メルマガ:週刊フランスのWEB
タイトル:hebdofrance 24022003  2003/02/24


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                              Davide Yoshi TANABE
                                 vous presente

              ≪週刊フランスのWEB≫
                    第160号
                                          Tokio, le 24 fevrier 2003

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Index (目次)
        1.ENS 高等教育大学
        2.椿
        3.マイナリティー
        4.シャンソン ピアフ 「エデン・ブルース」
        5.忘れられたフランス人 ルコント・デ・リール 「高踏派詩人」
        6.あとがき

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1.Ecole Normale Superieure
  http://ulm.ens.fr/ecole/index.html

 通常この大学は高等師範大学と訳されるが、この訳では実態とかなり違う。教育大
学でもちがうような気がする。というのは、日本の教育大学の大半は、1960年代の文
部省の政策によって、総合大学の教育学部から分離された教員養成大学であり、戦前
の師範学校をモデルとしている。筑波大学の前身で今は文部省に抹殺されてしまって
廃校となった東京教育大学は、戦前の高等師範と文理科大学を合併してENSの日本版
を目指そうと一時したようであるが成功していない。もっともENSの方もかなりその
性格を変えてきているのではないかと思われる。とくに1987年の法改正により研究機
関としての性格が強くなった。

 ENSで学ぶためにはバカロレアを通っただけでは不充分で、その後少なくとも2年以
上の高等教育を経ていることが養成され、更にENAなどと同じく入学試験を別途受け
なければならない。ENSでは卒業資格と言うものがない。フランスの試験でも最も難
しいアグレガシィオン(agregation 大学教授資格)をとる準備をさせてくれるので
ある。

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2.Camelia
  http://morganea.free.fr/Theatre/Camelias/Auteurs/Dumas.html

 サイトにはAlexandre Duma Filsの小説「椿姫 La Dame aux Camelias」がある。戯
曲の方も載っている。戯曲は5幕ものであるが、結構短いのでこの機会に読んでみ
た。日本でいえば江戸時代末期の作品だが、スムーズに読める。戯作者としてのデュ
マも人をのめりこませるだけの強い筆致をみせる。初級フランス語の教材にも適して
いるように思えた。ま、メロドラマだから、肩が凝らず楽しめばいい程度の作品であ
る。

 椿は17世紀イエズス会jesuiteの宣教師カメリCamelliが日本からヨーロッパに持
帰ったとの説があるが、俗説かもしれない。17世紀のモラヴィアの植物学者カメルGJ
Kamel神父を記念して、スエーデンの植物分類学者リンネCarl von Linneが、18世紀
になって命名した植物というほうが正確である気がする。いずれにせよ、82種類にも
のぼる椿のオリジンは中国及び日本である。

 余談だが、このリンネLinneはダーウィンより100年も前に種(しゅ)が変化すると
いっているらしい。
http://www.fundp.ac.be/bioscope/1735_linne/linne.html
また、現代のモラヴィアMoravieについては次項のマイナリティーを参照されたい)

 さて、ヴェルディ Giuseppe Verdi作曲のオペラ「トラヴィアータ Traviata」は
「椿姫」を題材として1953年ヴェニスで初演されている。トラヴィアータとはイタリ
ア語の動詞 traviare(堕落させる)traviarsi(堕落する)から派生した形容詞
traviartoの女性形である。物語はピアーヴェFrancesco Maria Piaveが脚本を書いた
もので、ViolettaとAlfredoとの悲恋である。デュマの小説(1848年)及び戯曲
(1852年)ではMargueriteとArmand。古くはかの有名な伝説的舞台女優サラ・ベル
ナール Sarah Bernhardt(1844-1923)がMargueriteを演じ大評判となり、ちかくは
2000年にイザベル・アジャニ Isabelle Adjaniが演じている。

 次のサイトで「トラヴィアータ」3幕全曲を聞くことができる(real audio使
用)。
http://thenationalanthems.net/opera/Index.htm
このページには「カルメン」、「アイーダ」の全曲も置いてある。
また、オペラのイタリア語脚本は、
http://www.giuseppeverdi.it/verdi/libretti/Traviata.htm#AT3SU
拾い読みをしてみたが、デュマの構成とは全く違っていて、それはそれなりに面白
い。

 Margueriteは実在の人物 Marie Duplessis(本名Alphonsine Plessis)をモデルと
しているそうで、デュマ自身が曰く、「日本女性のような切れ長の目」をした美人と
いう。デュマが日本女性を知ったのは浮世絵からではないかと思われるが、プレシィ
は23歳の若い身空(みそら)、1847年胸の病で亡くなった。生前、「椿姫」と呼ばれ
たことはなく、これはデュマの創作であるが、モンマルトル墓地にある墓には白い大
理石の薔薇が刻まれている。僕は墓参りの趣味がないから、勿論見たことがないが。

 美しいカメリアの華の写真は、
http://baladefleurie.free.fr/bruyere2.html
http://aujardin.online.fr/fic/camelia.htm

そういえば、僕の好きな作家山本周五郎に「五弁の椿」という小説があった。

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3.Minorite'
  http://www.eurominority.org/index-fr.asp

 ヨーロッパにこんなにもマイナリティーがあるのかと驚くであろう。全て歴史の所
産なのであるが、全てが偏見や抑圧の対象となる問題含みの少数者・少数民族ではな
い。しかし、アイヌと琉球くらいしかない、しかも殆ど東京が制圧してしまっている
日本と比べると根は深い。

 とはいえフランスの場合を見てみると、テロや武力紛争が絶えないコルシカCorse
や、独自の言葉ももっているブルターニュBretagneばかりではないのである。マイナ
リティーとして数えられている地方・人種には、フランスに組込まれたのが1860年と
遅く独立派もいるサヴォワSavoie、スイスジュラとも関係が深く自治権拡大を目指す
ジュラJura、アルザスAlsace、ロレーヌLaurraine、ノルマンディーNormandie、オッ
ク語のオクシタンOccitanie、さらにはマイナリティーとしての認知をもとめるプロ
ヴァンスProvence、フランシュ・コンテFranche-Comte、スペイン国境でカタロニア
と文化的にも近いルシィヨン/カタローニュRoussillon/Catalogneなどある。かくも
フランスといっても一枚岩ではない。これら全てが紛争地ではない。けれども、フラ
ンスが殆ど連邦になっているスペインのように明日なっても不思議はないのである。
中央集権的民主主義が反省され、地方分権を推進しているフランス、欧州連合の中で
国家は緩やかに分裂して行くのかもしれない。

 さてitem1のモラヴィアMoravieは、チェコのマイナリティーである。9世紀あって
はポーランド南部からチェコ、スロヴァキアまで勢力をはった帝国であった。モラ
ヴィア出身の、といっても後年であるからオーストリアになってしまっているが、モ
ラヴィア生まれの著名な学者には、経済学者シュンペーターJ.A.Schumpeter、哲学者
フッサールHussart、物理学者・哲学者マッハErnst Mach(音速の単位で知られる
が、相対性理論の誕生に影響を与えた学者という)などがいる。これだけでも、ぼく
なんぞは、「いや、大変な民族なのだなぁ」と思ってしまう。

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4.Georges Moustaki
  Eden blues
    Paroles et Musique: Georges Moustaki   1960
  c 1960 Editions MCA Caravelle
  autres interpr鑼es: Edith Piaf, Yvette Giraud

 ムスタキの歌だが、ピアフも歌っている。

En descendant le fleuve argent
Qui roule jusqu'au Nevada
On voit la plaine qui s'etend
A l'est de Santa Lucia
Les villes s'appellent Natividad,
San Miguel ou San Lorenzo
Les filles s'appellent Soledad
Les garcons gardent les troupeaux

ネバダまでとめどなく流るる 銀の河を下らん さればサンタ・ルチアの東(ひんが
し)まで 広がる平原を見ん ナティヴィダ、サン・ミグエル、サン・ロレンツォの
町々 乙女らはソルダとぞいいける 男(おのこ)は牛の群れを守るなり

C'est la que Jim a rencontre
Sur une route un soir de pluie
Catherine la fille d'un fermier
Et qu'ils s'aimerent toute la nuit
Le soleil fait briller son or
Dans quelques rares flaques d'eau
Le cactus forme le decor
Le chardon couvre les coteaux

雨夜(あまよ)の道すがら ジムの鄙(ひな)びの乙女カトリーヌに逢いし また夜
越(よご)し愛(いと)おしみしところなり 天、黄金(こがね)に稀なる水たまり
にその輝きを見せ サボテンに飾られ アザミぞ丘を覆(おお)わん

C'est la qu'Adam le senateur
Est venu finir ses vieux jours
Puis il est mort d'un coup au coeur
On pretend que c'est du mal d'amour
Mais les fleurs couchees par le vent
Semblent prier pour son repos
La lune verse une larme d'argent
Sur la croix blanche du tombeau

上院議員のアダムが老いの日々を過ごさんと来しところなり アダム、心の臓の病に
逝きて 人は恋の病とぞ云いしが 風に倒れし花々は 恰(あたか)もアダムの安息
を祈らんが如しなり 墓の白き十字架上に 月は銀の泪をば流さん

En descendant le fleuve argent
Qui roule jusqu'au Nevada
On voit la plaine qui s'etend
A l'est de Santa Lucia
Les villes s'appellent Natividad,
San Miguel ou San Lorenzo
Les filles s'appellent Soledad
Les garcons gardent les troupeaux

(初めの繰返し)

昭和の僕が古文を真似ても間違いだらけ。擬古文ならぬ似非古文。これではギターに
あわせて歌ったムスタキおじさんに申し訳ないが、ちょっと試してみたかった。もっ
とも、ムスタキの歌詞とピアフの歌詞では微妙に違う。
以下がムスタキの原詩。

En descendant le fleuve argent Qui roule jusqu'au Nevada, On voit la plaine
qui s'etend a l'est de Santa Lucia. Les villes s'appellent Natividad, San
Miguel ou San Lorenzo, Les filles s'appellent Soledad, Les garcons gardent
les troupeaux.

C'est la que Jim a rencontre, Sur une route, un soir de pluie, Kathrin, la
fille du fermier, Et qu'ils s'aimerent toute la nuit. C'est la que Sam a son
tombeau Et que le vieil oncle Ed est mort. Le chardon couvre le coteau Et
les cactus font le decor.

C'est la qu'Adam le senateur Est venu finir ses vieux jours, Puis il est
mort d'un coup au coeur; On dit que c'est du mal d'amour. Et les fleurs
couchees par le vent Semblent prier pour son repos. La lune seme une larme
d'argent Sur la croix blanche du tombeau.

Adellina, la fille de ferme, Sera la pour me recevoir, Belle avec ses deux
seins qui germent Sous le drap de son corsage noir. C'est la que je vivrai
heureux Au milieu de tous mes troupeaux. La plaine s'etend jusqu'au Bon Dieu
Qui veillera sur mes vieux os.

 男性歌手と女性歌手の違いがあるのはわかるが、それ以上に、アデリーナ以降の歌
詞を切ってしまったため、世界が変わってしまったようだ。




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5.忘れられたフランス人
  Charles-MarieLeconte de lisle 1818 - 1894
  http://www.senat.fr/evenement/archives/leconte1.html

 サイトは上院(セナ Senat)のものであるが、ルコントが晩年上院図書館の司書と
なったところからページがさかれているのであろう。ルコントはインド洋のフランス
植民地(当時)であるレユニオン生まれの詩人である。荷風がフランスからの帰り、
汽船が立ち寄ったコロンボ(スリ・ランカSri Lanka)でキプリングとともに思い出し
たという詩人である。

 空想社会主義者フリエFourierの考えに影響されて政治運動に身を投じ、奴隷開放
運動などをした時期もある。詩集「古代詩Poemes antiques」を1852年に発表、芸術
至上主義、「芸術のための芸術 L'art pour l'art」、パルナシィアンParnassienの
中心的詩人となった。その全文が次にある。
http://gallica.bnf.fr/scripts/ConsultationTout.exe?O=88801&T=2

 1886年、前年亡くなったユーゴVictor Hugoの席を襲ってアカデミー入りを果たし
た。それまでに二度アカデミー入りを拒否されていたが、ユーゴはリールのアカデ
ミー入りを強く望んでいた。
 上院図書館での司書生活は、あまり愉快ではなかったようだ。しかし、ギリシャ・
ローマの美に理想を見出したリールは、同僚の回顧によると、司書(官吏である)と
して図書館の仕事に勤(いそ)しむことがなかったとあるから、生活のために仕方な
く仕事をしていたのだろうか。アカデミー会員となっても司書の仕事を続けていたの
は不思議である。

 ドビッシィーやラヴェル、フォレなどの作曲家が曲をつけた詩も沢山あるようだ。

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6.あとがき

 先週電子図書館ABUをとりあげたが、勿論この分野で最も大きなサイトはフランス
国立図書館BNF Bibliotheque Nationale de FranceのガリカGallicaである。これは
膨大な電子資料館である。一方ABUはNPOの運営。
http://gallica.bnf.fr/
BNFは本誌第7号(2000年1月8日)に短い説明がある。
http://members.tripod.co.jp/davidyt/log007.htm

 次回のイラク戦争加担反対国際連帯デモは3月8日(土)。僕はAttac Japonの旗の
ところで参加予定。この時には戦争がすでに始まっているかもしれない。読者の
方々、もしお時間があれば是非ご参集を。

 シラクがアメリカに反対してイラク査察継続を主張した。今週安保理に提出される
かもしれない決議resolutionにフランスはVetoを行使するかもしれない。そこで、
RMCラジオ・モンテカルロ、フランスの放送法を回避するいわば脱法、ま、方便とし
てモナコに作られたラジオ局をきいていたら、冗談だろうがシラクがイラク戦争を回
避したら、ノーベル平和賞にノーミネイトすべきや否やのアンケートをとっていっ
た。回答者の意見はウィ・ノン半々であった。もっとも、カーターが受章できるぐら
いならシラクでもいいんじゃないかという意見もあった。ぼくは平和賞なんてない方
がいい、第一日本では佐藤栄作が受賞者だった賞など全く権威もないと思うから馬鹿
らしい質問だとおもった。モンテカルロが懐かしかったので聴いていただけだけれど
も。

 原発の半分を止めて点検をしているをから、電力節約を? 東京電力の広告であ
る。インターネットの東京電力サイトでも確認をした。
http://www.tepco.co.jp/
こういうのを、フランス語ではシャンタージュchantageという。訳せば「恐喝」であ
る。chanter(歌う)が語源だから面白い。
 なにやら点検データ改竄事件についての謝罪文がトップページに載っている。けれ
ど、情報公開にはまだまだ不足。どの原子炉を止めているかは書いてあるが、検査の
途中経過は何もない。株主にたいする情報(IR)も月並み。要するに、責任ある経営
体制など特にあるようになったとはとても思えない。この会社は、不景気のなかに
あって、3000億円を越す経常利益をあげている優良会社だということを忘れてもらっ
ては困る。
 電力供給は、先ず電力会社の義務(電気事業法18条)であり、一般家庭、つまり小
口も小口の電力消費者もそれぞれ電力供給契約を結んでいるわけであり、「停電する
ぞ」と脅かすとは言語道断。契約違反をするという認識がない。電力自由化といっ
たって、そう容易(たやす)く競争相手が参入できないから、電力料金が下がること
もない。電話とは違う。電話も携帯はカルテルみたいで、ちっとも料金が下がらな
い。電力事業は、結局公共的性格の強い事業だから、法律で縛られていたし、いまも
縛られているのだ。
 倫理委員会を設置し、会合を数度開いているが、その討議された項目は公開して
も、具体的内容は何も書かない。委員の過半が社内のお偉いさん(会長、社長 そし
て東京電力労組委員長)で、都合の悪いことは「社外秘」にしようね、と談合してい
るに違いない。
 ま、馬鹿らしいが、とはいえ、無駄な電力消費をしているというなら、当然協力す
るよ。で、見返りは料金「値上げ」だろう。契約破棄したくても出来ないからね。

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「カンパ、よろしくお願い致します !!」

発行者:田邊 好美(ヨシハル)
    〒 157-0073 東京都世田谷区
e-mail: davidyt@m2.ffn.ne.jp
郵便振替口座 名称 HEBDOFRANCE 番号 00110-2-314176 成城学園前郵便局

当MMのホーム・ページは
http://members.tripod.co.jp/davidyt/hebdofrance.index.html
次ぎの2サイトをミラーとします。
http://www.geocities.co.jp/Bookend-Ryunosuke/9981/
http://davidyt.infoseek.livedoor.com/hebdofrance.index.html
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