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=================================== 月刊小説メールマガジン 2000年12月1日 発行 『君が好き!』 増刊号vol.10 =================================== こんにちわー♪ いよいよ、今世紀もあと残すところあと一ヶ月となりましたね。ミレニアムと あってどこもイベント目白押し♪ コミケも一段と気合い入ってます。でも、年末はどこも混んでいるだろうなぁ。 ▼コミケスペースは30日西”せ”13a 君が好き! ▼小説の感想などゲストブックに一言お願いします。 それでは、増刊号行ってみよう! ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 増刊号 今月のラインナップ ●愛の寸劇劇場 『ちょっと不思議な夫婦の話 〜お使い編〜』 ●『聖獣戦記』第六章 篠原美姫緒 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 『ちょっと不思議な夫婦の話 〜お使い編〜』 by 瀬乃美智子 某国情報部の腕利き情報部員にして十数名の部下をまとめる女課長の奥様、 さやか=ド=コンボイと、常識人のようでやっぱりちょっと変わってる(?)、 妻に溺愛される夫、武(たける)の熱々だけどちょっと不思議な夫婦の話、は じまりはじまりです……。 「どうあっても、罪状を認めないのね?」 「だから先程から何度も言っているだろう。私はそんな指示はしていないし、 そんなテロ集団などとは会った事もない。何を証拠にこんな嫌疑をかけられ ているのか、身に覚えすらない!」 「そう…、分かりました」 某国情報部13課課長さやか=ド=コンボイは、落ち着いた動作で席を立っ た。しかし、取り調べを受けている中年紳士もまた、外見だけは平静を装って いる。 本日午後、彼はテロ集団支援、及びテロ活動の指示をした容疑で13課によっ て逮捕、拘束された。これはその取り調べである。逮捕前、慎重な彼はまった くと言っていいほど確たる証拠が残していなかった。その為、主任はもう少し 確証を握ってから逮捕した方がいいのではとさやかに意見したのだが、さやか は彼の海外逃亡の気配を察知し、強引に逮捕に踏み切ったのであった。 「ちょっと、席を外します」 さやかは介添えの部員たちに伝言すると、取調室を後にした。その様子に、 容疑者はそれ見たことかという表情を見せる。いつまでたっても証拠を突き付 けようとしない彼女に、証拠が握れていないのだと確証したのだろう。余裕綽 々(しゃくしゃく)といったところだ。 「課長…!」 取調室から出て来たさやかを、部室の皆の沈んだ表情が迎える。このままで はあの男を釈放しなければならないと思うと、皆、いたたまれない気持ちなの だろう。 「だから、もう少し待った方がいいと言ったんです!」 主任がさやかを責める。しかしさやかはそれに動じる事もなく、その口元に うっすらと余裕の笑みを浮かべた。 「私が、何の確証もなく奴を逮捕したと本気で思っているの?」 「えっ!? 何か手があるんですか!」 部室にいた全員が、さやかの言葉に色めき立つ。さやかはこくりとうなずく と、数枚の写真と資料を机の上へと広げた。それは某国の銃器密売組織からテ ロ集団が銃を買い取った際、その密輸ルートとして容疑者の経営する会社が使 われた疑いがあるという内容の調査書だった。しかし、その件なら以前から判 明していた事実であり、捜査もした。…だが、どうしてもたった数日という限 られた日数の中ではその密売組織を押さえる事が出来ず、結局、今回の逮捕の 証拠としては間に合わなかったのである。 「ところが、その密売組織の内部関係者から、私へ直接アプローチがあったの よ。確たる証拠となる内部資料を売ってやってもいいとね」 しかし、それには情報源及び、自分の正体を決して明かさない事。プラス、 その資料の受け渡しにはさやか及び、その部下を決して使わない事という条件 を出して来た。さやかたちテロ対策班は逆マークされていて、組織にも顔を知 られている可能性がある。そんな彼らと自分が会っている現場を仲間に押さえ られたら、今度は自分がリンチにかけられてしまう! 相手はそれを警戒して いるのである。…情報を売る方も命懸けだ。 「既に私の仕向けた使いの者が、証拠の品を受け取ってこっちに向かっている ところよ」 黙っててごめんなさいねと、さやかはぺろっと舌を出した。 「だって、仕方がなかったのよ。売買が終わるまでは自分の部下であっても取 引の事は漏らさないっていうのも条件のひとつだったんだもの」 さやかはもちろん自分の部下たちを信頼・評価していたが、密告者に対して もその立場を深く理解し、十分な報酬を与える事でも彼女は有名であった。だ からこそ、彼女になら情報を売ってもいいという、密告者や情報屋も多いので ある。 「でも、その課長の使いの人って大丈夫なんですか? 奴もあのルートはかな り警戒しているはず。へたな人間を使うと、面が割れてなくとも捕まる恐れ が…。」 「あの、こんばんは…。」 誰だ!! …突然の来訪者の声に、部員たちは会話を中断して振り返った。 『武さん!?』 突然の来訪者の正体はさやかの最愛の旦那様、武であった。旦那様が13課 を尋ねる事は珍しくないのだが、しかし、気づけばもう夜の十時過ぎだ。こん な時間に何故? 帰宅の遅い課長を心配してというわけでもないだろうに…。 呼ばれた旦那様は何か大きな荷物を両手に抱え、皆に向かってぺこりと頭を 下げた。 「お疲れさまです、皆さん。今回は大変らしいですね」 挨拶もそこそこに、旦那様は電源あります? と、主任に尋ねた。実は、今 回事件の立件にてこずって意気消沈している部下の為に、夜食の一つも差し入 れてやってくれないかと、さやかに頼まれたのだと言う。電源の場所を教えて もらった旦那様は、早速荷物の中からホットプレートを取り出し、プラグを差 し込む。 「今、パンケーキ焼きますからね。焼き立てはとってもおいしいですよ!」 パンケーキとは小ぶりのホットケーキのようなものだ。いろいろな食べ方が あるが、もちろんホットケーキのようにシロップをかけて食べてもおいしくい ただける。旦那様の手作り夜食に、皆、歓喜の声を上げた。 「今回はシロップの方も凝ってるんですよ? さやかがおいしいメープルシロ ップのお店を知ってるからって、地図を渡たされてわざわざ買いに行って来 たんですから」 それは確かにすごい。嬉しい事は嬉しいが、しかし今まで課長、そんなまめ な事俺たち部員にしてくれた事あったっけか? 不思議そうな表情で話を聞いていた部員全員の様子を無視して、旦那様は調 理をしながら何かを思い出したかのように、ぷっと笑いを漏らした。 「…でもあれにはびっくりしたな。実はね、さやかにお使いを頼まれた晩、お 店の地図が入っているって言う封筒を渡されてね。その時、『明日、エアポ ートストリートに行ってから明けてね』ってさやかが言うんでその通りにし たんだけど…。翌日、実際素直にストリートに着いてから地図の入った封筒 を開けてみたらびっくり! ……だって、いきなり地図と一緒に旅券と俺の パスポートが出て来て、『1.まず、空港から飛行機に乗ってカナダに行け。 』って、メモに書いてあるんだもん。いくら本場だからって、カナダまでメ ープルシロップを買いに行かされるとは思わなかったよ。…なるほど、封筒 を開けるのがエアポートストリート(空港街)だったわけだ」 『ええっ!? カナダっっ!』 いや、それは確かにびっくり! …というか、そこまでしなくたってと部下 たちはちょっと引き加減でざわめいていた。 しかしそんな中、冷静な男が一人……。 「カナダって…。」 主任が、背後の課長を振り返る。目のあった彼女は、あら、気づいた? と でも言うように、ニヤリとその口元に笑みを浮かべた。 「武さん! そのシロップはどこに!?」 「はい。箱に入ったまま、ここに持って来ましたよ?」 言いながら旦那様は荷物の中から大降りの箱を取り出し、主任へと渡した。 ただならぬ主任の様子に、他の部下たちはどうしたんですかといぶかしげな表 情を浮かべる。 「馬鹿! カナダは、密売組織の本拠地だ!!」 「…え? そう言えば、そう…て、えぇっ?? まさか!」 乱暴に明けた箱の中、確かに大きな瓶入りのシロップが姿を見せる。しかし、 それ一本を収めるにしては明らかに大きすぎる箱だ。シロップを旦那様に渡す と、主任の手がその底板にかかる。するとパキッ! という音と共に底板が外 れ、中から厳重に梱包された書類一式が出て来た。 「密売組織の内部資料だ!」 「げっ!!」 「…課長!! あなた、旦那様を取引の使いっ走りに使いましたね!」 さやかは観光土産のメープルシロップの販売に見せかけて、密告者にその箱 の内側に書類を入れさせ、旦那様に渡させたのだった。 しかし、主任の責めるような詰問にさやかは動じる事なく、ええそうよと答 えた。 「だって部外者の中で、私が一番信頼出来る人物ですもの。彼なら、何があっ ても私の頼んだ品ならは必ず私の元に届けてくれるわ」 あなたもそう思うでしょう? と、にっこり笑みを返されて、主任もグッと 言葉を飲む。…だからと言って、旦那様を使うなんてあんまりだと彼は言いた いのである。どれだけ危険な仕事なのかは、さやか自身が一番知っているはず なのに。 「テッド、レグスター。早くそれを使って、奴を落としてらっしゃい」 「…えっ…。はっ、はい!」 名指しされた部下たちがはっと我に返り、資料を手に先程の取調室へと飛び 込んで行った。 「課長、少しは反省して下さい!」 他の部下たちも、さすがにこれはやり過ぎだと、旦那様を使いっ走りに使っ たさやかに対して苦言を呈す。旦那様を溺愛する事においては、この13課の 人間はさやかにも負けていないのだ。 しかし、そんな緊張した彼らに対し、この場面に似合わない明るい声がかけ られた。 「はい、皆さん。パンケーキが焼けましたよ!」 難しい表情で課長を囲んでいた部員たちに、旦那様は焼き立てほやほやのパ ンケーキを一皿ずつ手渡して行く。その上には先程のメープルシロップがたっ ぷりとかけられていた。 「武さん。あなたからも、少しは課長に怒って下さい!」 「……っ?」 「怒ってないわよね、旦那様」 「課長、あなたは黙って!」 「あらだって…。いくら事情を知らなかったって言っても、シロップ一本買う のに、私から三百万も手渡された時点で薄々気づいたわよねぇ、旦那様?」 『え?』 その台詞に、全員が硬直する。 確かにシロップ一個が何百万もするはずがない、常識で考えればすぐ分かる はずだ。……という事は、旦那様は自分が買いに行かされるものが、ただのシ ロップなどではないと知っていて行ったという事か? 「そんな事ないよ、さやか」 しかし今度は、旦那様の返事にさやかがえっ? という表情を作る。 そんな彼女に、旦那様は何故かおかしそうにくすくすと笑って答えた。 「それよりずっと前。さやかが五日前に家の小物入れから、俺のパスポートを 抜き取ってるのを見た時から何かあるなって、ちゃんと気づいてたよ?」 「旦那様…っ。」 さかやかの顔に満面の笑みが昇る。 「旦那様にはやっぱり隠し事は出来ないわね。さすが、私が夫に選んだ男だけ あるわ」 そう言い、二人は満足げに見つめ合う。周りを囲む部員たちは、呆然自失。 二人の歪んだ愛に当たって、後は呆れ返りながら、旦那様特製超高級三百万シ ロップがけのパンケーキを、ただただ、ほおばったのであった……。 《追記》あの犯人は無事自白、有罪判決もとれてで事件は無事解決したそうで すので、ご安心を! 《続く》 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 『聖獣戦記』 篠原美姫緒 「おじ様、さあはやく入って♪」 「ああ、リリー、本国に連絡を。あとはガニッシュ大公を逮捕するように指示 を出せ。それから―――。」 オーカスは少し考えてから言った。 「防寒着を用意しろ。登山の用意と食料を一週間、いや一ヶ月分用意しろ」 「まさか、将軍……!」 「北へ行く。魔物の住む大地へ行く。リリー、お前はここへ残れ、そしてここ でロクサーヌの後見人として政務してくれ」 「おじ様?!」 「し、しかし将軍! あそこは……」 「言うことを聞け。ロクサーヌと二人きりで話がしたい。用意が出来たら呼ん でくれ」 「おじ様! 行ってはいけません!」 オーカスはそっと手をロクサーヌの唇へとやった。そして、会議室へとロク サーヌを連れて行った。 「魔大戦……。」 会議室へと消えたオーカスを見送りながら、リリーはポツリ呟いた。 時を同じくして、フォールラードゥングでも北へと旅立つ準備がはじまって いた。南殿・本殿・北殿の各精鋭の僧侶たちが選ばれ、魔法陣があるという幻 の城を目指す。 「魔大戦か……。こんなときに何故!」 アレリニオは不穏な動きを見せているフォールラードゥングにいらだちを感 じていた。本殿大神官であるイアンが何者かに殺害され、ミューラスの封印が 解かれた。そして、オーカスは北へ向かう。 「フラメの魔法陣は大丈夫なのか?」 だが、国交を断絶しているフラメからの情報は極限られている。 「くそ!!」 その若き青年皇帝は、おもいっきり壁を叩いた。皇帝となったいま、自由に 身動きがとれない。彼の実家である南殿にすら行くことも許されず、そして愚 痴を聞いてくれる妻もいなかった。 「気ぃ狂いそう…」 皆が北へ注目している。そこを狙って南が攻めて来るかもしれない。オーカ スが北へ向かい、頼みの綱のフォールラードゥングは魔法陣で手一杯。だとし たら、エルデ軍だけでフラメに対抗出来るのだろうか。ヴェッサーではテロが 頻発し、治安が乱れている。今ヴェッサーを抑えれば国力は拡大するはず……。 考えなきゃいけないことがたくさんありすぎで、夜もまともに寝られない日 々が続いてた。 「あら、アル?」 真っ暗な暗闇の中から一人の女性が浮かび上がった。 「さ…わ…?」 少女は名を呼ばれ、頷いた。 「こんなところでアルに会うなんて」 「こんなところって……?」 「夢を渡り歩いていたの。道の真ん中で倒れていたんで誰かと思ったよ」 咲羽はアレリニオの側へと歩み寄ってきた。そして思いっきりアレリニオを 殴った。 「……痛く…ない」 「アルは寝ているのよ。もしかして、寝ているのを気付いてなかったとか」 アレリニオは首を傾げて、頷く。 「ははははは。ずいぶん間抜けな皇帝だね。」 「そうか……! これがあの時言ってた君の……!」 二年前、北殿の参道で大立ち回りを演じた咲羽であった。 「久しぶりだなぁ、咲羽! まさか夢の中で会えるとは思わなかったよ!」 「そうだね。それよりもアル。……あなたに死に神がついているのだけど」 「し、死に神?!」 咲羽の告白に、アレリニオは笑い飛ばした。 《続く》 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ モザイク的あとがき たこやきまんぼでなんぼ! あああああああああーうっ♪ ナナカですぅ。きゃはっ! やっぱりだんごの次はたこやきに限るねぇ。 にまっ(w ナナカも旦那様のホットケーキたべたーい♪ (ホットケーキじゃなくて、パンケーキでしょ:沙明談) (たこやきといったり、だんごといったり、ホットケーキかい:悠輔談) (みんな小麦系だねぇ:マイン談) ぐはっ! ナイスなつっこみ♪ さて、来月の増刊号はとうとうミレニアムだね。にまっ! 新年早々、発行かぁ! o(^-^o)o(^-^)o(o^-^)o んじゃ、よいおとしを♪ (……いま、お年と落としをかけたね:恭彬談) おあとがよろしいようで! ぐはっ! =================================== 月刊小説「君が好き!」メールマガジン 2000/12/1 増刊号 発行責任者 :篠原美姫緒 kimigasuki@1-emishop.com Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/ 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』 マガジンID:0000025584 m00012567 ms00000142 loveyou 君が好き!メールマガジンの、転載、複写など著作権法違反行為は禁止です。 =================================== |