メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説「君が好き!」メールマガジン2001/6/1 増刊号  2001/06/01


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月刊小説メールマガジン         2001年6月1日 発行
『君が好き!』   増刊号vol.15
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 こんにちわ♪ 篠原です。
 やってきました、夏コミ抽選結果〜!
今回もめでたく、夏コミ出展とあいなりました♪ いやはや、今回は、抽選結
果がいつもより、2週間以上も早くとっても助かりました♪

8月12日(日)東5 フ 03a 

何故、東館の配置なのか納得がいきませんが(いつもは西館)、今回のコミケ
も成功させたいですね♪

HP更新情報 http://kimigasuki.hoops.ne.jp/index.htm
★随時、HPは更新しております♪
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増刊号 今月のラインナップ  
●愛の寸劇劇場 『ちょっと不思議な夫婦の話 〜大好きなもの編〜』
●『聖獣戦記』第7章 篠原美姫緒
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         『ちょっと不思議な夫婦の話 〜大好きなもの編〜』
                                                 by 瀬乃美智子
 某国情報部の腕利き情報部員にして十数名の部下をまとめる女課長の奥様、
さやか=ド=コンボイと、常識人のようでやっぱりちょっと変わってる(?)、
さやかに溺愛される夫、旦那様こと、武(たける)の熱々だけとちょっと不思
議な夫婦の話、はじまりはじまりです……。

「手を上げろ!!」
「はっ??」
 買い物帰り、夕食の材料が詰まった紙袋を両手いっぱいに抱えていた旦那様
は、突然背後からかけられた声に、思わず振り向いた。
「うっ、動くんじゃねぇっ!!」
「………っ。」
 振り返った旦那様の背後にいたのは、震える手で拳銃を握り締める二十代半
ばのブロンドの青年であった。銃を突き出している割に腰は引けているし、素
人なのは明白であった。
「あの…、なにか……。」
 この状況下で何かもないと思うが、旦那様は全くおびえる素振りを見せない。
 …まあ、それも最もだ。彼がその気になれば、こんな素人など一瞬にして組
み伏せられるのだろうから。
「てっ!手を上げるんだ!!」
「あっ、はい!」
 素人の青年は、決まり文句しか口にする事が出来ないらしい。それでも心優
しい旦那様は、言われた通り、両手を上げようとした。
(あっ…。)
 ふと、何かに気付いたように旦那様は強盗君(おそらく)に、すまなそうな囁
いた。
「すみません、両手挙げちゃうと荷物落ちちゃうんだけど…。卵入ってるから、
かなり危険」
「えっ?! …あ、そうか、じゃあ、…手を放すな。絶対その買い物袋を放す
んじゃないぞ!!」
 銃を突きつけられた状況で卵の心配をする旦那様も旦那様なら、それを納得
しちゃう強盗も強盗!
「ひっ、ひとまず。目立つから中に入れ!!」
「はい、どうぞお上がり下さい♪」
 旦那様は、妙にうきうきとした素振りで強盗君を我が家へと導いていったの
であった……。


 家の中へと入った二人は、なぜか今、キッチンにいる。
旦那様が買ってきた夕飯の材料を冷蔵庫へ入れるためであった。
されるがままになってるなよ、強盗!!
 旦那様は紙袋の中から出したものをひとつひとつ冷蔵庫にしまいながら、強
盗君に尋ねる。
「で、今日は何の御用で?」
 銃を突きつける人間に何の御用でもないが、そこはこの間抜けな強盗のこと、
律儀に答えてしまう。
「おっ、お前はあの『金塊王』と呼ばれるゴールディ家の、おっ…御曹子だそ
うだな!」
 強盗の一言に、旦那様はピクリとその手を止めた。
 確かに、旦那様の実家は、その事業の大部分を海外に置いていているとはい
え、その業界の者なら知る人ぞ知るという大事業家である。こと金の採掘では
右に出るものはいないという…、現地では『金塊王』と呼ばれるほどの金長者
なのである。
 しかし、彼の周囲の人間でも知る者の少ないその事実を、この青年はどうやっ
て調べ出して来たのだろう……。
「…確かに、私の実家は金の採掘を生業にしていますが、それが何か…?」
 すると、旦那様の口から『金(きん)』という言葉が出た途端、今まで頼りな
い素振りだった男の瞳が一瞬、異様なまでにぎらついた!
「いっ、命が欲しかったら、今すぐ実家に連絡を取って、ここに金塊を運ばせ
ろ!!」
「…あっ、これって誘拐ですか? なんだ、だったらわざわざ金塊でなくとも、
現金のほうが持ち運びしやすいから…っ。」
「駄目だ! 金(きん)じゃないと、意味がない!!」
「えっ? 何で『あんなもの』を?」
 実家が金の事業家であるにもかかわらず、どうしたことか、金のギラギラ&
ごてごてしたところが苦手な旦那様。無意識のうちについ、『あんなもの』と
いう言葉が口をつく。しかし、それに対して強盗君はなぜか逆上!
「きっ、金を馬鹿にするなぁーーっ!! 金は、すばらしいんだぞ!!見てる
だけで、俺を幸せな気分にしてくれるんだからーーー!」
「すっ、すみません!」
 青年の燃え盛る情熱に、旦那様は思わず謝る。…いや、強盗相手に謝る必要
はないよ、旦那様?
「…金(きん)、お好きなんですか…?」
「貴様、何故知ってる!!」
 何故知ってるって……。
 旦那様はちょっぴり理不尽さを感じながらも、収納しおわった冷蔵庫の扉を
閉め(まだ収納してたのか…)、強盗…、いや、正確には誘拐犯だったっけ…、
に尋ねた。
「あの、それはさっきあなたがそうおっしゃったような…。まあ、そんな事よ
り、金、お好きなんですか??」
「好きだ! じゃなきゃ、ここでこんなことしてない!!」
 どうやら彼は本気で、金(きん)欲しさに旦那様を誘拐したらしい。
 しかも、彼が金の採掘会社の息子だという、それだけの理由で彼を懸命に探
し出し、今日、ここにこうしてやって来たのだ。
「あっ!それならいいものがありますよ♪ 私の思い出の品なんですけど…。」
 そう言って旦那様は、うきうきとした表情で誘拐犯君を秘密の宝部屋へと案
内したのだった…。

「はい、どうぞ!」
「ぎゃーーーー!! 本物の金だー!!」
 目の前に差し出された木箱いっぱいの金塊に、強盗は旦那様に銃を向けるの
も忘れて飛びついた。
「これ、私が実家にいた頃に、初めて自分で掘ったものなんです」
 旦那様の言葉を聞いているのかいないのか。誘拐犯君は夢中で木箱の中の金
塊を取り出すと、ひとつひとつ丹念に撫で回し始めた。
「うぅ〜! やっぱりゴーディー家の産出する金の純度は世界一だ〜! 輝き
が違うぜーーー!!」
「はぁ…。」
「…う!汚れてる!」
「あ、それ。この前捜査に使ったから…。」
 そう言えば、この前さやかのおとり捜査で使った時、そのままここにしまっ
てしまったのだった。おそらく、汚れはその時ついたのだろう。
「折角いいものなんだから、手入れはマメにしなきゃ!!」
 そう言って、誘拐犯君は自分のポケットから布を取りだと、金塊を一枚一枚
丹念に磨きだした。
 …あの、銃が床に置きっぱーですけど……。
「すっ、すみませんね…。」
「いえいえ、俺、金にさえ触(さわ)れれば幸せですから! うちね、元々実家
が金細工の職人で。親父が死んじまって、今は家族バラバラだけど……、金を
磨いてる時だけは、幸せだったあの頃を思い出せるんだ〜♪」
「そうだったんですか…。」
 人それぞれ、いろいろな事情があるらしい。
「あっ。でもそれは私にとっても思い出の品なんで、全部持っていかれちゃう
と困るんだけど…。」
「え? そんな、思い出の品なら取れないよ! 実家から送ってくれればいい
から。…あ〜ぁ、親父が残した借金さえなければ、こんなことしなくても親父
に仕込まれたこの金細工師の腕で、生計立てられるのにな…。そうすれば毎日
金に触ってられるし…、でも、その金を仕入れるだけの金(かね)がないんだも
んな、しょうがないよな……。」
 大好きな金にも触れられず、人生にも行き詰まっての犯行だったらしい。そ
れなら最後に、大好きな金に好きなだけ触りたかったのだろう。
 しかしそれを聞いた旦那様の(サングラスの中の)瞳が、キラキラと輝きだし
た!
「…じゃあ君は、金が触れるんなら、自分の金じゃなくてもいいわけだね?!」
「もちろん! 金が触れれば、それだけで俺、幸せだから!!」
「それならいい手があるよ!」
 旦那様はいいことを思いついたとばかりに、うきうきと強盗君の手を握り締
めて名案を披露したのであった……。


 ―― 1ヵ月後 ――
「で、これがその誘拐犯君が送ってくれた写真??」
「そうだよっ♪」
 旦那様と奥様は夕食後、旦那様を誘拐しようとした青年から送られてきた写
真を手に、思い出話に盛り上がっていた。
 もっとも、旦那様が誘拐されかけたことなど、さやかは旦那様の口から今、
聞いたばかりなのだが。
「これ、美術館か何かかしら?」
 さやかが手にする写真の中では、一ヶ月前には切羽詰った表情でここを訪れ
た誘拐犯君が、金の装飾品に彩られたエントランスホールのような場所で、幸
せいっぱいの表情で微笑んでいた。
「やだな〜、さやか…!」
 奥様の漏らした言葉に、旦那様はおかしそうに笑って答えた。
「それ、俺の実家の玄関だよ」
「えっ!? これが旦那様の実家!?」
 置物は当然として、家具の一つ一つの金具、壁にかかるタペストリーから、
二階から下ってくる階段の手すりの装飾品にいたるまで全て金尽くしのその広
間は、どこぞの美術館やホテルのエントランスホールならまだしも、個人の自
宅の…しかも、たかが玄関とは思えぬゴージャスさであった。
「…そう…。旦那様の実家には挨拶に行く暇がなったから知らなかったけど、
聞きしに勝るきらめき度ね」
「行かなくて正解だよ? 目がチカチカするから、本気で」
 そのチカチカする中で20年近く育ってきた者の実感だろうか。旦那様の言
葉には妙に説得力があった。
「で、今彼は旦那様の実家で働いてるわけね?」
「そうだよ。俺の所在を調べ上げてここまで来た人だからね、金(きん)の為な
らどんに困難な調査もいとわない人だってすぐ分かったし。どうせ金が好きな
ら、その金に対する情熱を生かしてもらおうと思って」
 実家で屋敷内にある金製品のメンテナンスに頭を悩ましているという話を思
い出した旦那様は、彼の誘拐犯としての罪を許してやる代わりに、実家での1
0年間のただ働きを命じたのであった。
 借金まみれの彼にただ働きはかわいそうとも思えるが、外国に旅立ってしま
った彼をわざわざ借金取りが追っていくとも考えにくいし、住み込みの仕事は
金がかからない。彼がその腕を存分に発揮してくれば、たとえ借金取りが押し
かけていっても、彼を渡すまいとして気前のいい両親たちはポーンと彼の借金
を肩代わりしてやってくれるだろう。天職とも言えるゴールディー家でのお勤
めを彼が10年で切り上げるはずもなく、おそらく、この地に帰ってくる事も
なく一生金に囲まれて幸せに過ごすに違いない。
「いいことしたわね、旦那様」
「ううん、俺なんて何にも。…でも本当、幸せなんて人それぞれだよね。俺に
とって苦手なものが、彼にとっては大好きなものなんだから…。」
 まばゆいばかりにきらびやかな実家の風景を思い出して一瞬クラッ!となり
ながら、その中で幸せそうに働く誘拐犯君(最後まで、本名なしかいっ!)を想
像して旦那様はほんのり微笑む。
「そうね、でも旦那様も結構かわってると思うわよ? 何と言っても…。」
「ん?」
 何? といった表情で顔を上げた旦那様のあごをすくい、奥様は自分の方へ
と引き寄せる……。
「…私のような女を生涯の伴侶に選んだんですもの。相当の変わり者だわ……っ
んっ!」
 しかし、唇を寄せようとした奥様の口許を、旦那様の掌が覆い隠した。
 その眼差しは、一瞬にしてスゥッと怜悧に細められていく。
「さやかは『私のような女』なんかじゃないよ? 俺には君でなきゃ駄目なん
だよ」
「…………っ。」
 奥様は……、自ら旦那様の手を外すと笑みをたたえ、旦那様の口許へと軽く
口付けた。
「…だったら、私たち一緒ね。私にとっても旦那様は、もう一生かけても出会
えないほどの男だもの」
「ふふっ……。」
 二人は分けあたうように微笑みあうと、今度こそ、口許などではなく、正式
なキスの場所へとお互いの唇を重ねあった…。
 さて、ここからは夫婦のお時間です……。

                             《続く》

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      『聖獣戦記』            篠原美姫緒

 その顔は、まるで修羅のようだった。カレリニオは後に史書にそう記してい
る。
 ユイは壁に向かって一点を見つめながら、恐ろしい顔つきになった。
「どうしたんだよ〜」
 カレリニオは、先ほどからおかしいユイとハインの様子に戸惑っていた。そ
の自室に籠もっていたはずのハインは、人の姿から本来の姿である、一角獣(
ユニコーン)になり、庵の外へと飛び出していった。
「ハイン!! いかないでぇー!!」
 ユイの叫び声にも振り返らず、ハインは吹雪の止んだ北の大地へと出ていっ
た。
「お願い! カレリニオ、ハインをとめて!」
「ど、ど、ど、ど、どいうことか説明してくれようぅ!」
「せ、聖獣が現れた! 私達以外の聖獣が!!」
「な、なんだって!」
「ハインは、その聖獣と戦うつもりだわ。どうしよう!」 
 事情が良く飲み込めないカレリニオは、言われるまま、ユイと共にハインを
追った。すると、ユイとカレリニオを待っていたかのように、鳳凰が天空で旋
回をしていた。
「ほ、鳳凰!?」
 それは、遠い青空に輝く太陽よりも熱かった。
 鳳凰が放つ、暖かい光は、周囲の氷をも溶かしはじめていた。
「なぜ、こんなところに……。北の大地に棲む魔物って、鳳凰のことなのか?」
 カレリニオは、鳳凰に向かって叫んだ。ところが、
「ずいぶんとめでたい奴だな」
 背後からちょっと高めの男の声がした。
「おまえ、聖獣に女装させているのか。悪趣味だな。ちょっと、おまえの聖獣
と俺のこの鳳凰を戦わせてみないか? ククククク」
「へ?」
 カレリニオは意味が分からず、ユイに助けを求めたが、ユイはうつむいて涙
を流していた。
「その女は、おまえの聖獣じゃぁないのか? まさか、女が聖獣だったという
ことを知らなかったというんじゃないだろうな」
「へぇ!?‥‥。あんた、誰?」
「俺は、フォールラードゥング北殿の首領、毅彦」
「はぁ。私は、歴史学者見習いのカレリニオです。」
「では聞く。カレリニオ、おまえ、召喚士でもないのに、何故聖獣をつれてい
るのだ?」
「さぁ?」
「とぼける気か」
「いや、なりゆきで一緒にいるようなもんで・・・」
 毅彦は、カレリニオとユイを交互に見比べた。
「まさか、おまえ、『鍵』ではあるまいな」
「あ、そういえば、ユイもそんなことを……」
「そうよ! 私は聖獣よ! あなたのその鳳凰と戦うわ!」
 カレリニオの言葉を遮るように、ユイは叫んだ。
「ずいぶんと威勢のいい、聖獣だな」
「だから何? ハインはどうしたのよ!」
「ハイン?」
「一角獣よ!」
「ああ、あの病気のユニコーンか。奴なら、その辺で氷に埋もれているさ」
「!!!」
 毅彦は、病気の聖獣を喰わせたら、病気が移ってしまう、と言葉を続けた。
鳳凰は、気高く鳴き声を上げると、ゆっくりと毅彦の肩に舞い降りた。
「さて、バトルといこうぜ!」
 毅彦は、怪しげな笑みを浮かべた。
「ちょっとまったーー!」
 カレリニオが、毅彦とユイの間に割って入った。


                              《続く》
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 あとがき
えー。篠原のパソコンがクラッシュしました(爆)
ハード逝っちゃいました。゜(T^T)゜。゜
買って一年半なのですが、相当使い込んでしまったので(マシンの性能を省み
ず、ビジネス並の使い方をしていた・・)起動しなくなってしまいました。
たまに、パソコンの機嫌がいいと、正常に起動してくれます。
篠原は、文系なのに、何故か、工学系は好きなので、ハード入れ替えに挑戦し
てみたいと思います(つまり、業者でハードとりかえてもらわないで、自分で
入れ替えちゃうってことね)。こうなったら、自作パソコンじゃ〜。
ものはついで、と、またマシンの性能を省みず(笑)いろいろ積もうとしてま
す。。。
あとは、MacとNTだけ。。。。。。。。。。。。。。。。

君が好き!はリンクフリーです。
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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2001/6/1 増刊号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
 マガジンID:0000025584 m00012567 ms00000142  loveyou
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