メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』  2002/10/01


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月刊小説メールマガジン         2002年10月1日 発行
『君が好き!』   増刊号vol.30
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 こんにちわ。篠原です。
 関東地方はここのとこ天気が悪くて、とうとう脳みそにまでカビが生えてし
まったようで(汗)
 もう秋ですね…。

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増刊号 今月のラインナップ  
●愛の寸劇劇場 【ちょっとおかしな二人の話《再会編》】瀬乃美智子
●『聖獣戦記』第9章 篠原美姫緒
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     【ちょっとおかしな二人の話《再会編》】
                           by瀬乃美智子


「どこの誰だか見つけろって言われても、私、狙撃手なのに〜。」
捜査なんてした事無いんだけどと、某国情報部所属、狙撃手カミアはほとほと
困り果てていた。

「カミア、お前ここが厳戒態勢の立ち入り禁止区域だって事忘れてないか?」
困り果てていた彼女を見かねて、同僚の青年が声をかける。

ここは、篭城するテロリストを狙撃すべく設けられた狙撃場だ。
その周囲は狙撃班専属の警備チームが固めており、普通の人間が入り込める場
所ではないのだ。

「ここに出入りした人間がいたとしたら、警備の人間にチェックされてるはず
だけど? 聞きに行ってみたらどうだ?」
「そうか! ありがとう、レッグスっ!」
同僚のありがたい助言に、女性狙撃手は満面の笑みを取り戻したのであった。



「ご同業ですか!?」
「そりゃそうでしょう、じゃなきゃ入れませんよ。捜査班の方かと思って中に
入れんですけど違ったんですか? まずいなぁ…、内緒にしといて下さいよ?」
そう言い、警備班の青年は身分確認の際控えたという身分証番号を、カミアへ
と教えてくれた。

「あの…。」
「何ですか?」
不思議そうにその番号を眺めていた少女が、警備担当者へと尋ねる。
「――この番号を使って、どうしたらいいんでしょう?」
「………。」
本部に問い合わせればいいんですよと、初歩の初歩でつまずいているカミアに、
警備担当者は思わず顔を引きつらせたのであった。



翌日、カミアの姿は情報部本部の一室にあった。
警備担当の青年の助言に従い、本部の人事部に身元確認の照会を求めたところ、
いきなり数名の職員に取り囲まれ、この一室へと連れ込まれてしまったのだ。

「私、何か悪い事をしたんでしょうか?」
「………っ。」
自分を椅子に座らせ、戸口を固めた職員たちに向かってカミアは思わず尋ねる。
自分はただ、上司に言われて落し物の届け主を探しに来ただけなのに。


しかし、しばらくして…。
「彼女の言う通りですよ、彼女は何の害もありません」
ドアの向こうから響く声に、職員たちは慌ててドアをあける。

そこにはカミアに銃を届けた青年の姿。
彼女に向かってにっこりと微笑むと、ゆっくり室内へと足を踏み入れた。
突然の青年の出現に驚く職員たち。
…どうやら、彼が来るのを待っていたわけではないようだ。

「どうしてここに??…今は重要任務中とお聞きしておりましたが」
「ああ、あっちはしばらく状況は動きませんから。ここに来るぐらいの事はな
んでもありませんよ」
いや、しかし予断を許せない状況だと聞いておりましたがという職員の言葉に、
青年はにっこりと薄い笑みを浮かべて答えた。

「私が動かないといったら動かないんです」
「…しっ!失礼いたしました!」

もういいから職場にお戻りくださいという青年の言葉に、職員たちは慌ててそ
の場を立ち去る。
彼女の身元を確かめる為に一時留置したものの、もうその必要はないだろう。
彼が大丈夫だと言ったら、大丈夫なのだから…。


「すみませんでした、なんだかかえってお手間をかけたみたいで。…何か問題
がありましたか? 別に中身はいじってないですけど。…ああ、参考までにち
ょっと開けさせてはいただきましたけどね」
「いえ、パトリックだったら元気そのものでした! 問題は隊長で…。」

パトリック?と、青年は首を傾げ、ああ、そう言えばご自分の銃に名前をつけ
ていたんでしたっけと、笑いを漏らす。

「で、隊長さんがどうしたんです?」
「ええ。あなたが急にいなくなったので、不審がって…。私は、大事なパトリ
ックを届けてくれた方なので、悪い人ではないと思ったんですけど。――だっ
て、何せ部品の一つだってなくなってなかったんですから!」
力説するカミアに、青年は思わず苦笑いを浮かべる。
部品盗むぐらいだったら最初から届けないと思うけどな…。

「どれもこれも私がパトリックの為に選びぬいた品ですもの! 一度目にした
ら、手が出ない方がおかしいです。あなたって、とっても自制心の強いお方な
んですね!!」
「いや、その…。」

ただ単に、銃に興味がないだけなんだけどなと、青年は心の中だけで呟く。
しかし、自分の手をガシッと取って、目をキラキラさせている彼女を前に、そ
んな事言えるはずもなく…。
多少ひきつった笑みとともに、青年はいい人になりきる事となったのであった。


カミアは改めて銃を届けてもらったお礼を言うと、うっかり忘れていた上司か
らの用件を青年に尋ねた。

「ところで、あなたは何をしてらっしゃる方なんですか? それさえ上司に報
告すれば、一件落着なんで」
カミアはほっとしたように、にっこり笑った。
はじめてのお使いならぬ、初めての捜査は無事完了できそうだ。

「ああそれなら…。」
青年は、カミアに向かってにっこりと微笑んで告げた。

「…内緒です♪」
「え?」

どうやらはじめてのお使いはかなり難航しそうな様子である。

《続く》


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      『聖獣戦記』            篠原美姫緒
   第九章 聖戦

「毅彦きさま…!」
「おっと、将軍。セレナの息子のこの俺とやろうってか? やめておきたまえ
セレナが悲しむぞ」
 ひとの弱みにつけこむように毅彦は言い放った。
 青い光が筋となって壁の境目を走っていく。
 キーンキーンっと氷が触れ合う音が大広間に響いた。冷たい空気がその場を
流れていく。
「将軍、聖獣の復活にはまだまだ時間がかかりそうだよ」
 ニヤリと笑みを浮かべ、毅彦は魔法陣の中へ吸い込まれるようにして消えて
行った。
「魔法陣を使って自由にワープできるのか。毅彦のやつは一体…」
 外は激しい吹雪であった。


「暖かい…」
 ユイは炎を見つめていた。
 古い暖炉に赤々と燃えている炎。蒔きは無いが鳳凰の羽一枚で十分温まる。
「さぶい…」
 カレリニオはユイと抱き合うようにして暖を取っていた。
 普通の人間には、この寒さは耐えられないだろう。
「この世に存在する私たち…私のような聖獣たちは、四神獣を蘇らせることに
どう思っているのかしら…」
「ユイはどう思っているんだい?」
「んー、この世が消えてしまえばいい…かな」
「僕は、聖獣を蘇らせるための鍵なんだろ? ユイは聖獣を蘇らせるために僕
を連れてきたんだろ? なんのために蘇らせるの?」
 それはユイ自身何度も自分に問いかけてきたことだった。
 私はなんのために聖獣を蘇らせようと思ったのだろう…
 事の発端は、聖獣であった水境上人がつくっていた光の壁が消え、オーカス
が北に進行して来た事に始まる。
「カレリニオは鍵じゃないわ…。わたしのご主人さま」
「ご、ごしゅ…! こんなときによくそんな冗談が!」
「冗談なんかじゃないわ! 毅彦さんの鳳凰のように、人間に仕えるだけ」
「どういうことだ?」
 ユイはうつむくとカレリニオの胸に顔を埋めた。
「姿形は人間にそっくりなのにね…。」
 ユイは小さく呟いた。



                              《続く》
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 あとがき
 めっきり涼しくなりましたね。気温の差もはげしいのでお体にくれぐれもお
気をつけてください。篠原は秋の花粉症に悩まされています(´-`;)
もう、虫アレルギー草アレルギーで…。

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2002/10/1 増刊号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
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