メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2000/12/15 11号  2000/12/16


===================================
月刊小説メールマガジン         2000年12月15日 発行
『君が好き!』  vol.11
===================================
こんにちは。『君が好き!』web担当の篠原です。
 冬コミ速報!
 12月30日(土)西2 せー13a
冬コミケに行かれるかたはぜひ、寄ってください♪
新刊は間に合えば出ます(笑)篠原が中国志怪小説シリーズ第二弾として『捜
神記』より、三国志に出てくる「左慈」の話を制作中です。

HP更新情報♪
 めずらしくHPを更新しました(爆)
瀬乃美智子の『創作室』更新しました。近況や制作秘話などあります。
『ドラゴン ラヴァ』今月号まで掲載。
『不思議な夫婦の話』12月1日増刊号まで掲載。

君が好き!はリンクフリーなので、どんどんリンクお願いします。
こちらでもリンクします!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
 今月のラインナップ  
●『ドラゴン ラヴァ10 第二章』 瀬乃美智子
●『宇宙刑事モザイク』陵 しお
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
         『ドラゴン ラヴァ10 第二章 正体 』瀬乃美智子

 気を失った竜彦をウェストが抱え、四人はひっそりと母屋の一角、浅月の私
室へと場所を移した。幸い使用人たちに気づかれる事もなく、竜彦の濡れた衣
類を着替えさせ、布団に寝かせる。竜彦はいまだ深い眠りについている。
「竜彦…。」
 浅月……『太刀見の竜』は、一度だけ名残惜しそうに竜彦の髪をなで、ウェ
ストたちに促されるまま隣室へと移った。


「私の本当の名は、『瑠璃葉(ルリハ)』と申します」
 今まで人間姿に化け、失踪した浅月の身代わりをしてきた『太刀見の竜』は、
海里とウェストに改めて本名を名乗った。
 瑠璃葉と名乗った竜は、この太刀見家に自分が来て、浅月の身代わりを果た
す事になった経緯を海里たちに語り出した。
「私は、元々は魔界に住むドラゴンでした」
 しかし以前竜彦が話した通り、魔界ではドラゴンの血や牙は妙薬として珍重
され、その為狩猟の格好の標的とされていた。瑠璃葉においてもその例外では
なく、ある日、大怪我を負った彼女は魔界に開いた穴から人間界に逃げて来た
のである。その穴の出口というのが太刀見家の敷地内にあるあの『池』、後に
『竜の池』と呼ばれ事になるあの池の底だったのである。
 元々穴からは、度々小物の魔物が出て来ては悪さをしていた。困っていた太
刀見家の人々は、怪我を負った瑠璃葉が温厚な性格だと知ると、彼女を人間界
にとどまるように説得した。彼女を崇め、奉るのと交換に、穴から出てくる魔
物を始末して欲しいと願ったのである。古来より『竜』と言えば日本では、神
の化身や使いとされ崇められる事が多かった為、太刀見家の人々も竜の彼女な
ら、受け入れやすかったのだろう。
 瑠璃葉の方も、魔界での生活にはもう飽き飽きしていた。太刀見家の池に開
いている穴から出てくる魔物程度なら、ドラゴンである瑠璃葉にならなんとか
できる。瑠璃葉は太刀見家の人々の願いを快諾し、以来、太刀見家に安住した
のであった。
「魔界の穴のある地に住み続けて来たせいでしょう、元々、太刀見家は未来を
 視る能力を持つ者たちが生まれる家系でした」
 しかしその力は不安定な上に、自分たちの未来しか見えないという、あまり
に片寄ったものであった。その為、太刀見家の人々の力は本人達も、また、周
囲の者たちからもまったく無視されていたのだった。
 だか、瑠璃葉は違った。
 太刀見家に来て彼らの能力に気づいた瑠璃葉は、その能力を導き、上手く未
来を視れるようにしてやった。『竜の池』で竜彦が占いを始めた時に、海里た
ちが感じた力がそれだ。瑠璃葉が池の底で発する力の波動が彼ら太刀見家の能
力者の力に同調し、不安定だった彼らの力を安定させた。その結果、占いの的
中率が上がるだけではなく、自分たち以外の人間の未来も占えるようになった。
彼らは、占いで利益を上げられるようになったのである。太刀見家の占いの起
源である。
 もちろん、太刀見家の者たちはそれをとても喜んだ。そして、未来を視れる
ようになったのは、きっと竜殿が見せて下さっているのだ。竜殿のご神託なの
だと、それまで以上に瑠璃葉を大事に奉ってくれるようになったのだった。
 以後太刀見家は、一族の中で一番の能力者が当主の座につき、占いの依頼を
受けるという形式をとり、大成功を収めた。当主の力が弱まれば次期党首を占
いで選び、当主の座を譲るという構図は今も受け継がれている。…変わらぬの
は瑠璃葉も同じ。池の底でその時代時代の当主たちにそっと力を貸してやるだ
けであった。
「以来、私は普段、池の中で過ごしていました。ただ、あまりの長い時の流れ
 の中、時には息抜きに表に出てみたいという時もあります。ですが…、最近
 ではたとえこの太刀見家の敷地内であっても、竜の姿で出歩くというのは問
 題なのです」
 普段、瑠璃葉は本当に池の底でおとなしくしている為、現在ではこの太刀見
家の者でさえ、瑠璃葉が……竜が実在している事を信じぬ者も多いのである。
瑠璃葉自身も、今の人間界の状況からしてあからさまに自分の存在を主張した
いとも思っていなかった。だから、表に出たいなという時は、ある奥の手を使
うのである。
「太刀見家の当主はその存在の特別性から、多少不思議な行動をしても怪しま
 れないし、とがめられる事もありません。そこで、私は表に出たいと思った
 時は、太刀見家の当主の姿に化ける事にしました」
 竜族の彼女にとって、人間の姿に化けるのはたやすい事。太刀見家の当主に
化けてさえいれば、敷地内のどこにいようが、とがめられる事はない。太刀見
家の敷地はばかでかいので当主本人に鉢合わせする確立も低いし、実際、現当
主の浅月が来るまではそんな事はなかったのである。
「浅月さんと…、鉢合わせしてしまったんですね?」
 ウェストの問いに、瑠璃葉はこくりとうなずいた。
「…鉢合わせというより、待ち伏せされたのです。浅月は元々、歴代の当主の
 中でも随一の力の持ち主で、私なしでもかなりの占いができる娘(こ)でし
 た。彼女はここに来る前から私の存在を占いで視ていて、私が当主の姿に化
 けて時折息抜きをしているのを知っていたというのです」

『まぁ、本当に私そっくりに姿を変えられるのね。まるで双子みたい!』

 …それが、自分の姿に化けた瑠璃葉を見た、浅月の第一声であった。彼女は
自分そっくりの瑠璃葉を見てとても喜び、これからは時々こうして二人っきり
で会ってお話しでもしましょうねと言った。
 言葉通り、浅月はときどき占い以外で『竜の池』を訪れたし、逆にこっそり
瑠璃葉を自分の部屋に呼び込みもした。…こっそりと言っても、浅月の部屋に
瑠璃葉が入って行くのを使用人に見られたところで、瑠璃葉は浅月そっくりに
姿を変えているのだから、怪しむ者などいるはずもない。
 瑠璃葉は一旦言葉を切り、部屋の片隅にある小物タンスから、宝石箱を取り
出し、海里たちの前へ広げて見せた。そこには浅月に似合いそうな美しい髪飾
りや帯留めが全部、二つずつ同じ物が買い揃えられていた。揃えたのは、浅月
であった。浅月は暇を見ては瑠璃葉の元を訪ね、自分そっくりに姿を変えた彼
女に自分と同じものを身につけさせては、本当にそっくりねと言って喜んでい
たのであった。
 今から思えば、太刀見家当主という立場上、この屋敷からめったな事では外
出する事が許されなかった彼女には、それが唯一の娯楽だったのに違いない。
瑠璃葉も喜ぶ浅月を見るのは好きだったし、人の姿に化けて美しく着飾るのは
なかなか楽しく嫌いではなかったので、快く彼女に付き合ったのだった。二人
は人間と竜と種族こそ違ったが、本当に親友のような付き合いを重ねたのであっ
た。
 そんなつつましくも平穏な日々が過ぎ、しかし、別れは突然訪れた。
「浅月は好きな人ができて、ここを出て行ってしまったのです」
 瑠璃葉が自分そっくりに化けられるのをいい事に、瑠璃葉に自分の身代わり
を頼み、必ず帰るからと約束して恋人の元に旅立って行った浅月。しかし彼女
は帰って来ず、瑠璃葉は流されるままに浅月の身代わりをこれまで果たして来
てしまった。
 瑠璃葉はうなだれたまま、呟く。
「私には、太刀見家(ここ)しかないから…。ここで浅月を待つしか、…もし
 くは浅月の代わりとなる能力者、次期当主が太刀見家の者たちの中から出る
 のを待つしかないのです」
「それだけですか?」
 それまで浅月の話を黙って聞いていたウェストが、口を開いた。その声は静
かだが、とても力のあるものだった。
「それだけの理由であなたはこの太刀見家に居続けたんですか?」
 目の前の青年の突然の質問に、瑠璃葉は一瞬何の事か分からぬ様子だったが、
次に発せられたウェストの言葉に、その顔色は一変した。
「あなたが浅月さんの身代わりをし続けた一番の理由には、竜彦君の事がある
 んじゃないですか?」
「それは…っ。」
「竜彦君が溺れた時のあなたの動揺の仕方は尋常じゃなかった。…あなたは、
 竜彦君の事が好きなんじゃないですか?」
「何を言って…! …竜彦は浅月の運命の相手なんです。彼は自分と浅月が結
 ばれる未来を視て、太刀見家にやって来たんです。運命通り浅月と結ばれる
 為に……。それなのに、いくら彼女の身代わりとは言え、私などが…。」
「そんなの関係ないでしょ。好きになるのに相手がどんな人間かなんて関係あ
 りませんよ、好きになる時はどんな相手だろうが好きになるんです。それに
 竜彦君は自分の感情を抑える事を知らない人だ。あれだけダイレクトな恋愛
 感情をぶつけられたら、あなたでなくとも好意を持ってしまうのは当然です
 よ」
 ウェストのきっぱりとした口調に、それまで彼の隣でおとなしく話に耳を傾
けていた海里が目をむく。
(こいつ、こんな思った事をはっきり言う奴だったっけ?)
 ウェストの突然の変わりように、正直、海里は呆れ返っていた。
 何しろ今までの彼と来たら、人間界での竜の情報を得る為に海里が彼に近づ
いた時から、言っては悪いが、二十代半ばの青年にしては頼りないものがあっ
たのだ。海里がどんな我がままを言ってもいつもにこにこ笑ってついて来てく
れたし、動きもこっちがイライラする程におっとりしたものだった。ウェスト
が先程竜彦を助ける為に見せた、機敏な動きなど見た事もない。ましてや竜の
化身とは言え、少女相手にこんなきつい口調で話す人間ではなかったのだ。
 海里がそんな事を考えている間に、元々うつむき加減で話していた浅月の顔
はますます下を向き、次の瞬間、とうとう泣き出してしまったのだった。
「でも…、竜彦が運命の相手と信じ、愛している相手は……愛すべき相手は、
 私ではなくて、浅月なんです! …私は、彼を騙(だま)してしまったんで
 す!」
「運命の相手ねぇ…。」
 そこまで言って、ウェストは一旦言葉を切った。
「あなたは竜彦君の運命の相手ではないから、…だから自分には彼を愛する資
 格も愛される資格もないと言うんですか? 彼を騙していたからと」
「…はい、…そうです」
 浅月は、声を詰まらせながら深くうなずいた。
 浅月の余りに焦燥しきった姿に、海里は思わず手を差し伸べそうになる。元々
魔界で竜の世話係であった彼には、自分の竜でなくとも、目の前で竜が辛そう
にしているのを見るのはいたたまれないのだろう。一種の職業病である。
 しかしそんな浅月に、ウェストはそうでしょうか? と、問い直した。
「本当に、あなたは竜彦君を騙したんでしょうか? 本当に、竜彦君の運命の
 相手は浅月さんなんでしょうか?」
「…えっ…?」
「どういう…。」
 海里は、突然おかしな事を言い出したウェストの顔を凝視する。
 浅月も、泣くのを忘れて思わず顔を上げていた。
 そんな二人に、ウェストはいつものにっこり笑顔に戻って二人に言った、
「きっと、みなさん何か思い違いをしてらっしゃるんですよ」
 と……。
                               《続く》


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『宇宙刑事モザイク』   陵 しお

 第五章  がんばれ!

 モザイク邸では、丁度夕食時であった。恭彬の手料理を食べながら一同はテ
レビを見ていた。メラルのお気に入りの番組でしかもビデオにまで録画してい
た。が、ニュース速報のテロップが流れる。
「あああああああ!! 永久保存版なのに!」
 ニュース速報ほどむかつくものはない。ましてや永久保存版のビデオテープ
にくだらないニュースまで入ってしまうのだ。
 が、次の瞬間、一同は目を疑った。
 ホワイトハウス撃破の報が入ったのだ。
「恭彬! おまえ!!」
「違う僕じゃない!」
「一体誰が……]
 突然、テーブルの上にレオとマイタレーヤが現れた。
「ただいまっと♪」
「おお、ニュースでやってるね♪」
「ちょっとーーっ。君達、夕食踏んでるよ」
 悠輔が恨めしそうに二人に言った。
「その様子だと二人ともなにかつかんだのね」
「ばっちぐーーーーーーー♪」
「早速聞かせてもらうよ」
・・・・・・・・・・・・・略・・・・・・・・・・・・・
「へーー! こいつはすごい!!」
「じゃあ、やっぱり、ダイヤとビャクヤは同一人物だったのね!」
「その司祭が本当に”シバ”と言ったのですね」
 とメラル。そうだよーー、とマインが答えた。
「やだわ、神様と同じ名前じゃない」
「いえいえ、”シバ”というのはその人のあだ名ですよ。かれもまた、魔界を
追われた身です。」
「メラル詳しいのね。」
「ええ、そのときは魔界でも有名になりましたので」
「堕天使を使って降魔させ、地球まで支配しようという考えか」
 悠輔は腕を組んで考え込んだ。
「で、司祭が『発射』と言ってから3秒後にホワイトハウスが破壊されたんだ
な」
「そそ」
「『例のものが完成』か、ということは科学製品だろうな。」
 めずらしく悠輔の感はするどかった。
「たった、3秒で南太平洋からワシントンまで飛ぶもの。そして目にみえない
ものといえば・・・」
「そうか! 分かったぞ!」
 先に答えが出たのは恭彬だった。が、その声は家中に鳴り響いたモザイクの
テーマソングで消えてしまった。”おやびん”からの呼び出しの合図である。
「いやぁ、諸君。仕事は終わったかな…と。その様子だとまだみたいだねぇ。
しかたない、他あたるか」
「どんな仕事なんですか?」
 立て続けに仕事が舞い込んでくることなんてそうそうないので、一応聞いて
おく。でないと、死活問題であった。
「いや、本当は第四種の仕事なんだけど、どこも手が空いてなくてのう。地球
上のあちこちから宝石が盗まれているのだ。んま、今の仕事がんばってくれ」
「ああああああ! やりますその仕事!」
 恭彬が言った。
「もう一つの仕事が片づいてないじゃないか。ダメダメ」
「もしかしたら、この事件と関係があるかもしれません!」
「えええええええええええ!!」
 一同、声を揃えて恭彬をみた。
「ラーダス公国の国王って、宝石いっぱいつけてたよね」
 恭彬はいたずらっぽく笑った。
「わかった! クール・氷上が言ってた『鍵は宝石』ってもしかしたら!」
 沙明は手をぽんっと叩いた。
「そうかそうか、じゃあ、この仕事もモザイクに頼むとしよう。資料は今送っ
たから、それじゃ、健闘を祈る」
 そこで音信は切れた。

                               《続く》
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
モザイク的あとがき
 ををををを! 20世紀も残りわずかとなってきました。みなさん、楽しく
日々を過ごしていることと思います。
 シンバです。いよいよ21世紀が到来しますが、21世紀というと何を思い
浮かべるでしょうか?
 やはり、SFになじんでいる世代である私どもにとってはなんといっても、
宇宙!!!!
(docomoのCMはぐっとくるものがあったぜ:悠輔談)
(宇宙ですねぇ。月や火星が居住地になるかもねぇ:恭彬談)
(いや、魔法使いが現れるかもしれませんよ:メラル談)
 もしかしたら、私ども銀河連邦宇宙警察に会える日があるかもしれません。
 それでは良いお年を♪
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ぜひ感想をお寄せください!お待ちしています。
さて、増刊号は、夫を溺愛する奥様が大暴走を起こしている『愛の寸劇劇場』
と聖獣戦記をお届けします。増刊号配信予定日は1月5日になります。
それでは、良いお年を!!
===================================
 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2000/12/15 11号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
 マガジンID:0000025584 m00012567 ms00000142  loveyou
 君が好き!メールマガジンの、転載、複写など著作権法違反行為は禁止です。
===================================

ブラウザの閉じるボタンで閉じてください。