メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』 2001/11/15  2001/11/16


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月刊小説メールマガジン         2001年11月15日 発行
『君が好き!』  vol.25
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こんにちわ! 瀬乃 美智子です♪
今回、篠原は増刊号に引き続き、聖獣戦記を掲載させていただきました。
毎回楽しみにしているみなさん、早く続きが読めてよかったですね!


ごめんなさい。今回も失敗しました配信(泣)
失敗…というか、原稿は出来上がっていたのですが、送信するためのログイン
画面に入る事が出来ず、結局、配信予約間に合いませんでした(泣)
翌日はつながったので、サーバーかPCのどちらかの不具体の為と思われます。
ごめんなさい、申しわけございません出した!!(反省)

HP更新情報
君が好き!のコミケ参加日程
日曜日 西地区 “つ”ブロック 08b
切り番ゲットした方は、報告ください♪

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今月の目次
▼ドラゴンラヴァ・21  瀬乃美智子
▼聖獣戦記・22     篠原美姫緒
▼あとがき
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           ドラゴン ラヴァ・21
                     by 瀬乃 美智子

「きゃっ!」
 浅月の為の朝の膳を手に立ち上がった世話係は、突然の揺れに思わず短い悲
鳴をあげた。
 元々不安定な上に置かれている食器類が、膳の上でユラユラと揺れる。慌て
て体制を整えようとする世話係の女。しかしその努力も空しく―――…。
「きゃ―――っ!!」
 次に起こった激しい揺れに、世話係はとうとう膳を取り落とし、床に倒れこ
んだ。同じく台所で朝食の準備をしていた他の使用人たちも次々に床にしゃが
みこみ、悲鳴を上げて収まるのを待つ。
「なっ、なんですの〜??」
「すごい地震でしたわね…っ。」
 しばらくして揺れが収まると、使用人の女性たちはそろそろと立ち上がた。
 朝の仕度の中、突然起こった地面から突き上がるような揺れ。
 その突然の出来事に、使用人たちはしばし呆然としていた。中でも浅月に朝
食を運ぼうとしていた世話係の女性は、突然の地震のショックよりも、自分の
周りに散らばる器とぐちゃぐちゃになってしまった朝食たちに、言葉も出ぬよ
うであった。
「どうしましょうっ…!」
「仕方ありませんわ、ひどい揺れでしたもの。急いで代わりのものを…。」
 ようやく衝撃から立ち直りだした使用人たちは、手分けして片付けだす。
 そしてひと通り片し終わり、さて、浅月様の新しい朝食をお作りせねばと皆
が試案をしだしたところに、台所を訪ねた人物が一人…。

「浅月様!!」
 突然の主の出現に、皆、慌てて身を引き浅月へと場所を空ける。
「怪我はありませんでしたか?」
 今日の浅月は、いつものベールで身を包み、その内側から涼やかな視線を世
話役たちへと向けていた。この数日、竜彦や海里たちの前ではベールを取り去
っていたが、これこそが浅月…瑠璃葉の本来の姿であった。もっともそれは、
元々本物の浅月が、行く行くは自分に化けた瑠璃葉と入れ替わるため、多少の
違いに気付かれにくいようにという防護策であったのだが、占い師という立場
にある浅月にはその神秘性を象徴するアイテムとしてその全身を追おう純白の
ベールはなかなか良い小道具でもあった。
浅月の世話をする使用人たちも、その美しい女当主の姿に惚れ込んでいるのか、
誰一人それをいぶかしむものはいなかった。
「竜彦の朝食は出来ているかしら?」
「はっ、はい。竜彦様のでしたら…。」
 まだ火にかかっていた竜彦の朝食はひっくり返る事もなく無事だったらしく、
言いつかった世話係が鍋の蓋を開ける。
 そこにはいつも通り、竜彦専用の薬草がゆがいい具合にふっくらと炊き上げ
られていた。
「貰っていきます」
「ええっ!? いえ、竜彦様のところへでしたら、私どもがお運びしますので
…っ。」
「いいの。竜彦、今日は体調が悪いようですから、私が付き添って食べさせて
あげたいの。私は…、まだお腹がすいてませんから、後でいただくわ」
 使用人たちも、まさか目の前の美しい少女が昨夜二匹の魔物を丸呑みのにし
た竜とは思いつくまい。
 使用人たちによって用意された竜彦の膳を手に、浅月は炊事場を後にする。
 残ったのは、唖然とする使用人たち…。
「ど、どうなさったのかしら、浅月様…。」
「今まで、こんなところまでいらっしゃることなんてなかったのに。しかもご
自分から竜彦様の所にご膳を運ぶなんて…。」
 突然、今までになく積極的に行動しだした当主の変化に、ただただ、使用人
たちは目を丸くするばかりなのであった…。

「なにぃ?結界が張られているだと?!」
 使いにやった部下から報告を受けた魔王は、予測のつかない事態に一瞬顔を
ゆがめた。
 どういうことだ?? 前夜向かわせた部下の魔族たちはすんなりあの『穴』
を通って、人間界へと向かったはず。その二人から到着したとの報告がなかっ
たため、念の為他の部下に後を負わせたのだが…。二人が通ったはずの穴に、
今日になって強力な結界が張られているとはどういうことなのだ!!
(なにかあったな…?)
 至極当然の考えが魔王の頭の中で首をもたげる。
 あの二人の実力から言って、生きているのであれば必ず連絡は入れてくるは
ずであった。それがまったくの音信不通…。
 加えて、二人が通っていったはずの穴に今日になって強力な結界が張られて
いた。
 元々、弱い結界が張られているらしいというのは先刻承知。それが今日にな
って、近づいた偵察役の一匹が触れた途端に弾けて消滅してしまったほどの強
力な結界にかわったいるとは…。やはり、あの結界の向こう側に何者かがいる
のは間違いない!
 高位の魔族たちがそうするように、この海里の恐れる魔王も人間の姿をとり、
漆黒の衣装とマントにその身を包み、その冷酷な瞳に激しい敵意を燃やしてい
た。
 海里からなんの連絡もないと言う事は、敵に消されたか、連絡の取れない状
況下で縮こまっているかのどちらかだ。
 もともと奴に期待はしていなかったが、まあいい。これだけの手がかりをみ
つけだしたのだ、それだけの価値はもう果たした。
 その金色に燃えたつような髪の毛が、一瞬、逆立つように見えた。
「結界を破壊しろ! いいか、ただちにだ!! それが出来ぬようなら…、貴
様ら、覚悟しとくのだな!」
「は、はい。直ちに!!」
 冷酷な主の死の宣告に等しい命令を受けた部下たちは、ただちに人間界へと
通ずる『穴』へと向かったのであった……っ!


「竜彦、食べれる?」
「うん。なんとか」
 朝食の膳を手に入って来た瑠璃葉に、竜彦はゆっくり体を起こしながら答え
た。
 度重なる「未来視」と、おぼれかかったハプニングなどもあり、かなり体調
を崩しているようであった。しっかりした体つきの割には、あまり丈夫とも言
えないらしい。
「竜彦、あなた薬草がゆばかりでは体に悪いわ。たまにはお肉も食べないと」
「肉は体が汚れるから禁止」
 きっぱりと言い切る竜彦。
 占いを転職とする彼は、その力を保つため多くの制約をその身に課している。
 肉禁止というのもそのひとつらしく、本当かどうか分からないが、食肉は身
を汚すとして10歳の歳から絶っているという。
よくもまぁその栄養状況で、時として瑠璃葉を抱え上げられるほどに育ったも
のである。
「ん…、うまい」
 瑠璃葉が盛り取ったおかゆを口に入れて、満足そうな笑みを浮かべる。
 竜彦はこうして瑠璃葉と一緒にいられさえいればそれでいいというのだから、
…案外、他の誰よりも幸せなのかもしれない。
 しかし、そんな二人のささやかな幸せの時間を、さえぎるものがいた。

「ごめんなさいね、ちょっとお邪魔するわ」
「浅月っ!」
 真昼間、突然障子を開けて入ってきた浅月に、瑠璃葉は思わず大きな声を上
げそうになってその口を押さえた。いや、大丈夫だ。使用人たちにはこちらの
部屋には近づかないように言ってあるから、誰も この現場を見たものはいな
いはず。
 ここに来たときとは違い瑠璃葉と同じ着物姿の浅月は、おかしそうに笑って
見せる。
「大丈夫よ、瑠璃葉! 私はあなたに瓜二つだもの。私が館の中を歩いている
のを見ても、誰も不信には思わないはずよ」
「ええ、それはそうだけど…。」
 正確には瑠璃葉の方が浅月そっくりに化けているわけだが、まあ細かい事は
横においておいて。
 浅月は二人の前へ進み出ると、その表情を引き締めて告げた。
「先程の揺れ、気がついたわね?」
「…ええ」
「ああ」
 瑠璃葉と竜彦の表情も引き締まる。
「何者かが、魔界サイドから私たちが張った結界へと触れたわ。…幸い小物だ
ったらしく、結界に変わりはないけれど…。いよいよ、本格的に敵がやってく
るでしょう」
とうとう――…っ。
「一刻の猶予もありません。これから火竜と海里も合わせて、作戦を練らねば」
 浅月の真剣な言葉に、二人も追随する。
 それはとうとうやってきた、竜を狙ってやってくる『凶運を呼ぶもの』との
直接対決を意味していた………。
                        《続く》


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           『聖獣戦記』 第八章 
                         篠原美姫緒   


 はっとして目を開けると、飛び込んできたのは振り下ろされるナイフであっ
た。
 間一髪、アレリニオは素手でナイフをつかんだ。
つんだ右手のひらから、自分の血がぽたぽたと落ちてくる。
「護衛何をしている!」
 アレリニオが力いっぱい叫ぶと、慌てて護衛たちは、寝室に入ってきた。
 その光景を目にした護衛たちは、息を呑んだ。
「陛下!」
「ゼルス大佐、いつの間に!」
 先程、強制退出したはずのゼルスが、ナイフで寝ている皇帝を刺し殺そうと
しているではないか。
 ゼルスは、内ポケットから拳銃を取り出し、皇帝に向けて発砲した。
 一瞬の出来事だった。
 アレリニオの頭を貫いたかに見えた、拳銃の弾は、寸前に粉々に砕け散った
のである。
「さ…わ…?」
 アレリニオを包むような、うっすらとした少女の影が映る。そこにいた誰も
が目撃していた。
「皇帝陛下ばんさーい!」
 ゼルスは拳銃をこめかみにあて、そのまま引き金をひいた。
 虚しい銃声が城中に響きわたる。
「今の少女は、もしや陛下が呼び出した聖獣ですか?」
 護衛官のマルクが言った。アレリニオは、顔についた血を拭きながら、ただ
首を振る。
「ゼルスをはやく片付けてくれ。それから…。このこと(少女)のことは、く
れぐれも内密に」
 アレリニオは、自室を出て行った。


 身体が鉛のように重い。
 咲羽は、全身筋肉痛であった。
「アルは大丈夫だったかしら…」
 息を切らせながら、ゆっくりとベッドから起き上がった。カーテンを開ける
と、となりのビルにある星の部屋が丸見えであった。
 使用人たちが、星の荷物を整理していた。
 咲羽と星は、学校から程近い、駅前のビルに住んでいた。もちろん、礼門院
家所有のビルである。その最上階の咲羽と星の部屋があった。咲羽の部屋のあ
るビルには銀行などのテナントが入り、星の部屋のあるビルには飲食店がテナ
ントで入っている。二つのビルは、約70cmほどの狭い路地で隔てられていた
が、飛び越えられることもできた。
 星の部屋にいた男が一人、向かいにいる咲羽に気がついた。
「咲羽! 話がある。着替えて待っていなさい。いまそっちへ行く」
「おとうさま!」
 なかなか姿を見せることのない、礼門院家当主、礼門院火月(かづき)が、
そこにいた。
「咲羽、カーテンを閉めてくれないか?」
 使用人たちの目が気になるのか、カーテンを閉めるように言う。薄暗い部屋
の中で、火月はたんたんと話始めた。
「咲羽、学校には退学届を出しておいたから、明日から行かなくてよろしい」
「はい…」
 星がいない今、礼門院に自分の居場所はない。そう思っていた。
「あんな、無責任な学園はこっちからやめてやる。
星も咲羽も大切な私の子供だ。危険な目に合わせるわけにはいかん」
「へっ?」
「星も咲羽も私とは血が繋がっていなくとも、私の子供だ!」
 あんぐりと口を開けたままの咲羽をそっと抱きしめた。
「咲羽、私には子供を作ることはできないのだよ。ヘスリヒとともに戦ってい
た頃、私は礼門院のおじい様に見初められ、星の母と結婚し、婿養子になった
のだ。」
 それは、初めて聞く、言葉であった。
「咲羽、わたしはお前や星と同じティーアなのだよ」
「ティ…ア?」
「人間であって人間でない。もう、絶滅したと言われてはいるが、まだまだ我
々は、製造されている。」
「星はそのことを知っていたんですか?」
 火月は、そっとうなずいた。
 ティーアは、人間の進化の過程で産まれた、人間である。よりよい種族を求
め人間は、神の領域である、生命誕生まで操るようになった。自分の一番いい
精子と相手のよりよい卵子を試験管の中で受精させ、母親の胎内より何倍も優
れた水槽の中で育てられ、高い知能を持つようにと設計された、人工人間。何
代も何代も人工人間の間で、交配が繰り返されるうち、試験管ベイビーと普通
の人間とでは、同じ人間でありながら、交わることができない異種となってし
まった。
 彼らを『ティーア』と呼ぶ。獣という意味だ。
 高い知能と高い身体能力、長寿。そして、超能力。
 それゆえ、普通の人間からは恐れられていた。
 人工人間の数が少なかったため、人間は彼らを獣扱いし、汚らわしいと魔大
戦のときに虐殺してしまい、絶滅したとされていた。現在では人工授精による
出産は禁止されている。ティーアを産みだしてはならない。
「咲羽、お前は私の大切な娘だ。どこにも行かないでくれ…」
 少女は、複雑な思いで義理の父親の話を聞いていた。
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あとがき
君が好き!のコミケ参加日程は下記の通りです。
日曜日 西地区 “つ”ブロック 08b
みなさん、遊びに来て下さい〜♪


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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/8/15 19号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
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 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
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