メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』  2002/12/01


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月刊小説メールマガジン         2002年12月1日 発行
『君が好き!』   増刊号vol.32
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 こんにちわ。篠原です。忘年会シーズン到来!ですね!
忘年会といえば、やっぱり鍋でしょう〜。鍋に入れる具の定番といえば白菜。
スープがひたひたにしみた白菜を、唐辛子いっぱいかけて食べるのが好きです。
 あなたの好きな具は何ですか?

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増刊号 今月のラインナップ  
●愛の寸劇劇場 【ちょっとおかしな二人の話《再会編3》】瀬乃美智子
●『聖獣戦記』第9章 篠原美姫緒
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     【ちょっとおかしな二人の話《再会編3》】
                           by瀬乃美智子

「よし!各自準備をしろ!」

隊長を初めとした選抜メンバーは、本部タワーの斜め向いにあるビルの屋上へ
と移動していた。
真向かいのビルにしなかったのは犯人グループの警戒を避ける為と、この屋上
が彼らが占拠している23階部分より若干高い位置にあるため、狙いやすく、
相手から発見しにくい為であった。


「私、ここにしま〜す!」

カミアは屋上に着くとひと通り下見をし、絶好のポイントを占領する。

「ところで隊長。『特殊企画室』って何の部署ですか? あんま聞いたことな
いですけど」

部隊の一人が、不思議そうに上官へと質問する。
本部内には色々な部署があり、また、部員間にでさえシークレット扱いされて
いる部署もある。
同じ本部所属といっても、彼らも全てを知り尽くしているわけではなかった。

「ああ、まぁそのなんだ…。普段なら、お前たちの知るべき連中じゃないんだ
がな…。」

隊長は、渋々と言った感じで、簡略な説明をした。

「要するに、俺たちが扱っているのとはもっと違ったランクで進められている
計画や、処理しなければならない案件が持ち上がった時だけ、特別に召集され、
それに必要な人間を計画、収集、作戦実行を指揮する特殊企画部隊だ。―――
正直言って、扱っている事案自体どんなものなのかまでは俺だって知らんし、
所属する部員自体もかなり得体の知れない奴らばかりだって噂だからな…。」

「はぁ…。世の中には魑魅魍魎がいるもんですねぇ…。」

あれ?つい最近、近いような話を聞かなかったっけか?と首をひねりながら、
部員は首を捻った。


「で、占領している犯人っつーのは、何者ですか?」
「ああ、それがなどこか他の国から舞い込んだテロリストらしくてな…。今、
捜査班はその相手国の絞込み作業をしているところだ。全く、自分の国の問題
ぐらい、自国で騒いでもらいたいもんだ」

そうっすねー、と部員も、頷く。
そんな間も、カミアは銃のポイント合わせと、23階室内の監視を欠かさない。
どれだけスピーディーに無駄なく標的を打ち抜くかにかかっているのだ。
下見はやっておいて損はない。

「犯人と、人質の顔写真はまだですか? 早くくれないと、全員撃っちゃいま
すよ?」

カミアの冗談にならない質問に、隊長は数枚の写真を手渡す。

「こいつらが今回のターゲットのテロリストだ」

手渡された数枚の写真。
向側のビルから撮影されたらしいそれは、ガラス越しの為か大分不鮮明であっ
た。

「隊長〜!これじゃあ、顔の判別がつきません。人質の方の写真は? うちの
部員なんだら、写真のひとつもあるはずでしょう?」
「それがな。機密事項にかかわる人間たちの集まりだけあって、たとえ相手が
俺たちであっても、顔写真は提供出来ないそうだ」

『何ですって――――っ!!!!』

その場にいた、……カミア以外の全員が思わず聞き返す。

「間違って人質撃っちゃったらどうすんですか?!!」

「ああそれなら安心しろ…。」


隊長は、言いにくそうに…しかし最後にはきっぱりと、上層部からの命令を部
下たちへと告げた。

「――全員狙撃してよし…。」

『っ!??』

思いもかけない命令に、隊員たちは一瞬全員凍りついたのであった…。



某国情報部本部タワー23階『特殊企画室』。
テロリストたちに選挙されたフロア―は、意外にも静かさに包まれていた。

「あれですね、俺たちはとばっちりですよね」
「ああ。要するに奴らは国家転覆を企てたはいいが、一番に押さえなければな
らない国王に国外へと逃亡されてしまって、そいつを探し出すのにやっきにな
ってるってわけだろ?」
「うちの国がかくまってるはずだって言ってますけど本当ですかね?」
「さぁ…。ま、よくもここまで探り当てたもんだよ。『あいつ』なら全てを知
っているはずだからな」

一緒に人質になってしまった部員たちは、奥の小部屋でただ一人テロリストの
尋問を受けている青年へと目をやった。
個室の壁は全てガラス張りの為、広いフロア―にいる彼らにも、青年の様子は
良く見える。

国王はどこだというテロリストの脅しを混じえた尋問にも、黒髪の青年は顔色
ひとつ変える素振りもなく、退屈そうに嘆息する。
しかし、その青年というのは……。


「まぁ、あいつの方こそいい迷惑って感じだろうけどな」
「つーか、あれだけの能力があるんだから、テロリストが潜入する事ぐらい、
事前に察知しろよな」
「レイモンド君、天下無敵の予知能力者だもんな〜!」

天下無敵の予知能力者。
それが…、今はテロリストの詰問を受け、つい先日はカミアに銃を届けたその
青年の正体であった。


「国王はどこだ! 貴様だったら、奴の行方が見れるはずだ!」
「お断りします。…私は、契約して頂いているここの仕事しかお受けしない」
「いつまでそうやっているつもりだ? 我々はお前が真実を語らぬ限り、ここ
を引き払う意思はないぞ?」

テロリストの一人が語った言葉に、青年レイモンドはにんまり笑って答えた。

「そうはいかないでしょうね。もうすぐ…、全ては終わりますよ」
「…?」

レイモンドの満面の笑み。
それは、これから始まるであろうカミアたちの狙撃を予知するものであるのだ
ろうか。
しかし、それなら彼の命は……?

                            《続く》


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      『聖獣戦記』            篠原美姫緒
   第九章 聖戦

「宿敵であったフラメ公国に攻撃を!」
「し、しかし、エルデ国内の混乱を収拾するのが先では…」
「何をいうか! ここでフラメを叩いて国内の統一をするのです。でなければ
このヒンメルは崩壊してしまう!」
「いや、聖獣を探し出し早急に封印するのです!」
「そんなことはフォールラードゥングの仕事だろう!」
「フォールラードゥングの神官たちは何をやっているのだ!」
 形だけの軍法会議は、終始空回りし、軍主導により罪なき民衆が次々と戦地
へと送り出されていく。
 エルデはヴェッサーのフォルダ将軍とフラメのヘスリヒ将軍と対峙し、その
戦局は泥沼化していた。
 だが、エルデには誰も軍を止められる者はいなかった。
「え? 私が?」
 鏡越しにアレリニオの妹ロクサーヌは、かつてオーカスの秘書で、今は自分
の後見人でるリリーを見つめた。
「はい。エルデの大臣たちが決めたことです。」
「そう…。」
 ロクサーヌは髪をとかす手を止めた。
 皇帝崩御のため、国内挙げての国葬が行われるのだ。空の棺を華いっぱいに
飾りつけ、皇帝アエリニオ・エドルの肖像画が飾られた。
 そして、皇帝の死とともに次の皇帝も決る。
 妻・妾ともにいなかったアレリニオに子供はいない。皇帝継承できるのはい
まやアレリニオの妹であるロクサーヌだけ。彼女は12歳でヴァルド国王ロカ
に嫁いだが、ロカが若くして亡くなったため、彼女がヴァルド国王となってい
た。
「そうね。またお飾りの国王…いえ、ヒンメル帝国皇帝になるのね」
 ロクサーヌはヒンメル帝国皇帝兼エルデ公国国王兼ヴァルド公国国王となっ
た。そして、若い未亡人である。
 ロクサーヌは、ふと顔を上げた。鏡にリリーの他に女の子が写っている。
「誰?!」
 振り向いたが、後ろにはリリーしかいなかった。
「どうかなされたのですか?」
「い、いえ、今、鏡に女の子が写っていたような気がしたので…」
「ここには、侍女すら入れませんよ。皇帝陛下」
「やめて。私、まだ即位してないわ。お兄様のご遺体だって見つかっていない
のに」
 アレリニオの遺体があろうがなかろうが、目の上のたんこぶであった皇帝よ
り、大臣たちのいう通りにしか動けない皇帝のほうが、大臣らにとっても軍に
とっても好都合である。
「ロクサーヌさま。気が高ぶってるのですよ。葬儀まではまだお時間あります。
少し休まれてはいかがでしょう」
「そうね、そうさせていただくわ」
 リリーはロクサーヌを残し、部屋をあとにした。
「女の子、か。それにしても、蘇った麒麟はどこへ行ったのかしら…」
 空高く舞い上がって行った麒麟。そして重なるのがオーカスの言葉。
 前にオーカスと水境上人が作ったというヴァルドとの境にあった光の壁を破
壊しに行ったときの事だ。
 水境上人が住んでいたという庵の後だけが見つかった。
『……召喚士じゃない。聖獣がここにいたのだ。人間に化けてな。』
 派手に登場したわりには、以来全く姿をみせない麒麟。そして、他の聖獣す
らまだ見つかっていない。
「麒麟がもし人間に化けているとしたら…」
 リリーは、そんなことはないと首を振った。


                              《続く》
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 あとがき
 来月の増刊号は年始のためお休みです。次回は2月1日になります〜。
それではみなさんよい御年を〜。

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2002/12/1 増刊号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hp.infoseek.co.jp/
 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
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