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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ かかりつけ医通信 第45号 2002年12月6日発行 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 健康・医療のお役立ち情報・・・医療の現場から 私達は、医療の現場で働く臨床医です。実際の診療やネット上から 得た健康と医療の役に立つ情報を、市民の皆さんにお届けします。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ ▼目次▼ A)心臓突然死について a)心臓突然死の発症原因 b)心室細動 c)心肺蘇生法 国際ガイドライン2000 d)自動体外式除細動器(AED;Automated External Defibrillator) e)日本におけるAED導入に向けての現在の動きについて B)医療特区について a)医療と市場原理の導入について b)構造改革特区って何?? c)医療経済特区に関するシンポジウム ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ A)心臓突然死について 先日、健康でスポーツマンだった高円宮さまが運動中に倒れられ47歳の若さで 急逝された事は、多くの国民に大きな驚きと衝撃を与えました。 発作後24時間以内の予期されない死は「突然死」として定義されていますが、 実際、心臓疾患の既往もなく元気だった人が、まさに青天の霹靂、予期しない 突然の心臓発作で亡くなることがあります。その大半は心室細動の発作による と言われており、心室細動の原因として心筋梗塞や不整脈発作の可能性が挙げ られているものの、その詳細はいまだ明らかではありません。 今回は心臓突然死・心室細動について説明します。また、2000年8月、米国心 臓協会(AHA)より新しい心肺蘇生法の基準(心肺蘇生法、国際ガイドライン 2000)が示され、我が国でも救急の現場ではこの基準が採用されていますので、 従来の基準との差などについても簡単に触れておきます。更に、心室細動の治 療として、自動体外式除細動器(AED)を行える環境作りについて触れたいと思 います。 この問題について、以前から市民レベルの心肺蘇生法の普及に尽力され、兵庫 県では1990年から心肺蘇生法県民運動として発展し、5年間で540万人の兵庫 県民の内の約2割の108万人の講習実績を達成した実績のある、兵庫県立健康 センター所長 河村剛史先生のホームページを参考にさせていただきました。 豊富な情報がありますので、詳細は下記の参考サイトをご覧ください。 ------------------------------------------------------------ a)心臓突然死の発症原因 運動中の心臓突然死を起こす原因は、主に2つが考えられています。 1)急性心筋梗塞発症後に2次的に起こる心室細動: 従来、動脈硬化による冠動脈狭窄が徐々に進展し、最終的に心筋梗塞に至る と言われていましたが、急性心筋梗塞で死亡した人の冠動脈狭窄を調べてみる と、60%以上の症例は50%以下の軽度冠動脈狭窄であり、重度の狭窄は少な いことが判ってきました。そこで現在は、コレステロールが血管内膜下に蓄積 し(プラーク形成)、肥厚した内膜が破裂すると、冠動脈痙攣と冠動脈内血栓 形成により急性冠動脈閉塞を起こすと考えられており、急性冠症候群(Acute Coronary Syndrome)と呼ばれています。 2)心室性頻拍が誘引となる心室細動: 交感神経の緊張による心筋細胞の興奮性が亢進し、危険な不整脈(心室性頻拍) が起こり、それを引き金に心室細動が誘発されます。 学生時代にスポーツをやっており、体力には自信があると過信している人が、 単に運動不足とストレス解消の目的で、若い頃の感覚で急に激しい運動を始め た場合に心臓突然死が起こりやすいとも言えます。一般的に12月、1月の冬場 に多いと言われる心臓突然死ですが、運動時のものは9月、10月に多く、その 理由は、"スポーツの秋"と称して全国各地で学校運動会、職場運動会などが開 催されるためだと考えられています。 下記の表は中高年の年代別のスポーツと突然死の関係を示しています。この集 計は心臓死以外の死も含んでおり、またそのスポーツそのものの競技人口にも 左右されますので、ゴルフやランニングが危険なスポーツであるというわけで はありません。しかし、少しでも体の不調を感じたら、中断する勇気も持ちた いものです。 スポーツ中の突然死(種目別) 〜39歳 40〜64歳 65歳以上 1位 ランニング ゴルフ ゲートボール 2位 水泳 ランニング ゴルフ 3位 サッカー 水泳 ランニング ------------------------------------------------------------ b)心室細動 全身に血液を送る心臓の心室が不規則に収縮して痙攣したようになり、殆ど血 液を拍出できなくなる状態を心室細動と呼び、心電図では不規則な揺れだけが 記録されます。前述した心筋梗塞や不整脈の末にこの状態が起こると直ちに意 識が無くなり、放置すれば確実に数分で死に至ります。 しかし、迅速且つ的確な治療で救命できることもあるのです。その方法をご紹 介しましょう。 1)除細動(電気ショック) 心室細動という不整脈を正常に戻すための唯一の方法です。電気的な刺激 を与える為に除細動器とよばれる機器が必要です。救急隊が連絡を受けて現 場に着くのに全国的に平均5〜6分は掛かると言われています。 しかし、心室細動が起これば数分で死に至りますので、治療は早い程良く、 それまでの間、もし何もしないで待っていれば、例えこの除細動を行っても 助かる可能性は極めて少なくなります。 2)心肺蘇生法 除細動までに出来ることは、見つけた人が直ぐに行なえる心肺蘇生法で あり、倒れて5分以内に始めれば、5分以上経ってから始めた場合に比べ、 明らかに蘇生率が高いことも分かっています。 心臓突然死からの救命率を上げるには、倒れた人を見つけ次第、119番へ 電話すると同時に誰かが直ぐに心肺蘇生を開始し、心室細動には出来るだけ 早く除細動を行うことが重要です。もし、心室細動の前触れである心室頻拍 の時期だったら、拳で胸部を一撃すると脈が戻る場合もあると言われており、 これも試みる価値はあります。 ------------------------------------------------------------ c)米国心臓協会(AHA)心肺蘇生法 国際ガイドライン2000 2000年8月、米国心臓協会では心肺蘇生法関連する下記のような二つの 重大発表がなされました(これを国際ガイドライン2000といいます)。 1)一般市民には「迅速な通報と心臓マッサージのみを行い、人工呼吸は しなくても良い」と簡易化されました。 この背景には、欧米でのエイズなどの感染症の拡がりに伴い、口対口の 人工呼吸に抵抗感を感じる一般市民が増えており、その結果、救急現場 での心肺蘇生施行率が低下している現状があるからです。 また、従来から心臓マッサージにより虚血に弱い脳細胞に対する脳循環を 維持する重要性が強調されており、心肺蘇生法(CPR:Cardio-Pulmonary Resuscitation)よりも心肺脳蘇生法(CPCR:Cardio-Pulmonary Cerebral Resuscitation)という名前が適していると言われていました。 更に、心臓の発作の場合の救命処置として、人工呼吸と心臓マッサージ を併用した救命処置と、人工呼吸を行わずに心臓マッサージのみを行った 処置に救命率で差が無く、むしろ早期除細動を前提とする場合には、心臓 マッサージのみ方が除細動可能な心室細動を維持するのに有利である根拠 が示されたこともあります。 2)一次救命処置において下記のABCが強調されていましたが、今回「D」 が追加されたことです。 A:airway B:breathing C:circulation D:defibrillation(除細動) Dとは自動体外式除細動器(AED;下記)を用いた除細動のことで、医 療従事者のみならず保健婦、運動トレーナなどの健康指導者に対しても、 一次救命処置として心肺蘇生法のみならず自動除細動器(AED)の習得が求 められています。更に今回のガイドラインでは、一般市民にも心停止の際、 速やかなAEDの使用が薦められています。 一般市民の行う救命手当について、もう少し詳しくご紹介します。 1)気道確保の前に呼吸の確認を行わなくてもよくなったこと 2)心停止確認のための頸動脈の拍動の触知がなくなり、「循環のサイン」 の確認に変わったこと 3)心臓マッサージの速さが100回/分に統一されたこと 4)救助者が二人の場合も心臓マッサージと人工呼吸の比率が15:2となっ たこと 5)電話での心肺蘇生法の指導や口対口人工呼吸が行えない状況では, 心臓マッサージだけでもよくなったこと、などです。 その他の変更点などは参考サイトでご確認下さい。 勿論、心肺蘇生法として従来の方法が否定されたわけではありません。 しかし、口対口の人工呼吸を行わなくて良いのであれば、蘇生法を覚えるの も、実行するのも簡単で、口を合わせなくて良いのなら蘇生法に協力すると いう声も少なくありません。また、寧ろ心臓マッサージに集中できるので、 より効果的に脳循環を維持できる、という見方もあります。心停止を前にし て何もしないよりはした方が遥かに有益なことは間違いなく、兎に角、「先 ずは心臓マッサージ」と覚えて下さい。 ------------------------------------------------------------ d)自動体外式除細動器(AED;Automated External Defibrillator) 現在、我が国で使われている普通の除細動器は、病院内に設置する携帯に 不向きな大きな機器で、心電図のモニター波形から医師が心室細動を判断し、 電気ショックのエネルギーも医師が決めて充電し、医師の判断の元に通電す るものです。 しかし、コンピュータが発達し、医師でなくても機器が心電図を判読し、そ の不整脈が電気ショックを必要とするものか否かを判断し、更にそれに基づ き通電ボタンを押すべきか否かを音声で教えてくれる、という時代になりま した。このような機器を自動式体外除細動器(AED)と呼び、重さも2〜3kgと 軽くコンパクトなので携帯も可能です。こうなると、その機器の使い方さえ 数時間の講習で会得していれば、一般市民でも充分、通電を行えるようにな ったのです。但し、緊急時の心室細動と心室頻拍だけが適応となり、心拍に 同期させた他の不整脈の除細動には使用出来ません。 除細動器はアメリカでは実売価格が20-30万円程度と言われており、既に 消防車やパトカーのみならず、飛行機などにも常備され、空港やホテル、 ゴルフ場、スポーツジム、ショッピングセンター、学校、会社のビルなど、 人が多く集まる場所に配備されつつあります。しかるに我が国では、その定 価は70-90万円と高額で、全医療機関に設置が望まれたとしても、医業経営 の厳しい昨今、使用するかどうか分からない医療機器の購入は容易ではなく、 まして公共施設への常備などいまだ耳にしたことがありません。 国産の除細動器が開発されていないのも疑問ですが、日米での医療機器の 価格差は、いつも問題になることであり、先ずは医療機器の関税廃止などで 価格を下げるなり、機器購入の補助を行なうなど、出来るだけ多くの医療機 関に設置できる体制作りを望みます。全ての医療機関に設置できれば、心停 止への対応は今より素早くなり、全国の開業医による一般市民の啓蒙活動も 促進され、その結果、救命率は格段に上がると期待されます。 --------------------------------------------------------------- e)日本におけるAED導入に向けての現在の動きについて 心臓発作の場合、倒れた人を見つけた一般市民が4分以内に心臓マッサージを 開始し、8分以内に除細動を行えた場合には、半数近くを救命し得ると言われ ています。一方、心臓マッサージが8分以上行われず、除細動開始まで16分以 上掛かった場合、例え専門病院に運ばれても、救命し得るのは1割に満たない と言われています。このように、心臓突然死を防ぐ最大の手段は一般市民によ る迅速な心臓マッサージの開始と、可及的速やかな除細動の実施であり、その 為にはAEDがすぐに使用出来るところに設置されていなければなりません。 一方、その具現化には、1)非医師によるAED使用と医師法との関係、2)AED 使用に伴う結果の賠償責任、など、クリアしなければならない問題も抱えている のは事実ですが、事が「待った無しの人命救助」であり、直ぐにその場で行動を 起こせなければ意味がありません。善意での救命への協力が訴訟の対象となった り、その結果を非難されるとすれば、誰も協力しなくなると思います。 「従来、心室細動に対する除細動は医療行為とみなされ、医師法で医師以外は 除細動ボタンを押すことが出来なかった。しかし、急増する心臓突然死対策の 一環として、1992年4月より救急救命士制度がスタートし、心停止患者に対し てAEDを使用し、医師の指示の元で除細動ボタンを押すことが出来るようにな った。 また国際的なAED導入の動きを受け、2001年12月に日本航空国際線にAEDが 搭載され、客室乗務員が医師の指示無しでも除細動ボタンを押すことが出来る ようになった。2003年4月からは救急救命士も医師の指示無しにAEDを使用し 除細動が出来る予定になっており、ようやく、日本においても4分以内の心臓 マッサージ、8分以内の救急救命士による早期除細動が可能になる。」と河村 先生は述べておられます。 また日本循環器学会では「2001年3月にAED検討委員会を設立し、広く非医師 による除細動を可能にすることを目的にしてAEDの導入の検討を開始した。 2006年からは医師の2年間の卒後研修の中で、一次救命処置とAEDを含めた 心肺蘇生法の修得が義務付けされることになっている。」とのことです。 是非、皆さんも考えてみてください。河村先生たちの兵庫県の運動が全国的な 運動になることを期待しております。 ------------------------------------------------------------- ○関連サイト 1)兵庫県立健康センターホームページ http://www.hyogohsc.or.jp/default.htm 2) 河村剛史先生の書かれた記事は「掲示板」からたどってください。 http://www.hyogohsc.or.jp/k_hiroba.nsf/By%20Category?OpenView 主な掲載テーマ 一般市民が行うAEDを使用した早期除細動(PAD) パブリック・アクセス除細動器(AED)への展望 新しい救命救急戦略:医師が携帯する半自動除細動器 心肺蘇生法はスポーツマンシップ 中高年の運動に伴う心臓突然死の危険性と予防策 心肺蘇生法の市民啓発の問題点:「命の教育」 「救急救命士制度における医師の関わりについて」―心臓突然死の救急体制― 3)ガイドライン2000に基づく救急蘇生法 http://www.jlsa.jp/g2000.html 4)新しい心肺蘇生法の指針 変更点 http://www.dainippon-tosho.co.jp/hotai/chuhotai/chuu2/chu%7Fgl2000.htm 5)成人の心肺蘇生法 http://square.umin.ac.jp/enzan119/G00adult.html#CPR 6)ガイドライン2000 http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/9511/records_guidelines2000.htm 7)AEDの海外価格 http://www.aedsuperstore.com/ 8)社会と人を変革するサービスを提供するのがNPO http://www.katc98.com/katudo/20010708_2.htm ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ B)医療特区について a)医療と市場原理の導入について 聖域無き構造改革を旗印とする小泉内閣は、来るべき高齢化社会に向け、マ スコミを総動員しての医療費削減を主張しています。しかし、既に何年も前か ら国庫負担から支出される社会保障費の割合は、どんどん減らされており、こ の10年間では10兆円もの額が削られ、その代わりに患者さんの負担は年々増や されています。因みに、先進国では社会保障費は公共事業費の3〜4倍ですが、 我が国では2/5に過ぎません。具体的には公共事業費は85兆円。公的年金は 40兆円、医療費は30兆円。ちなみにパチンコ産業も30兆円です。この公 共事業費は世界最高レベルです。サミット6カ国の公共事業費を合わせた額よ りもまだ多いのです。国家予算の配分を欧米と比較すれば、日本は低負担で低 福祉の国と言えます。発展途上国なみである。欧米並みに日本の公共事業費を 半分に減らせば、医療は全額無料となります。一方、政府の医療制度改革とい う美名の元に、より医療費の削減を目指しております。 また経済特区に合わせてむりやり、医療に市場原理を持ち込もうと画策して おります。先日行われたシンポジウムでは、政府あるいは総合規制改革委員会 の委員の方々の御意見は、鈴木氏の「患者を前にした医師の気持ちもわかるが、 どうやって金をつくるのか。ない袖は振れません。」と言う御意見に尽きると 思われます。財源がないから混合診療を導入する。医療は基本部分だけにする。 あとはお金のかかる医療は任意保険とする。国にお金がないから、あとは国民 各位の自己責任の原則で行いなさい。任意保険に入れない方は医療は受けれな いといっているに等しいわけです。高齢化少子化社会の医療の在り方。医療は 病気により、社会から落ちこぼれた方々のセーフテイネットであるということ をどう考えるのか、医療の財源を確保しなければ、医療の質は維持できないこ ともあきらかです。質の向上と同時に医療の効率化も行わなければいけません。 医療を含めた、限られた社会資源の配分をどの様にすればよいのでしょうか、 社会的弱者に対する福祉の在り方、国の予算の在り方、社会のありようまで問 われることになります。どういう社会モデルが望ましいのか、考える必要があ ると思われます。 医療と市場原理の導入については、別の機会に詳しくお伝えしたいと思いま すが、本号では、官邸発表の「構造改革特区推進のためのプログラムの決定」、 と先日開業医の有志が主催して行われた「医療経済特区に関するシンポジウム」 の内容をご紹介します。 ここにはかかりつけ医通信の編集委員である本田医師がコーディネーターと して参加しました。 -------------------------------------------------------- b)構造改革特区って何??(構造改革特区担当大臣 鴻池祥肇) また、世界最先端の医療を受けるために日本人が大金をかけて外国に治療 しにいくという話を聞いたことがあると思います。でも、わざわざ外国に行 かなくても、そのような場所が日本にあればいいにきまっています。世界屈 指の優秀な専門の医者に診てもらえ、最新の機器があり、その上サービス満 点の看護婦さんもいる、なんて場所が日本にあれば素晴らしいじゃありませ んか。そのためには、外国人の優秀な医者が診療することが必要となったり、 多くの資本を集めるため病院が株式会社になったりすることが必要かもしれ ませんが、このようなことは、今の制度ではできません。 このような今の制度を、日本の特定の地域や場所に限って変えてみて、そ の地域の活性化につなげたり、患者さんのためになったりするようにする制 度を作ろうとするのが、この構造改革特区制度なのです。今の制度を日本全 国一律に変えようというのではなく、地域の特性に合うという条件で、その 場所だけ変えるのですから、ものによっては1カ所だけかもしれないし、そ れでもいいのです 以上小泉メールマガジン70号より一部引用。 構造改革特区推進のためのプログラムの決定(02/10/11) http://www.kantei.go.jp/jp/koizumiphoto/2002/10/11tokku.html ----------------------------------------------------------- c)医療経済特区に関するシンポジウム 医療と市場原理を考える(医療経済特区によせて) http://www.cminc.ne.jp/orcademo/tokku0211.htm#003 JapanMedicineニュース 2002年11月29日号(発行:じほう)より シンポジウムの内容を紹介します http://www.japan-medicine.com/ ------------ここから---------------------------- 「医療特区」でテレビ討論、開業医有志が主催、全国30か所に中継 株式会社参入、混合診療で議論白熱 若手開業医の有志でつくる新世代医療政策研究所の定期勉強会「医療 特区シンポジム」が26日、東京都千代田区のNTTブロードバンドイニ シアティブ本社で開かれ、議論の内容が同社のインターネット会議シス テムで全国の各地区医師会館など約30か所に同時中継された。 政府の総合規制改革会議の鈴木良男委員(旭リサーチセンター社長) ら4人がシンポジストとして出席。開業医や医師会から「特区は現場を 知らない人の議論」「一番問題の小児救急が議論されていない」との質 問が飛べば、シンポジストが「それでは、小児救急の点数アップを特区 として提案してください」と応酬するなど、株式会社参入、混合診療の 問題などで白熱した議論が展開された。 シンポジストの4人は、総合規制改革会議の鈴木委員と八代尚宏委員 (日本経済研究センター理事長)、前自民党行政改革推進本部事務局長 の熊代昭彦代議士、富士通総研経済研究所主席研究員の松山幸弘氏。司 会は自院に設置したカメラとマイクで参加した青森県八戸市の本田整形 外科クリニック院長、本田忠氏が務めた。 -------------------------------------------------------- 議論のやり取りは次の通り。 本田氏「医療の質は上がるか」 八代氏「選択の余地が増える」 本田氏 いったい医療の競争とはなんでしょう。医療は技術です。手 術成績を上げたければ、自分で技術を磨けばいい。 八代氏 おっしゃる通りです。その自分で訓練するインセンティブが 競争です。患者はよい技術の医者に診てもらいたい。だから病院のほう から、自分がいかに勉強して新しい技術をもっているかを情報開示して 選んでもらう。医師が勉強せざるを得ない構造をつくるべきです。 本田氏 株式会社の参入によって、医療の質は上がりますか。 八代氏 患者からみれば、多様な主体の病院が競争することで選択の 余地が増えます。 本田氏 病院を株式会社にすれば、配当金の分だけ治療費が上乗せさ れるのではないでしょうか。 八代氏 病院はいま、銀行や事業団からお金を借りて利子を払ってい ます。株式会社の配当に相当するのが金融機関の利子で、安いほうを選 べばよいという話です。皆さんは患者を食い物にするのではと心配され ているが、患者の利益を守るために競争がある。そのためには参入はで きるだけ自由化したほうがよい。 本田氏 遺伝子治療などの高額医療を混合診療にした場合、患者の負 担金はどうするのか。民間の保険会社だけに任せておいてよいのか。現 場の医者として、患者を目の前にして「3000万円かかりますけど、保険 に入ってないのであきらめてください」とはいえません。 鈴木氏 患者を前にした医師の気持ちもわかるが、どうやって金をつ くるのか。ない袖は振れません。 八代氏 公的保険は基礎的医療を、民間保険はそれ以上をやる。遺伝 子治療は新しくできたもので膨大なお金がかかる。希望する人すべてに 適応すると公的保険はパンクします。 いま総合規制改革会議で検討しているのは、質の高い医療機関の資本 コストも混合診療の対象にしていいのではないかということです。高い 質が提供できるしかるべき投資を行った医療機関は、それなりのコスト がかかっているから、そのコストを患者の自己負担でカバーしていく。 例えば保険点数を質の高さに応じて1点10円を11点とか12点にし、 1、2点分の差額を混合診療の対象にするんです。 ● 医療特区 開業医「現場を知らない人の 議論」 鈴木氏「いずれ現場の声も…」 東京都の開業医 医療特区構想は、現場を知らない人の議論のように 思えますが…。 鈴木氏 改革会議はいま、核の部分を検討していますが、いずれ現場 の声も聞かせてほしいと思っています。 長崎県医師会 特区構想は都市型の感じが強い。長崎は県民所得が低 く、これまでも自己負担が増加したときは必ず受診抑制につながった。 混合診療が増えると受診率が低下する。弱者の切り捨てはよくない。 鈴木氏 弱者というと、表だって批判できない雰囲気があるが、日本 のなかに果たしてどれだけの弱者がいるのか。日本は、世界で最も公平 に所得の配分ができている国だと思う。弱者というのは感傷論にすぎな い。 八代氏 私の理解では、いまの保険はそのままで自由診療の部分に混 合診療を適用しようということです。自由診療だけだったのが混合診療 となるのだから、むしろ受診が増えるのではないか。特区構想は都市型 との指摘ですが、離島の遠隔診療はいまは自費で、これを混合診療にす れば患者の負担は減るわけです。 松山氏 弱者といえば私が心配しているのは失業率上昇です。働けな いから保険料も払えない。ひとつの方法として、地域で自立して財源を 出すようにしていく方法があると思います。 奈良県の開業医 いま一番の問題は小児の救急医療です。この問題を 一番に考えてほしい。 八代氏 一般的な市場経済の原則では、不足しているものは値段が上 がり、うまみを感じて供給も増えていくんです。しかし医療は公定価格 だから、そうはいかない。医療機関の持ち出しというのが、これまでの 原則でした。従って、小児の救急も不足しているんです。ですから特区 を利用して、奈良県で小児の救急に特別の加算を提案してみるのもよい のではないでしょうか。 -----------ここまで------------------------------ ○反論 http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/kouritu.html 総論:医療と市場原理(効率化を考える) http://www.orth.or.jp/seisaku/syutyou/eiri.html 各論-医療の営利と非営利を考える ---------------------------------------------------------- ○参考文献 第12回規制改革委員会議事概要 http://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku-suishin/12nen/dai12/12gaiyou.html 公開討論(その3) 「優れた医療を提供する者が報われる医療システムの在り方について」 規制改革委員会(12.05.01) http://www.kantei.go.jp/jp/gyokaku-suishin/12nen/meibo.html 行政改革推進本部規制改革委員会規制改革委員会 http://www.med.or.jp/nichinews/n121105h.html 平成十二年度規制改革委員会の医療に関する公開討論会 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 【WEB】 http://homepage1.nifty.com/hone2/kakari/ ご意見・ご感想等ございましたら、以下のメールアドレスへ 【MAIL】 nagashi@t-cnet.or.jp --------------------------------------------------------- 購読のお申し込みと削除は、上記のホームページから直接出来ます。また過 去に発行したメールマガジンはこのホームページで参照可能です。 ---------------------------------------------------------- 最近、読者の皆様から編集部宛にいろんなメールをいただいております。皆 様からのご意見も参考にして、メルマガ「かかりつけ医通信」の紙面づくりに 生かして行きたいと考えておりますので、どうぞご意見をお寄せ下さい。また 皆様から寄せられたメールも、出来るだけ紙面でご紹介していきたいと考えて おりますので、事前の承諾なしにメルマガに掲載させていただく場合がござい ます事をご了解下さい。匿名などのご希望や、掲載を望まれない場合には、そ の旨御明記願います。 ---------------------------------------------------------- 【発行】「かかりつけ医通信」発行委員会 当委員会は、趣旨に賛同した医師による、自発的な会です。 他の既存の団体や会社に所属しているものではありません。 【編集】 (委員長)長島公之:長島整形外科(栃木県) 整形外科医 http://www.t-cnet.or.jp/~kotui/ (委 員) 安藤潔:荒川医院(東京都) 内科医 http://www2u.biglobe.ne.jp/~andoh/ 外山 学:益田診療所(大阪府) 内科医 http://www.toyamas.com/masuda/ 本田忠:本田整形外科クリニック(青森県) 整外外科医 http://www.orth.or.jp/ 牧瀬洋一:牧瀬内科クリニック(鹿児島県) 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