月刊小説マガジン「君が好き！」 2001/01/16

メルマガ：月刊小説メールマガジン『君が好き！』
タイトル：月刊小説マガジン「君が好き！」 2001/01/16

〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓月刊小説メールマガジン　　　　　　　　　2001年1月15日　発行『君が好き！』　　vol.12 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓あけましておめでとうございます！今年も「君が好き！」をよろしくお願いします♪ 今回の発行が新年一発目の発行となってしまいました。１月５日に発行予定でした「増刊号」は、発行責任者のトラブルのため、発行できなかったことをお詫びいたします。なにがあったかって？ちと、余談ですが、ドキュメント風にまとめてみたのでそちらをごらんください（笑）ということで、急遽原稿さしかえ（泣）「モザイク」はお休みで、篠原が冬コミで没ってしまった、「左慈」の話をお届けします。それでは、２１世紀、初メルマガご覧あれ♪ ====================================================================== 今月の目次 ▼新連載『春秋左慈伝』　　　篠原美姫緒 ▼ドラゴン　ラヴァ・１１　　瀬乃美智子 ▼メールにご注意♪ 篠原美姫緒 ▼あとがき ====================================================================== 春秋左慈伝　　　　　　　　　　　　　篠原美姫緒　左慈、字元放、廬江の人なり。神通力があるという。　この左慈という男のエピソードといえば曹操の宴会の席で、呉の松江のスズキが欲しいといわれ、たらいに水を張ってスズキを釣りあげたとか、瞬時に蜀まで行っての生姜を買ってきたとか。　いずれにせよ、あの曹操を幻術で惑わしていたのだから、このじいさん、ただものではない。　時は建安四年（一九九）。曹操は呂布を討ち取って勢力を拡大させ、河南一帯のエン州・予州・徐州を抑えていた。「こら、じじい、また積み込んだな」　曹操は、めったに出ることのない麻雀の「天和」という役を三回も連続で左慈があがったので、かなりムッとしていた。「ふぉふぉふぉふぉ」「あーやめたやめた。元放相手じゃつまらん。」　今宵は左慈・曹操・程昱・荀彧の四人で卓を囲んでいた。曹操が大事な話がある、というので、人払いをし、静かに打っていたのであるが、左慈は曹操の話しを聞こうとしない。　曹操は雀牌をばらまいて部屋を出ていった。「血の気が盛んじゃのう」「殿は今は袁紹のことで頭一杯なのですよ」　対面に座っていた荀彧が言う。「袁紹はすでに公孫サンを滅ぼして冀・并・青・幽の四州を領有していますから、許への侵攻も時間の問題でしょう」荀彧の話もそこそこに、左慈は牌に息を吹きかける。すると牌は独りでに片づけられた。「ったく、元放といると大事な話も笑い話に聞こえてしまいますね」　荀彧は苦笑いを浮かべた。　程昱は腕組みをして考え込む。「元放、ここで孟徳に話をさせなかったのは、理由があるだろう」「けけけけけけぇ」「さっきここへ来るとき中庭に玄徳がいた」　程昱は、月明かりに照らされる中庭へと目をやる。「まだいたのか。孟徳も人がいい。さっさと殺してしまえばいいのに」「仲徳！　孟徳も考えがあって生かしているのでは？」「そう言うがなぁ、文若。奴は危険すぎる」　二人の討論を後目に、左慈は一人、杯に酒を注ぐ。左慈はそれをいっきに飲み干した。「孟徳の考えていることなど、話を聞かなくたってわかるわい。」「元放はひとの心が読めるからって。おい、孟徳の胸の内を読んだのか？」「うひひひひ」「読んだことを知れたら、また大目玉ですよ」　荀彧は、さて、と言って立ち上がった。「今宵はお開きですね」「待て、文若。どうも今日の元放の言い回しが気にくわない。」「さすが、仲徳じゃのう。」　そう言って、左慈はまた酒を飲む。「ぶっはー。孟徳は、いつ袁紹が動くか気になっていたようじゃが…… 。」「ようじゃが？」「その前に、袁術に死相が出ておるでのう」　程昱は、机を叩いた。「袁術め、青州の袁譚の所へ行く途中で誰かに討たれるんだな。」「いやいや、病気にかかっとるのう」「病死…ですか？」「これはなおさら、劉備を早急に始末しないと」　その夜、三人の話合いは明け方まで続いた。が、このときの程昱の危惧は現実のものとなった。　翌日、曹操は、劉備と朱霊に袁術討伐を命じたのである。「何故、劉備を行かせたのだ！」　程昱は曹操を諫める。「劉備を野に放つなんてもってのほか！」と苦言を呈した。「郭嘉はどう思う？」　曹操は、郭嘉に意見を求める。「たしかに、劉備を行かせたのは間違いです。私は劉備が逃げ込んで来たとき、こういいました。『殿は剣をひっさげて義兵を起こされ、人々のために暴徒を除くべく、誠意と信義を前面に押し立て、すぐれた人材の招致につとめておられますが、いまだ十分とは申せません。ここで英雄の誉れ高い劉備を、窮鳥のごとく逃げ込んできたのに亡き者とすれば、賢者を殺したとの謗りを免れません。となれば、頼りとすべき智謀の士たちは疑心暗鬼にかられ、変心して他の主君のもとに走りましょう。天下平定に必要な人材をどう集めるおつもりですか。一人の厄介者を始末したために、天下の期待を失いかねない危急存亡の瀬戸際、ここはじっくり賢察のほどを』。しかし、劉備を放すことは反対です。ここは徐州に到着する前に殺しておくべきです！」「うむ……。」「殿がいまだもって劉備を始末しないのをわれらはとうてい納得できません。それどころか、今度は兵を与えてやるとは。かならず二心をいだきますぞ！」　程昱は群臣より一歩前に出て、意見した。「あい分かった！　直ちに劉備を討て！」　すぐに、曹操は追ってを差し向けた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　＜続く＞　 ====================================================================== 　　　　　　　　　　　　　ドラゴン　ラヴァ・１１　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｂｙ瀬乃美智子「きっと、瑠璃葉さんは何か思い違いをしてらっしゃってるんですよ」　ウェストの言葉に、瑠璃葉は目をしばたかせる。「思い違い…？」「そうです。例えば竜彦君は浅月さんと結ばれる未来を視たと言いましたね。　瑠璃葉さんは、それがどういうものだったか聞いた事がありますか？」「あ…、えっ…と……。」　そう言えば、ちゃんと聞いた事はなかった気がする。しかしそれが何だというのだ。竜彦の運命の相手が浅月だという事実には、かわりがないはずなのに。「実は先日竜彦君と話す機会がありましてね、聞いてみたんですよ。彼があな　たと出会ったという未来がどんなものだったのかってね」（えっ、いつ！？）　その言葉にびっくりした海里は、思わずウェストの顔を凝視した。ここ太刀見家に来てから、海里とウェストは常に行動を共にしていた。竜彦と話をした事があるのは事実だが、そんな事まで話した事はなかった。…それ以前に、竜彦が浅月と結ばれる未来を視ていたという事実を知ったのさえ、ついさっきの事のはずなのだ。　いぶかしげな表情を隠せない海里の横で、ウェストは言葉を続けた。「竜彦君はあなたと結ばれる未来を視た、そうですよね」「はい。…あ、いえ、正確には私ではなくて浅月との…。」「まあまあ、細かい事は抜きにして…。竜彦君が視たあなたとの未来は一つだ　け、あなたとの初めての出会いの場面だったそうです」　そう言い、ウェストはその出会いの場面がどんなものだったのか語り出したのであった……。　室内に池があるというおかしな風景。　竜彦はそこで、ずぶ濡れの姿で立ち尽くしていた。　自分はどうしてこんな所にいるのだろう？　どうやってここまで来たのだろう？（…そうだ、火竜（カリュウ）に連れて来てもらったんだけ……。）　竜彦が物心付く前から竜彦のそばにいて、竜彦の我がままなら何でも聞いてくれた火竜。今回も、竜彦の我がままを聞いてここまで連れて来てくれた。竜彦の行く手を阻むようにそびえ立っていた屋敷の囲いも、火竜があらかじめ探しておいてくれた抜け道を使って簡単にクリアーする事が出来た。敷地内に入ってから降り始めた雨には少々閉口したが、何事にも試練は付き物だ。　無事竜彦がこの池のある部屋につく事が出来ると、彼は自分を置いて出て行ってしまったが、うまく帰れただろうか？　…まぁ、自分より余程しっかりしている彼の事だから、心配はないだろうが。（何でここに来たんだろう？）　いろいろ調べたいのだが、体が言う事を聞かない。自分の意志とは無関係に、竜彦の体はぼーっと、池の脇でたたずむばかりだ。（……そうか、これは『夢』だ…。）　『予知夢』…、もしくは来たるべく『未来』と言った方がいいかもしれない。竜彦は時折、正式な占い以外でも、自分の未来などを予知夢として見てしまう事があった。これは、きっとそれなのだ。　そんな事を考えていると、やっと状況に変化があった。　竜彦がいる部屋の扉が開く。その扉の向こうから、数人の使用人らしい女たちを従えて、一人の少女が入って来た。美しく長い黒髪の下には、可憐で…、しかし凜とした美しさをたたえた少女の顔がこちらを見つめていた。（そうだ。俺は彼女に会う為に、ここに来たんだ）　夢の中の竜彦は、彼女に向かって話しかける。『よぉ、お前が『浅月』だな？　うん、『視（み）た』のと一緒で…いや、も　っと美人だな。うん、お前のような美人を嫁に貰えるなんて、俺はなかなか　の幸せものだな』　言い終えると、竜彦はとても幸せそうに微笑んでいた。（彼女が、俺の花嫁。『浅月』…か…っ。）　ここまで来ると、鈍感な竜彦にも夢の中の自分が待っていた相手が、自分が一生を添い遂げる事となる運命の相手だと分かる。彼女が俺の運命の相手…。今まで知り合った女性の中でもこれ程美しい少女はいなかっただろうと感じながら、竜彦はその顔を忘れまいと、その心に強く刻み込む。（彼女が俺の運命の相手。…これが、俺たちの初めての出会い！！）　夢が覚めてもこれだけは忘れまいと、竜彦は強く、心に誓ったのだった……。　竜彦は次の瞬間、ウェストたちに寝かされた布団の上で目を覚ました。その脳裏には先程まで見ていた夢が、まだ鮮明に残っている。（久しぶりに見たな、あの夢…。）　あれは、竜彦がこの太刀見家に来る前に何度も見たものだった。あれを初めて視て以来、竜彦は急激に夢の中の少女、『浅月』に引かれていった。そしていつの日からか彼女を想わぬ日がなくなり、竜彦にとって浅月と結ばれる事は当たり前の事となって行った。　彼にとって唯一の不服と言えば、浅月と出会う時期だ。どう見ても夢の中の自分は二十代半ばの青年になっていた。どうせ結ばれる事が決まっているのなら、もっと早く彼女と出会いたい。話したり、笑ったり…、たくさんの時間を二人で過ごしたい。何故、自分は彼女ともっと早く出会ってはいけないのだろう？　…竜彦は、それがいつも不思議だったのだった。　自分でも、少々思い込みが激しすぎると思う時もある。しかし、占い師を生業としている竜彦の父も、元々は日本人であったが、外国人の母と結ばれる未来を視て日本での全てを捨てて外国の母の元へと旅立ったのだった。　そういう事もあり、父は竜彦が浅月に想いを寄せる事には寛容だったし、竜彦が浅月以外の事に興味を示さなくとも別に注意もしなかった。…それどころか相手の女性が日本人らしいと分かると、外国生まれの外国育ちで日本語の話せない竜彦に日本語を教え、着物を着させ、日本での基本的な生活習慣を学ばせた。　だから、この太刀見家に来て、『予知夢』通りあの池で浅月に会えた時は、本当に嬉しかった。「もっと、早く出会いたかったな……浅月」　横たわった布団の中で、まるで本当に彼女がすぐそばにいるかのように、竜彦は優しい笑顔を浮かべ、呟いたのだった。「…と、いうのが竜彦君が視た未来なんです」　ウェストの説明に、瑠璃葉は首を縦に振った。「確かに竜彦は、二年前竜の池に突然現れました。竜彦の視る力は確かだった　という事です。それはすなわち、運命の相手が浅月だという事の裏付けのよ　うなもの。…だから何なんです？　私が何を勘違いしているというのですか　！？」「…まいったな。ここまで聞いて、まだ気づかないんですか？　あなたは今自　分で認めたじゃないですか。竜彦君の占いは完璧だった。その言葉通り竜彦　君は二年前、あの竜の池に突然現れた。そして、占い通り自分の運命の相手　との出会いを果たしたんです。『運命の相手』、……瑠璃葉さん、あなたと　の出会いです」「えっ！？」「うえっ？？」　瑠璃葉につられて海里も奇妙な声を上げる。　しかし…、（そういう事か…。）　次の瞬間、やっと海里もウェストの言いたい事が分かった。「名前なんて、関係なかったんだ…。」「そうですよ」　海里が出した正解に、ウェストは満足げににっこり笑った。　名前など、関係なかったのだ。二年前のあの日あの時、竜の池で二人は出会った。たとえその運命の相手が、親友の身代わりをしている竜でもかまわなかったのだ。そこにその姿で存在し、たとえ本名ではなくとも『浅月』と呼ばれていた彼女…瑠璃葉こそが、竜彦の運命の相手だったのである。「竜彦君が『自分の運命の相手は浅月だ』と言ったのは、予知夢の中で相手の　少女の事を『浅月』と呼んでいたから『浅月』だと言った…というか、そう　思っていただけなんですね。名前なんて、重要ではなかったんです。…ある　意味、あなたが苦しんだのは、あなたの責任なんですよ？　自分は竜彦君の　運命の相手ではないからと自分の殻に閉じこもって、ちゃんと竜彦君の話を　聞かなかった。あなたが事実から逃げていなければ、この事にもっと早く気　づけたはずなんです」「私が…。」　次の瞬間、瑠璃葉の瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。しかし、それは後悔の涙ではなかった。それは…、「…私が、彼の運命の相手だった……！」　それは嬉し涙であった。これでもう彼に嘘をつかずに済む！　…これでもう、本物の浅月が帰って来たらどうしようと脅えなくともいいのだ！「自分の運命を受け入れますか、瑠璃葉さん？　『運命』は、決して『現実』　ではないんですよ？」　竜彦も言っていた。気に入らなければ、たとえそれが自分に課せられた運命だとしても従う気はなかったと。しかし、出した答えは瑠璃葉も同じだった。「喜んで、受け入れます。元より、他人の人生を歩んでまでも手に入れたいと　思っていた未来です。もう、彼を誰にも渡しません！」　その言葉には、確かな決意があった。「よかったね」　思わず、海里もお祝いめいた言葉を浅月へと告げた。正直、なんだか彼も嬉しい気分だった。実際、彼はまったく関係ないのだが、職業病だろう。魔界でドラゴンの世話係をしていた彼には、竜である瑠璃葉が幸せそうにしているのが心地よいのだ。たとえ自分が世話をしている竜でなくとも、同じ竜が不幸せそうにしているのは彼をいたたまれない気持ちさせていたのだから。「じゃあ、後は…。」　海里が何か言おうとした瞬間、　…ゴトンッ… 　突然の物音がそんな浮かれた雰囲気を遮った。三人の目が一斉に、物音の先、隣室との境のふすまへと注がれる。　ふすまはややガタガタと音を立てながら、横に引かれた。境のなくなったそこに、先程までぐったりと寝ていたはずの竜彦がいた。「竜彦！」　驚いた瑠璃葉が急いで駆け寄る。まだ多少ふらついている様子の彼は、瑠璃葉の手を借り、海里たちのいる部屋へと入って来た。「あぁ、もう目が覚めたんですか。こちらへどうぞ」（意外と、薬の切れるのが早かったな。…まぁいいか、やるべき事はやったし。　あとひと押しは、竜彦がいた方が話が楽だろう。）　そんな事はおくびも出さずに、ウェストは竜彦の為に座布団を敷いてやった。　竜彦は誘われるままに、海里とウェストの正面、瑠璃葉と並んで座る。隣では、瑠璃葉が尚も心配そうに竜彦の背に手を添えている。「今、あなたと瑠璃葉さんの話をしてたんですよ？」「ちょっ、ウェストさん！！」　竜彦の前で本名で呼ばれ、瑠璃葉は慌てふためく。　竜彦はというと、きょとんとしている。「いいじゃないですか、誤解も解けた事だし。この際、本当の事を言っておい　た方がすっきりしますって」　そう言われればそうなのだが……。しかし言ってしまった事はしょうがないし、ここはひとつ…。「あの…っ。何を聞いても驚かないでね、竜彦」　この場合、それは無理。「私は、…浅月…じゃないの。本物の浅月は、好きな人が出来て二年前この太　刀見家を出て行ってしまったの。私は瑠璃葉と言って、この二年間、彼女の　身代わりを…。」「………っ。」　竜彦は、浅月の説明が終わってもきょとんとしたままだ。　その反応に、今度は瑠璃葉の方が一気に不安顔になる。「ごっ、ごめんなさい竜彦！！　あなたを騙そうとしてやった事じゃないの！　…でも、結果的にあなたを。本当にごめんなさ…っ。」「…アハ、…アハハハッッ…！！」　瑠璃葉の謝罪を遮るように突然、部屋中に竜彦の笑い声がこだました。その豪快な笑いっぷりに、他の三人は呆気に取られる。「…そうか、そうだったのか！　それでやっと分かった。だからなんだな、だ　から俺たちはもっと早く出会っちゃいけなかったんだ！！」　何やら浮かれ切った竜彦は、呆然としている瑠璃葉を無視してその体を抱き寄せる。「たっ！竜彦、何を！！」「初めて君との未来を視てから、ずっと思ってたよ。何でもっと早く会っちゃいけないのかって」　竜彦は、恥ずかしがって真っ赤な顔で慌てふためく瑠璃葉の顔を、無理矢理自分の方へと向かせる。その背に腕を回し、自分以外に視線を逃がしてしまわぬように、がっちりと抱き込んでしまう。結果、竜彦と目が合ってしまった瑠璃葉は、さらに顔を赤らめながらも、その真っすぐな視線を受け止めた。　竜彦は、興奮を押さえるようにひと呼吸置くと、瑠璃葉へと熱く語り始めた。「早く来ては駄目だったんだ。早く来ても、俺の運命の相手の『浅月』はいな　かったんだ。…二年前、本物の浅月とやらがいなくなってくれて、初めてや　っと『浅月』という名を持つ君がこの世に誕生した、…俺の運命の相手とし　て。浅月、…いや瑠璃葉って言ったな。元々いた浅月なんて関係ない。今、　ここにこうして存在する、君こそが俺の真実の相手だ。…俺は、君が現れる　のをずっと待っていたんだよ」「竜彦…っ！」　竜彦の言葉を聞いた瑠璃葉の瞳から、再び涙がこぼれる。竜彦はそんな彼女の涙を、彼女が泣き止むまで何度も何度も指ですくいとってやったのだった……。《続く》 ====================================================================== 　　　　　　　　　　　メールにご注意♪ 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　篠原美姫緒　このお話は年始の篠原の行動をつづったものである（笑）。　年越し麻雀で大敗をした篠原は、年賀メールを書くべくパソコンに向かった。すでに、年明けから２日は経っていた（笑）。「おおお！　いっぱい来てるねぇ」　いまや、年賀メールは主流となりつつあり、凝ったメールやサイトにつなげてみるものなど、なかにはMP3ファイルで送ってくれた方もいて、見ていてたのしい。　と、その年賀メールの中に、某ネット雀荘でＲを狩っている部下のＮ君から「年越し麻雀、勝ちました♪」などと、篠原にはキッツイ年賀メールが来ていた。「おいおいおいおい。それを自慢するためにメールよこしたんかやつは・・」　気がつくともう一通、部下のＮ君からファイルが送られてきていた。「ほうほう♪　MP3ファイルだ。なんか画像でも送ってくれたんかな」　と、無警戒に開けてしまった。ところが、ファイルは開かない。「ソフトがちがうのかな」　どうやって開けるの～っと、メールを送り返す。　が、その頃からパソコンがおかしくなりはじめたのだ。一日経つごとにその様子は確実にひどくなっていく。「あっれぇー。フォントがつかえない・・・」　フォントがおかしいのだ。しかも、いままで統一されていたウィンドウも大きさがまちまちになり、字もでかい。いくら小さくしようとしても、大きいままなのだ。しかも、チェックボックスが虹色に変化し、形が崩れている。「なんだなんだなんだ？？？？」　不思議に思いつつも、パソコンを動かしているが、なぜか、強制終了されることが多くなった。エディタ起動しても即終了……。「がーーーん。メルマガの編集できないじゃん！！！　明日発行なのにぃぃぃ」　相変わらず、締め切り間近になって慌てている篠原であった。　翌日、Ｎ君からメールが届いた。「ファイルなんか送ってないよ」　と返事が。さらに、また送った覚えのないというファイルが添付されていた。そしてそのファイルの名前は「LOVELETTER.txt」　ら、らぶれたぁーー！？　おい、これって噂のウィルスじゃないか！！！　大慌てでウィルス検索ソフトにかけてみるが、ウイルスはみつからず、もう一度やってみると、今度は強制終了になってしまった。「えええええっ？　ウィルス検索ソフト起動しないのぉ！？」　こんなことは初めてだった篠原は気が動転。幸か不幸か、気がついたのが早い段階だったので、年賀メールをみんなに送っていなかった。あ、一人だけ送っていた。「メール送れないじゃん！！」　とりあえず、感染拡大を防ぐため、唯一送ってしまった、痔（というあだ名）とＮ君と連絡を取り合うため、某ネット雀荘へとつなげる。　だが、肝心のＮ君は就寝したあとであった。それもそのはず。午前５時だった。　痔は、「パソコンがおかしいんだよ」とチャットする。　篠原から送られてきたメールについていたファイルを開けてしまったらしい。「マトリックス・スクリーンセイバーなんて書いてあったよ」　という。どうやらこのウィルスは送られた日によってファイルの名前が変わるものであった。「ひえええええ。どうすればいいの？？？」　すぐさまシステムエンジニア（自称）という痔はウィルスを特定し、webページを教えてくれた。「http://www.ipa.go.jp/security/txt/2000_12outline.html 　ここに行ってみて」　こんなことは初体験だった篠原は、とりあえず、言われるがまま、ＨＰへ飛ぶ。　そこには、『●修復に関する情報　このウイルスに感染すると、多くのシステムファイルに感染が広がるので、システムの再インストールを行う必要があります。　システム（Windows）の再セットアップによる修復は、ウイルスに感染したファイル等が残ってしまう可能性が高いので、必要な文書ファイル等のデータをバックアップした後、ハードディスクを初期化して、システム、アプリケーションの再インストールを行うのが安全で確実です。　なお、ハードディスクの初期化、システム等の再インストールの方法については、マニュアルを参照されるか、お使いのパソコンまたはソフトウェアのメーカーにお問い合わせ下さい。　注）修復後は必ず、最新のワクチンソフトで検査を行って、ウイルス感染が無くなったことを確認して下さい。』と書かれてあった。「ひえええええ！！　しょ、初期化！！！」　とりあえず、大事なファイルだけバックアップをとり、パソコン内の感染を防ごうと画策した。だが、圧倒的にフロッピーの数が足りない。「フロッピーってなんで１ＭＢしか入らないのよ」　篠原の大事なＭＰ３ファイルはどれも２ＭＢ以上もあった（泣）　そこで、篠原は無い脳味噌をフル回転させて考えた。　そうだ。ＨＰでＭＰ３が見られるってことは……。　フロッピーに入り切らない、テキストやら画像やら音楽やらはみなWeb上に飛ばすという荒技に出た。　眠い目をこすりながら、徹夜で作業を進める。　昼近くになってようやく、作業は完了した。　だが、このとき、篠原は重大な過ちを犯しているのに気がついていなかった。　ぼけぼけしながら、ウィルスをまき散らした張本人のＮ君へと電話をする。が、彼はのんきに寝ていた。「おきろーーーーー！　ウィルスに感染しとるぞ」「まじで？　どうりでパソコンがおかしいと思った」　おかしいなら気付けよ……。　Ｎ君の話では、母親の使用しているポスペのくまちゃんが運んできたという。　そういえば、過去にウィルス被害にあった友人もポスペがもらってきたという話を聞いたことがあった。　「申しわけない」という言葉を残し、無情にもＮ君はバイトに出かけてしまった。「ひとりで、初期化して修復しろってか………。」　普段、マニュアルやら説明書きは一切目を通さないでパソコンをいじっていた篠原であったが、さすがにハード入れ替えとあって、マニュアルに初めて目をとおした（笑）「win98さえ、入れ替えればなんとかなるだろう……」　その考えは甘かった。ハードの入れ替えに悪戦苦闘し、２時間は有にかかった。　それだけでは、パソコンは動かない。　マウスをインストールしたり、その他、手元にあるすべてのＣＤをインストールしなければならなかった。そして、年末の大掃除の時、パソコン周辺の整理をして、貰い物のプリンタのＣＤのキー番号をメモったレポートの切れ端を捨ててしまっていたことに気がついた。未だ、プリンタは動かない……。　なんとかハードを入れ替え、ネットにつなげるように出来た篠原は、夜１０時爆睡に突入した。　翌日、痔からワクチンがあったことを知らされた（泣） http://www.jcsa.or.jp/download/index.html 　先のＨＰは、このワクチンよりも早い段階に作られたものであったのだ。「私のあの苦労はいったい………。」　とりあえず、パソコンを買った時の状態まで（篠原のパソコンはgatewayで買ったので不要なソフトはついてないのが幸いした）もどすことに成功した篠原は、ウィルス駆除ソフトを入手し、検査をかける。『ウィルスは見つかりませんでした』　その表示に安堵した篠原は、ネットで入手したソフトの収集へと飛び回った。　連日、ネットでダウンロードに走りまわる。　そして、WEBに飛ばしたファイルの回収もした………。「あれ？？　ファイルが足りない……」　いくつかメールマガジンを抱える篠原だったが、パソコンのフォルダをジャンル別にして「メルマガ」と名前して分けてあったのだが、Webに送るときに、どうやら上書きの上書きで送ってしまったらしい。「へ？！　君が好きのメルマガ……ない！！！」　締め切りを間近に控えているにもかかわらず、メルマガの陵と瀬乃の増刊号の原稿を消してしまっていた。おまけに「わ、わたしの原稿ぉぉぉぉぉぉぉおおおお（泣）」　自分の最新原稿まで消してしまっていた。「間に合わないじゃんよー。」　時を同じくして、瀬乃ちゃんから、ドラゴンラヴァの原稿が郵便で送られてきた。「ああ、読者様の期待、裏切るわけにもいかないし。しおの原稿ないし……」　ということで、今回は掲載記事の差し替えということになってしまった。　わたしが感染したウィルスは「W32/MTX」というもので、「Ｗ３２／ＭＴＸ」の届出が激増し、このウイルスの月間件数は先々月（１０月）の届出件数全体（９０６件）に匹敵する過去最多の８９４件。またこのウイルスだけで感染実害件数の７割近くを占める。世界的にも感染被害が急増しているウイルスである。・２通目の「のっぺらぼうメール」に注意知り合いからの正式メールに加えて件名なし、本文なしの２通目として届けられる。この「のっぺらぼうメール」の添付ファイルがウイルスの正体。・日変わりの３１面相ウイルス！！このウイルスの正体である添付ファイルは、名前が日によって３１通りに変化する。（３日　「LOVE_LETTER_FOR_YOU.TXT.PIF」　ラブレターウイルスそっくり。）　・深刻な被害。復元には多大な労力！ウイルスが感染時に、重要なファイルを破壊してしまうため、感染してパソコンが使えなくなったとの報告が多数寄せられている。これらのケースでは、全てのソフトとデータがご破算になり、復元には多大な労力を要し被害者には大きなダメージとなる。・メールを利用しているパソコン初心者に感染被害が続出！！ウイルスには縁がないと思っているパソコン初心者の感染が続出している。感染に気付かずにメール送信を行ってウイルス拡散の加害者になっているので、個人ユーザにとっても、ウイルスは身近の重要な問題と認識する必要がある。との注意書きがありました。みなさんも、くれぐれもお気をつけて。参考になればと思い、いくつかＨＰを紹介しておきます。 http://www.ipa.go.jp/security/topics/mtx.html http://www.ipa.go.jp/security/topics/mtx_attach.html http://www.jcsa.or.jp/download/index.html http://www.symantec.com/region/jp/sarcj/sarcj.html ちなみに、ワクチンをうってウィルスを駆除したはずのＮ君のパソコンは、ふたたび不具合が生じ、初期化を余儀なくされたという。ところが、ポスペのくまちゃんは無情にも、また、ウィルスを運んできたそうな（笑）未だ篠原は、もとのパソコンの状態まで戻すべく、悪戦苦闘しております（笑） ====================================================================== あとがきなんとか無事、期日までに間に合ってよかったです。くれぐれも、のっぺらぼうメールには気をつけましょう。さらにドジな篠原は、ＦＴＰのパスワードまで忘れるという失態をかまし、更新できないという（泣）今度の増刊号は、発行できなかった１月５日分を発行します。本当にすみませんでした。君が好きはリンクフリーです。ご意見ご感想をお待ちしております♪ 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓　月刊小説「君が好き！」メールマガジン　　2000/1/15 12号　発行責任者　：篠原美姫緒　kimigasuki@1-emishop.com 　Ｗｅｂページ：http://kimigasuki.hoops.ne.jp/ 　君が好き！メールマガジンの、転載、複写など著作権法違反行為は禁止です。　発行システム：『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』　マガジンＩＤ：0000025584　m00012567　ms00000142　　loveyou 〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓〓

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。