メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2003/4/15  2003/04/15


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月刊小説メールマガジン         2003年4月15日 発行
『君が好き!』  vol.57
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皆様こんにちは。
桜の季節ももう終わりに近くなって参りましたが、皆様どうお過ごしですか?
私は先日の日曜日、おくらばせながらお花見に行ってまいりました♪
散り際の桜だったのですが、風も無いのにひらひらと桜の花びらが舞い落ちる
様は、その中を歩く事ができる自分も誇らしげであったり…。
でも散って積もった花びらを、踏みしめなければ進めない寂しさが切なかった
りも致しました。
皆様は今年、桜をどれほど見られました?^^
(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼君が御世に・16          篠原美姫緒
▼ドラゴンラヴァ・38《最終回》  瀬乃美智子
▼あとがき
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              君が御世に16
                          篠原美姫緒

「あなたに寂しい思いはさせません」
 とろとろと薄れる意識の中の奥底で、隆信に抱かれながら資盛のことを思っ
ている自分が居た。だが、女を抱き尽くした男の前では、ただの雌になるしか
なかった。

 このことが資盛の耳に入ったら…
 でも、平家の公達とは身分が違い過ぎる…
 正妻になることはない…
 平家はいま…

 さまざまなことが頭の中をかけめぐる。
 正直、平家の妾でもいいから資盛の側に居たいと思うが、資盛は何も言って
はくれない。
 
 
 七月、建春門院の一周忌には、御八講の供養が行われた。式典には総々たる
面々が揃い、葬儀であるにもかかわらず、華やかな感じがした。
 あの日以来、隆信どのからはいつもにもましてまめやかな文があった。
 
 日本の和歌は、コトノハの香りがする。かほりはひとそれぞれ感じかたが違
い、同じ匂いでありながら、人が受け取る印象がとても違う。和歌はコトノハ
のひとつひとつに目と音で感じる匂いが微妙に違う。大和言葉の良さであろう。
だから、同じ和歌でありながら、ひとそれぞれ、受け取る意味も違う。その歌
のやりとりがまた楽しい。
 五七五七七の中に、自分の気持ちをありったけ詰め込む。ちょっぴりやさし
く、少し意地悪に…。
 隆信から返って来る歌もまた、コトノハに彼のにほいを感じる。
 それが、とても嬉しい。
 式典の最中にもかかわらず、文をよこしてくる隆信が愛らしい。
 ふと、視線を資盛にやると、背筋を伸ばして腰掛け、目をつむってお経を聞
いているのか、微動だにしない。その横には維盛がいた。
 こういう時は、自分の身分の卑しさを感じずにはいられない。夜を重ねても、
所詮、向こうは雲の上の人…。
 式典が滞りなく進み、終わってから、建春門院中納言という女御が話しかけ
てきた。
「右京さま。その…。御上と小督(こごう)どのとのことをお聞きになりまし
た?」
「いえ、この間まで宿下がりをしていたもので」
「中宮さまの女房がたには、まだお知らせしていないのですね…」
「御上がどうかなさったのでしょうか?」
「中宮さまの御側近として、お伝えいたします」
 小督どのが春の頃、里へ下ったことは知っていたが、その理由がなんと
「ご懐妊?!」
「シー! お声が大きいわ。御上のお子を宿したそうで、平相国殿がかなりお
怒りだとか」
 中宮さまには、まだその兆しがないというのに、よりにもよって他の女子に…
「これで男の子だったりしたら、親子そろって…。」
 建春門院中納言はそのまま泣き崩れてしまった。笙子と小督とは仲が良かっ
た。小督と建春門院中納言も仲が良く、笙子と建春門院中納言は面識はあった
程度ではあったが、一人の女性を同じく友人に持つ者同士であった。
「小督どのはどこへ?」
「わたくしにもわかりませぬ…。相国どのが必死で探しておられるので、誰に
も言えずに逃げ隠れているのかもしれません」
 自分の友人が、自分の愛する人の祖父に追われている。
 大切な中宮さま。大切な友人の小督。二人ともかけがえのない存在。
 こんなことがあっていいのだろうか。
 平家に憎まれては、京の都にいられない。
 小督の父親は、藤原通憲(信西)であった。
 平治元年(1159)年十二月四日、清盛が重盛他一族を引き連れて熊野詣
への旅に出た隙をねらって、信頼と義朝が、三条殿を襲って後白河上皇を大内の
一本御書所に幽閉し、内裏を制圧して二条天皇をもとらえた。
 信西は山城と伊賀堺の田原の山中に逃れたが、見つかり斬首、さらに朝廷で
活躍していた、信西の子息の藤原俊憲・貞憲・成範らは皆、解官され配流され
た。
 信西の首は、首実検された後、三条河原で官人にわたされ、都大路を引き回
されて西獄門にかけられたが、信西の首級が義朝、信頼、経宗、推方らの前を
り過ぎる時、信西の首が二つほどうなずいて通ったという。

                             《つづく》
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            ドラゴン ラヴァ・38
                           by瀬乃美智子

「反則よねー。」
思わず浅月は言葉を漏らす。

まんじりともせず待った一夜。
やっと戦いが終わった彼らが戻ってきたと思ったら、そこには見知らぬ少年の
姿。
わけを聞けば、彼は海里が抱いていた卵から孵化した竜の化身だというし、何
より、その生まれたての坊や(失礼だろうか?)が、魔王をぺろりとたいらげて
しまったというのだから、浅月には脱力ものである。

元々、浅月は占い師としての予知能力も有り、あまり動じない性格とは言え、
この展開にはしばし言葉を失った。
そういう点では彼女は結構常識人であるし、それに比べ全く平然としている竜
彦はやはりかなりの変わり者と言えるだろう。


奥では我が息子に気絶させられてここに運び込まれていた海里が目を覚まし、
恥かしげに…、しかし満面の笑みで抱きついてきた我が子を抱きしめてあげて
いるところだった。

物理的にはこの二人は血がつながっているわけではないのだが、…親子のつな
がりとは、血だけとは限らないらしい。
あそこまで息子の方がぞっこんだと、元来世話好きの海里は彼の元から去った
りなどしないだろう。
自分が愛した竜の忘れ形見として、一生大事にしてくれるはずだ。


「…おとうさん。」
「うん、頑張ったね。名前…、つけてあげなくちゃね」
まるで自分の方が子供のように、涙を滲ませる海里に一同は生まれたばかりの
竜に祝福の加護を祈るのであった…。



「では、俺たちは国に戻るので」
数日後、火竜と浅月たちは竜彦たちに別れの挨拶をしていた。

そろそろ一旦里帰りさせていた使用人たちも帰ってくる頃だ。
竜が暴れまくったりで破壊された屋敷の一角を見たら大騒ぎになるだろうが、
まぁ…、その変は当主のひと言で何とかなるだろう。

それより、使用人たちが帰ってきて、瓜二つな浅月と瑠璃葉を見られてしまう
方が大問題だ。

だから私はやっぱり彼とあちらに再び向かうわねと、浅月は瑠璃葉に微笑む。
あなたは決して私の身代わりなどではない。あなたこそが竜彦の運命の相手な
のだから、幸せになってねと瑠璃葉の手を取り、握手した。

「はい。それに当主は竜彦に譲ります、私は元々『視る』力がないのだから…。
その方がよいと思うの」

それに、竜彦が太刀見家前当主の血をひく者と分かったのだから、彼が当主と
なる事は全く問題がないはずだ。使用人たちも、この数年は竜彦が占いをして
いた事を知っているのだし、彼女たちも自分たちの実家である太刀見の年寄り
たちにその事は報告しているはず。お歴々も竜彦が正式に当主になった方が何
かと安心なはずだ。まぁ、彼の変わり者の部分は、瑠璃葉が妻となって支える
とすれば、彼らも納得するだろう。


「海里たちもついていくのね?」
「はい。」

海里親子は、簡単な旅行バッグを手に、揃って瑠璃葉たちに挨拶をする。

元来、竜族は縄張り意識が強い種族だ。
太刀見家が広いとは言え、竜族には充分とは言えない。
それに比べて火竜たちが住む場所は、小国と言っていいほどの大きさがあり、
火竜以外にも一匹ぐらい竜がいてもなんとかなりそうなのだ。
ある意味、外国の地でも占い家業に成功してくれた前当主さまさまだ。
もっとも、彼はこの事さえも見越して竜が隠れられそうな外国の地に移り住ん
だのかもしれないが…。


「お幸せに」
「そっちこそ!」
「では、また…。」


それぞれに言葉をかけ、そして、それぞれの道を歩み始める。
この数日の喧騒が嘘のように、四人が旅立った後の太刀見の家は、とても静か
であった。


「…あ、言い忘れてた」
「え? い、今から追いかければ間に合うかしら?」

竜彦の言葉に、瑠璃葉はつい慌てるが、ああ、火竜たちにじゃなくて君にだか
らと竜彦が言うと、なんですのと首をかしげた。

「うーん…俺にとっては当然の事過ぎて言い忘れていたんだか、やはりこうい
う事はちゃんと言っておかないと」

何やらぶつぶつと言いながら、竜彦は瑠璃葉にひすまず座るように言う。
二人は皆を見送った後の廊下の縁側に腰掛け、二人揃って心地よい風が吹く中
庭に目をやった。

こんな戦いがあった庭なのに、その一角に枝を伸ばす桜の木は、また来春とば
かりにその花びらを落とし、ところどころに小さい赤い実を覗かせ始めていた。


「…瑠璃葉。」
「はい?」

しばらく庭に目をやったあと、自分を見つめる竜彦に、瑠璃葉は薄く微笑み返
した。

「これからもずっと君が好きなので、結婚して下さい」
「…っ!」

竜彦の言葉に、瑠璃葉は思わず息を飲む。
一緒にいる事が普通で、想われている事が普通で、…自分は君の夫となる人間
なのだといつも言っていた彼なのだけど、好きと…気持ちを言ってもらったの
は…思い返せば初めてであったかもしれない。

「…はい、私でよければ喜んで」

震える声を押さえて、そっと瑠璃葉は答えた。
もう…何百年と生きたこの身であるはずなのに、愛おしさに体が振るえる純真
さを自分はまだ持っていたのだと思い知らされる。
いや、彼だからこそ気付けたのかもしれない。
彼だからこそ、竜の自分でもわけへだてなく愛してしまうのだろうと思えるの
だ。


嬉しさと緊張で目じりの赤い瑠璃葉に、竜彦は笑ってひと言だけ呟いた。

「少し、緊張した」

私もです、…瑠璃葉も心の中でお返しをしていた……。

                            《終わり》
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あとがき
ドラゴン・ラヴァついに最終回でした。
ここまで長いお付き合いありがとうございました!
次のシリーズはもう少し短い物をやってみたいですね(*^ー^*)
本当にありがとうございました♪


【お知らせ】君が好き!のホームページのアドレスが、サーバー会社の運営上
 の都合で変更となりました。
 http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
 になります。どうぞ起こし下さい♪(*^ー^*)ノ゛

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2003/4/15 57号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
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