メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン君が好き!2001/2/15  2002/02/28


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月刊小説メールマガジン         2002年2月15日 発行
『君が好き!』  vol.30
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手がかじかむ季節真っ最中ですが、皆さまお風邪などひいてらっしゃいません
か? 瀬乃はかじかむてで、必死にこれ打ってます(笑)
さあさあ今号はいかがな感じになってるでしょう? じっくりお楽しみ下さい
ね〜♪ (瀬乃 美智子 拝)

■配信サイトに「Mailux」ご利用の皆様へ■
この度はいろいろご迷惑をおかけいたしまして申し訳ございません。
「月刊小説メールマガジン君が好き!」は、この一ヶ月通常通りの配信を行っ
ていたのですが、何分、数箇所委託している配信代行サイトまの中のひとつで
ある「Mailux」さまが、この一月近く、サーバー不良のせいか(原因は今だ掴
めず)サイト自体にいけない状態にあったのです。
配信予約は「Mailux」様サイト内のコンテンツを使用して行うため、「Mailux」
ご利用の皆様には配信できない状態が続いておりました。
こちらには個々の皆様のデータがないため、配信できない状態にあるというお
知らせも出せずにいました。大変ご迷惑をおかけいたしました。
「Mailux」さまも復活したようですし、これからもどうぞよろしくお願いいた
します。
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今月の目次
▼君が御世に・3     篠原美姫緒
▼ドラゴンラヴァ・24  瀬乃美智子
▼あとがき
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              君が御世に 3
                          篠原美姫緒

 承安四年、正月元日は御所で新年を祝う儀式が行われていた。いつもにも増
して、女房方の化粧にも気合が入り、新調の晴れ着をまとって、あでやかにき
らびやかに御用を務めていた。
 午後になって、中宮の元へ高倉天皇がお見えになった。天子が着る御引直衣
(おひきなほし)に、立て烏帽子を冠り、檜扇(ひおうぎ)をぱんぱんと軽く
手で打ちながらやってきた。
「やっぱり天皇なんだなぁ」
 いつもの悪ガキとは思えないような、立派ないでたちにちょっぴり見直す。
 中宮徳子も唐衣の盛装で、正月に限らずいつもおきれいだが、この時とても
綺麗に見えた。二人並んだ御姿が、強烈に笙子の胸に残っている。
「雲の上にかかる月日のひかりみる身のちぎりさへ嬉しとぞ思ふ」※
(御内裏様とお雛様、そして私は三人娘…。)
 同じ世界にいることを嬉しく思う笙子であった。だが、
「あ、笙子!」
(見つかった…。)
「おーい笙子〜。廊下で盗み見してないで、こっちに来てよ〜!」
 高倉天皇が、大声で笙子を呼ぶ。
「笙子ぉ〜」
 庭園の反対側の回廊から、大きく手を振る。
(あれさえなければ、天皇なんだけどなぁ)
 さすがの中宮も少々呆れ顔であった。
「笙子。新年のお祝いよ。一緒に祝いましょう」
 笙子の承安四年の幕開けは、希望と日の光でいっぱいであった。


 同年春、高倉天皇の生母、建春門院が内裏にしばらく滞在していた。女院(建
春門院)が中宮の元へいらっしゃるという。
 建春門院は、元女房であり、上西門院に出仕していた。上西門院は、後白河
法皇の姉にあたる。上西門院のところへ出入りする法皇の目にとまり、高倉天
皇を産んだのであった。
 この日は女院のほかに、中宮の母である、西八条の二位殿も中宮に会いに来
た。二位殿は、女院の姉である。つまり、平清盛と後白河法皇は、義兄弟とい
うことになる。
 親子、姉妹での語らいの日。
 笙子は、同じ女房仲間のみくし御匣(みくしげ)の後ろから、こそこそと見
ていた。
「さすが女院さまね、右京大夫(笙子のこと)」
「ええ、紫の濃淡(肩から胸あたりまで濃い紫、裾へかけてしだいに淡くなる)
の御衣に、表が朽ち葉色で裏が黄色い上着。」
「桜の小袿(こうちぎ:表はしろ、裏は濃い紫色)に、青い炉の唐衣。」
「蝶々だわ。とても若々しくていらっしゃる。」
「ええ、中宮さまも負けてはいないわ」
 中宮は、つぼみ紅梅(表は紅梅、裏は赤紫)の御衣、かばざくらの上着(表
は赤紫、裏は紅)、やなぎの小袿(表は城、裏は青)に、赤色の唐衣。
「桜の花模様ね。素敵だわ。右京さまも着てみたいでしょう。私も着てみたいわ」
「ええ、でも私には、もったいなくて…」
「あら、そんなことないわ。平家の公達方とは仲がよろしいではありませんか。
今をときめく平家の殿方の目にとまれば…」
「そんな! ばちあたりな!」
 しぃー
 ちょっとからかわれて、声を荒げてしまった笙子であった。
「女院さまも中宮さまもおきれいね」
「ええ、私たちもあのような方にお仕えできて、ほんとに嬉しいかぎり…」
 女院と中宮と、二人が互いに映えあって、とても輝いていた。それにつられ
て御所も、女房たちも、美しく輝いているように見えたという。
 笙子は、この思いを歌に残した。
「春の花秋のつき夜をおなじをり見るここちする雲の上かな」※
 こんなにもこんなにも、光り輝いている御所。
 笙子の心には、いつも笑顔の中宮と、楽しそうに笛を吹いている高倉天皇の
姿が浮かんでは消え、消えては浮かんでいた。
 しかし、そんな輝きも、美しく輝いていた建春門院の死をきっかけに、陰り
が見え初めてきた。


※「雲の上に(天皇家)かかる月(天皇)日(中宮)のひかりみる、身のちぎ
  り(宿縁)さえ嬉しい」
※「春の花(女院)秋の月夜(中宮)を同時に見ているよう。」


                             《続く》
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            ドラゴン ラヴァ・24
                        by瀬乃美智子

「それなら、奴らに対するオトリは……俺がなろう」
『ええぇっ!?』
 竜彦の言葉に、全員が驚きの声を上げる。
「何を言ってるんだ竜彦!!」
 初めに声を上げたのは火竜であった。
「遊びじゃないんだぞ! なんの力もないお前がオトリになって…、何かあっ
たらどうするんだ!」
「それは分かってる。しかし…。」
 火竜の激しい叱責に、竜彦は平然と答えた。
「……なんとなく、うまく行く気がする」
「っ!?」
 何の確信もないはずなのに、自信に満ちた竜彦の言葉。
「出た…、竜彦の何の裏づけもない感だけ発言っ。」
 アイタタタ…っと、火竜は頭を抱え込む。
 海里たちがここに来たばかりの時、二人を『人間ではない!』と決め付けて
譲らなかったことといい、竜彦は自分の感だけで動くきらいがある。
 また、その感があたってるところがすごいのだが…。
 一旦言い出したら聞かないのを知っているだけに、火竜は頭を悩ます。
「だが竜彦、今回は相手が相手…っ。」
 そこまで言って、火竜は言葉を切る。
 そう言えば、卵のゴタゴタに紛れて肝心の相手の名を聞いてない…。
「海里、お前の主は一体何者なんだ? 俺も魔界を離れて長いがリサーチは欠
かしてないからな、有名 どころなら分かるはずだ」
「うっ、それは…。」
 話を振られた海里は、一瞬息を止める。
 海里にとって、その名を呼ぶのすらためらわれるその魔族とは…。
「魔王カリプトロス――…です」
「なにっ!?」
 海里の言葉を聞いた火竜の顔色が一気に青ざめる。
「――…奴が相手なら、もう戦った後のことは心配ない。奴を倒せば、もう他
の魔族が後からやってきはしないだろうな」
「どういうこと?」
 浅月が、火竜へと問う。
 火竜はその問いへと、少し自分を落ち着かせてから答えた。
「魔王カリプトロス―――…。狂気の王。破壊の王。…魔界の実力者にして、
『ドラゴンキラー』の名をほしいままにする竜狂いの大魔王。……奴を本気で
倒せたとしたら、そんな化け物が待つこの人間界に、他の魔族たちが来るはず
がない!」
「っ!??」
 その言葉に、竜彦を除いた全ての者たちは凍りついたのであった……。



「瑠璃葉っ。」
「は、はいっ!」
 まず沈黙を破ったのは竜彦であった。
「明日、使用人たちを全員集めろ。…理由はどうにかつけて、彼女たちを一旦
実家に帰すんだ。…ここはもう危険すぎる」
「わかりました」
 竜彦の采配に瑠璃葉は素直にうなずいた。
 本物の竜の存在すら知らない彼女たちまで、危険にさらすわけにはいかない。
 こんな状態でも冷静さを失わない竜彦に、他の四人も徐々に平静を取り戻し
ていく。
「こっちにだって勝機はある」
 火竜も、策士の表情を取り戻す。
「敵も、まさかこちらに竜が2匹もいるとは思うまい。…ここは竜彦の意見を
採用しよう」
 その口元が口惜しそうに歪む。
「勢い込んで来たものの、待っていたのが人間の当主と知れば、奴らに一瞬、
隙が出来るはず! そこで1匹がまず第2のオトリとして出陣し、次に最後の
1匹が…。これが一番の策だと俺は考える」
「それは…。」
 反論しようする瑠璃葉を目で制して、火竜は言葉を続ける。
「…だだし。俺たちが竜として姿を現してからは、絶対、安全な場所まで下が
っていてくれ!…俺たちだって竜の姿に戻ってしまったら、足元の人間の存在
にまで気を配っている暇はない。守ることはおろか…、気づかずに踏んでしま
う事だってあるんだからな」
 …だからなるべく遠く、害が及ばぬところまで逃げていてくれと火竜は目で
訴えていた。
 その言葉に、竜彦も分かったと素直にうなずく。
「僕は…。」
 海里はどうすればよいのかと、不安げに眉を寄せる。
 それに対し、今度は浅月がにっこり微笑んで答えた。
「あたなは卵と一緒に、私と隠れましょう」
 自分たちには戦う力はないのだから。――ここを出るとまでは行かないが、
危害が及ばぬところへ身を隠していたほうがよい。
「でも、俺がいなくてご主人様は警戒しないかな…。」
「…それは、既に正体がばれて始末したと言っておいてやる。その方が、いざ
ここを逃げることになっても、その後、お前が戻らなくても不審に思われまい」
 竜彦の配慮に、海里はありがたくうなずいた。
「では…。」
 5人がそれぞれのみなの顔を見回す―――。
「いよいよ、決戦だな」

                          《続く》
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あとがき
え〜、先日相棒の篠原からメールがありまして。
↓にあります、発効日が2002/8/15のままだよと…(笑)
き、気がつかなかったんですよ! そんなところに日付があったなんて!!(汗)
ごめんなさい!いや〜皆さん、遠慮なく突っ込んでくださればよかったのに(笑)
…結構おっちょこちょいの瀬乃でした♪

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2002/2/15 30号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
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