メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2002/12/15  2002/12/15


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月刊小説メールマガジン         2002年12月15日 発行
『君が好き!』  vol.50
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こんにちは皆様♪ この度めでたく50号目を迎えたメールマガジン君が好き!
です★ これも皆様のご愛顧のお陰です、ありがとうございます(*^ー^*)
これからもどうぞまったりどきどきお付き合い下さいませv
(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼君が御世に・12     篠原美姫緒
▼ドラゴンラヴァ・34  瀬乃美智子
▼あとがき
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              君が御世に12
                          篠原美姫緒
 彼の描く似顔絵は生き写しだともっぱらの評判である。水に映った自分の顔
や曇った銅鏡でしかみたことはないが、他人からみると自分がこのように見え
ているのだ、と笙子は驚いた。
「あの方は好き者ですからねぇ」
 中宮に話したところ、そっけない応えが返って来た。
「私のお父様もかなりの女好きですけど」
 中宮の父といえば、時の権力者、平清盛である。17歳のときに重盛が生ま
れ34歳で孫維盛が生まれたのである。その後に中宮徳子が産まれた。
「次々と女を求めてさまよっていらっしゃる。父も隆信殿も寂しいのですね」
「中宮さま、隆信どのはたくさんの女の方から愛されていらっしゃいますわ」
「そうですね。女は全力で男の方を愛します。愛するからこそ、女は美しくな
るんだわ。でも男の方は違う。元服を迎えようが歳をとろうが、いつまでも心
の中は子供…。」
 中宮はふっとため息をついた。中宮と高倉天皇はかれこれ結婚して4年も経
つのに、まだ子供ができない。それどころか、高倉天皇は女房と遊んでいると
のもっぱらの噂である。
「女が男を成長させるのよ。」
 中宮は声小さく言った。
「そして、いろいろ女を代えるのは、その女に満たされるものがないからでし
ょうね…。全力で愛しているのに…。」
 

 おもひわくかたも渚による波のいとかく袖を濡らすべしやは


 夜もふけった頃に、隆信が笙子にこんな歌を送ってきた。
 いっしょにながめていた中宮は
「こんどは笙子のようですね。まめなお方だこと」
 といって、ころころと笑う。
「ちゅ、中宮さま!」
「資盛もうかうかしていられませんね。最近いそがしくてちゃんと通ってない
のではないかしら。」
「ど、どどうしてそれを!」
「あら、資盛はよく相談にきてよ」
 中宮はおもしろそうに言う。
「身近な女性が、男と恋をして綺麗になってゆくのをみて隆信どのは慌てたの
ね。」
「もう、中宮さま。ご冗談はそこまでにしてください」
 軽くご挨拶代わりにと


 おもひわかでなにと渚の波ならば濡るらむ袖のゆゑもあらじを
 もしほくむあまの袖にぞ沖つ波こころをよせてくだくとはみし

 二首したためた。
 隆信と笙子の関係は義兄妹である。笙子の養父である藤原俊成が、隆信の母
である加賀局と結婚した。笙子の父母とも隆信は親しかったようで、笙子も頼
れる兄貴分として、隆信を慕っていた。
 恋というよりは、大人の男としての憧れ、といったほうが当たっている。
 資盛はこのご時世のせいか、忙しいようで、最初の頃は頻繁であった通いも
ここのところ少なくなってきていた。
「平家の御曹司…」
 笙子の心に引っかかっていた。
                             《つづく》
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            ドラゴン ラヴァ・34
                           by瀬乃美智子

竜の池を目指す海里は、闇が深くなりつつある太刀見家の庭を疾走する。

あと少し、あと少しで、竜彦たちの待つ竜の池へと辿り着く…。

「っ…。」

一瞬、海里の足が止まる。
広すぎる太刀家の庭―――、その庭にうっそうと生い茂った木々と、深まる闇
の為に一瞬だけ道を見失ったようだ。
木々の隙間に目を凝らし、館の方向を確認する海里。
前方の景色に気を集中していた彼は、しかし、次の瞬間身を硬くした。
ガサリ…と…――、背後で動く人の気配。

「誰……っ!」

振り返る海里の視界は、次の瞬間暗転した。



「火竜! 瑠璃葉っ!!!」

2体に分かれた魔王の片方と接戦を繰り広げていた火竜と瑠璃葉に、壁際に下
がって戦いを見守っていた竜彦が叫ぶ。

「片割れが戻って来るぞっ!!」


その言葉に竜たちが振り替えると、同時に、部屋を照らし出す照明の明かりが
数瞬ダウンする。
何か禍々しいものが近づいてくる感覚―――。

振り仰いだ天井から、それを突き破って闇の塊が舞い戻ってくる。

その禍々しい黒い力の塊が、魔王の元に降り注ぐ。
それは魔王の体に取り込まれ、カリプトロスのその体から滲み出る禍々しい気
が一気に増大する。

(くそっ! 合体したか!!)

竜の姿となった火竜か、悔しそうに咆哮する。
今まででさえも二匹がかりで悪戦苦闘していたというのに…っ!

合体した魔王は、竜たちに踏み潰されずに生き残っていた部下たちへと、海里
を探し出し、伝説の刃を取り戻すように命令する。


(海里が寝返った事がばれた!)

火竜は早すぎる自体に歯噛みする。
それがばれたということは、彼らをかくまったあの部屋の結界がやぶられたと
いうことか。
だとしたら、一緒にいた浅月は…っ!


海里を探し出すべく、続々と外へ出て行く下級魔族たち。
火竜たちはそれを止めようにも、魔王に阻まれままならない。

奥へと引き下がっていた竜彦は、その光景を冷静すぎるほど冷静に見ていた。

『竜彦っ!』

自らは未来を見ることができぬ火竜が、竜彦への名を呼ぶ。
あの部屋に残した二人は無事なのかと…。


「餌はまかれた――…。」

竜彦はうっすら微笑んで呟いた。

「あとは、“彼”を待つだけだ」

抽象的で、意味を解せぬ言葉。
だがそれは、決して未来視の失敗などではなく、おそらく竜彦にとってもっと
も正確な未来視であった。
普段なら瑠璃葉からもらう力の波動、――それを貰えぬ彼は、今、魔族同士の
戦いによってこの場に満たされた力の波動を無意識のうちに吸い取っり、己が
力にしていた。

「行けばいい…、そして、それは我らの力になる」

にっこり微笑む竜彦に、火竜は少しだけ恐怖を覚える。
未来が見える彼にとっては、その先に希望が待っているのなら、今、この場が
どんなに過酷で困難なものでもその心は全く揺るがないのだろう。

瑠璃葉と結ばれる未来を見て、ずっとその信念を変えなかったように…。




「外はどうなっているのかしら…。」

海里が出て行ってからというものの、ひとり結界の部屋に残っていた浅月は不
安にかられ、腰を上げる。
先程部屋の前を通り過ぎた禍々しい気の塊は立ち去ったようだが、気は許せな
い…。

二間続きのとなりの部屋へ歩を勧めた浅月は、海里が出て行った障子を見つめ、
溜め息をつく。
彼は無事だろうか…。
入り乱れる悪しき気に、集中力を逸した浅月の方はうまく未来視が出来ぬよう
だった。
能力者にも、適・不適があるようだ。

「あら…?」

何気なく部屋の中を彷徨っていた浅月の目が、部屋の隅に配置された鏡台の物
陰から染み出る何かに目をとめる。
鏡台と壁の間に隠されるように置かれた何かの包み…。

そっと開いたその中には、見慣れた卵の殻。

「置いていったんだわ!」

浅月を守る為にこの部屋を出て行った海里。
しかし、外が危険だと知っていた彼は、卵だけはここに残していったのだろう。

だがそれは…。

「…こ、これは…。」

包みを全て開け放ったそこには、ひび割れた殻の山…。


「孵化してる!」

振り仰いだ障子の足元、そこには一箇所だけ破けた障子の穴。
海里が出て行くとき破れたと思っていたそれは、よく見れば小さな生き物が出
て行ったかのような…。

「父親に付いて行ったんだわ!」

思いもかけぬ事に、浅月はしばし呆然とたたずんだのであった…。

                            《続く》
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あとがき
【お知らせ1】***サークル君が好き!冬コミ情報***
 冬コミ2日目(12/29)『君が好き!』ち-04b
 新刊…、出てるかなぁ…(^ー^;) 出てたら奇跡ということで(汗)

【お知らせ2】君が好き!のホームページのアドレスが、サーバー会社の運営
 上の都合で変更となりました。
 http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
 になります。どうぞ起こし下さい♪(*^ー^*)ノ゛

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2002/12/15 50号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
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 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
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