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=================================== 月刊小説メールマガジン 2001年2月1日 発行 『君が好き!』 増刊号vol.22 =================================== あけましておめでた〜♪(激遅)ちょっぴり風邪気味の篠原です。 さてさて、今年の増刊号第一号です。今年も、益々充実した小説を書きたいと 思っております。 HP更新情報 http://kimigasuki.hoops.ne.jp/ ★随時、HPは更新しております♪ 君が好き!のイベント参加日程は下記の通りです。 4月7日(日)「そうさく畑」大田区産業プラザPio みなさん、遊びに来て下さい〜♪ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 増刊号 今月のラインナップ ●愛の寸劇劇場 『ちょっと不思議な夫婦の話 〜大事なもの編〜』 ●『聖獣戦記』第8章 篠原美姫緒 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 『ちょっと不思議な夫婦の話 〜大事なもの編〜』 by 瀬乃美智子 某国情報部の腕利き情報部員にして十数名の部下をまとめる女課長の奥様、 さやか=ド=コンボイと、常識人のようでやっぱりちょっと変わってる(?)、 さやかに溺愛される夫、旦那様こと、武(たける)の熱々だけどちょっと不思 議な夫婦の話、はじまりはじまりです……。 「なんでお前が来るんだよ!」 ロスは知らせもしていないゲインズが現れて、怒り出す。 「いいじゃないですが、知らない仲でもなし…。」 折角見舞いに来たのに心外だなという風に、ゲインズはむっとふくれる。 ロスとゲインズはそれぞれちょっとした事情から旦那様の忠実な下僕……部 下になった(「罠編」「即日使用編」参照)のだが、なにかというと互いにラ イバル心を燃やしている間柄なである。 先日、ゲインズは自宅でちょっとした爆発事故を起こし、入院中なのだ。 肩口や額に巻かれた包帯がまだ痛々しい。 「…どうせまた、武さんに好かれようと爆弾でも作ってて誤爆したんでしょ?」 ゲインズがぼそっと漏らした独り言にぴくりとロスの肩が反応する。 …どうやら図星らしい。 「わっ、悪かったな!俺はな、常日頃から武さんに気に入られようと努力して るんだよ!…だから、たまには失敗だってするさ!」 武さんにチクるんじゃねえぞと、ロスはゲインズに念を押す。 しかし、その言葉にゲインズは両肩をひょこりと上げて答えた。 「そんなの無理ですよ。…だって、ここには武さんと一緒に来たんだから」 「えぇっ!???」 ロスが驚きの声を上げた瞬間、病室のドアがけたたましい音と共に開けはな れた! 「武さん!!」 普段の彼らしからぬ荒っぽさで乱入してくると、旦那様はロスの目の前まで ズンズンと歩を進め立ち止まる。 「この馬鹿っ!!」 「っ!?」 怒鳴り声と共に、旦那様の左手がロスの頬を張り倒す。 痛さよりもその行為自体に驚いたロスは、赤く腫れ上がっ頬を押さえながら 呆然と旦那様を見返した。 「この馬鹿!! 誰が命をかけてまで爆弾を作れと言った! どんなに俺好み の爆弾を作ったって、死んだらもともこうもないだろう!」 本気で怒っている様子の旦那様を見て、…しかしゲインズは何故か嬉し涙を 浮かべていた。 「…すみませんでした。心配してくれるとは思わなかったんで…嬉しいです」 ドジがばれたらきっと愛想をつかされると思っていたロスは、旦那様が自分 の身を心配してくれたことが事の他嬉しかったようだ。 しかし旦那様は…。 「もう爆弾を作る必要はない」 「えっ!?でも! …次はこんな失敗しませんから!」 必死の形相のロスに、しかし旦那様は駄目だときっぱり言い切った。 「…俺はね、結構心の小さい人間なんだよ。ロス」 旦那様は怒っているのではなく、静かにロスへと言い聞かせる。 自分が傷つくことも怖いが、周りの人間が傷つくことはもっと怖い。どんな 手段を取ろうと守ってやりたいし、その為の準備も怠らない。 …人を守るためには力が要る。だから、自分の為に動いてくれる手駒を常に用 意しておく必要がある。手駒は多ければ多いほどいい、いろいろな分野に網を 巡らせておけば、安心だ。特にロスのように、特殊な分野に知識が明るい人間 は貴重だ。 「君は爆発物の扱いが得意なようだから様子を見てきたけど…。こういう事故 を起こすなら、もう爆弾は作らなくていい」 「今回はちょっとした…っ!」 「駄目だ! …言っただろ、俺は心の小さい人間なんだよ。もう少し待てば君 は確かに爆発物のエキスパートになれる可能性があるかもしれない。でも、こ んな危険を犯させてまで、君に爆弾を作っては欲しくない。これは…、俺の君 へのわがままなんだよ」 「武さん…。」 自分のわがままで止めさせるのだと、旦那様は言う。ロスに才能がないのだ と言うことも出来るのに、あえて、才能がある君に…それでも傷つくのが怖い から止めさせるのだと言う。 「…分かりました」 しばしの沈黙の後、ロスは口を開いた。 「でも、武さんの元は離れません。俺は俺なりに、あなたの役に立てる道を探 します」 「…うん、そうだね。それはこれからゆっくり探せばいい。……ありがとう」 ロスの言葉に、旦那様はほっとした様子でうなずいたのであった―――っ。 「おまたせ」 一時間後…。 ゲインズは、病院の駐車場の車中で旦那様を迎え入れた。激励も兼ねて二人っ きりで話したいからと言う旦那様に、あの後病室を追い出されていたのだった。 「なんだか意外でした、武さんがあんなこと言うなんて」 「そう? 君は…、一体俺のことどんな人間だって思ってたんだい?」 「それは…。」 自分を完敗させたやり口と言い、ゲインズにとって旦那様は化け物のような 存在だった。何を考えているか分からないし、どれだけの力を持っているのか も分からない。ただ、自分に危害を加えようとするものに対しては、確固たる 力を所有する人物だと思っていた。 ロスの事も…利用価値がない人物だと分かれば、平気で切り捨てる人だと思っ ていたのだ。それをあんな…、直接自分の思いのたけをぶつけるような言い方 で彼を説得するから…。 「ロスに言ったことは本当さ。俺は自分の気に入った人間が傷つくことは嫌い だ。君はどう思っているか分からないけど、君が誰かに傷つけられることがあ れば本気で守ってあげるし」 「…そのかわり、僕らもあなたを守る?」 ゲインズの言葉に、旦那様はちょっと苦笑いを浮かべて見せた。 「そういうことになるのかな。…俺は、僕自身は何の力も持たない非力な人間 だと自覚してるし。…まぁ、色々な経緯とかあって、俺はいろんなものから自 分の身を守らなくてはいけなかったからね。いつも守ってもらう人間を必要と してるんだよ。だから、僕を守ってくれる人たちに対しては、ちゃんと礼も尽 くすよ?」 「……そういうの大変じゃありません? なんだかあなたって、いつも命狙わ れてるみたいだ」 ゲインズの言葉に、ああそうかもねと旦那様は笑って見せる。 金持ちゆえの悩みや抗争とか、軍に入ってから特殊な職業についてたからと か、妻が危険な仕事をしているからとか…、次々と環境が変わるたびに危険な 物だらけでいい加減やになっちゃうよね〜!といいながら…。 「…それでも今は、さやかに出会えたから幸せだよ? だって、どんなに傷つ いたって、生きてさえいれば最後には彼女がなぐさめてくれるから。…だから 命が大事。だから、ロスにも大事にして欲しいんだよ。…もちろん君にもね」 「………っ。」 《続く》 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 『聖獣戦記』 篠原美姫緒 第八章 復活 書庫の扉をそっと開ける。 ひんやりとした空気に包まれた。石造りの壁と下る階段。 その先は闇だった。 アレリニオは、階段に一歩踏み出し、扉を閉める。 「真っ暗、か。」 気絶している警備兵を、小窓から覗く。 「俺、地上に戻れないかも。」 彼が気がつけば、このことは当然司祭に報告されるであろう。そうなれば、 出口をふさがれる。だが、アレリニオは闇の中へと足を踏み出した。 長い階段。 ときおり、虫やゴキブリ、ねずみといってものが出てくる。 「うぁ! びっくりしたなもう」 さらに、階段は続く。ふと、下の方から明かりが見えてきた。 人の声もする。 (こんな地下で一体なにを?) さらに、下へ降る。 すると、広い踊り場へと出た。 浩々と松明が燃え、なにか慌しく人が走り回っていた。 (城の地下にこんな施設があったのか?) 「こらー! 急げ! 祭壇に結界をはれ!」 聞き覚えのある声だ。 (司祭? 祭壇ってことは、ここは地下神殿か!) アレリニオは、脱ぎ捨てられていた神官服を羽織ると、人の流れに沿って動 いた。 (ここへの入り口は一箇所じゃないな。あれは、本殿の神官だ。そういえば、 城の神殿の司祭は本殿出身だったな。ここは本殿の?) 城内に神殿が併設されている。 その地上にあった神殿は、城の地下にも、いや地上よりも大きな神殿を築い ていた。 「おい、そこのぼけっと突っ立ってる奴!」 考え事をしていたアレリニオははっとした。 「さっさと、魔法陣へ行け!」 「は、はい!」 アレリニオは言われるまま、こそこそと人の流れへと戻っていった。 (魔法陣? いまあの男、そう言ったよな?) 先ほどの踊り場より、さらに広い場所へ出た。 なんとそこには、巨大な魔法陣と魔法陣の真中に、石像が立っていた。 魔法陣を取り囲むようにして、200人くらいの神官らが祈りを捧げていた。 「こ、これは一体?!」 魔法陣は、胎動していた。 時折、石に刻まれた文字が光ってゆく。 「こら! さっさと結界を張る呪文を唱えんか!」 そばにいた神官に座るように指示され、文言を口ずさむ。 (結界を張る? 結界を張って、聖獣の復活を止めているというのか?) 「おまえ、見かけない顔だな。」 (ばれた?) 隣のやつに話し掛けられて、思わずドキッとする。 「天殿(メール山)から、呼びつけられたんだろ」 「ああ、まぁ…」 「俺もだ。一週間前にここに入った。まさか、このエルデラーン宮殿自体が魔 方陣の封印だったなんて、知らなかったよ。」 「……!」 「なんだおまえ、知らなかったのか?」 「ああ」 「この魔方陣は相当大物だぜ」 隣にいた男はにやりと笑うと、また呪文を唱え始めた。 (こ、この城が魔方陣の封印?! ここに封じられているのは一体…!) 《続く》 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ あとがき 今年も、もう、一ヶ月経っちゃいましたね。 執筆活動は、気が乗らないと書けないタイプなので、この一ヶ月、さぼり気味 で…。スランプからなかなか抜け出せず、懐も脳みそも大不況。 みなさんは、スランプの時ってどう過ごしていますか? 篠原の『聖獣戦記』は、通販できます。 君が好き宛てにメールくださいね。追って詳しい通販案内をお知らせします。 サーバ不具合のため、配信が遅くなってすみませんでした。 君が好き!はリンクフリーです。 小説のご意見ご感想をお寄せください♪ =================================== 月刊小説「君が好き!」メールマガジン 2001/2/1 増刊号 発行責任者 :篠原美姫緒 kimigasuki@1-emishop.com Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/ 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』 マガジンID:0000025584 m00012567 ms00000142 loveyou 君が好き!メールマガジンの、転載、複写など著作権法違反行為は禁止です。 =================================== |