メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/3/1 増刊号  2002/03/02


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月刊小説メールマガジン         2001年3月1日 発行
『君が好き!』   増刊号vol.23
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 こんにちは、篠原です。毎年毎年のことなのですが、今年も花粉症が猛威を
ふるっております。篠原も、医者の薬を服用しているのですが、これがまた眠
くなる成分を含んでいるので、もう睡魔と花粉症の戦いになってます(爆)

HP更新情報 http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
★随時、HPは更新しております♪
君が好き!のイベント参加日程は下記の通りです。
4月7日(日)「そうさく畑」大田区産業プラザPio
みなさん、遊びに来て下さい〜♪
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増刊号 今月のラインナップ  
●愛の寸劇劇場 『ちょっと不思議な夫婦の話 〜スナイパー編〜』
●『聖獣戦記』第8章 篠原美姫緒
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           『ちょっと不思議な夫婦の話 〜スナイパー編〜』
                           by 瀬乃美智子
 某国情報部の腕利き情報部員にして十数名の部下をまとめる女課長の奥様、
さやか=ド=コンボイと、常識人のようでやっぱりちょっと変わってる(?)、
さやかに溺愛される夫、旦那様こと、武(たける)の熱々だけどちょっと不思
議な夫婦の話、はじまりはじまりです……。


「優秀すぎるってのもやっかいだよねぇ…。」
 男は呟きながら愛用の狙撃銃を片手に屋上の端に立つ。
 位置を確認し、愛用の銃をスタンドで固定すると、自らも腹ばいになり照準
器から正面のビル群の一角へとピントを絞る…。
「…あぁ、いたいたビンゴ♪」
 照準器の視界の中にターゲットを見つけ、ほくそえむ。

 窓に背中を向けた状態でデスクに腰掛けているので顔の判別はつかないが、
あの抜群のスタイルと、印象的な美しい金髪…、そして、この数日間マークを
し続けて覚えた身振り手振りの癖まで…、間違いないあれが今回のターゲット
だ。隣りにいるのも彼女の部下たち、この数日間で覚えた顔ばかりであった。
「さやか=ド=コンボイか…。」
 男はターゲットの名前を呟くと、引き金に手をかけた。
 対テロ対策班の課長となれば、それなりに逆恨みも買う。
 自分を雇ったオーナーもそんな手合いの1人だろう。
 自分はただ、着実に仕事をこなしていくだけ…。
 照準器を除く瞳が微かに細まる。

 某国情報部本部タワー。
 その手の多くのビルがそうであるように、そのビルに使われている外壁ガラ
スは反射鏡タイプになっている。その理由のひとつとして、外部からの狙撃や、
盗撮行為への予防策がある。
 だが、そんな反射鏡ガラスも、光の入射角度によって中が丸見えになると気
がある。…それが、今だ。
「悪いな、お嬢さんっ。」
 すっと息を止め、次の瞬間―――っ。
「かっこよく決めてるところ、悪いんだけど」
「っ!?」
 スナイパーは突然の人声に振り返ろうとして、その後頭部に硬いものが当た
る。
 それが銃口だと気づいたのは、銃に染み付いてただよう微かな火薬の臭い…。
 いつの間に、俺の背後をとってたんだ!
「テロ集団グレイジーが私を狙って、また殺し屋を雇ったって話は先刻承知済
み。あなたもこの仕事を引き受けるとは、運が悪かったわねぇ。…さ、ゆっく
りこっちを向きなさい」
「………っ。」
 背後の声…。
 女性のものだったそれが言う言葉に、殺し屋は思わず言われたとおり背後を
振り向く。
「っ!?」
 そこには、一歩さがって自分へと銃口を向けるターゲット……、13課課長
さやか=ド=コンボイの姿があった。
 その後方には、彼女の部下たちの姿がある。
「そんな馬鹿なっ!」
 殺し屋は再び向かいのビルへと目をやる。
 照準器なしでは人型程度しか判別できないが、そこには確かに…。
「オトリか!」
「まぁね。上等手段でしょ? …あなたは、軍も手を焼く凄腕スナイパーだわ。
…しかも、腕がいいだけじゃなく、逃げ足もはやければ戦闘のスペシャリスト
でもあるあなたはなかなか捕まえられずに、いろいろな公的組織からお尋ね者
になっている有名人だわ。――はっきり言って、今回のことは私の命が狙われ
ているという事実よりも、いかにしてそれを利用してあなたをおびき出し、逮
捕でるかにかかっていたのよ」
「…まぁ、あのターゲットはマネキンですけどね。狙撃手相手に本物のオトリ
なんて使えませんよ」
 さやかの背後にいた主任が、彼女の発言に補足する。
 それを聞いた殺し屋は…。
「動いてるけど?…ターゲット」
「え?」
 ――はっ?
 思わず、主任がそんな馬鹿なと首を傾げる。
 窓際に用意したのは確かに課長と同じ服、同じ色の髪のカツラをつけさせた
マネキン人形のはず…。
「動いてます!主任!!」
 双眼鏡を使って事実を確認していた部下の一人が、本気で驚きの声を上げる。
 確かに、ターゲットは動いている。
 顔を見られまいとこちらに背中を向けたままだが、確かにその動きは人間の
ものだった。

「もういいわよ〜!」
いつの間にか、さやかは携帯電話で誰かに指示を与えている。
すると、さそれに呼応するかのようにそやかの偽者が部屋を出て行った…。
「課長!まさかあなたっ!!」
「…あら、だってしょうがないじゃない。彼は一流のスナイパーよ? ターゲッ
トがマネキンじゃあ、絶対気づくわよ。そんなことで逃げられたら、折角たて
たミッションが台無しだわ」
「ですが!それならそうと最初から相談してください。一体、どこからオトリ
役の女性を連れてきたんですか…。」
「ああ、それなら完璧! 顔を見せずにいても彼が怪しまないほど、私の癖、
習慣、その他全てを知っていて行動できる人物よ。…ま、ただし、問題だった
のは身長ね。『彼』、意外と背が高いからあなたが気づいちゃわないかとハラ
ハラしてたわ。だから、ばれないようにずっと座ったままだったのよ?」
 そう言えば、ターゲットはずっと座ったままだったなと、スナイパーはうな
ずいた。
 しかし…次の瞬間、その場にいた全ての人間が気づいた!

『…彼っ!!!?』

 男かよ!
 しっかしなんで、自分のオトリに男を!?
 女装までさせて!!!!

 あまりの衝撃的事実に、一同唖然とする。
 しかし、ただ一人冷静だったのは…。
「課長のことを何もかも知りとおして、尚且つ、危険なオトリ任務を引き受け
るのは…。……まさか、オトリで女装してたの、武さんですか!?」
「ええっ!?課長の旦那様??」
 その事実に、二度目のびっくり状態の全員。
 しかしさやかだけは、ひっこり笑って「ばれたか〜!」と頭をかいていた。
「だって〜!旦那様ぐらいしか思いつかなかったんだもん♪」
「なんてことするんです! 武さんにもしものことがあったら…。」
「ああ、それなら大丈夫。今回のミッションは旦那様のお墨付きだから。旦那
様いわくね…。」
 全ての狙撃可能ポイントを逆算し、彼が選ぶのは絶対この場所。
 そして、この季節の太陽の光の差し込み角度、反射光……、全てを考え、完
璧な仕事を旨とする彼は、この時間帯、光の入射角度が絶好のポイントをさす
この時間まで待つはず。…そう、旦那様は予想したのだった。
 そして、その神経を最高潮に集中する狙撃の一瞬、彼に必ず隙が出来るはず。
それを狙いなさいと、旦那様は奥様に告げたのであった…。

「負けた…。」
 それを聞き、ガクリとスナイパーは膝をついた。
 そして、そんな化け物めいた人間に今まで銃口を向けていたのかと思うと、
逆に体に震えが走る。

「さ、じゃあ私はこれにて早退ね!」
「えっ?課長、尋問は!?」
「そんなのちゃっちゃとやっといて!私はこれからお楽しみよ〜!」
「お楽しみ??」
 さやかの言葉に、部下の全員が首をひねる。
 そんな部下たちを見て、さやかは本当におかしそうにうふふっ!とにんまり
笑って見せた。

「女装した旦那様と、めくるめく倒錯した愛の世界を楽しむの! 早く行かな
いと、旦那様が着替えちゃう!」
「やめんか――――っ!!!」

 その場の全員で思わず叫ぶ。
 そんなことで、早く帰るな!
 ていうか、旦那様の女装。俺たちも見たいっす!
「駄目なの〜っ、私だけの旦那様なんだから! これから二人でショッピング
して、…食事して、フルコースでデートを楽しむんだから!」
 独り占めかよ!
 …いや、その前に女装させたままデートですか!奥様!!
 緊迫した場面が一転、不思議な夫婦の不思議なデートはこうして始まろうと
しているのであった…。

                            《続く》

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      『聖獣戦記』            篠原美姫緒
   第八章 復活

「この魔方陣は相当大物だぜ」
 隣にいた男はにやりと笑うと、また呪文を唱え始めた。
(こ、この城が魔方陣の封印?! ここに封じられているのは一体…!)
 だが、魔法陣の封印は、この下に封印されている聖獣によって、破壊されよ
うとしていた。
 封印が解かれれば、聖獣は蘇る。
 スゥー キラキラキラ…。
 やがて、魔法陣の光は、魔法陣だけでなく、神殿の壁や光にまで一筋になっ
て輝いた。
 光が柱を通りすぎると、肉眼では今まで見えなかった、柱の内部に描かれて
ある古代文字が浮かびあがった。
「もはやこれまでだな、カルバズ!」
 凛とした太い声が、神殿に響き渡った。呪文を唱える僧侶たちの声が静まり
かえる。 
「あ、あなたは!」
 カルバズ司祭は、その声の主の姿をみて、驚き腰を抜かした。
「イアン大神官さま!」
「イアンさまだ」
「イアンさまが生きておられた!」
「い、イアン! 貴様生きていたのか!」
 カルバズは、持っていた杖を一振りすると、イアンに向かって投げつけた。
 だが、杖は反れ、アレリニオの目の前に突き刺さった。
「やたらに、聖獣を蘇らせようとしたカルバズ(おまえ)への罰だな。」
「な、なにをいうか! イアンさまは死んだ! 貴様は偽者だ!」
「カルバズ! おまえと言う奴は…」
 イアンは呪文を唱えると、カルバズは苦しみもがきだした。
「うううううううううううううううううああああああああああああ!!!」
 カルバズの体から湯気が立ち、彼は、この世から消滅していった。
(こ、これが大神官の…)
 フォールラードゥング本殿の大神官、イアンは生きていた。咲羽の言ってい
たことは本当であった。
「この聖獣の復活をとめることは、もはやできまい。ならば、私がこの聖獣の
生贄となろう!」
 イアンは僧侶たちの間を掻き分けながら、魔法陣の前へと進み出た。
 彼は、魔法陣の光が導くままに、魔法陣の中へと脚を踏み入れた。
 光は彼を包み込み、魔法陣の奥へと吸い込んでゆく。
 まばゆいばかりの光が放たれた。
 光が収まると、神殿は闇に包まれ、しばしの静寂が訪れた。だが…、
 ゴゴゴゴー
 という、地響きとともに、大きな揺れが起きた。
 その揺れはさらにさらに大きくなってゆく。
 城の天井は崩れはじめ、人々は地上へ戻ろうと狭い階段へと逃れようとして
いた。
 ブワワワーー
 鈍い音とともに、閃光が城中を包み込み、城全体が輝いた。

 あれが麒麟!

 アレリニオは薄れ行く記憶の中で、たしかに魔法陣から聖獣麒麟が天へと昇
って行くのを見た。

 とうとう、聖獣麒麟は復活してしまった。

                              《続く》
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 あとがき
 篠原は、最近、ネットゲームの「風の王国」にはまっています(爆)
読者さまの中で、このゲームをやっていると言う方は、ぜひ、いっしょに狩り
にいきませう…。


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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/3/1 増刊号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
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 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
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