メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/7/15 18号  2001/07/15


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月刊小説メールマガジン         2001年7月15日 発行
『君が好き!』  vol.18
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こんにちわ〜♪ 篠原です。
 暑い日々が続いていますが、夏バテしていませんか? 
篠原は、すでに夏バテしてます(爆)だって、暑くてクーラー効かないんだも
ん!! 省エネというけど、この暑さじゃ、クーラーなかったら死んでるよね
え。
そんなわけで、篠原はこの夏に出すはずだった新刊を落としました(。ロ。;)
がしか〜し、諸事情あって、本号に掲載されている『春秋左慈伝』を出すこと
になりました! よかったよかった。
『春秋左慈伝(完全版)』で、メルマガの内容とは微妙に違った内容です。
ぜひ、読んで見てくださいね〜♪

HP&夏コミ更新情報
瀬乃の創作室更新しました♪
夏コミは8月12日(日)東5 フ 03a です。
龍の便箋もあります(かっこいいのでおすすめ♪)
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今月の目次
▼宇宙刑事モザイク!   陵 しお
▼ドラゴンラヴァ・17  瀬乃美智子
▼春秋左慈伝      篠原美姫緒
▼あとがき
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       宇宙刑事モザイク!    陵 しお

 宝石をちりばめた巨大な戦車が出現した。
「これで、地球上の核施設を狙ってやる!」
 シバは、大砲に指令を出した。
 巨大な大砲の銃口に、まばゆいばかりの光が集まってきた。その時!
「やめて!!」
 ダイヤ王女が大砲の前に立ちはだかった。
 そしてかばう間もなく、ダイヤ王女は大砲の餌食となった。
「ダイヤ王女ーー!!」
 大砲の光があたった王女の身体は、ひかりとともに分散し、きらきらと空に
漂っている。残されていた王女の心の指輪が、光を吸い込んでゆく。
 すべての光を吸い込んだ指輪は、今度はみずから真っ黒い光を放ちだした。
黒い光はやがて、ひとりの堕天使を生み出した。
 黒い翼、頭には角、口元には牙。
「我は、ライヤ!」
 低い声ながらも、高らかにその堕天使は言った。
「いまここに復活する!」
 恭彬はふと思った。
「復活するってことは、いままでは、いなかったってこと?」
 すなわち、ダイヤ王女は指輪をはめていることによって、指輪に篭っていた
ライヤの魂に操られていたのである。
 シバたちは、魔界および地球征服のため、ライヤの力が欲しかった。なんと
かしてライヤを復活させようと試みていたのだ。
「ををを! ライヤ様!」
 シバ以下、魔界の者たちはライヤにひざまずいた。
「シバよ」
「ははははぁ」
「もういちど狙うのじゃ。わらわに人間の苦しみを与えよ!」
 ライヤの声とともに、巨大な大砲にスイッチが入った。
「痛っ!」
「どうした? 沙明?」
「いやん、コンタクトがずれて、目の奥にはいっちゃった……。鏡、鏡っと」
 沙明は、ポケットからコンパクトを取り出し、無防備にもまぶたを持ち上げ、
目を見開いた。すると、
「ひいいいいいいいいい!」
 突然ライヤが苦しみだした。
 沙明は、よく見えるように、大砲によって開いた穴へ移動する。そこからは、
外の光が差し込んでいた。
「あれえ? どこいっちゃったんだろう」
 沙明は、コンパクトを動かし、目に光を当てる。
「うわっ! や、やめろぉおおおおおおおおおおおお!」
 ライヤはさらに苦しみもがいた。
「そうか!」
 恭彬は、有無を言わさず、沙明からコンパクトを取り上げて、太陽の光を鏡で
集めて、ライヤに向けた。
「ぎゃあああああああああああああ!」
 強い太陽の光にライヤは苦しむ。
 と同時に、大砲にも光が集中し、いまにも発射されようとしていた。
「ナナカ! コンパクトを大きくしてくれ!」
「あいよー!」
 ナナカがステッキを振ると、コンパクトは、超特大の(恭彬よりもでっかく)
コンパクトへと進化した。
「うおう!」
 恭彬と悠輔と沙明の三人がかりでコンパクトを支える。
「そんなことをしても無駄だ!」
 シバは発射の合図を下した。

                                                        ≪続く≫
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                      ドラゴン ラヴァ・17
                                             by瀬乃美智子

 卵の存在を知られてしまった海里は、しばしの間、体を硬直させていた。
…こんなはずではなかった。
 彼女たちの境遇は理解できるし、幸せな方向に進みつつある事もできること
なら一緒に喜こんでやりたい。
 しかし、海里には守らねばならないものがあった。自分が生き残り、卵を隠
しとおす為には、彼は主に竜を差し出さなければならないのである。たとえそ
れが、幸せを迎えたばかりの竜彦たちから瑠璃葉を奪うこととなっても。
(………っ。)
 …いや、出来ることならばあの瑠璃葉はそのままに、竜彦が実家に置いて来
たという竜の方を探し出せれば一番いいのだが……。
 少しばかり彼女たちに深入りしすぎた海里の胸中は、かなり複雑もののよう
だ。
(あっ……っ。)
 ふっと、海里はある事に気付いて、はっと顔を上げた。
「え? 卵を『産んでくれる』??」
 そこまできて、やっと海里は彼女の口にした言葉の矛盾に気がついた。
 瑠璃葉は竜なのだから、産むのは瑠璃葉自身のはずではないか。その言い方
ではまるで…。
「まさかあんた、本物の『浅月』の方か!?」
「そうよ。」
 海里の質問に素直に答え、本物の浅月…、太刀見浅月はにっこりと笑みを浮
かべたのであった。
 何故、今彼女がここにいるのだろう。ウェストに頼まれ、偽せの占いの依頼
状を送った彼女は、どうやらその足でこの太刀見家へと向かっていたらしい。
一体、何をするためにここを訪れたのであろうか?
 海里は突然現れた噂の『浅月』に、目を丸くしてた。
 …確かに、言われてみれば瑠璃葉とは雰囲気がまったく違う。洋服姿のせい
もあるが、彼女は瑠璃葉よりもっとほがらかで、つつましやかな美しさを持つ
彼女とは正反対に、晴れやかな美しさを持っていた。
「…って、え? あれ?? 卵を産んで貰うって、どういうことだ?? だっ
て、えっ、まさかお前の恋人って…っ!!」
「ええ、私の主人は竜よ」
 とんでもない事実をあっさりと言い切る浅月。事態を飲み込めぬ海里は、し
ばし呆然とする。
 何がどうなっているんだ? どうしてこう次々と竜が出て来るんだ! もう
これで三匹目じゃないか!!
 浅月の夫と、竜彦の実家にいるという竜が同じ竜だと知らぬ海里は、混乱す
る。
「さ、人に見られてはなんだから、ひとまず中に入りましょう?」
 パニくる彼の様子にはかまわず、振り続ける雨の中、浅月は彼を自分の傘の
中に入れ、導くように屋敷内へと歩を進めていった。混乱しつつも、海里は彼
女から竜の事を気出さねばと、本能的に彼女へと付いていった。
しかし、いつもなら見張りの者が巡回しているはずの庭内に、今は人っ子一人
いない。まるで彼女は見張りがいない隙をぬって海里を案内しているようであっ
た。
(…と、とにかく竜の情報を…っ。)
 海里がやっと気を取り直した瞬間、まず先に口を開いたのは浅月の方であっ
た。
「あなたには、はっきり言って今まで何の興味もなかったのよ?」
 浅月の突然の言葉に、海里は、えっ?と首をかしげた。
「…まぁ、私たちの未来にあなたが関係しているのはわかっていたけれど。味
方なら仲間に引き込めばいいし、敵なら旦那様にぱっくり食べてもらえばいい
と思っていたわ」
「うっ!」
 とんでもないことをいともあっさりと言いのける浅月に、海里は思わず一歩
退く。
 確かに大型の竜であれば、海里などひと飲みにするのは簡単だろう。
「でも、そんなにかわいい赤ちゃんのお父さんなら話は別だわ」
 浅月は一旦足を止め、海里へと振り返る。その顔には、海里の腕の中、鞄の
内側に収められた卵に対する優しさの笑みと、そしてこれから来るべく悪い兆
しと戦う者の厳しさがあった。
「あなたは凶運と幸運を背負って私たちの元にやってきたわ。最初はなぜ、ど
ちらともつかない運を持っているのかと思ったけど…、逆だったのね。あなた
は両方の運を持って私たちの元に逃げてきたのだわ」
 『逃げてきた』という言葉を使われ、海里は戸惑う。違う、自分は竜を狩る
ために自らやってきたのだ。逃げてきたのではない!
 浅月はいぶかしげな表情を隠さない海里に、それでもにっこりと笑みを浮か
べた。
「あなたが抱えているのはたくさんの未来のある幸運の卵。そして、その卵を
『悪いもの』から守る為、あなたはここに逃げてきたのね?」
 『悪いもの』…その言葉に、海里は瞬間的に自分の主を思い浮かべた。
「…もう大丈夫よ、私たちがその『悪いもの』からあなたたちを守ってあげる
わ。そんなにかわいい子のお父さんなんだもの、何かあったら、その子に申し
訳がないわ」
 余計なお世話だ! お前たちの竜さえ差し出せば自分たちは助かるんだと、
海里は思わず言い返しそうになる。
 しかし、次の瞬間浅月が口にした言葉に、海里は一気に体中の力が抜けてい
くのがわかった。
 浅月は、にっこりと微笑をたたえて語る。
「大丈夫。同じ竜を愛した者同士ですもの、私たち充分仲間だわ。同じ『ドラ
ゴン・ラヴァ(竜の恋人)』じゃない、助け合わなきゃ」
「―――っ!」
 海里は何かを言いかけ、…しかし言葉にする事が出来ずに口を閉じた。
 その表情が、見る間に情けないほどくしゃくしゃになっていく。今まで追い
込まれ、張り詰めていた何かが彼の中で、ぷつりと切れたようであった。
「愛しているんでしょう? その卵を産んでくれた竜(ひと)を。そんなあなた
が、私たちに不幸をもたらす存在なわけがないもの。何があったかは知らない
けど、もう大丈夫。一緒にそのかわいいベイビーを守ってあげましょうね」
「………っ」
(…そう…だったんだ……っ。)
 何故忘れてしまっていたのだろう。
 自分は、レイニーを…。竜を愛した『ドラゴン・ラヴァ』であったはずなの
に、いつからこの卵を守る事だけに必死になって、竜を不幸にしてしまう手助
けばかりするようになっていたのだろう。どうしてそんな、リスニーを裏切る
ような真似ばかりを……!
 海里の瞳から、嘆きとも、悔し涙ともつかない涙がはらはらと地面へと落ち
た。
「それでも俺は……、そうするしかなかったんだよっ!!」
 力のない彼には、そうすることでしか卵を守るすべがなかったのだ、魔界の
過酷な環境の中で生き続けなければならない彼を責める事はできまい。それで
も、自分がかつて竜に対して持っていた愛情を思い出し、流す涙があるのなら
それで充分だろう。
「なんだか、大変だったみたいね…。」
 浅月は、海里の短い言葉と涙だけで全てを悟ったのだろう。いいからいらっ
しゃいと、あとは何も言わずに彼と、彼の守る卵を雨に濡れさせぬよう、屋敷
内まで静かに傘を差しのべ続けたのであった―――…。

                            《続く》

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             春秋左慈伝     篠原美姫緒

 二月に入り、袁紹が動きを見せた。袁紹は顔良に命じて、東郡太守劉延の守
る白馬の攻略に向かわせる一方、みずからは主力軍を率いて黎陽に進出し、そ
こから黄河を渡る構えを見せたのである。
 四月になって、荀攸の進言により、曹操軍は陽動作戦に出た。黄河を渡って
敵の背後を衝くように見せかけるとともに、軽装の機動部隊で白馬に急行した。
 曹操は、張遼・関羽・左慈らと共に、昼夜、白馬をめざしていた。
「じじい! そなたのいかさま占いで、白馬をなんとかせい!」
 白馬まではまだまだ遠い。しかも、袁紹は自慢の武将顔良である。
「ほいほい。で、どうすればよいのじゃ」
「一気に片をつけたい」
「任せなさい。直前まで顔良に気がつかれんようにすればよいのじゃな。ささ、
髯公、文遠。」
 左慈は持っていた杖で、軽く関羽と張遼の頭を叩いた。
「うむ。これでよし」
「これでよしって、こら、じじい! 杖で頭叩いただけじゃないか!」
 曹操は左慈を睨んだ。
「うむ。これでも足りないというのか。孟徳も人使いが荒いのう」
 左慈はひょうひょうと言うと、今度は関羽と張遼の肩を杖で叩いた。
「髯公と文遠をちと軽くしてみた。これで馬も早く走るようになるじゃろ」
「じじい! 馬鹿にするのもいい加減にせい!」
 曹操は怒って左慈の持っていた杖を取り上げた。だが、杖のあまりの重さに
落としてしまった。
 室内の空気が静まりかえる。
「この杖に、『おもさ』を吸わせたのでのう。」
 左慈はひょいと杖を拾い上げた。
「はよしないと、杖が機嫌を損ねるぞ。したら、『おもさ』は元に戻ってしま
うが……」
 杖が機嫌を損ねるものか、と曹操は笑いながら言うと、関羽・張遼に顔良を
討つように命じた。
 顔良は、関羽があと十余里と迫ったところで気がついた。大慌てで応戦体制
を固めるが、関羽は顔良の旗印と車の蓋いを遠くから望むと、馬に鞭打ってす
ばやく近づくと、大軍が見守る中で顔良を斬った。
「お見事!」
 左慈はたらいにはった水で、関羽の様子を伺っていたが、関羽の活躍に感嘆
の声をあげた。
 関羽の活躍により、白馬の包囲を解いた曹操は、黄河に沿って西へ引き上げ
ていった。
 すると、袁紹軍は、渡河し、曹操を追撃してくる。
「敵は、五、六百騎ほどいます!」
 見張り番が叫んだ。
「いえ、敵は増えてきます。歩兵は……、数えきれません!」
「もう、知らせなくてよろしい! じじい、なんとかせい!」
 供の者と悠長に麻雀をしていた左慈を見て、曹操はさらに声を荒げる。
「こんなときに、麻雀とはいい度胸しているじゃないか、じじい」
「なに、そんなに焦っているのじゃ。どーんと構えておれ。ふぉふぉふぉふぉ」
「敵はさらに増えている! このままでは……!」
「ならば、袁紹軍に餌でも与えてつってしまえばよいのう。大漁じゃ〜」
「なんの冗談………。そうか! じじい、たまにはいいことを言う。公達を呼
べ!」
 曹操は、自軍の騎兵に馬の鞍をはずさせ、手綱をゆるめて休ませた。荀攸に
命じ、輸送部隊を西へ移動させる。
 やがて、袁紹はそれにつられるようにして、文醜・劉備が五、六千騎をした
がえて討って出てきた。
「ほほう〜。釣れたのう〜」
 こんなにうまくいくとは思わなかったよ、と左慈は関羽に笑ってみせた。
「お主も複雑な気持ちじゃのう」
「……。元放老師、孟徳殿には申し訳ないのだが、わたしと玄徳は、ともに死
のうと誓い合った仲。あのかたとともにゆかねばならぬ。そうだ、これを預かっ
てくだされ」
 と、左慈が渡されたのは、曹操に宛てた文であった。
「これは、孟徳殿に宛てた文です。わたしがいなくなったあと、孟徳殿に渡し
てください」
「うむ。たしかに預かった。お主がいなくなると、さびしくなるのう。」
「またいつか、対局しましょう」
「ふぉふぉふぉふぉふぉ」
 曹操の戦局を、砦の上から眺めていた二人は、互いに酒を酌み交わし、語り
合ってた。
 曹操の号令一下、その数六百騎に満たなかったが、
さんざんに蹴散らし、文醜を血祭りにあげた。劉備はすぐさま逃げ帰っていっ
た。
 かくて、曹操は官渡をとって返し、一度、都へ戻った。関羽は、漢寿亭侯に
推挙され、曹操から厚い恩賞を与えられたが、それらに封印をし、曹操の元を
去っていったのである。
 左慈から文を受け取った曹操は、読んで涙していたという。
「なにが書いてあったんでしょうねぇ」
「さぁ?」
 荀攸に聞かれ、とぼける左慈であったが、満面の笑みを浮かべていた。


                           《続く》
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あとがき
 今回は新刊が2冊だ〜♪
瀬乃ちゃんもただいま、夏コミに向けて執筆中。瀬乃ちゃんは、オリジナルの
他に、御陰陽士のサークルをやってます。2日目(8月11日)にコミケに行
く予定の方は、ぜひ、遊びにいらしてください〜♪
サークル名は「一条戻り橋」です。こちらの新刊も瀬乃っちが執筆中。
がんばってる瀬乃っちに応援を!

君が好きはリンクフリーです。ご意見ご感想をお待ちしております♪
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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/7/15 18号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
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