メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2003/3/15  2003/03/15


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月刊小説メールマガジン         2003年3月15日 発行
『君が好き!』  vol.55
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皆様こんにちは。
今年はまだまだ寒さが抜けきれず、瀬乃の住む地方ではまだ桜の花の姿が見え
ませんが、皆様の周りではもう桜の花の蕾は膨らんでらっしゃいますでしょう
か? 瀬乃は桜が大好きなので、今年はたくさんの花びらに囲まれたいなと、
今から思いを馳せています(*^ー^*)
(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼君が御世に・15     篠原美姫緒
▼ドラゴンラヴァ・37  瀬乃美智子
▼あとがき
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              君が御世に15
                          篠原美姫緒

 資盛との恋がはじまって、まだ日が浅いというのに、もう終わりのことを考
えなければいけないだなんて―――。

 母の見舞いにと、隆信がやってきた。
 隆信が描く母の姿はは、昔のように生き生きとして、とても美しい。
「まぁ、おほほほほほほほ」
 夕霧は、自分の写し絵を見て、ころころと笑った。
「隆信どのは、ほんとうに絵がお上手だこと」
「夕霧どのが美しいので、筆がすすみます」
 夕霧と隆信のやりとりを、横で笙子は見ていた。

 母さまと隆信どのは、まるで―――
 親子というよりは、恋人のように見える。
 いや、恋多き男の魅せる技なのかもしれない。

「隆信さまのような方と、恋仲になったらきっと楽しいだろうなぁ」
 十五も歳の離れた殿方に、男の魅力を感じないわけがない。
 実際、隆信との会話は笙子にとって学ぶべきものが多い。
 絶えず、こまやかな文があり、笙子はいつのまにかそれを楽しみにしていた。
 そこには筆不精の資盛にはない、紳士的な宮中の男の姿があった。
「隆信さま、母の見舞いありがとうございました」
「とんでもない。私も夕霧どの、そして笙子どのに会えてとても楽しかった」
 この男は、はずかしい台詞をさらっといってのけてしまう。それがきざった
らしくなく、どこか、女をほっとさせてしまうような、そんな話術なのだ。
「夕霧どのも、お元気そうで安心いたしました。笙子どのも、宮中と夕霧どの
のお世話とで忙しい日々ですが、お体には気をつけて」
「やさしいお心遣い、ありがとうございます」
 宮中に使えてかれこれ数年経つが、どうも宮中の丁寧すぎるほどの言葉には
慣れない笙子であった。
「……… 話しは変わりますが… その、平家のご子息とは…」
 ドキッ 
 きたか と、少しうつむく。
「私がさんざん文を差し上げてるというのに、いつのまにか…」
 隆信は、寂しそうな顔をする。これがまた、15も歳の離れた男には見えな
い、少年のような顔をするのだ。
 隆信が「好き者・色好む者」と言われるのが分かる気がした。
 女心をくすぐる、いや、女を知り尽くした男の計算された演出だと分かって
はいるものの、つい、引き込まれてしまう。いや、騙されてもいいと思ってし
まうのだ。
「資盛さまとは、それなりのお付き合いをさせていただいています。」
「それなりですか? ほんとうに?」
「ええ」
「平家は、鹿ノ谷の事件でみな女に通う暇もないほどですよ」
「!!!!!!!!!!」
「私は、あたなにそんな寂しいおもいをさせることはありません」
 夕暮れの裏路地に、隆信の迎えの車がいた。
 そこまで見送るだけだったのに、手を引かれるまま笙子は牛車に乗ってしま
った。
 牛車は隆信の屋敷へと向かう。
 女が男の家へ出向くというのは、その者をとても好いているという証で、こ
の時代では女が男に夢中になるといことは、世間体からあまり指示されていな
い。
 が、隆信はこれを知ってか笙子を自宅へと招いた。
 これが、資盛の耳に入ればどうなることだろう。


 隆信どのの屋敷なら、使いで何度も訪れているはず。
 
「ためらうことはありませんよ」
 隆信は笙子を包み込むように、そっと牛車から下ろし、そのまま奥へと連れ
ていった。
 ぼーっと立っている笙子の着物を、優しく丁寧にはがしていく。
「さあ、心配はなにもいりません。私が貴女を守ってあげます。寂しい思いは
絶対にさせません」
 この男の言うことは本当なのだろうか…。

『平家はいつか滅ぶでしょう。あなたにとってつらいことになるやもしれませ
んね。好きな方と永遠の別れ、避けても通れない人の運命』

 母夕霧の言葉が脳裏をよぎる。
 それよりもはやく、隆信の腕が笙子を抱き締めていた。

                             《つづく》
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            ドラゴン ラヴァ・37
                           by瀬乃美智子
「っ!!?」

それはあっという間の邂逅。
鋭い牙は魔王の体を飲み込み、頭を振り上げ、地獄の窯のようにその奥底に炎
を貯めいる口の中へと飲み込まれていく。

悲鳴を上げる暇もなく、己の死を予感する暇もなく。
魔王の体は新たに現れた竜によって飲み込まれ、その力の全ては竜のものとな
る。


「…な…何が…。」
「起こったんだ?」

火竜と瑠璃葉は、目の前で起こった一瞬の出来事に、瞠目する事しかできない。
ただ一人、満足げな笑みを浮かべるのは竜彦のみであった。


「来い。…まだ名も無き者よ」

手を差し出し、竜を呼べば、竜は勝利の雄叫びをやめ、竜彦たちの方へと近づ
いてくる。
思わず身構える火竜と瑠璃葉に、竜彦は何をやっているんだと、笑って竜を紹
介した。

「海里の息子だぞ、恐れる事などあるものか。…ああ早く、占いでいい名前を
選ばなければな」

竜彦がにっこり微笑みかけると、竜はうやうやしく頭をもたげる。


海里の子供…、そうその竜こそあの浅月が待つ部屋に残された卵の抜け殻の主。
そして、ここに駆けつけようと庭を疾走していた海里に当身を喰らわせ、気絶
した彼を浅月の部屋に投げ込み、自らは海里に化けて逆に捕まえた魔族にここ
へと案内させたつわものであった。

竜は一瞬の揺らぎと共に人間の形へと変化する。
それはもう海里の姿ではなく、一人の少年の姿を形とっていた。
漆黒の髪に、金色の瞳…。

姿形が全てではないと分かっていたが、火竜たちには、この…生まれいでたば
かりの少年があの魔王を一瞬の間に倒してしまったのかと思うと、信じられぬ
思いであった。


「ずっと…、今日のこの日を待っていました。」

母が死んだその日から。
竜の少年は、自分を真っ直ぐに見つめる竜彦に語る。


母に無い…、竜の偉大な力を自分は持っていた。
いや、もしかしたら今日のこの日ために、母にも授けられるべきだった力が全
て自分に授けられてしまったのかもしれない。
母は囚われの身で、父は隷属の身。

私は、すぐにでも生まれでて母たちを助けたかったけども、それではあの魔王
と対等に闘うのがやっと。
だから卵の中で力を貯めて、知恵を貯めて…。
それは、卵の中で幾億の日を積み重ねてから孵化すると言う竜の王には劣るけ
ど、…それでもその忍耐の時間は、魔王の隙をつく知恵と運、そしてその身を
一瞬にして滅ぼす鋭い牙を育てる事に成功した。

「よくやったな。母上様も誉れだろう」
「はい。これから父にも会いに参ります」

ずっと殻の中からしか父の顔を見たことがありませんでしたからと、少年竜は
はにかんだ。
もっとも、父の腕の中にこんなにも長い間愛されていただけたのは嬉しい事だ
ったけど。
でもこれからは、恐怖に怯えて抱かれるのではないのが何よりも嬉しい。

「夢みたいだわ…、こんな…最後の最後に、あんな小さな卵から生まれたあな
たに救われるなんて」
「本当にな。卵のお前を救ってやるつもりが、逆に救われるなんて…。」

少年竜のその輝ける勇姿に、先輩であるはずの浅月たちはただただ感嘆する。
しかし、敵をあざむくにはまず味方からというでしょう?微笑んだ彼に、一瞬
呆気にとられながらも、全くだとうなずいた。


「先触れたちが帰っていく」

ふと、竜彦が漏らした言葉に、全員竜の池へと振り返る。
そこには、竜の池から魔界へ泡を食って撤退していく魔族たちの姿。
主が討たれ、慌てて帰っていくようだ。


「奴らはもう来ない。二度とな…。」

力が全てを支配する魔界に、主君のあだ討ちなどという言葉は無い。
首を獲られたのならそこまでの奴だったのだと、四散するだけの存在たちだ。

しかし彼らは役に立つ。
帰った彼らは、竜の存在を魔界にもたらす。
しかも、かの魔王カリプトロスさえも一瞬で葬り去った竜の存在を…。

そんな危険な竜が…、しかも三匹もいる人間界など誰がのこのことやってくる
というのだろう。
瑠璃葉たちは、戦いに勝ったのだ。

「さぁ…、部屋にいる浅月たちを迎えに行こう」

竜彦の言葉に、その場の全員は笑顔でうなずいたのであった…。


                            《続く》
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あとがき
さてさて、ドラ・ラヴァもとうとう最終決戦の場を過ぎ、残りはラストを飾る
のみ。…ちょっと長すぎましたね。次はもっと短いストーリーにしたいと思っ
ております。では残すところあと1話、もうしばらくお付き合い下さいませ^^


【お知らせ】君が好き!のホームページのアドレスが、サーバー会社の運営上
 の都合で変更となりました。
 http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
 になります。どうぞ起こし下さい♪(*^ー^*)ノ゛

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 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
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