メルマガ:堤のノンフィクション物語
タイトル:私がPTSDになった訳-第7章弟-  2003/05/15


第7章 弟

 弟とは相変わらず仲が悪い。
 何が理由なのか、すぐキレて殴ってくるし、蹴ってくる。(もちろんやり返すが)キレ
るスイッチが分からないので、できるだけ話したくない。
 そのため無視しているのだが、何もなかったように話しかけてくるので仕方なく話す。
 そのたび私は怒らせないように気を使っていた。
 そして、喧嘩するたび本人の前では泣きたくないので、我慢して自分の部屋へ行き泣く
のだった。
「死にたい…死にたい…誰か私を殺して…」
そう毎回泣きながら思うのだ。
 たとえ憎い弟でも人は人、人を殺すなんて私にはできない。だから自分を殺してほしい
と願うのだ。
 喧嘩も私が相手をしなければ起こらなかったのかもしれない。でもあいつにだけは…弟
にだけは負けたくなかった。だから必死でやり返したし殺すつもりで歯向かった。
 小中学校ではほかの友達も兄弟喧嘩くらいするもんだろうと思っていたので、誰にも相
談しなかった。高校生になると喧嘩もエスカレートしてきてフォークで突き刺してきたり
爪が剥がれたり包丁を持ち出したりいろいろした。
 ある日、友達と、妹の仲の良い休日の出来事の話を聞いた。すると友達が
「中学になると喧嘩ってしなくなるよねぇ」
と、話し始めた。
 (なにそれ…普通の家ってそうなの?じゃあ家はなに?)
 なんだかわからないモヤモヤがこみ上げてきてイライラし始めて、今まで思っていたこ
とあった出来事全てを友達に打ち明けた。
 「え〜それは激しすぎだよ〜」
 「弟が子供なんだよ」
 そんな返事が返ってきた。
 (そうか…あいつはまだ世間を知らない未熟者なんだ、だからあんなに自分勝手にわが
ままに、私にもお母さんにもイライラを当り散らすんだ…)
 一時はそれで解決した。
 でも本人の顔を見るとそんな言葉は飛んでしまう。
 頭で考えるより手が出る。その瞬間、
 (やっぱり私も親父の血を引いてるんだなぁ)
 と、つくづく思ってしまう。
 あまり関係ないがこのとき、私は寝るときに、自分がレイプされて殺される夢、もしく
は、自分が殺される夢、死ぬ夢を見ることが多かった。
 真っ暗な電車に乗ってふと中刷り広告を見ると、イトコや親族の遺影が飾られている夢
や、友達が癌の宣告を受けて悲しみに打ちひしがれているときに、自分も癌の宣告を受け
てしまい、友達が亡くなり、次は私が死ぬ番なのに、弟もお母さんもテレビを見て笑って
いる。私は一人あせって、恐怖でどうしようもなく立ちすくんでいる夢。何者かに追われ
ていて逃げていて、軒下に竹を切ったものが集められているところがあって、そこにはカ
ーテンがあった。そこに隠れれば見つかるまいと、そこに寝転んで見えないように隠れ
て、そのわけの分からない追っ手がどこかに行くのをドキドキしながら待っていると、突
然隠れ蓑になっていたカーテンが開かれて、銃で撃たれる。血がドクドク出ていて焦る。このまでは死んでしまう。でも血は止まらない。ふと気づく…。
 (あれ?…痛くない…)
 そういった夢だった。

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