メルマガ:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学
タイトル:タンポポ塾の家造り雑学的総合大学  2003/01/07


   今週のメルマガ   第 3 号 平成14年 9月19日 発行

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            タンポポ塾の家造り雑学的総合大学

       建築関係の訴訟・マンション監理・登記実務・家族間の法律等の
     実務事例集と判例解釈のゴチャマガジン。
     全部読んだら、あなたも不動産実務大学の卒業生になれるかも?

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        発 行 人                      株式会社 ダイヤ設計

                一級建築士 土地家屋調査士 行政書士  目黒碩雄
                           TEL:048-853-3587 FAX:048-855-0360
                                   メール:kdaiya@f7.dion.ne.jp
                           URL:http://www.h3.dion.ne.jp/~daiya
               〒338-0005 埼玉県さいたま市桜丘1-12-5 ダイヤビル2F

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     発行人ごあいさつ

    下記の項目について、週に1回の割合で発行する予定です。
    実務家が本音と経験事例で語るマガジンを目指します。
    どうぞ、2回、3回と継続して読んでみてください。一味違うはずです。
    又、トピックとして連載文も掲載してます。

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    今週の目次項目 

    ○発行人ご挨拶  
    ○今週の解説 3回目
      建築訴訟(民事訴訟)は、当たり前だけど正義が勝つとはかぎらない。
    ○これからの掲載予定リスト(第1号をご覧下さい)  
    ○本の紹介 めちゃ安で建つ 3回目
        

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   今週の解説 3回目

   ◎建築訴訟(民事訴訟)は、当たり前だけど正義が勝つとはかぎらない。
   

   民事訴訟の法のそもそもの建前は、原告と被告の両者を土俵の上に乗せて、行
   司である裁判官がその勝負(これを法律用語では民事訴訟における弁論主義とい
   います)を、判定することに尽きるとおもいます。
   この勝負に、行司である裁判官は一切、手を出しません。
   その本質は、両者にケンカをさせて、勝者を裁判官が判定するということに外
   なりません。

   刑事事件であれば、原告には検事さんが、被告人にはお金がなければ国選の弁
   護士さんが、ケンカ両者のそれぞれの味方をしてくれます。
   この点が、公法である刑事訴訟と根本的に違うところです。

   従って、その勝負(裁判)が長くなれば、体力の弱い方は負ける可能性が高く
   なります。
   この場合体力とは、おもに経済力と言い換えてもいいかも知れません。(残念
   な事ですが。)
   
   又、双方が疲れてきた場合は、最後まで相撲をせずに「和解」という手続きで、
   勝負を終りにすることもあります。
   
   

    ■ 事  例
   
   私の事務所で以前、ある不動産会社より、事務所兼工場の確認申請用の図面と
   構造計算の仕事を依頼されました。
   しかし、その会社には建築士である社員がいるということで、現場管理と
   設計監理の業務の依頼はありませんでした。(この点が後々問題になります)
   
   この建物、何しろバブル期に完成しましたので、その一ヶ月の家賃が300万
   円以上もする建物でした。
   その後バブルが崩壊して、世の中が不景気になってまいりました。土地価格も
   値下がりし、借主である会社にとっては、現行の家賃は少し高すぎる、と考え
   ていたのでしょう。
   
   やがて、賃貸借契約の更新の時がきました。
   賃借人の立場からすればこの時とばかり、更新の時に家賃の値下げ交渉を貸主
   に要求をしましたが、その値下げ金額の合意には至りませんでした。
   
   そこで、借主である会社は「貸借減額訴訟」を提起しました。
   その裁判のなかで、借主側の値下げの「請求の趣旨」として、この賃借建物の
   構造上の欠陥を指摘していた事実があります。
   
   そして確認の図面を書いた私の事務所に、建物の鑑定依頼がきたわけです。
   
   しかし、地盤から上部の構造体については、調査と測定は可能ですが、地盤か
   ら下の基礎と杭についての調査は、簡単にはいきません。
   施工した会社は、すでにバブルが崩壊とともに倒産し、社員の監理建築士も
   行方不明です。
   実際に施工された、杭の長さとその直径を計測することは、経済的にはほとん
   ど不可能です。
   上部の構造体については、すべての構造部材を計測し構造計算を再度した結果、
   「建築基準法」上ほとんど問題はありませんでした。
   しかし、地中の基礎と杭については、明確に安全であるとの鑑定書を作成する
   ことができません。
   あまりにも、調査費用がかかりすぎます。
   
   その結果、大家さんとしては、諸般の事情を考慮し、ある程度原告側の要求を
   いれて値下げすることで、和解を成立させることにしました。
   
   

    ■ 実務のコメント
   
   手前ミソになるかもしれませんが、設計監理料を惜しんではいけません。

   裁判での相手側の「請求の趣旨」は、ほとんど構造上の欠陥の指摘一本であり
   ました。
   もし、貸主の側に潤沢な裁判の費用があれば、和解せずに実質的には勝てた
   裁判でした。
   
   家賃というものは、この建物のある限り半永久的な収入となり得ます。
   実質的には、和解とはいえ敗訴と同じです。
   この裁判の結果数千万円の損害です。

   

   今週はここまです。

    これからの掲載予定リストは、第1号をご覧下さい。


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   今週の連載文 本の紹介 第3回

      「頑丈で快適なわが家がめちゃ安で建つ」 松田源冶著

         著者紹介は第1号に掲載してあります。
         目次は、第2号に掲載してありますので、ご参照下さい。
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   第二章 マイホームって誰のもの
        「行政は何もしてくれない」はご勝手にどうぞだから
   

    わが国の住宅建築費(新築)は、他の先進国の2倍〜3倍以上。維持管理費、
   中古住宅市場などを考え合わせると比較にならないほど「めちゃ高」なのです。
   その理由に「国や市の建築行政が業者主軸にあって、一般市民に隠密行政を行
   っているからだ」と言ってしまうのは簡単ですが、本書は、施主には少々辛口、
   いや激辛かもしれませんが、今日の悪政が彼らのせいだとしたら、その悪政を
   招いた張本人は、彼らを選んでしまった私たち一般市民なのです。そして、わ
   が家を悪魔のサイクルにした最大の功労者も、その悪魔に嘆き苦しんでいる施
   主自身なのです。
   
    行政に頼っても施主の満足など得られません。満足したいなら、建築の実務
   に積極的に関わって、行政や業者が曖昧にする「施主の負うべき責任」を施主
   自身が明らかにするしかないのです。例えば坪60万円のブランド住宅を坪4
   0万円ぐらいで建てたいと思うなら、その差額20万円分のリスク責任を施主
   が負うことで、実現できるのです(もっともそのリスクは、実務者にはリスク
   とは言わないリスクだということが、次第に明らかになっていきます)。
   

     ○建築行政と金融公庫のカラクリ
   
    「住宅建築=金融公庫」と云われるぐらいに世に浸透している住宅金融公庫
   が「基本貸出枠1000万円。金利2%」になったことがありますが、金利を
   下げて貸出枠を増やすということは、「金利を下げるからたくさん借りろ」と
   いうことです。つまり、ただ単に「金利が下がったからトク」などと思ったら、
   お尻の毛までも抜かれてしまうのです。だってそうでしょう。金利が下がって
   も、借りるお金が多くなれば施主の負担は増えるのです。例えば800万円を
   金利3%で1年借りたら824万円、1000万円を金利2%で借りたら10
   20万円の返済だから、1000万円の方が、金利は4万円の得ですが、総返
   済額は196万円も増えるのです。もちろん、あなたが反論する「何も100
   0万円借りなくても、800万円を借りて2%の金利なら816万円で8万円
   の得だし、その分総返済額も減るじゃないか」もなるほどそのとおりです。そ
   こで、次のような会話をあなたが知ったらどう思われますか。
   
   
   ・行政 住宅が売れないと税収が落ち込んで困るよ。価格をもっと下げたらど
   うなんだ。
   
   ・業者 そのように申されましても、これが精一杯です。これ以上下げたら遣
   っていけません。実は、今日伺ったのはその事なんです。もう一押しです。も
   う一段金利を下げるとかしてバックアップして戴けないでしょうか。是非とも
   お力添えをお願いしたいのですが。
   
   ・行政 これ以上金利を下げたらどうなると思う。この前下げたばかりだし、
   いま税収が落ち込んでいると言ったじやないか。公庫は国民の税金だよ。民間
   と一緒にしないでくれ。
   
   ・業者 ごもっともです。しかし、私たちもいろいろと手は尽くしてはいるん
   ですが、このままでは、わが社、いや私たち建築業者は倒産してしまいます。
   もしそのようなことになったら「税収が落ち込む」なんて言ってられません。
   どうか思い切ったご決断をお願いします。
   
   ・行政 金利を下げたぐらいで、ほんとに消費者は飛びついて来るのかね。現
   に・・・。
   
   ・業者 いや、今度こそ期待できます。やるなら早いほうが良いんです。顧客
   は、このところの頻繁な利下げで、もっと下がるんじやないかと購入を迷って
   いるんです。ここで「もうこれ以上は絶対下がらない」という思い切った利下
   げをすれば、その顧客たちは必ず飛びつきます。とにかく早ければ早いほど良
   いんです。ご決断をお願いします。
   
   ・行政 よし分かつた。でも、何度も言ってるように公庫のお金は国民の税金
   なんだから減らすわけにはいかないんだ。もちろん金利収入もだ(減らせば職
   員の給料に響く)。そこで条件だが、金利を下げるが変わりに貸出し枠を80
   0万円から1000万円にする。良いか、何が何でも1000万円の融資をし
   てもらわんと金利を下げる意味が無くなるんだ。それを絶対条件に金利を2%
   まで下げようじゃないか。
   
   ・業者 2、2%ですか・・・、ハイ分かりました。まさか2%の数字がいき
   なり出てくるとは、恐れ入り ました。さすが先生、手前どものことは全部お
   見通しのご様子で。その条件、しかと納めさせて戴きます。何卒宜しくお願い
   致します。
   
   ・行政 当然だよ。この数字だったら文句を言う市民は誰も居まい。私は常に
   先の先、そのまた先をよんでるんだよ。それに、そろそろ君たちがやって来る
   頃だと思ってね。とにかく、税収が落ち込んで困ってるんだ。念を押すが、1
   000万円、本当に大丈夫だろうね。
   
   ・業者 何をおっしゃいます。2%ですよ。それに今までもキチンと条件を呑
   んできたではありませんか。
   ご心配にはおよびません。先生がおっしゃるように「政府は立派な決断をした」
   と市民は大喜びですよ。確かに、近頃の施主は賢くなつたと云いますが、建築
   のことにはまだまだ相当疎いですから、私どもの出方によってどのようにもな
   りますよ。
   
   ・行政 おいおい口を謹んでくれよ。くれぐれも欠陥住宅だけは気を付けてく
   れ。阪神淡路の大地震からこっち、国民の欠陥住宅に対する関心は相当強くな
   っているようだからナ。もっとも、欠陥住宅は我々にはあまり関係ないがね。
   とにかく、その絶対条件だけは必ず守ってくれよ。あっ、そうそう、金利引き
   下げは今回が本当に最後だ。これ以上はもう絶対下がらないから、それを肝に
   命じて置いてくれ。後は頃合いを見計らって徐々に上げていくだけだ。
   
   ・業者 さすが先生、先の先、そのまた先をよんでいますね。まことに恐れ入
   ります。それをお聞きして私たちの迷いも完全に消えました。例え万が一のこ
   とが有りましても先生には絶対ご迷惑をお掛けしませんのでご安心ください。
   これで顧客の購買意欲が高まることは間違い有りません。何しろ、前代未聞の
   超低金利ですからね。私たちも無理な価格競争をしないで済みます。本日は貴
   重なお時間を項戴し、また最高のご回答を頂き、本当にありがとうございまし
   た。それでは、その話はこれぐらいにして・・・。
   
   

    こんな風には考えたくはないのですが、もし建築業者がその政策決定を悪用
   して800万円の建物を1000万円に値上げしたら、あなたはどう思います
   か。
   
    以前、「近い将来、住宅価格を現在の3分の2にする。サラリーマンが年収
   の5倍で住宅を購入できるようにする」などというビジョンを政府が掲げたの
   を覚えていますか。幸い、その頃からすればマンションや建売住宅などはいか
   にもその通りになったような気がします。
    しかし、それは土地価格が暴落したからであって、これといった施策はその
   後何も出ていません。政府は、土地が暴騰したバブルのときと同じで、傍観者
   に過ぎません。行政に言わせれば「それも政策の内」なのでしょうが、住宅メ
   ーカーや建売住宅の建築費は「提示額は坪60万円以上。実施工事費は30万
   円以下」というように、バブルと言って良いぐらいに高くなっているし、住宅
   金融公庫の「貸出限度額の大幅増加と貸出条件の緩和」で施主は金融のカラク
   リに見事にのせられてしまうのです。
   
    ところで、なぜ施主は、高い金を払って買う土地や建物に、賃借料みたいに
   固定資産税を毎年払うのですか。なぜ年毎に価値の下がる建物に毎年同じ固定
   資産税を払い続けなければならないのですか。あるいはまた、なぜこれほどま
   でに税は複雑で曖昧なのですか。もちろんそれは中味を知られたくないから、
   つまり中味を知る者だけが税金を払わなくても良いようになっているからです。
   それは、税金を納めない高所得者や企業が後を絶たないということでも解ると
   思うのです。
    お金の流れには収入と支出しかありません。と考えれば、税金はそんなに難
   しいものではないはずなのです。それを、難関突破の猛勉強をしなければ分か
   らないように難しくするから、正直者の国民が「バカバカしい。どっかに逃げ
   道が有るはず」などと考えてしまうのです。
    ちなみに、以下は、筆者の考えた住宅政策です。
   
   
   【住宅建築費の三割補助】
     米の生産をしない稲作農家に、米を作らせないための補助金(税金)を乱
   発するなら、住宅建築費に補助金を出した方が景気回復につながるし、強いて
   は農家の人にも経済効果を期待できると考えます。そりゃそうでしょう。農家
   の人には悪いけど、農家に渡す補助金は農家の人の生活費で、農家の人の労働
   意欲を削ぎ落としているに過ぎません。でも、住宅建築費に出す補助金は、庶
   民の購買意欲と労働意欲を駆り立ててくれます。もちろん、その補助金を出す
   ことによって自ずと欠陥住宅に対する行政や施主の監視はそうとう厳しくなる
   はずなのです。
   
   【住宅建築価格の算定基準の抜本的改革】
    例えば、「住宅資材と住宅機器の仕入れ価格の公開と請負工事見積書の標準
   化」というのを建築業者に義務付けたらどうでしょうか。つまり、建築の資材
   や機器の仕入れ原価が消費者に分かるようにするのです。そうなれば、仕入れ
   価格に利益をたっぷり上乗せしておきながら、「奥さんだから特別。儲けなし
   の仕入れ価格でサービスさせていただきます」などという詐欺的商法は無くな
   るし、自ずといい加減な建築業者は淘汰されます。建築業者の利益は、サービ
   ス・技術の良し悪しで決まらなければならないのです。
   
   【住宅金融公庫の金利ゼロ】
     金融公庫の財源元は国民の金です。「国民の税金だからこそ金利は負担して
   もらわなければならない」の反論はもっともですが、金利2%の時の国民の反
   応から診て、金利ゼロには計り知れない経済効果が期待できます(住宅需要が
   活発になれば自ずと国の経済が活発になって税収も増える)。
   また、金利ゼロにすれば行政の目も国民の目も厳しくなって、これまでのよう
   な業者利益優先の行政も、先に掲げた「行政と業者の会話」のようなことも無
   くなると思うのです。
   
   【住宅取得税はゼロ】
    土地には消費税が課せられません。その理由は「土地は高く取得税も高いか
   ら消費税は課すべきではない」という単純な理由からです。でも、同じ不動産
   でありながら、建物には消費税も取得税もあるのです。それでは「消費税=取
   得税」と考えたら税の二重取りです。とにかくわが国の住宅の建築費は、戸建
   て住宅の場合、ニューヨークの3.5倍、パリの4倍(1998年1月 国土
   庁)と高過ぎます。消費税を取るなら、せめて取得税をゼロにすべきです。で
   なければ、消費税ゼロです。どっちが行政にやり易いかと言ったら、取得税の
   特別控除などという七面倒くさいことをしなくて済むし、経費(税金)の節約
   にもなるから取得税ゼロです(とは考えられないのがわが国の行政)。
   
   【中古住宅の市場確立と鑑定の制度化】
    中古住宅の市場性を高め、増改築等によっても住宅価格が適正な鑑定のもと
   に評価されるような法的システムを構築する。わが国には、建物を増築や改築
   をしても、売却するときはその価値を認めないという不思議な慣習が在ります。
   つまり、中古住宅の売却価格に増築や改築の価値が反映されないのです。よく
   築〇〇年という言い方をしますが、その起点は常に新築された年に遡るのがわ
   が国の中古建物の取引です。例えば、総ヒノキで造った注文住宅と、安物材料
   を使い突貫工事で造った建売住宅とでは10年経ったらいずれも築10年で(
   当たり前だが)、「築10年だから建物の価値はゼロ」とどっちも同じ評価を
   される可能性があって、中古住宅はジャマ者扱いです。しかし不思議なことに、
   そういう取引を野放しにしておいて、増改築をしたり、中古住宅が売れれば、
   それに容赦なく固定資産税等の税金を課すのです。つまり、中古住宅が欧米並
   に評価されるようになれば、わが国の施主も住宅にもっとお金を掛けるように
   なるだろうし、その監視も厳しくなって、欠陥住宅などは激減するはずなので
   す。
   
   
    いかがですか。これぐらいのことは市民の誰もが考えつくことだと思います
   が、だからと言って行政だけを責めたつもりはありません。市民が行政を批判
   できるということは、市民と行政が上手くいっている証拠とも言えます。だか
   ら行政の批判は構いません。問題は「行政を批判する前に市民が何をしたか」
   なのです。施主が個人の判断で自由にできることを行政に言っても、行政は何
   もしてくれません。
   それは「勝手にどうぞ」だからです。つまり、その「勝手にどうぞ」を知らな
   い施主が、それを知る業者の言いなりになって、わが家を悪魔のサイクルにし
   てしまっているのです。
   
    生意気を言います。それを知らない施主のわが子も「悪魔のサイクルの施主」
   になってしまうかもしれないのです。業者任せにした住宅は高くなって当たり
   前です。欠陥住宅はその最たるもので、業者の言いなりになって過度に設備を
   増やせば、建築費ばかりか、それを維持する費用だってバカになりません。も
   しあなたがマイホームを購入したことで人生が狂ったと感じているなら、ある
   いは、わが子に十分なことをしてやれないと思っているなら、今直ぐわが子と
   「わが家」について語り合ってください。そして、いまから建築実務に参加し
   て頂きたいのです。そうすれば少なくても、それ以上わが家を悪魔のサイクル
   にしないで済むだろうし、わが子にあなたと同じ後悔をさせないで済むだろう
   と思うのです。もちろん、建築実務に参加するということは、施主が「業者任
   せ=施主不在」から脱却するということなのです。
   
    当然ながら、施主はわが家という一国一城の主です。わが国では、施主不在
   の住宅建築がまかり通っていますが、それを正すのは行政でも業者でもなく、
   その建築・購入を決定する施主自身(わが家の最高経営責任者)であり、実務
   に参加しようがしまいが、実務の最終責任は全て施主が負わなければならない
   のです。現に、「責任は全て業者にある」を強調する施主ほど、欠陥住宅に泣
   き寝入りしたり、無駄な建築費を費やして、自分の家族に負担を強いているの
   です。ズバリ言ってしまいますが、これから本書が提案する「施主よ、住宅建
   築の実務コンサルタントを雇って工務店の社長に成れ=工事の直営方式」を実
   行すれば、施主は、めちゃ安のマイホームに満足し、ゆとりのある暮らしがで
   きるのです。そして、そういう施主がどんどん増えれば、業者は「顧客第一=
   現場第一」にならざるを得ないし、行政も業者癒着の行政から施主主体の建築
   行政へと変わらざるを得なくなるのです。
   
    バブル崩壊の責任を、行政や不動産業者、あるいは本業そっちのけで不動産
   業者まがいのことをした企業や銀行などのせいにするのは簡単です。しかし、
   消費者に消費の自由がある以上、その最大責任は土地の末端消費者に有るので
   す。つまり消費者が自分の知る権利や義務を業者に主張し、消費者リスクをキ
   チンと把握できていたなら、バブル景気もバブル崩壊も無かったのです。言い
   換えれば、不動産バブルは、知る権利を放棄した消費者の無知・無頓着・無責
   任による不動産業者依存がもたらしたものなのです。
   
    特に、バブル景気の頃までの土地付き分譲住宅の購入者は、生活より投資、
   あるいは現実社会への見栄・ツッパリが先行し、不動産業者の販売テクニック
   でもあった「最初は狭い土地でガマンして、価格が上がったら広い家に買い替
   えれば良い」という類の土地神話の思いが根強くあったように記憶します。
   なぜ彼らは、「この土地が上がれば、他の土地も上がる。買い替えは、今より
   環境の良い広い土地・住宅が欲しくなる」とは考えなかったのでしょうか。
    かと思えば、その一方に、バブル崩壊で喜んだ人、つまりバブル崩壊で夢を
   実現できた人が居ます。
   そう、バブルの時に「わが家は夢」と諦めた人たちがわが家を持ったのです。
   もちろん、彼らには、バブルで高騰した土地や建物を買うゆとりが無かったの
   です。でも同時に、彼らは「今の俺にはゆとりがない」を素直に認めることの
   できた人たちで、ゆとりのない自分を診るゆとりが、あるいは今あるゆとりを
   失いたくないという見極めがあったのです。
   
   
     ○政治家に学ぶは「己の財産は己が守る」
   
    いったい満足とは何でしょうか。
   釣り好きの人は自分が釣り糸を垂れなければ満足しません。車の運転が好きな
   人は助手席には座りません。プレイ好きのスポーツマンは、とうてい観るだけ
   では満足できません。つまり、満足したい人は、満足したい人がその満足を釣
   るしかないのです。
   
    重い病気の人は、本人に「病気に負けたくない、治りたい」の強い意思が無
   かったら、その病気を克服することはできません。病院のドクターが、重体患
   者の家族に「手術は成功です。手は尽くしました。後は本人しだいです」と言
   ってるシーンを思い浮かべてください。また、よく「奇跡的に病気が治った」
   という言葉を耳にしますが、その奇跡がなぜ起こつたか、その奇跡の言葉を最
   初に発するのは誰か、と考えてみてください。もちろん、奇跡を起こしたのは
   患者本人であり、奇跡の言葉を最初に発するのは、治療の術を失い患者を見放
   したドクターなのです。つまり、奇跡とは、信じられない、有り得ないという
   ことですが、ドクターに見放された患者に奇跡が起こるのも、山で遭難した人
   が奇跡的生還をするのも、治りたい、助かりたいという本人の強い意志が有っ
   たからこそなのです。
    健康で長生きしたいとは誰もが思います。でもどうでしょう。今のわが国は
   「少しでも具合が悪かったらお医者さんに診せなさい」が蔓延り過ぎてはいな
   いでしょうか。
   
   それより、患者同士が「あの先生に診てもらうなら相場は〇〇万円。あの大学
   病院は〇〇万円。主治医にお金を渡すのは当たり前よ」などと真面目に情報交
   換し合っている様を目の当たりにするとゾッとしてしまいます。無知の患者を
   利用して暴利を貧っている病院やドクターが公然と存在することからして異常
   なのに、そういう噂の立つ病院やドクターほど、患者に一流と思われているの
   ですからたまったものではありません。とにかく、病気になるのも本人なら、
   病気を完治させるのも本人次第で、健康な身体は、健康でありたいと思う本人
   が作るしかないのです。

    「人の身体や病院がマイホームとどういう関係があるんだ」と思った人には
   ごめんなさい。ただ筆者は、自分の身体は自分が守らなければならないように
   「自分の財産は自分で守らなければならない。それには守る為の知識が必要だ」
   という当たり前のことを言いたかつたのです。

    司馬遼太郎さんがある本の中で「今の行政人たちは、処理家ばかりで体制製
   造家が居ない」と言っています。処理家とは、規制の価値観を打破して改革し
   ようと積極的に活動する体制製造家(革命家)に対して、なるべく規制の価値
   観の範囲内で事なかれの行動をし、自分の利と安泰を重視する非改革派・反革
   命家のことです。つまり司馬さんは「今の行政人たちは、自分の身を守ること
   で精一杯で、自分の都合の良い方にあつちフラフラ、こつちフラフラの掴みど
   ころのない連中ばかりだ」と言ったのです(政治家・行政人にも司馬さんのフ
   ァンが多いと聞くが)。
   処理家が大勢を成す政治家たちに期待しても、施主のゆとりある暮らしなど、
   いつ実現できるか見当もつきません。しかし、一つだけ彼らを真似るべきこと
   が有ります。そう、「わが身は自分が守る。自分の財産は自分で守る」という
   ことです。
   
    第二章 終わり 次号に続く



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   発行責任者より

    次回以降も各テーマについての具体的な解説を掲載致します。

      このメルマガについてご意見、お気付きになった事をお聞かせ下さい。
   取り上げてほしいテーマがありましたら、お知らせ下さい。多数の人の参考に
   なるものであれば、出来るだけ取り上げて見たいと思います。

   ■本通信の記事を許可なく転載する事を禁じます。
   ■掲載情報により生じたトラブルの責任は負いかねます。ご了承ください。
   ■ご相談のメール・FAX等に付きましては、当社HPトップページの
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