メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2002/10/15  2002/10/15


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月刊小説メールマガジン         2002年10月15日 発行
『君が好き!』  vol.46
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こんにちは皆様♪ 昨日まで長野に旅行へ行っていた美智子です♪(*^ー^*)
長野は高台の方はもう紅葉が始まりつつあって、季節の移ろいにうっとり。
そして、たわわに実る林檎や葡萄に思わずよだれが…(笑)…と、なかなかに自
然を満喫できた旅でした。
皆様の周りではもう紅葉は始まってらっしゃいますか?
(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼君が御世に・10     篠原美姫緒
▼ドラゴンラヴァ・32  瀬乃美智子
▼あとがき
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              君が御世に10
                          篠原美姫緒

 夢なら何度覚めないで欲しいと願っただろう。
 それでも無常にも時は過ぎてゆく。
 夜勤明けの笙子を残し、資盛は朝廷へと出仕して行った。
「もう、夜明け…」
 乱れた床を見て笙子は夕べの出来事を改めて思い出す。
「やっちゃったぁ…。エヘヘ」
 服を整え、乱れに乱れた髪を束ねると湯殿へと向かった。
 平安の朝は早い。
 誰かに見つからないようにと、こそこそと歩く。だれかに見つかってしまえ
ば、噂は噂となってあっという間に平安京中に広まってしまう。
 しのぶる恋とはよくいったものだ。
 この時代、恋の定番は文通であり、それも歌で気持ちを伝え合う。そして、
男はこっそりと女の部屋に夜這いをかけるのである。真っ暗な部屋では、とき
どき人違いもあったらしい。
「あれはたしかに資盛さまだった…よね?」
 とにもかくにも、男女の恋愛は秘密裏に高め愛し合うのがいいらしい。が。
秘密だと思ってるのは当の本人たちだけらしい。

 恋ひ恋ひてよし見よ世にもあるべしと云いひしにあらず人もきくらむ
                     「前小斎院御百首より」

 式子内親王が詠んだ歌の中の一つである。笙子は彼女のこの歌に託してある
深い情熱を改めて感じるのであった。
「恋とは苦しく切なく、それでいて温かく、優しく」
 相手をいとおしいと思うこの気持ち、素直に表現できたらどんなにいいだろ
う。
 朝湯に浸かり、顔を湯につけてみる。消しても消しても夕べの出来事が頭か
ら離れない。
「不安よねぇ…」
 資盛は遊びではないと言っていた。たしかに、今の彼には北の方つまり本妻
はいない。が、平家の公達ともなれば妾の一人や二人や三人や…いてもおかし
くはないし、実際、清盛の子はみな腹違いである。
 女房が平家や天皇家のお手付になるのはあたりまえ。妾として認められるの
には、「子供」ができたかできないかである。
 日本の皇室に縁のある人々の血縁・相関関係は、日本史が嫌いになるくらい
に実にややこしい。
「まぁ、右京さまも朝湯ですか?」
 そこへ知り合いの女房が、やはりどこぞの男と寝たのだろうか、乱れた髪を
無造作に束ねてやってきた。
「あちゃぁ…」
 笙子は呟いた。朝から湯に浸かるなんていうのは、男と寝たといっているよ
うなものだ。
「右京さま聞きました?」
「何をですか?」
「公衡さまの歌ですよ。あの方失恋したそうで、おほほほほほ」
「は、はぁ」
 中宮の女房を、藤原公衡(きんひら)がしきりに口説いていたのは知ってい
る。年中付きまとわれていて憂鬱であるとその女房は口にしていた。その彼女
は秋になってやっと手紙をだしたらしい。

 秋きてはいとどいかにかしぐるらむ色ふかげなる人のことのは

 返し
 時わかぬ袖のしぐれに秋そひていかばかりなる色とかしる

「ですって。まぁ上手いものですわ。おほほほほほほ」
 上手い歌は秘密の恋文であっても、誰かの口をついて表に出てくる。
「わたしもそのように、誰かが語りついでくれるような歌が残せたらいいな」
 ちょっぴり気持ちが大人になった笙子であった。

                             《つづく》
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            ドラゴン ラヴァ・32
                        by瀬乃美智子


行く当ても無く彷徨っていた海里の足がぱたりと止まる。
背中を駆け上がる悪寒…。
この気配は、あいつの…。

「海里、探したぞ何をしている…。」

背後で漆黒の闇が固まっていく。
海里には見慣れた、…そして、最も恐れるものの姿へなっていく。


「……っ…。」

海里は、背後の気配に背を向けたまま、そっと自分の胸元へと手をやる。
胸に下げられたペンダント。
それは、彼の愛した竜の牙から作られた……、この世で唯一強靭な竜の皮膚さ
えも傷つけられるという伝説の刃の仮の姿。
呪文ひとつ唱えれば、それはペンダントという仮の姿から、あるべき姿へと戻
る。


(俺を守ってくれ!)

指先の動きだけで鎖へとつながれていた金具を外し、その手の内部に潜ませる。
そして…。
海里は恐怖にわきあがった冷や汗を押さえつつ、背後の主へと振り向いたので
あった。



「ご主人様っ。」

そこには、見慣れた主の姿。

漆黒のマントに身を包んだ、魔王カリプトロス。

「―――生きていたか、カイリ。…ならば、なぜすぐに姿を見せぬ」

魔王のひと睨みに身を凍らせながらも、海里は気丈にも答える。


「申し訳ございません、ご主人様。やつらの正体をやっと見抜いたのはよかっ
たのですが、正体がばれてしまい、ずっと姿を隠していたのです。…私は力な
きもの、どうぞご容赦下さい」

「何の為の伝説の刃だ! …奴らにばれてもその刃で返り討ちにさせる為に持
たせた刃ぞ! …全く、これだから学者連中というものは役にたたん!」

魔王は冷たく言い捨てると海里へと刃を返すように命ずる。

戦闘部族ではない海里には何もできない。
ましてや、自分に逆らうことなど決してあるはずもないというその過信が、そ
の身に不幸を招くひとかけらの可能性となりつつあった。

「…ですが。こんな私だからこそ…、学者風情だからこそ少し分かった事がご
ざいます、ご主人様」
「…?」

突然の配下の言葉に、魔王は軽く片眉を上げた。
今まで自分を恐れるばかりで意見など言ったためしがない小物が、自らの意思
で自分へと言葉を向けている。


「…今のご主人様は体を分けておいでですね?」
「…あぁ…そうだが? 何故それが…。」

お前ごときに分かるのだという主の表情に、海里は思わず苦笑を漏らした。

主が来るとしたら、おそらくあの魔界へと通ずる竜の池の底の穴からだ。
しかしあそこには火竜たちがいる。
戦闘時に発する竜の雄叫びが聞こえて来ていない以上、まだ本格的な戦いは始
まっていないはず。それなのにここに主の姿があるという事は、自らの体を二
体にわけ、一体を火竜たちとの戦闘用に残し、もう一体で自分の事を探してい
たに違いない。
主が時折使う、上等手段だ。


「敵の前方と背後……同時に責めることの出来る神業とも言える術。しかし普
段、『あなた』は余程の相手で無い限り、その技は使わない。なぜなら、その
術を使えば、さすがのあなたでもエネルギーの消耗が激しすぎるからだ。体を
二つに分けるんだ、生半可な負担じゃないだろう」
「『あなた』――?」

魔王は、海里の部下らしからぬ呼び方に再び眉をひそめた。

「だからなんとなく分かったのですよ、あなたが何故私のようなどうでもいい
小物を探していたのか…。」

海里は、震えそうになる手でぎゅっと手の内のペンダントを握り締めながら言
い放つ!

「さすがのあなたでも、竜二体ともなると脅威だということがね! だからこ
そ、あなたはこのペンダントを探しに来たんだ。俺ではなく、このペンダント
をね!」

海里は、ペンダントへ呪文を囁きかけ、あるべき姿へとかえす。
それは、虹色の光を放つ伝説の刃へとなった!


「カイリ、貴様それを寄越せっ!」

「だから分かったんだ。…それ程の相手を傷つける事が出来る刃なら、あなた
も傷つけられるはずだとね!!」


言葉と供に、海里は伝説の刃を振り上げたのであった―――っ!


                            《続く》
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あとがき
さてさて、海里君もがんばりつつありますね。
次辺り…どうかな? まだ「あれ」は出てこないかな…(謎)
あ、ちなみに文章中に「海里」という呼び名と、「カイリ」という呼び名が
出てきます。覚えている方がいるかどうか…(汗)
「カイリ」は海里君の正式な名前で、「海里」は人間界に来た時に適当に当て
字をした仮の名です。だから、魔王は海里君の事を「カイリ」と呼ぶのです♪
決して誤植ではございませんよ(笑)
ではでは、次のメルマガまでまた今度〜♪

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2002/10/15 46号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
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