈しか、残っていません。 多津蔵は、百年続く、組紐屋の挑戦なのです。 伝統の継承に留まるのではなく、新しい暮らし向きを提案し、形にしていきたいのです。 では、どんな具合にやるのか? 此の一点に、興味が集まります。 答えは、『地域の方の、内的な力を引き出して、物作りを形成する。』です。 多津蔵が存在する場所は、過疎の高齢化を迎えた町です。 此の町が、町の活性化に取り組んでいます。 多津蔵は、此の活性化の、期待の星?なのです。 それ故に、活性化の処方箋を書かなくては成りません。 其の処方箋が、『引き出す』なのです。 工芸の復興と継承を掲げて、其の実現の手法としての過疎地での取り組みなのです。 そんな事が出来るのか?と、お思いの方が多い事でしょう。 疑問には、敢えて反論は致しません。 多津蔵の生きざまで、お答えしたいと、考えるからです。 多津蔵は、此の春から、始まったばかりです。 未だ、よちよち歩きの、心配が一杯の、”工房”です。 そんな多津蔵が、地域の方々の力を頂き、手仕事が始まっています。 素晴らしいスピードの足取りです。 でも、此処で、慌ててはいけません。 ゆっくり、ゆったり、そして、のんびりと進みます。 地元の方々の足取りに、寄り添いながら、多津蔵は歩みます。 |