メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』2002/3/15  2002/03/14


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月刊小説メールマガジン         2002年3月15日 発行
『君が好き!』  vol.32
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こんにちは皆さま! 段々と温かくなり、春の季節が近づいて参りましたね。
この季節、桜好きの瀬乃は桜のデザインのグッズがいっぱい出るのでとっても
嬉しい限りです。
皆さまの周りでは、素敵な桜は咲いてらっしゃいますか?
(瀬乃 美智子 拝)
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今月の目次
▼君が御世に・4     篠原美姫緒
▼ドラゴンラヴァ・25  瀬乃美智子
▼あとがき
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              君が御世に 4
                          篠原美姫緒

 うらやまし見と見る人のいかばかりなりなべてあふひを心かくらむ

 返し
 なかなに花の姿はよそにみてあふひとまではかけじと思ふ


 中宮徳子のいる藤壺には、入れかわり立ちかわり公家の若公達や、平家の御
曹司たちがやってくる。
 ここの長官である中宮亮(ちゅうぐうのすけ)は、彼女の兄である平重衡で
あり、副長官である中宮権亮(ちゅうぐうごんのすけ)は、平重盛の嫡男、維
盛であった。
 笙子はいつものように、藤壺での仕事を終え、部屋へ続く廊下を歩いている
と、ちょうど反対側から維盛がやってきた。
 軽く会釈をし、維盛が通り過ぎるのを待ったが、
「あ、右京。」
 振り返り呼び止められた。
「今度、気ままに遊びに出かけようと思っているんだ。誘うから、必ず来いよ」
 というではないか。
「は、はい!」
 笙子が緊張して何度もうなずくと、
「ははははは、これだからいじりがいがあるんだ。かわいい」
 などと言って去っていった。
「あ、あたし、またからかわれたん???」
 すっかり、院に溶け込んでいた笙子であった。
 二度重ね染めの青味を帯びた紫色の直衣に、裾をくくったさしぬきの袴。若
楓(表はうすい萌黄色で裏は薄い紅梅色)の下着を着ていた。それがまた爽や
かに着こなしているので、凛々しさが際立っている。維盛の美男子ぶりは、見
るひとすべてが、女なら誰でも一度は思われ人になりたい、と願わずにいられ
ない。
 そんな女子たちの憧れである御人から、なんとお誘いがあったのである。
「やった!」
 笙子はちいさくガッツポーズをした。
「なにが『やった』なのかなぁ、右京」
 西園寺実宗は、背後から声をかけた。
「ひぃ、頭の中将さま!」
「右京もやはり、維盛のような奴には弱いのかぁ。」
「い、いえ」
「俺が、一緒に演奏してくれと頼んでも頼んでも、断られるのに、維盛が誘う
と一つ返事だもんなぁ。」
「い、いえ、決してそのようなことでは…」
「俺があんなにかっこよかったなら、命が惜しくて、かえって弱弱になってし
まうだろうな」

 うらやましいと見るひとは皆どんなにかみんな一緒に逢う日を心にかけてい
るか。

 実宗は歌を読んだ。
 あまりにもおかしいので、笙子は笑顔でもののはしに書いてさしだした。
 
 かえって花の姿は無縁のもので恋人として逢う日までとは思いません。

「実宗さま。私(わたしくし)の拙い琴弾きでよければ、ご一緒させてくださ
いね」
「はははは! 維盛にもかなわないが、さらに右京にはかなわないなぁ。」
「へ?」
「いまや、平家御曹司である惟盛卿に目もくれないとは…。だれか意中の男で
もいるのかなぁ。」
「ととととととんでもございません!」
「はははははは。最近、藤原隆房どのと頻繁に歌のやりとりをしているという
噂を耳にしたぞ。わたしも維盛のように美男子ではないが…」
 実宗は、そこで言葉をきった。そして、笙子を見つめる。
「そなたとそなたの琴と、ともにかさねたいのう…」
 その言葉を聞いて、笙子はいっきに真っ赤になった。顔が火照り、頭の中は
こんがらがって、上手い返事が見つからない。
「ぶははははは! やっぱりおもろいわ!」
 実宗は、そのまま笑いながら去って行った。
「あ、あたし、また、からかわれた…。」
 
 院の五十の御賀の日、維盛は舞を舞った。その舞は、可憐で美しく、見る者
の心を奪っていった。まるで舞の神が乗り移っているかのように、人々を魅了
する。
 舞台の楽屋には、右大将重盛をはじめ。宗盛、知盛、重衡、通盛、資盛、清
経、忠房ら平家一家が揃い、勢い盛んな有様であった。
 が、この日。西園寺実宗も、平安一といわれる琵琶を奏でた。
「あれは、あきらかに維盛さまを意識しているよなぁ。でも…」
 負けず劣らず、華やいでいる。もちろん、女房たちの評判もいい。
 笙子は、いつもより男ぶりが素敵な実宗に、心揺れるのであった。


「どお、右京。おれ、格好よかった???」
 演奏を終えた実宗に、そう聞かれて返答に困った。
(これがなけりゃ、いい人なんだけどなぁ)
「とても、すばらしい琵琶でございました」
「えー? それだけ? もっと他にないの?」
「あ、とても、華やいでいらっしゃいました」
「今度は、君のためだけに琵琶を奏でるからな…」
 とそのとき、実宗の背後に人影が。
「こら、実宗! こんなとこで俺の右京を口説くんじゃな〜い!」
「なぁにが、『俺の右京』なんだ、え! 重衡!」
 と、重衡と実宗の右京の取り合いは、次第に話がそれて、今度の狩りの話に
なった。
(あ、あたしって一体…。)
 放置されながらも、ちょっぴり嬉しい一時を過ごした笙子であった。


                              《続く》
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            ドラゴン ラヴァ・25
                        by瀬乃美智子
…お…っ…う…さん―――…

静かに対流する羊水
もはや「彼」には狭すぎる殻の中で、ただひたすらに待ち続ける日々――…。
もう少し、もう少し…。
今出てしまうのは簡単だけれど、もう少し…。
せめて足手まといにならぬように。
そして出来ることなら、守れる程に強く――。

力をためる。
もう少し、もう少し。
待っていて下さい。
あなたは僕が守るから……。


「っ!」
浅い夢から覚め、海里は布団の中で目を覚ました。
部屋の中はまだ暗く、まだ真夜中であることを示す。
誰かに呼ばれていたような…。
そんな感覚が頭の中に残っているような気がして、海里は少しだけ頭を起こし
て周囲を見回してみた。
しかし誰もいるはずもなく、目にとまったのは枕もとに布と上等の敷物に包ま
れている卵――。彼が愛した竜の産んでくれた卵(それ)は、静かに眠りについ
ているように見える。
白い地肌が黒ずんで来たのは中の胎児が成長を続けている証拠で…。
透けてきている胎児の姿を見て、黒い裸が、母親とは違うな…とかぼんやり考
えてみる。

あれから…、すばやい処理で世話役の人間たちを里へ帰らせ、今は他人の目を
気にする事もなく行動できるし、こうして卵を表にさらす事も出来るようにな
った。
またご主人様からの急な通信がないとも限らなかったが、それは何とかなった。
海里ぐらいの微力な魔物を隠す程度の呪封なら自分にも出来るからと、火竜が
部屋の四隅に術をほどこしてくれたのだ。
これで、海里や人間の浅月程度なら、魔界の者たちがやってきても、呪封の力
によって、ここを見つけ出すことはできないはずであった。
火竜たち程になると、力が強すぎて隠れらきれないようだが…。

卵をそっと抱き上げ、頬を寄せる。
ひんやりと冷たいが、これも孵化が近い為と分かれば喜ばしい。
「ねえ…。」
海里はそっと卵へと呟く。
「…もうちょっと待っておいで。きっと、あの魔王を倒せるから…。それまで
どうか待って、ゆっくりと出ておいで……。」
そういうと、海里は本当に優しく卵をなでてやる。
卵の中の胎児にこっちの様子が分かっていると思うと、注ぐ愛情も深くなるよ
うであった。


…と…うさん…。
違うよ。
僕が…、守ってあげるから……。
だから、どうかもう少し…。
もう少しでなれるんだ―――…に…。


「行け――――っ!!!」
司令官の命令に従い、人間界に張られた結界に数名の下級魔族たちが身を投じ
る。それぞれ思い思いの術で結界へと挑み、そのほとんどは結界の威力に勝て
ず消滅していく。
しかし、先導役の魔族はそんなことには気を止める様子もなく――。
冷血の主の右腕たちであるだけあって、その表情には一点の曇りはない。
右に黒髪に真紅のマントを羽織る魔族。
左に銀髪に漆黒のマントを羽織る魔族。
人型の同じ顔を持ち、見た目は凛とした青年であったが、その内側は主と一緒
のまがまがしいもので埋め尽くされている―――、正真正銘純然たる魔族であ
った。
その二人の口元が、次の瞬間、にいっと吊り上る。

「結界が…壊れていくぞ」
「我が主の願い、今、我らが叶えん!」

巨大な破壊音と共に結界が崩れ行く中。
二人の魔族の足は今まさに、竜彦たちのいる太刀見家の竜の池へと通ずる穴へ
と向かおうとしているのであった―――…。
                    《続く》
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あとがき
君が好き!は、4月7日(日)大田区産業プラザにて開催の「そうさく畑in東京」
に参加予定です。オリジナル創作オンリーの同人誌即売会ですので、よろしけ
れば遊びにいらして下さいませ。
メールマガジン掲載以外の君が好き!の発行物が皆さまをお待ちしております。

君が好きはリンクフリーです。ご意見ご感想をお待ちしております♪
キリ番をGETされた方は、掲示板にご報告お願いいたします。
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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2002/3/15 32号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
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