メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2002/2/15  2003/02/16


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月刊小説メールマガジン         2003年2月15日 発行
『君が好き!』  vol.53
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皆様こんにちは。
あ、あイタタタ…。本日、歯医者で歯を抜いてちょっとブルーな瀬乃です^^;
う、痛い〜(汗) ちょっと麻酔が切れてきたみたいです(泣)
皆様も、虫歯にだけはご注意下さいね。
ではでは何の脈絡も無い挨拶文で申し訳ございませんが、お楽しみ下さいませ!

(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼君が御世に・14     篠原美姫緒
▼ドラゴンラヴァ・36  瀬乃美智子
▼あとがき
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              君が御世に14
                          篠原美姫緒

「平家の御曹司、か…」
 笙子は頭では理解しているつもりであった。平家の御曹司と恋仲になった以
上、平安絵巻の恋物語のようにはいかないであろう。
「次はいつ会えるのかしら」
 前に会ってからすでに一ヶ月以上の月日は流れている。
 資盛から文が送られてはくるものの、重盛の代理として六波羅や大坂まで、
使いに行く日々である。
 資盛の文を見ては、ただ涙を流す。
「好きなのに… こんなにもこんなにも好きなのに…」
 資盛にまだ北の方(正妻のこと)はいない。一緒にいられない自分がかなし
くて、切なくてそしていとおしい。
 
  恋ひわびてかく玉づさのもじのせきいつかこゆるべき契りなるらむ

 平家打倒の企てがあるとかないとかで、資盛は頻繁に六波羅に出入りしてい
た。とても女の元へ通えるような状態ではない。追いうちをかけるようにして
鹿ノ谷事件が起こった。資盛の話しがときどき他の女房たちから聞こえてくる。


「平家の世ももう終わりかもしれませんね」
 久しぶりに宿下がりをし、病の母の世話をしていた。まだ40を過ぎたばか
りだというのに、母の体は艶を無くし、痩せて骨と皮だけであった。病のせい
で、あまり食欲がないという。が、笙子に心配かけまいと、笙子と二人の夕食
はばあや特製の飯で娘をもてなし、食していた。ばあやが「まぁ、この調子で
毎日召し上がるといいのですけどねぇ」と愚痴をこぼしていたほどだ。
 蚊帳をつるし、その中へ布団を並べ、母の体を優しく撫でていた。その母が、
ぽつり呟いた。
 撫でていた手が自然と止まる。虫の声が爽やかな風と共にほほをかすめて行っ
た。
「母さま、いきなりなにをおっしゃいます?!」
「そなた、宮仕えは楽しいですか?」
「はい。中宮さまも中将の君もよくしてくださいます」
「そうですか…。それならよいのですが」
 京の都の噂では、諸国に散らばった源氏がいまにも都に攻めてくるとの噂が
流れていることは知っていた。母はそのことを気にしているのかもしれない。
なにせ、中宮はあの平清盛の娘である。
「鹿ノ谷の事件はすこし相国殿もやりすぎのような気がします」
 母はそういった。


 多田蔵人行綱は清盛に、平家打倒の謀をあらいざらい白状すると、右大将宗
盛、三位中将知盛、頭中将重衡、左馬頭行盛らが集まり、治承元年六月一日、
平清盛は安倍資成(すけなり)に命じて謀反に加わったものを召し捕り処罰し
た。
 新大納言成親、近江中将入道蓮浄、法勝寺執行俊寛僧都、山城守基兼、式部
大輔正綱、平判官康頼、宗判官信房、新平判官資行らが捕らえ、西光は逮捕尋
問後、五条西朱雀で斬られた。
 嫡子前加賀守師高は尾張の井戸田へ流されていたのを討たれた。次男近藤判
官師経は獄から六条河原で斬られ、新大納言成親(藤原成親)の娘が維盛の北
の方だったこともあり、重盛や維盛は成親の命乞いをした。
 俊寛僧都、平判官康頼、丹羽少将成経の三人が薩摩潟の鬼界が島へ流された。
 大納言成親は備前の国に流されたが、七月九日に配所で薨じた。
 

 成親の室の京極局は、藤原俊成の娘であった。母夕霧とも縁がある。
「この間、歌を送りまして、京極殿からお返事をいただきました。


 いかばかり枕の下の氷るらむなべての袖もさゆるこのごろ
 旅衣たちわかれにしあとの袖にもろき涙のつゆやまひまなき

 返し       京極殿
 床のうえも袖も涙のつららゐてあかす思ひのやる方もなし
 日にそへてあれゆく宿を思ひやれ人をしのぶの露にやつれて

「そうですか。京極殿がそのような歌を…。お心お察しますね。」
 夕霧は笙子にやさしく語りかけた。
「平家はいつか滅ぶでしょう。あなたにとってつらいことになるやもしれませ
んね。好きな方と永遠の別れ、避けても通れない人の運命」
 母は笙子と資盛のことを知ってて言ってるのだろうか。それとも愛していた
亡き父のことを言ってるのだろうか。
「あなたはまだ若い。後悔しない生き方をしなさいね。自分が生きたという証
を世に残すように」
「歌ですか?」
「そうね。歌は後世に残ってゆくかもしれませんね。私は、大神の家の秘伝を
世に伝えるという仕事がありました。父は源氏物語の注釈を残しております。
おまえはなんのとり得も無いと心配していたのですが、歌がありましたね…」
 夕霧は、言い終わるか終わらないかのうちに、すやすやと寝息をたててしまっ
た。

                             《つづく》
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            ドラゴン ラヴァ・36
                           by瀬乃美智子

『海里っ!』


結界を張った部屋にかくまわれているはずの彼の姿を見て、2匹の竜は動揺す
る。
何故彼が…、そして、なら一緒にいたはずの彼の卵と、浅月は!?という不安
と焦り。

魔王は2匹の竜の動きが止まった事にほくそえみ、海里を連れてきた配下の魔
族に自分の元へ彼を連れてくるよう命令した。

「……っ!」

2匹の竜が睨みを聞かせる中、魔族は自らもよろめきながら、魔王の元へ海里
を連行する。

「カイリが貴様らに寝返っていることは既に百も承知だ。これの命が惜しくば、
手を引け。…ひとまずは、そのでかい図体をどうにかするのだな、目障りだ!」

魔王の言葉に、火竜と瑠璃葉は仕方なく竜から人間の姿へと変化する。
壁際によって事態を見守っていた竜彦の元へ行き、どうすればよいのかと、密
かに声をかける。


「大丈夫…、もうお前たちは充分やった。あとは、全ては運命のままだ」

竜彦の言葉に、しかし!と二人は首を振る。
あせる二人の気持ちも分かる。しかし、竜彦はにっこり微笑んで囁く。

「大丈夫。もう…、あとは『彼』に任せよう。『彼』もここまで待たされたん
だ、これ以上出番を削ったら気の毒というものだろう?」

「??」

竜彦の言葉に、二人は首をひねる。

「竜彦、もう少し俺たちにも分かりやすく言ってくれ」
「そうよ、この状況下で海里に何ができるって言うの? 彼が裏切った事はも
うばれているのよ? これでは寝首をかく事も出来やしないわ」

しかし、二人の言葉に竜彦はにっこりと笑い返すだけだった。
それはまるで、もうすべては終わったのだというように…。



「海里、先程はよくも我に刃を向けてくれたな!」

ひそひそと話し込む火竜たちをよそに、魔王は海里を詰問する。
魔王にとっては既に奴ら竜族には勝ったも当然、ここで海里から竜の皮膚さえ
切り裂くという伝説の刃さえ取り替えせれば、最早竜族など敵ではないと踏ん
でいた。

「さぁ! あれを返せ!」

しかし、魔王の地の底から響くような恫喝にも、うなだれたままの海里は反応
する気配が無い。
配下たちが彼を捉えるために余程乱暴にしたのか…。
喋れぬほどとは見えぬのだが、魔王は仕方なく彼を連れて来た配下の魔族へ、
伝説の刃の仮の姿…彼が胸元へ下げているペンダントを取るように命令する。
しかし…。

「ご、ご主人様…。」

魔物は、主の命令にもただただオロオロするばかりで要領を得ない。
ごうを煮やした魔王本人が思わず自ら足を向けようとした瞬間、…先に歩み出
たのは海里の方だった。

「っ!」

この行動には、魔王の方も一瞬驚く。

しかし、先程まで苦しげに俯いていた海里の表情が近づいて来るに連れ、その
表情から恐怖が抜け、不適な笑みさえ浮かべて真っ直ぐに自分を睨み返すまで
になると、魔王は目の前の元配下の魔族が、捕まえられてここまで連れてこら
れたのではなく、自らの意思でここまできたのだという事を悟った。
それを証拠に、彼を連れてきたはずの魔物は、勢い込んで逃げ去っていく。
自分を操ってここまで連れて来た海里から開放されたと同時に、殺意ある敵を
魔王の前に連れて来た罰を受ける事を恐れて逃げ出したのだ。


「ふん、あのような雑魚の処分はどうでもよい」

魔王は、近づいてくる海里に余裕の笑みを浮かべる。
たかだか下級魔族ふぜい。その手に伝説の刃があったとしても、埒も無い。
近づいたその刹那に、その胸元に下げられた刃の化身を…奴の首ごとねじり獲
ってくれるわ!


魔王は近づいてくる海里を止める事も無く、…いや、おびき寄せるがごとく近
づける。
そして、あと一歩踏み出せば手が届くというところまで近づいた時、――見て
いられなくなった火竜と浅月が叫ぶ。

「やめろ海里!」
「無理です!」

「もう遅い!!」

魔王は言葉と共にその手を海里の胸元へと伸ばす。
しかし、その手が彼の胸元を掴んだ瞬間、魔王の顔に動揺が広がる。

「カイリ!貴様ペンダントを何処にやった!!」
「ペンダント…?」

うろたえる魔王の表情に、海里…は、にぃっと微笑んだ。


「そんなもの俺は持ってない。…いや、俺はそれ以前に『海里』ですらないん
だから」

何!?―――魔王が思わず後ずさりをしようとした瞬間、それと同じすばやさ
で『海里』の姿をしたものは魔王へと一歩踏み込んだ。

「この時を待っていたぞ魔王カリプトロス!!――よくも父さんをいたぶって
くれたな!!」
「貴様、いった……っ!?」


その刹那、魔王は自分の眼前で一瞬にして大きく姿を変えていく一匹の竜の姿
を見た。
それは火竜たちをも凌ぐ巨大な体を有し、瑠璃葉たち2匹を併せ持つほどの力
と怒りの感情をみなぎらせていた。
その竜の口が開き、その牙が空中で大きく煌く。
それは…、伝説の刃と言われる自らの秘宝よりも光り輝き、そしていとも簡単
にその体を食いちぎり、飲み込んだのであった。

                            《続く》
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あとがき
は〜、ぎりぎり終わりました〜。
でもこれから配信だとちょっと日にち跨いでしまうかもしれません。ごめんな
さい!(汗)
歯が痛いとなかなか考えもまとまりませんね^^;
皆様も、虫歯だけにはご注意を!…まぁもっとも、私が抜いたのは…親知らず
なんですが(何)


【お知らせ】君が好き!のホームページのアドレスが、サーバー会社の運営上
 の都合で変更となりました。
 http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
 になります。どうぞ起こし下さい♪(*^ー^*)ノ゛

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2003/2/15 53号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
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