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〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 月刊小説メールマガジン 2002年9月15日 発行 『君が好き!』 vol.44 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 こんにちは皆様(*^ー^*) やっと涼しくなってきて随分と過ごしやすくなって 参りましたね! 季節の変わり目、お体にはお気をつけ下さい。 会社の定休日が日曜から平日に変更され、ちょっとびっくり、友達とも遊べず イベントにも行きにくくなったりで、ちょっとへこんでいる瀬乃ですが、まぁ なんとかがんばってまいります(>_<) なるようになるでしょう! …へんな挨拶ですみません(笑) (瀬乃 美智子 拝) ====================================================================== 今月の目次 ▼君が御世に・9 篠原美姫緒 ▼ドラゴンラヴァ・31 瀬乃美智子 ▼あとがき ====================================================================== 君が御世に9 篠原美姫緒 かたおもひをはづる恋 おきつ波岩うつ磯のあはびがひひろひわびぬる名こそをしけれ 「あら、わたくしにはその涙のわけは話してくださると思ったのに。わたくし はてっきり、次男のことかと思いましたわ」 笙子の顔は、ふたたび赤くなった。 (すでにこのお方は知っている?!) 「小松の二男さまが、右京が宿下がりをたいそうご心配しておりましたのよ」 中将の君は笙子の心を見透かしたように答えた。縁側から庭へ降りると、静 かに語りかけた。 「ねえ、右京。あなたは何を悩んでいるのかしら? お相手が小松の家のお方 だから? それとも他に気になる方がいらっしゃるのでしょうか?」 笙子が一番信頼している女房である中将の君である。いままで心の内に秘め ていた思いをこの方になら話してもいい、そんな気持ちになった。 「あのお方は、私のように卑しい身分の方にはもったいないお方です。私の、 この思いはあの方にはご迷惑なだけ…」 「まぁ、やっと白状したわね。恋煩いだったのね。ふふふふふ」 中将の君は優しく微笑んだ。 「右京、たくさん恋焦がれなさいな。お相手が小松の家の人だなって羨ましい わ。胸をはって恋をしなさい」 「中将の君…」 中将の君の心強い言葉に、笙子は決意を固めるのであった。 その夜、笙子は筝を奏でた。薄明かりの月夜に優しく、心和む音色。 笙子の母であり師匠である夕霧は、まぁ! と優しく微笑んだ。 「まだまだ未熟者と思っていたのに…。笙子にもあのような音色を出せるよう になったとは。ほほほほほ、恋でもしたのかしらねぇ」 空高く音色は響いていた。 それからしばらくたって、とある宵の見回り番の時のこと。 回廊をちいさな行灯をもって歩いていた。いつもなら2〜3人で見回りする のだが、今日は当番の女房が宴に招かれているというので、笙子一人で見回り をしていた。 魑魅魍魎、百鬼夜行など物の怪が棲む平安京。内裏内には結界が張られてい るとはいえ、暗闇に浮かぶ結界のお札が不気味に風に揺れていた。 今宵も陰陽師の呪文を唱える声が聞こえてくる。 小松家の棟梁重盛殿が、原因不明の病に冒されているという噂を耳にした。 重盛殿の御妹である中宮の元へも物の怪が来るのでは?との相国殿の配慮から、 陰陽師が結界を張っているのである。 もっとも、笙子の様子がおかしくなったときも物の怪の祟りだと騒がれたの であった。 「物の怪の祟り…」 不気味に暗い夜は自然と足が早くなる。 すると、突然ふすまが開き、その風で明かりは消された。 腕をわしづかみにされると、そのまま真っ暗な部屋へと引きずり込まれた。 しっかりと抱きかかえられ身動きが取れない。声も出せない。 「よかった…、元気そうで…」 耳元でささやくその声に聞き覚えがあった。 「宿下がりしたと聞いたときは、気になって気になって夜も眠れませんでした」 「す、資盛さま?!」 「自分の気持ちを抑えることはもうできません」 資盛の腕に力が入る。 やがて目が暗闇になれてくると、ぼんやりと資盛の顔が見えてきた。 「なななななんというおたわむれを…」 「たわむれなどではない。」 そのまま笙子の唇はふさがれ、布団の上へと押し倒された。 《つづく》 ====================================================================== ドラゴン ラヴァ・31 by瀬乃美智子 部屋を飛び出た海里は廊下を抜け出て、庭に降り立ちながら一度だけ背後を振 り向いた。 障子の向こうからは、浅月が心配そうに自分を見つめている。 ただ彼女は、火竜たちのいいつけを破って感情のまま抜け出すほどに愚かでは なかったし、自分の無力さを知っていた。 だから、決して自分はこの結界が張られた部屋からは出てはいけない。 自分を守る為にここを離れてくれた彼の為にも…。 「来たぞっ!!」 火竜の声と供に、竜の池の底から黒い邪念の塊が姿を現す。 それは池からずるずると這い上がると、2体に分離し、一つは天井を突き抜け、 飛び去っていく。 「おいっ!奴はどこへ…っ!」 「…何かを探しに…。」 それが何かまでは竜彦には分からない。 今は、目の前の邪気の塊が彼の思考を邪魔し、一度に全ての予知をする間を与 えない。 「形をなすぞ」 竜彦の言葉通り、目の前の黒い邪念の塊は、徐々に人の姿を取っていく。 暗黒のマントに金色の髪。 さほど人より大きくはないはずが、見上げるほどの圧迫感。 …もちろん形作った大きさなど関係ない。 ただ人の形を取ったのも、人ほどの大きさを選んだのも、全ては人の世界にお いて一番動きやすい大きさだというだけだ。 彼が本気で己の力を開放したら、人の世界に及ぼす影響力が強すぎる。 何より、魔王クラスの彼が無断で人間界で暴れまわった事がばれるのはまずい。 人知れず人をおとしめ、精神を堕落させる。―――それが、今の魔界の掟。人 間が本気で魔族を信じ、人間界に自由に行き来できた昔が懐かしい…。 「竜め、二匹もおったとは…。」 その冷徹な口元がにやりと笑った。 「この狭くるしい人間界で、よくもその馬鹿でかい体を隠し切ったものだ。二 匹とも人に化けられるのか?……人間に化けられるという事は、高等種族だ ろう。海里に世話をさせていた下族とはわけが違うはず、楽しみなものだ」 (下族だとっ!?) 火竜と瑠璃葉は心の中で拳を震わせる。 海里が愛した竜は、決して下族でも、力の弱い亜種でもない。 彼女は元来の竜族そのままの姿をもって生まれた…、言うなれば先祖がえりの 姿を持って生まれた竜だったのだ。 かつて…、まだ竜たちがその体の利用価値に気付かれず、魔界で安心して暮ら していた頃の…、何の戦う力も大きい体もいらなかった昔そのままの姿。 我らだとて、お前たち魔族が我々を狩りたてなければ、巨大に強く進化せずに 平和に過ごせたものを! それでも、海里を味方につけていることを悟られるわけにはいかない二人は、 必死に感情を殺す。 そして、魔王に向かって敢然と立ち向かう。 奴に勝とうと思ったら、2体に分かれている今しかない! 「瑠璃葉っ!行くぞ!!!」 次の瞬間、火竜の体が竜のそれへと変化する。 それは、瑠璃葉と同等クラスの巨体であった。 赤褐色の鱗に、赤く燃えたぎった眼。 それはまさに、『火竜』の何ふさわしい堂々さであった……! (俺はどうしたらいい!?) 海里は出来るだけあの浅月がいる部屋から遠ざかりながら、思案を巡らす。 おそらく、ご主人様……奴がやって来たって事は、先陣を切ってきたやつらが 火竜たちにやられたということだ。 なら、きっともう火竜たち…竜の生存をあいつらは確認してしまったはず。 では、もう自分が寝返った事も隠している必要も無いだろう。 ただ、問題なのはあの卵。 あれを持って彼らの元に行くわけには行かない。 火竜や瑠璃葉たちには悪いが、あの卵だけは…、自分が愛した竜の残したあの 子だけは隠し切らねば! 「どうしたら…、どうしたらいいんだ!」 海里は闇の中を走りぬけながら、逃げきれぬだろう相手を前に何とか希望を見 つけ出そうともがくのであった…。 《続く》 ====================================================================== あとがき 「君が御世に」もどきどきの展開ですね♪ さて、増刊号の「ちょっと変わった二人の話」ですが、二人が出会う所から始 まってるので話が馴染むまでもうちょっとかかる予感。 ちょっと洋風コメディドラマっぽい感じになる予定です(*^ー^*) 君が好きはリンクフリーです。ご意見ご感想をお待ちしております♪ キリ番をGETされた方は、掲示板にご報告お願いいたします。 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 月刊小説「君が好き!」メールマガジン 2002/9/15 44号 発行責任者 :篠原美姫緒 kimigasuki@1-emishop.com Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/ 君が好き!メールマガジンの、転載、複写など著作権法違反行為は禁止です。 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』 マガジンID:0000025584 m00012567 ms00000142 loveyou 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓 |