メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』  2002/09/01


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月刊小説メールマガジン         2002年9月1日 発行
『君が好き!』   増刊号vol.29
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 こんにちわ。篠原です。
 さあ、今日から9月ですよ! 新学期ですね。
夏休みはいかがでしたか?夏休みなかったよ!っていう方はご愁傷さまでした。
夏休み終わったら会社が潰れていたという方は、さぞ長い夏休みが続いている
こととおもいます(爆)

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増刊号 今月のラインナップ  
●愛の寸劇劇場 【ちょっとおかしな二人の話《再会編》】瀬乃美智子
●『聖獣戦記』第9章 篠原美姫緒
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     【ちょっとおかしな二人の話《再会編》】
                           by瀬乃美智子


「俺のじゃないよ、まいったな〜。」

多分、さっきの彼女のとすりかわってしまったんだと思うが…。
振り返ってみれば既に跡形も無く、彼女がどこの誰かなんて知るよしも無い。

しかしまいった。あのアタッシュケースの中身は、明日、どうしても仕事で使
いたいものだし…。警察署に駆け込んで落とし主…(この場合どう言えばいい
ものか)…が、現れるのを待つ暇は無い。
自力で何とかしてみるか!と、青年は即決した。


「手がかりはこのアタッシュケースの中身だけか。鍵、かかってないよな?」

とにかく、どこか落ち着けるところに行こうかなと、青年は駅近くの喫茶店へ
と足を伸ばしたのであった。


「さてと、何か身元が分かるようなもの入ってるかな?…よし、鍵は閉まって
ない」

ボタンをスライドさせて錠を開けた青年は、ちょっとドキドキした心持ちで蓋
を開ける。
何せアタッシュケースとはいえ女の子の持ち物なわけだし、事情が事情だが、
こんな機会滅多にあるわけじゃない。
決してやまして気持ちなど、これっぽっちしかない。

「っ!?」

蓋を開けた青年は思わず凍りつく。

「…何で?」

組み立て式らしいアタッシュケースの中身を見て、青年は思わず小首を傾げる。
そう言えば、自分にぶつかった少女は格好からしてかなり変わっていたかもし
れない。

黒の上下のつなぎに似合わない黒のキャップ。
靴だって軍靴風のブーツだったし、時計もごっついダイバーウオッチだった。
どうでもいいが、青年はなかり観察力のいい方らしい。

(確かに、変わってたなぁ…。)

青年目の前のアタッシュケースの中で黒光りするライフル銃を前に、興味深げ
ににんまり笑って見せたのだった…。



「ばっかも―――んっ! 肝心の仕事道具を…っ、このドジ!!」
「すみませぇんっ!!」

上官に怒鳴られ、少女は思わず首をすくめた。
何とか時間までに現場に到着できたのはいいが、アタッシュケースを開けてみ
れば見知らぬ書類やら小物ばかりで…。
先程ぶつかった時、摩り替わってしまったらしいと気付いても後の祭りだった。

「どうするんだ! あんなもの素人の手に渡ったことが上にばれたら…。」
「うえぇぇぇん。ごめんなさい」

どうしたらいいんでしょう?と逆に少女に涙声で訴えられて、上官は頭を抱え
る。
いや、これは本気でやばい。
特殊任務中に隊員が銃を損失したとなればマスコミのいいネタだ。
だから家に持って帰るなって言ったのに…っ!


「あの――…っ。」

思案を巡らせているところに声をかけられ、上官は不機嫌そうに声の主へと顔
を上げた。
そこには、背広を着た黒髪の…ジャバニーズにしては目の色が違う…が、にっ
こり笑ってアタッシュケース片手に、自分たちに向かって手を振って見せてい
た。

「これ、君のじゃないかな?」
「きゃーっ!パトリック〜♪♪」

パトリック?…俺の名前はレイモンドだけど…。
青年は、小首をかしげながら飛んできた少女に銃の入ったアタッシュケースを
差し出した。
少女は嬉しそうに受け取ると、中のライフル銃をいそいそと組み立て始める。

「カミアは変わってるから、自分の銃に名前つけてるんスよ」

横にいた同僚が、自分の銃の手入れをしながら、ゲラゲラ笑って見せる。
ご機嫌の様子で帰ってきた自分の銃を撫で回す少女を目の前に、他の隊員、上
官も含めてちょっと呆れ顔で、笑ったり、溜め息をついている。
これが、新作のかわいいバッグだとかだったら、もっと絵になるのに…。
我が同僚ながら、そこの所が今いち理解不能なところである。

これが某情報部お抱えの狙撃チームの一員でなかったら、かなり危ない趣味の
お姉さんになっていたことだろう。
情報部に就職できて本当によかったよかった。


とにかく銃が無事届けられてひと安心。
これから始まる任務に向けて、皆も自分の持ち場に帰っていく。
道をはさんだ建物の中には、人質をとったテロリストの群れ、いつ狙撃命令が
出てもおかしくはないのだ。


「ところであんた何者だ? 普通こういう臨戦態勢的な場面に立ち会ったら、
少しは萎縮するもんだけど。ていうか、その前に、どうやって検問突破してき
たわけ…、てっえぇっ!?」

振り返ったそこに既に青年の姿が無く。
並み居る隊員たちは、キョロキョロと辺りを見回すしかなかった。

カミアが間違えて持ってきた奴のアタッシュケースもないっすよ!?と、先程
の青年の神業ぶりに慌て出す隊員を背に、上官はドジな彼女…、カミアへと振
り返った。

「おい、お前がぶつかったってのは何者…。」
「――はい?」
真剣な表情の上官の言葉に、カミアはにこにこ顔で振り返った。
手には既にピカピカに磨き上げられた愛用のパトリック。
……すみません。多分全然話聞いてなかったと思います。
彼の事も眼中に無しです、隊長!

「任務が終わったら奴が何者かとっとと探して来―――いっ!!」
「はっ、はいぃっっ!!」

激怒する上官を前に、カミアはわけも変わらず飛び上がって了解したのであった。


《続く》


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      『聖獣戦記』            篠原美姫緒
   第九章 聖戦

「先輩、もう少し時間をください。」
「……。話しは振り出しか…。わかった。必要になったらいつでも言ってくれ」
「はい。そのときは必ずお願いしに伺います」
 透弥は寂しそうに咲羽の部屋を後にして行った。


 他方、北の大地では毅彦による聖獣復活の儀式が行われていた。
「クククククク、鍵も聖獣も両方手に入るとは」
 北の大地にある氷付けの城。
 中は歴史を語っているかのような絵画が、壁一面に描かれている。
 長い回廊を抜けると、大広間へと出た。一番奥に大きない椅子が二つ。おそら
くこの城の主であった王と王妃の椅子であろう。
 聖獣の復活が近いことを思わせるように、ときどき壁に青い光が筋となって
現れては消え、氷のぶつかるような音も聞こえる。
 広間の中央に足組をし、でんと構えているオーカスの姿もあった。
 暗い床に、突如、魔法陣が光輝くと、その中から毅彦が現れた。
「長い間、ここで居座ってごくろうなことだったなァ」
 オーカスはゆっくりと目を開けた。
「聖獣の復活が近くなったのか」
「ケケケケケケケケケ。玄武の封印ももうすぐ解かれる。あとは生贄しだい。」
「生贄はあのさえない青年か?」
「そうだ。」
「聖獣の娘はどうするんだ?」
「俺のものだ。おまえには渡さんよ。おとーさん」
「何?!」
 突然の毅彦の告白に、オーカスは大笑いをした。
「ははははははははは! 氷の城のなかで脳みそも凍ったのか!」
「俺の母親はセレナだ。まぁもっともティーアなんでもらったのは遺伝子情報
だけだが。心あたりくらいあるだろう」
「!!!!!!!!!」
「かのオーカス将軍もティーアだそうだが…」
「悪いが俺は普通の人間だ。その証拠にごく普通の人間との間に子供ができた」
「ああ、先代の皇帝か。そういえばそんな噂があったな」
 人間が進化の過程で人の亜種としてこの世に産みだされた、人間であって人
間でないティーア。人間とティーアとの間に子供はできないのである。猿と人
間との間に子供ができないように…
「オーカス将軍、いいことを教えてやろう。ヴィシュヌが覚醒したぞ」
「なんだと!」
 毅彦の特殊能力なのか、やはりこれも聖獣の力なのだろうか。知りたい情報
は目を瞑れば見える。
「南殿も終わったな。」
「くう!」
 オーカスの怒りは、その体に眠るハインの心を刺激していた。


                              《続く》
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 あとがき
すごい大変なことになりました。篠原が勤めていた会社がつぶれたんです!
そこで篠原は学びました。社長の独断と偏見とその場のノリで経営している会
社には、もう絶対勤めないぞ、と。

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2002/9/1 増刊号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
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 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
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