メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』 2001/09/15  2001/09/15


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月刊小説メールマガジン         2001年9月15日 発行
『君が好き!』  vol.21
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こんにちわ! 瀬乃 美智子です♪
今月からメールマガジンの配信は、篠原と瀬乃が交代で行う事となりました。
瀬乃は15日発行の本号担当です。まだ慣れぬ身なので、いろいろといたらな
ない点があるかと思いますが、よろしくお願いいたします♪

HP更新情報
CGIのコーナーに「みんなの日記帳」等、お気軽に楽しめるコーナーを
増やしました。
この1ヶ月程、瀬乃が体調を崩しているため瀬乃担当小説のバックナンバーの
UPが遅れております。ごめんなさい(汗)!!
切り番ゲットした方は、報告くださいね〜♪

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今月の目次
▼ドラゴンラヴァ・19  瀬乃美智子
▼春秋左慈伝      篠原美姫緒
▼あとがき
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           ドラゴン ラヴァ・19
                     by 瀬乃 美智子

         最終章 『 闇が生まれる時 』

 震える体をなんとか抑えながら、竜彦は部屋を出ようと試みる。
 脅威が近づいている事をみんなに知らさねば……。寝床を離れようとするの
だが、先程の占いによる精神的ダメージが余程強かったのか、どうしても立ち
上がる事ができないらしい。
「う…っ!」
 歯を食いしばり、何とか這い出そうとする竜彦。乱れた金色の髪が、まだ意
識がはっきりしていない金色の瞳へとかかる。
「池…。」
 竜彦を部屋へと送った後、瑠璃葉は体力を養いたいと言い、竜の姿へ戻るた
めあの池に向かったはず。
(瑠璃葉…っ。)
 動かぬ体で何とかはいずりだした竜彦の手が、廊下へと通ずる障子を掴む。
「瑠璃葉っ。……池に…近づいちゃ駄目だ!!」
 それは悪しきもの達が、あの魔界へと通ずる池の底から訪れる事を示してい
た――。


「っ!?」
 海里の部屋で密談を交わしていた浅月、火竜、海里の三人。
 しかし突然豹変した浅月の表情に、最初に気付いたのは火竜であった。
「どうした? 浅月」
「………っ。」
 突然険しい表情へとなった浅月は、火竜の問いに答える余裕もないらしく、
すくっと立ち上がると火竜の手を取って慌てて外へと通ずる障子を開け放った。
「部屋を出るわよ、あなた!」
「っ??」
 浅月のただならぬ雰囲気に何かあると察知した火竜は言われるままに立ち上
がるが、わけの分からぬ海里は、どうしたんだと困惑するばかりだ。
「私たちがここにいては『まずい』のよ。…海里、いい! うまく『相手』を
するのよ?」
「なっ、なんのことだよ?!」
 それだけ言うと、浅月は余程急いでいるのか、海里の大事な卵の入った鞄を
抱き上げ、火竜を連れて庭へと飛び出していった。
「ちょっ! ちょっと待て!! 俺の卵!!」
 一体、何があるというのだろう? 突然自分の大切な卵を持って飛び出して
行ってしまった浅月に驚き、思わずその後を追おうとする海里。しかし、どこ
に身を隠したのか、海里が障子を掴み庭へと顔を出したときには、既に二人の
姿は広大な庭の一角へと消え入ってしまっていた。
 わけの分からぬまま、海里は一人、部屋へと取り残される。
 …しかしその理由は、すぐに判明した。
『…カ…イリ…。』
「っ!?」
 そのおぞましい感覚に、海里はその正体が何者なのか一瞬にして感知した。
 室内へと振り返りながら、後ろ手に障子を閉める。途端に、室内の光量が退
き、代わりに闇が深くなる。それは…、おぞましい巨大な闇の一部がこの室内
へと侵入した事を示していた。
 部屋の中心部へと黒点(こくてん)がひとつ灯る。
 やがてそれは膨れ上がり、人の形へと変化していく。――数瞬後、その闇の
塊りは海里の見知った人物の姿へと変化していた。
「ご主人様…っ!」
 突然現れた主の『影』に、海里は思わず立ちすくんだ。
 闇の正体は、海里の魔界での主人であった。
 しかし、それはあくまでも『影』、言うなれば人間界へと投射した主のホロ
グラフィーのようなものであった。実際の主の力は強大で、海里が今感じてい
るような強烈な圧迫感程度ですむような存在ではない。主の力は巨大すぎて、
そのまま訪れては人間界に影響を及ぼしすぎる。竜が見つかり、その捕獲に手
間取ればいざとなったら主自身が人間界を訪れるだろうが、その時間を最小限
に食い止めるべく、その下調べと準備をするのが元々の海里の役目であった。
 今まで幾度か、主から使いや通信が入り、その状況を報告する事はあった。
 しかしそれが今、影だけの存在とは言え主自身がその姿を人間界へと映し出
すとは、一体どういう状況の変化があったというのだろう。
『…カイリっ!!…っ。』
「はっ、はい!…。」
 思わず海里の体が硬直する。
『貴様、いつまでぐすぐすしている! …竜一匹見つけ出すのに、どれだけか
かっているのだ!!』
 主の突然の詰問に、海里はすぐに言葉が見つからない。
 浅月はおそらく、その鋭いカンからこの忌まわしい存在の接近を感知し、姿
を消したのだろう。とっさに、一番知られてはならならい存在の卵を持って逃
げてくれたのには、どんなに感謝しても足りないくらいだ。
『「日本」とかいう場所にかくまわれているらしい竜がいるという報告があっ
たきり、なしのつぶてではないか!! どうなっているのだ!』
(…しまった……っ!)
 海里は、今更ながら自分の過去の行いに後悔した。
 ここに来る前、海里は太刀見家に竜がいるらしいということを主へと報告し
ていたのだった。当時の彼からすれば自分と卵を守る為仕方ない行為だったと
は言え、今となっては過去の自分の行為が、今の 彼の首をじわじわとしめて
つけていっていた。
「それは…っ。」
 ここまで主が自分の影を飛ばしてきたところを見ると、既に海里が太刀見家
に入り込んでいることは知られてしまっているはず。反対に、ここでまできて
竜はいなかったなどという報告をしようものなら、気の短い主はこの場で海里
を消し去ってしまうかもしれない。
(…あの二人なら、俺がいなくても卵を守ってくれるかもしれない…。)
 強大な主の力の波動を一身に受け、気弱な考えが海里の脳裏を横切る。
 ここで自分が竜はいなかったと答えれば、殺されかねない。…しかし、それ
で主の目はこの太刀見家から離れるだろう。そうなれば、後はあの自分とリス
ニーの間に生まれた命、竜の卵は浅月と火竜の手によって守られ、無事に育っ
てくれるだろう。
 海里の胸中に、本気でそんな思いが湧き起こっていた…。
 震える唇が、そのまま想いを口に出し始める。
「…ご、ご主人様…。あの…っ。」
『もういいっ!!』
 しかし、彼の最悪な選択をはばんだのも主であった。
 彼の結果が思わしくないと見た主は、もうすでに次の手を打っていたのだっ
た!
『魔界の者が何人も行っては竜が警戒して出てこないと言ったお前の言葉を信
じ、お前一人に任せてた 私が馬鹿だった! …そこに魔界より通ずる穴を調
度見つけた。2名ほど腕に自信のある魔族を送り込んだから、早急に竜を連れ
て参れっ!!』
 それだけ言い切ると、主の影は一瞬にして姿を消した。闇が去ると共に、部
屋の中に光が戻ってくる。しかし、海里の目の前はまさに真っ暗であった。
 確かに自分は、主にひとりで人間界へと行きたいと無理を通した。それは他
の魔族が一緒では、いつ、自分が魔界より隠し持って出た卵の存在に気付かれ
るか分からぬからであった。
 それが……。
「…魔族を…、2名送り込んだって?」
 影が消え去る前に言った、信じられない事実。魔界の穴とは、あの竜彦が占
いをしていた池の底のことだろう。はるか昔、瑠璃葉が通ってきたというあの
池の底から通ずる魔界への穴を、主が見つけ出してしまっていたのだ。
「やばいっ!! 瑠璃葉に知らせないと!!」
 竜である彼女は、あの池の底を寝床としているはずなのだ!
 海里は池から現れるであろう魔族たちを恐れる事も忘れ、あの人間の青年、
竜彦に一途で密やかな愛を貫き通す竜…瑠璃葉へ危機を伝えるべく、彼女の元
へと駆け出したのであった……。

                             《 続く 》

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             春秋左慈伝     篠原美姫緒

 初秋の中原に、一陣の風が吹いた。
「風が冷たくなってきたのう」
 夜空には秋の星々が輝いていた。 
 十月、袁紹もまた、兵糧の補給に迫られ、淳于瓊ら五人の武将に一万の兵を
与えて、その護送を命じたのである。



 北上した淳于瓊は、輸送隊を迎えて本隊から四十里ほど手前の烏巣に宿営し
た。袁紹に見切りをつけ、許攸が降ってきた。
  曹操は許攸が投降してきたと聞くなり、はだしのまま飛び出し、満面の笑み
を浮かべ、手を叩きながら迎え入れた。
「やはり、孟徳は引きが強いのう」
 左慈はたらいに水をはり、烏巣の様子を伺う。
「どうだい?」
 荀攸が半信半疑に聞く。
「あの男は嘘をいっとらん。烏巣は手薄じゃのう」
 許攸は曹操に、
「いま、袁紹の輸送車一万余台が、故市・烏巣のあたりに終結していますが、
さして厳しい警戒をしておりません。軽装の起動部隊で奇襲されるとよいでしょ
う。不意をついてその輸送車をやきはらえば、三日ももたずに袁紹を破ること
ができますぞ」
 と進言をした。この進言の是非をめぐって、側近たちは意見を二分させてい
る。
「文和も襲撃をすすめております。やはりここは、行くべきでしょう」
 荀攸は左慈の占い結果を伝えるとともに、襲撃を強く勧めた。
「うむ。誰に行かせるか……」
「敵の半数の兵士で奇襲をかけるのです。てだれの武将ではないと成功しませ
ん」
 と荀攸。それならばと左慈は、
「孟徳、お主が行けばよかろう。戦いたくてうずうずしておったんじゃろ。」
「うむ! わしが行く!」
「御意」
 この奇襲が戦いの天下分け目と悟った曹操は、英断を下した。
「わしが烏巣に行くとなれば、袁紹は必ずここを襲うであろう。」
 従弟の曹洪に留守を任せると、夜中に軍を発して、一路淳于瓊のいる烏巣へ
と向かった。全員、敵の軍旗を持ち、杖を銜み、馬の口をしばって声をたてな
いようにした。そして薪の束を抱える。
 戦いの火蓋が切られたのは夜明けだった。
 曹操軍は、袁紹を討ち破る最後の戦いであると、一気に襲いかかる。淳于瓊
は、相手は小勢とばかりにたかをくくって撃ってでた。
 が、曹操軍はかさにかかって攻め立てる。
  慌てて淳于瓊は陣営に逃げ込んだ。
 袁紹は烏巣が襲撃されたと聞いて、ただちに騎兵部隊を救援にさしむけた。
が、袁紹の狙いは曹操のいなくなった本営である。
「曹操の本営をたたけ!」
 袁紹は張?と高覧に命じて、曹洪の守る本営を攻撃させた。
 烏巣では、すさまじい戦いが繰り広げられていた。
「敵の騎兵が接近しています! 兵力をさいて防ぎましょう!」
 側近たちのひとりが叫ぶと、曹操はどなりつけた。
「うるさい! うしろに回られたら教えろ!」
 ふと、曹操は空耳を聞いた。
『正面じゃ』
 その瞬間、曹操は敵味方の入り乱れる中にあって、はっきりと淳于瓊を確認
することができた。
  うおおおおおお             
  曹操は、大声を上げながら、歩兵たちを蹴散らし、淳于瓊をめがけて突進す
る。
 曹操と淳于瓊がすれ違った瞬間、首が空に舞った。
頭がなくなった胴体は馬から落ち、主人を失った馬は迷走する。とたんに淳于
瓊軍は総崩れとなった。
 曹操軍の士気は最高潮を迎え、残らず兵を切り伏せた。
「やったぞ!!」
 たらいに水をはって、曹操の戦局を見つめていた左慈は大慌てで、必死に張
コウ・高覧を食い止めている曹洪に知らせた。その報告は張コウの耳にも届い
た。
 結果的に、淳于瓊を見捨てる決断を下した袁紹に張コウと高覧は愛想を尽か
し、そろって曹洪に降伏してきた。
 先鋒および後詰めが完全に崩れた袁紹軍の兵士たちは、一気に士気がさがり、
軍は崩壊した。
 袁紹と袁譚は、軍を打ち捨てて黄河の対岸に逃げ去り、かろうじて追撃を免
れたのである。
 曹操は、官渡で勝利をあげた。
                
                           《続く》
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あとがき

前回でモザイクが最終回を迎えてしまったのでちょっと寂しい気もしますが、
ドラゴンラヴァは今回からいよいよ最終章へ突入したりと、気の抜けない展開
となっております。
これからも感想、リクエスト、どしどし受け付けておりますので、お気軽に
メール、または、君が好き!HPの掲示板へ書き込んで下さいね♪
ではでは、今回はじめての配信作業でどきどきの瀬乃でした!!(笑)


※一部の方々へ、おわびを……。
 メーラーの関係で、「春秋左慈伝」が文字化けをしているらしいので(HPも
おもいっきり文字化け〜泣)申し訳ないです。
 なるべく、コードにない文字は使わないようにしているのですが、コードに
あっても文字化けしているものもあります。対策法はいまのとこないので、文
字化けしている方、ごめんなさ〜い(逃走)

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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/8/15 19号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
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