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ごみ焼却に反対している世界のNGO連合組織「GAIA」のリポートその1で す。 ごみの焼却は有害であるだけでなく、経済的にもバツ×。 焼却に頼る日本は異常ですよ。 RESOURCES UP IN FLAMES 燃し尽くされる資源 ごみ焼却による経済的落とし穴 対 開発途上国におけるごみゼロ対策 2003年 ガイア(GAIA)報告書 (GAIA:Global Alliance for Incinerator Alternatives/Global Anti-I ncinerator Alliance) 要約 ここ数年、発展発途上国 におけるごみの量は危機的な割合にまで達すよ うになっている。人口増加 、農村から都市への人口移動、西側の消費行 動がグローバル的な広がりを見せていること、使い捨て商品、使い捨て容 器の蔓延などが原因の一端である。処分場(埋立て地)、特に野積み投棄 はごみであふれ、人々は都市の区域外に居住区域を移すようになって、新 たな処分場の場所が確保できにくくなっている。 難しさを増すごみ問題への新たな解決策として、多くの国がごみ処理事 業を民間セクターにシフトさせ、技術重視策を採用して、「ごみ焼却」と いう古い技術へ戻ろうとしている。しかしながらごみの焼却炉は、―たと えそれがどこに建設されようと―数え切れないほど多くの問題を私たちに つきつけている。 ごみの焼却処理は : ・公害を発生させる ・公衆の健康を害する ・自治体に巨大な財政負担を課す ・地域社会の財源を吸い上げてしまう ・ごみエネルギーと資源の問題 ・ 地域の経済発展を妨げる ・ごみの発生抑制や合理的なごみ処理への取組を弱体化させる ・ 先進国でもごみ処理に関して多くの問題がある ・ 大気汚染規制値を超えることが多い ・ 誤った灰の管理 ・ ごみ不足による財政的破綻の可能性がある ・市民、納税者に赤字のつけがまわされる ごみの焼却技術は先進国における廃棄物とインフラのために開発され、使 用されてきたため、発展途上国では、ごみ質の違い、不十分な規制や組織 間調整、部品購入のための通貨不足、熟練職員の不足、資本集約ではなく 労働集約型経済システムなどの理由から、うまくゆかないと想定されてい る。 焼却炉の建設計画は−ごみ処理施設の統合計画や民営化システム計画など と一緒になって−増えつづけるごみ問題に対処する唯一の解決策として提 示されることが多い。 しかし、幸いなことに焼却以外の解決策も存在している。実際、非焼却型 の代替策は包括的なものであり、大都市から排出されるごみを処理するこ ともできるし、資源の少ない発展途上国でも適用できる。その上、代替方 式の処理コストは、焼却処理に比べてほんのわずかで済み、焼却処理より 多くの労働者を雇用でき、公害ははるかに少ない。 発展途上国では、発生源分別によるリサイクルとコンポスト計画(このシ ステムでは各家庭でリサイクル物と有機物を分別する)で、家庭ごみの90 %を資源化できる可能性があるが、焼却では決してそこまでの減量化は達 成できない。 インドのチェンナイ(旧マドラス)は、焼却方式に比べてリサイクル/コ ンポストがいかにメリットがあるかを示す好例である。しかし人口430万 人の同市には、一日600トンのごみを処理するガス化溶融炉計画(4100万 米ドル)が提案されている。地方自治体はごみの収集を民営化する方向に 動いており、その結果、コミュニティをベースにしたリサイクルとコンポ ストシステムの存続が危うくなっている。実はチェンナイは、地域ごとに リサイクル/コンポスト方式を進めている非営利団体、エクスノラ・イン ターナショナルの根拠地であり、それにならった同様のプロジェクトがイ ンド全土に広がっている。チェンナイでは日量3500トンのごみのうち2500 トンしか収集できず、約30%が収集されずに路上や家庭周辺に取り残され ている。これが発展途上国によく見られる例だ。このように、チェンナイ の焼却炉は多くても日量2500トンのごみを受け入れられると見られている。 しかし、捨てられるごみのすべてが焼却可能というわけではなく、5〜10 %が「バイパス」ごみ−たとえばエンジン部品などのような大量の不燃物、 あるいは焼却炉が停止している時に埋立てに回されるごみなど−と考えら れている。これに加えて、焼却ごみのうち重量比で平均25%は灰となって 残り、それらは埋立てによって最終処分しなければならない。チェンナイ 市の例では、焼却処理できるのは発生ごみのうち約半分、日量1750トンに 過ぎない。それと対照的に、エクスノラによる地域ごとのコミュニティ ベースごみ削減方式では、リサイクル品の分別収集や有機物のコンポスト などによって、3500トンのごみの90%が処理できる。エクスノラのプログ ラムの中心は、市民に自分たちが出すごみについて責任を持つことと、ご みのポイ捨てをやめるよう教育することである。この方法は、クリーン生 産政策の推進や、コンポストや再使用、再利用に適さない商品からデザイ ンの習慣と結びつけることによって、さらに大きく発展させることができ る。 コスト的にはリサイクル/コンポスト方式がはるかに有利だ(460万米ド ル、焼却方式は1億1900万米ドル)。それ以上に、焼却システムでは環境 や地域経済発展、また交通量の増加のような生活の質に与える損害の拡大 が問題になる。次の表を見てほしい。 表1: チェンナイ(インド)における焼却処理とリサイクル/コンポスト 方式の比較 (人口:430万人) 焼却方式 リサイクル/コンポスト方式 一日あたり発生ごみ量 3,500 3,500 削減埋立てごみの日量 1,750 3,150 削減率 50% 90% 資本コスト (US$) $119 百万 $4.6 百万 雇用者数 320 5,600 影響: ごみが増加し、環境が悪化する市民の焼却への強い反対ごみ運搬 車両の増加と公害の増加市民はごみを出す習慣から抜けきることができな い海外の技術やノウハウに頼りきり ごみが減少し、クリーンな生活環 境と周辺環境が得られる市民の支持と参加交通量の減少(人力を生かす) 市民自身がごみに対して責任を持つ地域の資源やノウハウを生かせる 注意: 焼却のコストはチェンナイ、ぺルングディの焼却炉計画(日量60 0トン、プラント建設費20億ルピー、4100万米ドル)にもとづいている。 日量1750トンのごみを処理するには3つの焼却炉が必要となる。焼却炉に 関する雇用はアメリカの焼却炉に対する雇用者数にもとづいて出した。リ サイクル/コンポスト方式のコストと雇用者数は、インド全土で広く行わ れているエクスノラ・インターナショナルのごみゼロ計画のモデルから推 定した。チェンナイの重量データは2002年6月18日「ザ・ヒンドゥー」紙 のリポートとエクスノラ・インターナショナルの資料から得た。(出典: Institute for Local Self-Reliance, Washington, DC, June 2002.) 上の数字は理論上のものだが、現に進行中のプロジェクトにおける現実の データに基づいている。実際、世界じゅうで行われている無数のプロジェ クトは、ごみ処理の統合プログラム(ごみの排出抑制、再使用、再利用、 コンポストなどすべてを統合した計画)によって、焼却より低いコストで ごみの大幅削減が可能であることを示してきた。 ごみ処理システムが有効であるには、システムが適正な技術的解決法にも とくものでなければならないし、さらに地域の事情や人々のニーズに合わ せてデザインされなければならない。多くの発展途上国では、ごみの集中 処理システムなどの運転、保守の経験がごく限られている。したがって、 テクノロジーが簡単なほど、成功率は高いだろう。 多くの発展途上国では相当数の非公式セクターが、すでに広範なリサイク ル活動にかかわっている。これらのセクターと他のコミュニティ、グルー プ、企業などと連携したシステムを作れば、成功への可能性は十分にある。 実際、非公式セクターと地域主体を市全体のごみ処理計画へと統合するこ とは、不可能でないばかりか、成功へのカギと言えるだろう。必要なのは 組織を立ち上げることと、コンポスト用の土地−ごく狭い土地から市レベ ルまで−を確保することくらいである。実際、地域のプロジェクトは解決 の主流になり得る。 次に、発展途上国におけるごみの削減、処理の先進的な成功事例からいく つか紹介しよう。 ▼カイロ、エジプト 非公式セクター(「ザバリーン」という名で知られている)が、カイロ市 の三分の一の家庭ごみ、年間998,400トンを収集している。ザバリーンは カイロ市を取り巻く五つの地域に住んでおり、回収物の80〜90パーセント をリサイクル、あるいはコンポストしている。それらの地域のひとつのモ カッタムには、約700のごみ収集会社、80の仲買人、228の小規模リサイク ル業者が集っている。 ▼ムンバイ(旧ボンベイ)、インド ここでは市民が組合を作り―この組合はアドバンスド・ローカリティ・マ ネジメント(ALM)として知られている―、それぞれが環境をクリーンに 保ち、コンポストとリサイクル用に、ごみを有機資源ごみと非有機ごみに 分別している。多くのALMでは有機物をヴァーミコンポスト(ミミズコン ポスト)で処理し、その他のごみは回収業者と協力してリサイクルを行っ ている。ALMの数は約650にのぼり、約30万人の市民が参加している。 ▼サン・バレー村、フィリピン 村のおよそ3千世帯がリサイクルとコンポストプログラムに参加し、家庭 ごみの約70%を有効利用している。家庭で分別した有機物(生ごみと庭ご み) を、毎日「バイオマン」がコンポスト用に輪タクで回収している。 同じような輪タクが分別済みのリサイクル可能物を集めている。彼らはこ れらを近くの「エコ・シェッド」に運び、ごみはそこでさらに細かく分類 され、梱包される。こうして処理されたものは、直接スクラップ業者や 「ジャンクショップ」などの取り扱い業者に販売されている。 ▼リオ・デ・ジャネイロ、ブラジル 2000年、州は容器の引取りを義務付ける法律を通過させた。これにより、 すべてのプラスチック容器の引取りと、その後の再利用、リサイクルが義 務づけられた。 拡大するごみゼロ(ゼロ・ウエイスト)の動きは世界中で勢いを増し、さ らなるごみ減量をめざして製品に対する「拡大生産者責任」を盛り込んだ 斬新な規制システムへのはずみにもなっている。ごみ問題を懸念する人々 や専門家らによる地域の、全国規模の、そして国際的なネットワークが、 新たな焼却炉計画を中止させ、古い焼却炉を段階的に廃止させ、持続可能 な生産と消費行動にもとづいた代替システムの導入を求めて活動している。 ごみゼロは挑戦しがいのある目標だが、その達成に多少の時間がかかる のはやむを得ない。千里の旅も一歩から始まるように、ごみゼロもまず一 歩から始まる。ごみゼロへの道は、有機物と腐敗物を埋立て処分しないと いう、簡単かつ比較的費用のかからない行動から始まる。このことだけで は完全な解決にはならないが、それでも汚染や浸出水、ごみ氾濫による問 題などへの解決への第一歩となる。これは特に、ごみに占める有機物の割 合が多い「南」の発展途上国にあてはまる。コンポストを使えば、ごく短 期間にごみの量を半分にまで削減することができる。コンポストの美点は、 小規模でテクニックも要らず、安価に成功できるというところで、たいて いは地域のノウハウと人材があればよい。成功への重要な点はごみを分別 し続けることだ。 この論文は: ・家庭ごみ焼却の歴史、その失態と、焼却炉メーカーがいかにこ のすたれたテクノロジーのために新たなマーケットを開拓してきたか、を 述べ ・家庭ごみ焼却の歴史、その失態と、焼却炉メーカーがいかにこ のすたれたテクノロジーのために新たなマーケットを開拓してきたか、を 述べ ・家庭ごみの焼却を規制し、あるいは禁止する権利を確認し、 ・ 焼却炉計画に反対して立ち上がっている多くのコミュニティか らいくつか紹介し ・発展途上国の受け入れ地域にとって、焼却炉は財政的損失につ ながるということを、20の理由をあげて詳しく紹介し、 ・家庭ごみ焼却炉建設計画を評価するためのチェックリストをあげ、 ・焼却についてのいくつかの「神話」をあばき、 ・拡大しつつある「ごみゼロ」への動きを要約し ・非焼却ごみ処理戦略を提案し(再生可能リサイクル、コンポス ト技術に焦点をあて) ・発展途上国におけるリサイクルとコンポストプログラムの成功例 を紹介し、 ・リサイクル活動における非公式セクターのユニークかつ重要な役割 を強調し ・「ごみゼロ」を達成するための十のステップを概観した このリポートは、発展途上国に押し寄せている産業用毒物や医療廃棄物の 焼却処理について述べるものでも、焼却炉による深刻な環境被害について 述べるものでもない。環境被害や健康被害などについては、グリーンピー スの2001年のリポート「焼却と健康被害:ごみ焼却の人の健康へ対する影 響の認識状況」 などに記されている。医療用廃棄物処理についての情報 はwww.noharm.org (Health Care Without Harm)から、また有毒物質使用 とクリーン生産についてはwww.cpa.most.org.pl(Clean Production Actio n)から情報を得ることができる。 註 : ごみの「焼却」とは? ごみの焼却処理とは(熱のエネルギー利用、非利用にかかわらず)先進 国における大量焼却やRDF(ごみを材料とした燃料)焼却システムだけで なく、資源を浪費し、有害物質を排出する不要物の加熱処理システムすべ てを指す。これらは燃焼、熱分解、高温ガス化溶融にもとづく技術も含み、 いずれもダイオキシン類、フラン類、その他の難分解性有毒物質を排出す る。 燃焼 (combustion)とは単純に化合物を燃やす、あるいは酸化させるこ と。炭化水素の燃焼によって熱、光、水と一酸化炭素が発生する。灰は不 完全燃焼物と酸化途中の生成物質が結合したもの。ごみの「燃焼」テクノ ロジーとしてよく知られているのは次の二種: ・ 大量焼却(mass burn)ではごみを直接燃す。焼却の途中で発生した熱を 利用して水を沸騰させ、発電機と連結したタービンを回して電熱利用する ことに使われる例が多い。 ・ ごみ転換燃料(RDF)では直接焼却にさきだって雑多なごみを加工処理 する。加工方法は施設によって違うが、切断した上で金属やその他カロ リーの低い物は取り除かれる。加工済みRDFは大量焼却炉などで燃料とし て使われるか、セメントキルンなどの施設で燃料として使われる。 熱分解 (pyrolysis)とは、低酸素下あるいは無酸素の中で物質を熱分解さ せること。この工場では物質を427〜760℃に熱する。低酸素にするのは焼 却を避けるためだが、完全に酸素供給を絶つのは不可能で、ある程度の酸 化は避けられない。その結果、ダイオキシン類その他の有害化合物が生成 されてしまう。熱分解によって三つの物質−ガス、燃料オイル、「チャ −」と呼ばれる固形残渣(重金属を含む)が生れる。 熱ガス化 (Thermal gasification)は、基本的に熱分解と同じだが、低酸 素中で固形ごみを熱分解させ、可燃ガスを発生させる点が違う。このガス はボイラーやタービン/発電機の運転に使うことができる。このプロセス では液状副産物ができるが、これには高濃度の有毒物質が含まれていると 考えられる。 このリポートでトンとはメトリックトン(1000kg)のこと。 筆者:Brenda Platt, Institute for Local Self-Reliance, USA for the Global Alliance for Incinerator Alternatives/Global Anti-Incinera tor Alliance (GAIA). 訳:山本節子 |