メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/12/1 増刊号  2001/12/01


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月刊小説メールマガジン         2001年12月1日 発行
『君が好き!』   増刊号vol.21
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 いやはや、かれこれもう12月ですね。年の瀬ですよ、一年一年が早くすぎ
ていくではありませんか! そして今年もやってまいりました年賀状シーズン。
みなさんは年賀状をどうしていますか? 
篠原はメールで送れるところには、グリーティングカードで送ろうかと思って
います。いえ、別に当日配信でも届くからというわけじゃ…。

HP更新情報 http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
★随時、HPは更新しております♪
君が好き!のコミケ参加日程は下記の通りです。
日曜日 西地区 “つ”ブロック 08b
みなさん、遊びに来て下さい〜♪
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増刊号 今月のラインナップ  
●愛の寸劇劇場 『ちょっと不思議な夫婦の話 〜修羅場編《後編》〜』
●『聖獣戦記』第8章 篠原美姫緒
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    『ちょっと不思議な夫婦の話 〜修羅場編《後編》〜』
                       by 瀬乃美智子

「ハズブロック様、よくいらっしゃいました!」
 二人が会場のホールに足を踏み入れるやいなや、明るく弾んだ声が二人を迎
えた。声の主はもちろん、例のご令嬢であった。令嬢といっても、二十代後半、
美しい才女ではあるが、もしかしたら旦那様よりは少し年上かもしれない。
「来ていただけて嬉しいわ!」
 来訪の礼を言う顔は確かに上官の方を向いているが、その視線は明らかに旦
那様の方へとそそがれていた。分かりやすい人だ…。
「では、例のお約束よろしく」
「ええ。もちろんです」
 何の約束をしたのやら…。いとも簡単に身売りされたらしい旦那様は、いよ
いよご令嬢にそばに寄って来られて体を硬くする。
「お久しぶり、お元気でした?」
「………っ。」
「ますますりりしくなられたんじゃありません? さすが名門ゴールティー家
の血を引くだけのことはありますわ」
 このご令嬢は、旦那様の実家であるゴールディー家のことを良く知っている
らしい。そしてその口ぶりからしても、昔からよく旦那様を知っているらしい
が…?
「ねえねえ、パーティーなんか抜け出して、どこか静かなところで二人っきり、
一晩中語り明かしましょうよ」
「やめて下さい。私は今、上官の護衛中です。勤務中は私語厳禁。話し掛けな
いで下さい」
「武さんったら、そんな意地悪おっしゃって〜っ!」
 嫌がる旦那様の腕にしがみついて離そうとしないご令嬢。
 そして、そんな二人の様子を見て、苦い笑みを口許に浮かべる上官。
(お〜っ。愛されてるね〜!)
 どうやらこの上官、完全にこの場の状況を楽しんでいるようである。…いい
のか?
 しかしそれはどうやら他の招待客たちも同じようで…。
「うふふっ。またじゃれあってわっしゃるわ。あのお二人」
「喧嘩するほど仲がいいって申しますものね」
「…相変わらず、メリルお嬢様の武様への溺愛ぶりは変わりませんなぁ」
「本当に!武さまも口ではああ言ってらっしゃるけど、本当はいまでも…。」
 やばいです。
 この人たち、本気でこの二人をあおっちゃってます…。
 旦那様…、というより、この場にはいないけど、奥様ピ―――ンチっ!
 旦那様を取られちゃいますよ!?

 そこに…、
「あ〜らメリルさん。武さんをひとりじめなんて、ひどいですわ」
 突然、ホールに響く女性の声。その人物に道を譲るように人々は身を退く。
 そこに現れたのは…、一人の美しい令嬢であった。よく見ると先程から猛烈
なアタックをかましている『メリル』と呼ばれる令嬢と似ている…。
「エっ、エスタニア姉さま…。」
 まずい、とばかりにメリル嬢の表情が引きつる。どうやら姉妹のようである。
『エスタニア』と呼ばれたご令嬢は、少々直情型なメリル嬢とは違い、にっこ
りと優しく微笑んでゲストたちにこれから行う無礼を詫びる。
「折角来ていただいたのですが、ご覧のように今宵は武さまがいらしてくださっ
た特別な晩。私どもは武さまと奥に下がりますが、どうぞ引き続きパーティー
をお楽しみくださいね」
 その言葉に、どうぞお気遣い無くとゲストたちも微笑み返す。
 どうやらこのご令嬢も、旦那様を奥のプライベートルームに連れ込んで、じっ
くり楽しむ(?)算段らしい。
「あちらで『みなさん』がお待ちよ? さっ、参りましょう武様」
「え、いっ嫌やですぅ…。」
 今度は比較的低姿勢でお断りする旦那様。
 でも笑顔できっぱりと跳ね返される。
「おまえたち、武様を奥にお連れして」
 言うが早いが、数名の男たちが進み出て嫌がる旦那様を奥へと連れ去っていっ
てしまった。体格からしても、ボディーガード専門の使用人たちに違いない。
「ギャ―――っ!やだ―!!」
 むなしく響き渡る旦那様の悲鳴が涙を誘う。普段奥様相手以外は無敵を誇る
旦那様が、ここまで好き放題されるのも珍しい…。
「あ、そうですわ。これ…。」
 旦那様の姿が見えなくなったのを確認して、エスタニア嬢は上官へと何やら
包みのようなものを渡す。
「何ですか?」
「これは私からさやかさまへのお約束の品。…今回の事に目をつぶっていただ
いたお礼ですわ。お届けくださいな」
 そう言い残すと、令嬢は自分も奥の間へと下がっていった。
「おいおい、さやかの奴まで約束かましてたのかよ。 …自分の亭主差し出し
てまで欲しがるお宝って、一体なんなんだ?」
 自分のことは言えない上官は、ただただ、不思議そうにその包みを眺めたの
であった…。

「きゃ―――っ!!!」
 例の上官から包みを渡された奥様は、大喜びでそれに頬ずりする。
「何が入ってるか知らないが、お前が旦那を売るとはね〜!」
 あきれた素振りで溜め息をつく上官。
「あら、だって折角外国からこちらにいらしてるんですもの、たまにはお相手
して差し上げてもばちはあたらないはずだわ」
「…ふふ。今頃かわいがられてるだろうな、武の奴」
「でしょうね〜。本当に愛されてるもの旦那様――…。」
 振り込むた奥様は極上の笑みを浮かべる。
「――…素敵な『お姉さま』方に!」
「本当だよな。普通あそこまで『実の弟』を溺愛しないよなー!」
 うおっ!
 …きょ、姉弟?! ここまで来てそんな落ちが、許されるんですか!??
 そうです、そうなのです。あの屋敷は旦那様のご実家のゴールディー家で、
もめていた相手のご令嬢は旦那様のお姉さま!
 彼女は弟である旦那様のことがかわいくてかわいくて。どうしても手元に戻
したいのですが、結婚して奥様のものになってしまったので、それが悔しくて
しょうがないのです。
 だから海外からこっちに帰ってくる度に旦那様を呼びつけ、あんな女とは手
を切って実家に帰って来いと言って聞かないのです。だからあまりのしつこさ
に旦那様もここに来るのが嫌なのでした。
 まぁ、旦那様が嫌っているのはあのメリルという直情型のお姉さまだけなの
ですが、それ以外にも問題があって…。
「まあ、あいつの気持ちも分かるよ。かわいがってもらえて嬉しくないわけ無
いけど、相手の数が問題なんだよな〜。やっぱりあの人数の相手は疲れるって!」
「なにせ、旦那様、お姉さまが『8人』もいらっしゃるものね。8人のお相手
では、さすがにね…。」
 …ただ今旦那様、8人がかりでかわいがられ中の模様です。
「で。なに貰ったんだ?」
 最後ととばかりに奥様に包みの中身を尋ねる上官君。
 ああ、それにとほくほく顔で答えるさやか。
 旦那様が実家に上記のような理由を中心に寄り付かないばかりに、さやかが
手に入れようとしてもどうしても手に入らなかった一品。それはゴールディー
家に厳重に保管されていた…。
「『旦那様の小さい頃のお写真』よ! お宝でしょ〜!!!!」
「そんなものの為に、自分の旦那一晩売ったんかい!」
 思わず突っ込みを入れる上官君。
 …いえ、奥様にとってはどうしても見てみたかったお宝なのです!

 本日、奥様の元に旦那様(現物)はいませんが、写真相手に大変激ラブな一晩
を過ごした奥様なのでした…。

                           《続く》
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      『聖獣戦記』            篠原美姫緒
   第八章 復活

  少女は、複雑な思いで義理の父親の話を聞いていた。
「咲羽、お前は間違いなく私の娘。ティーアは子供を産めないから、製造され
た段階で兄弟親子が決まる。もちろん星も一緒だ。ただ、普通の人間では理解
を超えたものだが。」
 由緒正しき名門礼門院家の長女の婿である以上、子供それも男の子を待望さ
れていた。何年も子ができないとなれば、総帥(祖父)に申し訳ない。
「産まれてくる子はティーアであることを承知で、奴に頼んだんだ」
「でも…。」
「奴の手にかかれば、普通の子供も化け物になるさ」
 奴とは、DR.ファウストのことである。彼の研究のテーマは、「人間は聖獣に
なれるか」というものであり、奴の手によって生み出された生命であるなら…。
「その証拠にここの(フラメ)の魔法陣は、お前(咲羽)が作ったものだろう?」
 これは試されているのだろうか。咲羽にはそんな不安があった。ここで「う
ん」と返事をしてしまえば、自分はどうなってしまうのだろう。
「しかも、封印されているのはタイタンではない。あの封印だとおそらく……
朱雀。守護神覚醒の証だ」
「お、おとうさま…?」
 この人はどこまで知っているのだろう。
 咲羽の胸は高鳴るばかりである。
「魔大戦はもう嫌だ。平和に生涯暮らせるならどこでもいい。そうだろ? 朱
雀の巫女?」
「お、おとうさま…。私は、生まれがたとえ試験管の中であっても、今は普通
の人間となんら変わりはありませんよ。」
「そうか。よかった。お前も荷物をまとめて早目に家に戻ってきなさい。」
「はい…。」
 火月は、微笑みながら和やかに咲羽の部屋をあとにした。笑顔で見送る咲羽
ではあるが、
「お父様は星のことを気にしていなかった。……あんなに溺愛していたのにな
んで?」
 咲羽にはそれがひっかかる。そっと手を頬にあてた。アレリニオに叩かれた
とろこが、今ごろになって痛み出してきた。


 アレリニオは、王宮内の書庫に来た。ここには、世界中のありとあらゆる書
物が保管されているという。
 しかし、書庫の奥にひっそりと厳重に鍵をかけてある扉があった。いわゆる
どこにでもある、開かずの間というやつであった。
 ここの鍵は、幾年にもわたり司祭が保管している。だが、アレリニオは、ちょ
っと太い針金を出すと、鍵穴に差し込んだ。
 かちゃかちゃかちゃ
 天井の高い書庫では、小さな音もかなり響く。
「陛下! 何をなさるのです! ここはあけてはいけません!」
 警備兵が、慌てて止めに入った。
「何をする! 私は皇帝であるぞ。ここを開けよ!」
「いけません! 司祭様から強く止められております。ここを決して開けるな
と!」
「では聞く。なぜここをあけてはいけないのだ? ここには古い書物が保管さ
れているのではないのか? ならば、なんら問題はないはずだ」
 古い書物…。それは時に、人の命をも奪いかねないほどの真実がかかれた書
物かもしれない。
 だからこそ、聖獣が一体なんであるか、アレリニオは知りたかった。自分の
ために、咲羽のために…。
「いけません! いくら皇帝陛下といえども、ここをあけるわけには! 私の
命に代えても!」
「ちょっと待った! 命に代えても? 司祭の命令に命をかけるというのか。
何故だ? たかが人の言葉ではないか。そんなたいしたこともない命令に、な
んで、大切な命をかけなければならない?」
「司祭様は、神様の声を聞く神聖な方。そのかたがおっしゃるのなら、フォー
ルラードゥングの声です。わたしは逆らうことはできません。」
 アレリニオは、南殿が実家である。それゆえフォールラードゥングとは、深
いかかわりがある。内部事情に詳しいアレリニオとは裏腹に、いつまでも信者
は、あの醜い争いをしている聖域を「神聖なもの」とあがめている。
「皇帝より、死んだ幽霊のほうが格が上というわけか。命を大切にしろよ。亡
霊たちの遺言だか教えだかしらんが、そんな作り上げられた既成事実に惑わさ
れるなよ。」
 アレリニオは警備兵の肩をにこやかに、ポンポンと叩くと、そのまま腹に蹴
りを喰らわせた。警備兵は目を白黒させながら、その場で気絶した。


                              《続く》
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 あとがき
 さてさて。来月の増刊号はお休みです。コミケ・正月となってしまうため、
果てしなく忙しいので…。いや、メール配信サイト自体もお休みのところがあ
るためです。昨年のようなウィルス騒ぎを警戒してという噂も(笑)
 とりあえず、増刊号は今年はこれで最後ということで。良いお年を〜♪

 篠原の『聖獣戦記』は、12月30日発売です。

君が好き!はリンクフリーです。
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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/12/1 増刊号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
 マガジンID:0000025584 m00012567 ms00000142  loveyou
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