メルマガ:月刊小説メールマガジン『君が好き!』
タイトル:月刊小説メールマガジン『君が好き!』  vol.10  2000/11/15


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月刊小説メールマガジン         2000年11月15日 発行
『君が好き!』  vol.10
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こんにちは。『君が好き!』web担当の篠原です。
 冬コミ速報!
 12月30日(土)西2 せー13a
冬コミケに行かれるかたはぜひ、寄ってください♪

とうとう年末が近付いてきましたね。篠原は新刊の原稿を落としたというのに
なぜか多忙で、メールマガジンの編集すらいっぱいいっぱいです。
ああ、弱気………。
今回のメールマガジンは、聖獣戦記を休刊します。楽しみにしていてくださっ
た方、どうもすみません。増刊号はちゃんと掲載します。

君が好き!はリンクフリーなので、どんどんリンクお願いします。
こちらでもリンクします!
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 今月のラインナップ  
●『ドラゴン ラヴァ9 第二章』 瀬乃美智子
●『宇宙刑事モザイク』陵 しお
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
         『ドラゴン ラヴァ9 第二章 正体 』瀬乃美智子

(太刀見竜彦(あいつ)が、『太刀見の竜』の仮の姿だって言うのか…!?)
 海里は、思わず体に震えがくるのを押さえる事が出来なかった。
 竜がしばしばその身を隠す為に周囲の生物に姿を変化させる事は、知ってい
た。今となっては人間界では竜も生きづらく、もしかしたら人に化けているの
ではないかという事も多少は予測していた。しかし、まさか人間に化けている
とは言え、海里たちの前に堂々と姿を現していたとは思わなかったのだ。道理
で、今考えれば彼のあまりに人らしからぬ言動は、確かに疑うべきものであっ
た。
 漂う竜の波動に気圧された海里は、思わずその胸元のペンダントに手をやる。
竜が発している波動自体は敵意のあるものではなかったのだが、その巨大すぎ
る力に恐怖を覚えるなという方が難しい。海里も魔界では竜の世話をしていた
が、彼が世話をしていた竜は竜族の中でももっとも力が小さく、戦う力さえな
い下級竜の亜種だったのである。こんな巨大な波動を直接感じ取るのは、彼に
とって初めての事だった。多分、『太刀見の竜』……太刀見竜彦は、竜族の中
でもかなりのハイクラスの一族の生き残りに違いない。
(これで、俺の首もつながった!)
 海里は緊張した中でも、ほっとため息をつく。彼の事をマスターに報告すれ
ば、何とか罪を償える。処刑も取り消される!
「海里。何で彼が池の中にいるんでしょう? 占いをするのは当主の浅月のは
 ず。彼が池の中にいるのはどう見ても変ですよ」
 背後のウェストの言葉に、海里ははっと我に帰る。
 普通の人間であるウェストには、この竜の波動は感じられないはずだ。なら
ば、竜彦が池の中にいるのを不思議がるのも仕方あるまい。竜である彼が何故、
人間の姿をして当主である浅月の許婚を名乗っているのかまでは海里にも分か
らない、が、そんな事は海里にとっても問題ではなかった。要は竜が見つかれ
ばそれでよいのだ。
(参ったな、ウェストの目的は竜の調査だったんだよな…。)
 海里は内心、舌打ちする。自分は竜の存在さえ確認できればいいのだが、彼
の目的はあくまで調査だ。まして竜の波動を感じ取れないウェストには、この
時点で竜の存在の確認すらできていないのだ。戸惑うのも道理だし、ここで引
き返す理由もないのである。
「そうだよな、変だな。何であいつがあそこにいるんだろう」
 海里はひとまず、ウェストに話を合わせる。
「ええ。それに彼があそこにいたのでは、池の調査ができません」
 ウェストが困ったという表情でため息をついた。彼にしてみれば、この限ら
れた時間で出来る限りの調査をするつもりで意気込んでいたのだろう。
 早くいなくなってくれませんかねぇと、ウェストはため息をつく。海里の方
も竜の存在が確認できた今、彼にいなくなってもらった方が安全なのだが…。
 海里たち二人は、お互い違った立場で竜彦の存在に困惑したのだった……。

 占いに突入した竜彦の意識は、瞬く間に混濁して行く。視界がぼやけ、体を
浮遊感が襲う。池の中の段差に腰掛け、池の縁に背を預けているからいいもの
の、もし池の中に浮いている状態だったなら、意識もうろう状態の竜彦はその
まま池の底に沈んでしまっている事だろう。
「…………っ!」
 白濁した意識の中、もはや竜彦の意志はどこかに消え去ってしまっている。
もはや自分が目を開いているのか閉じているのか分からないような真っ白に埋
め尽くされたビジョンの中、何かが閃く。
 それは、竜彦が口に咥えた依頼状に含まれている『念』や『情』のようなも
のだった。それはその依頼状を書いた本人だけではない。書いた者とその周囲
の人々の念までもが渦巻き、増殖し、次第に竜彦の体の中を埋め尽くして行く。
そしてそれが竜彦の中で究極の状態まで膨れ上がった時、それらは弾け散り、
そこに、依頼人の未来が見えるのであった。…それが、太刀見竜彦のビジョン。
竜彦の、『視る』という事……!
 竜彦は、その流れ狂うビジョンに、しばし埋没して行ったのであった…。

(竜彦…。)
 浅月は奥の院の一角から彼を見守りがら、その占いが滞りなく終了しする事
をただただ祈っていた。海里たちは彼女の存在にまったく気づいていないよう
だ。余程見つかりにくい場所に、彼女は身を潜めているのだろう。しかし彼女
自身もまた、海里たちの存在に気づいていないようである。
 しかし…、
(何かしら…。)
 嫌な予感がする。浅月には未来を『視る』力はないが、なんとなく感じるの
だ。嫌な予感がする、当たらなければよいのだが……。
 浅月は身を潜めた暗く薄暗いその空間で、不吉な胸騒ぎに胸を痛めたのであっ
た。

 竜彦の中で、あふれかえっていたビジョンが急激に薄れて行く。それは占い
の完了を示していた。
 竜彦は朦朧(もうろう)としていた意識の回復して行く中、今まで『視た』
ビジョン、…依頼人の未来を忘れてしまうまいと、それら全てを心に刻む。見
えたもの、それから感じ取った運気の兆し、それらが何を示そうとしているの
かを頭の中でまとめる。…竜彦の占いははっきり言えば完璧なものではない。
相手の未来を視たり、感じ取ったりはできるが、それが何を示しているのかは
漠然としていて分からない。だから、自分の憶測を交えてしまわないよう気を
つけながら、自分が視たものを相手に伝え、それから感じ取った不吉な感覚、
心地よい幸福感などから何に対して気をつけなければならないのか、何が吉を
呼ぶのかを示すのである。
 しかし今回は少し違っていた。自分が視たビジョンを思い返していた竜彦の
顔に、困惑の表情が浮かぶ。
「似てる…。」
 手紙を書いた主なのだろうか、ビジョンの中で幸せそうな笑みを浮かべてい
た美しい少女、彼女は…。
「…んっ…?」
 考えをまとめようとしていた竜彦の体が、びくりと震えた。その唇から、咥
えていた依頼状がポトリと水面に落下する。
「…はっ…。」
 その眉根がきつく寄せられ、体中の筋肉が弛緩する。戻りかけていたその意
識が、再び急激に失われて行く。しかしそれは占いの再開ではない、異様な程
の睡魔と脱力感、ふらつく体。…先程までは占いに集中していて気づかなかっ
たが、依頼状を咥えていた舌先がぴりぴりと痺れている。
(まさか、あの依頼状に…っ。)
 …何かの薬が塗られていたのか?
 やっと自身にかけられた罠に気づいた竜彦の体は、しかしとうとう己自身も
支え切れず、ふらついた拍子に腰掛けていた段差から滑り落ち、浮き上がる力
もなくゆっくりとその体を池の奥底に沈めて行ったのであった……。

(…竜彦……っ?)
 不吉な予感の中、彼を見守っていた浅月が竜彦の異変に真っ先に気づく。
 普段なら決して池の中に潜ったりして来ない竜彦の体が、ゆっくりと『自分』
の方に『降りてくる』ではないか。
 このままでは自分の『この姿』を彼に見られてしまう! …身を隠していた
池の底で一瞬息をこらした浅月であったが、どうも竜彦の様子がおかしい。潜っ
ているというより、沈んでいるという感じだ。そして池の底からも竜彦の表情
が分かる程に彼が降りて来た時、彼女はやっと気づいた。竜彦は目をつぶって
いる、溺れているのだ!
(竜彦っ!)
 想い人の突然の窮地に、浅月は今の自分の姿を忘れて彼を救うべく、その口
で彼を受け止め、水面へと急浮上して行ったのだった。

「ちょっ、…池の中に入って行きましたよ!?」
 池の中に突然姿を消した竜彦に驚き、ウェストは思わず声を上げた。
 ここからは遠くて竜彦の身に何が起こったのかは二人には分からなかったの
だろう。占いも終わりかけ、後は彼が立ち去るのを待つだけだとすっかり安心
しきっていた二人は、竜彦の姿が再び水の中に潜って行った事に慌て出す。
「………っ…?」
 一分が過ぎ、二分も過ぎた頃、今度は別の意味で二人は困惑した。二分もたっ
て出て来ないのはおかしい。もしや溺れているのではないかとウェストは心配
そうな表情を浮かべ始めた。
(ちょっと、待てよ?)
 海里はそこでふっと我に返った。そう言えば、竜彦(かれ)は竜なのだ。種
族にもよるが、竜族なら水中でも呼吸せずに長時間潜る事ができる。水竜の種
族なら水中での呼吸も可能だ。
「おかしいですよ、絶対! …助けなきゃ!!」
 黙っていられず、ウェストが潜んでいた通路から飛び出そうとする。
 それを慌てて海里が止める。
「うわ、馬鹿っ! 俺たちがここにいた事がばれる!」
「そんな事気にしてる場合じゃありません。人が一人、溺れて死にかけている
 かもしれないんですよ!?」
「いや、それは…っ!」
 って、何て言って彼を止めればいいんだ!? 彼は竜だから大丈夫何だよな
んて、言えないじゃないか!!
「ウ…、ウェスト待っ…!!」
「…うわっ!!」
 ウェストが今度こそ通路から飛び出そうとしたその瞬間、地の底から突き上
げるような振動が二人を襲った。それは目前の池、今まさにウェストが駆け寄
ろうとしていた場所から発せられていた。
 振動と同時に池の水面に波紋が浮かび、それは徐々に高い波へと変化して行
く。まるで地の底…いや、正確には池の底からわき出て来るかのようなその振
動は、まるで池の底から水面へと浮上して来ているかのように徐々に水面へと
近づき、『それは』とうとう巨大な水柱と共に、その姿を海里たちの前へと現
した!
「なっ!!」
「ドラゴンっ!?」
 水面から頭をもたげたその巨体。その形状は日本の竜の蛇のように細い体躯
のそれではなく、西洋で言うところのドラゴン、そのどっしりとした胴体を足
だけでささえる二足歩行タイプ。その体に対してやや小さめの腕を池の縁につ
き、池から上半身だけ出した体を支えている。背中には広げれば数十メートル
はありそうな翼が折りたたまれ、その鎧を着たような堅い皮膚は、湖の底のよ
うに深く美しい青であった。
 やはり実在したのだ、太刀見の竜は!
 突然の竜の出現に、思わず海里はへたり込む。ここまでくればもう疑うべく
もない。
(やっぱり、竜彦が竜だったのか!)
 竜は通路の入口に身を隠した海里たちの存在には気づいていないらしい。竜
は池からその全身を引きずり出すと、その首をもたげ、口に咥えていた『もの』
を石板で出来た床へとそっと降ろした。
「あれは…っ!」
 床に置かれた『もの』を見て、海里が思わず息を呑む。
 白い着物に白人系の白い肌、そして池の水に濡れたそぼった金髪……。それ
は池に沈み、竜に姿を変えたとばかり思っていた太刀見竜彦本人であった。そ
の顔は蒼白で、明らかに溺れていた事を示していた。
「…竜彦が太刀見の竜じゃなかったのか!」
 海里は思わず口に出して叫んでいた。
 そう、彼は誤解していたのだ。竜彦が池の中で占いをしだした途端、池から
竜族特有の力の波動が流れて来た為、それを発しているのが竜彦だと思い込ん
でしまったのだ。実際波動を起こしていたのは、占いをしていた竜彦の足元、
数十メートル下の池の底に身を潜めていた竜だったのである。あの波動は、竜
彦が未来を見やすいように竜が力を貸してやっていた、…その力の波動だった
のだ。
 竜はその巨大な体躯を折り曲げ、横たわったままの竜彦の体に心配そうに頭
を近づける。それでも竜彦の体はぴくりとも動かない。竜は、その大きな口を
天に向けて開き、悲しげな叫び声をひとつ上げた。
「…な…にっ?」
 叫び声が途切れると共に、竜の体がまばゆい光りに包まれる。光の巨体と化
した竜の姿は、そのまま小さく小さく縮んで行き、いつしか人ひとり程の大き
さになると、すうっとその身を包んでいたまばゆい光が失せて行った。
「あれは…。」
 そこに残ったのは、『太刀見の竜』が人に化けた姿。白い肌に長く美しい黒
髪、まだ少女と言っていい程の美しく、秀麗な顔立ち、……太刀見家当主太刀
見浅月、その人であった。
「そんな…、彼女が『太刀見の竜』っ!?」
 思わず言葉にしてしまってみても、どうしても信じられない。まさか、彼女
が竜の正体、…いや、竜の仮の姿だったとは! 信じられない事実に、海里は
しばし呆然と立ち尽くしていた。
「竜彦! 竜彦っ!」
 人間へと姿を変えた浅月は、竜彦の名を呼びながら彼の元に駆け寄る。
 ドラゴンの姿に戻っていたとは言え、自分は池の底で彼の様子をずっと見守っ
ていたはずなのに、何故もっと早く彼の異変に気づいてやれなかったのだろう、
何故…。
 元々人でない浅月は、ぐったりして動かない竜彦にただただおろおろするば
かりでどうしたらよいのか分からない。しかし、その間にも竜彦の顔色は、ま
すますひどくなって行く。
「あれじゃ駄目だ!」
 叫ぶなり、ウェストが二人の元へと駆け出す。
「うわっ!ちょっと…!!」
 止める間もなく飛び出して言った彼の後を、思わず海里も追う。
 二人の元にたどり着いたウェストは、まず竜彦に取りすがって泣いている浅
月の体を引きはがす。気が動転して周囲に気を回している余裕がなかった浅月
は、突然の青年の乱入に何か何やら分からない様子だった。
「意識を完全に失ってる……っ。君じゃ無理だ、私に任せなさい!!」
 竜彦の傍らに膝まづいたウェストは、早速彼の容体を診る。その脈や呼吸を
確認する姿は冷静且つ機敏で、とても普段海里の後ろで大人しそうにしていた
青年とは思えない動きであった。追いついた海里も、背中越しに呆然とそのよ
どみのない動きに見とれている。
「…息をしてないっ。」
 その事実に、さすがのウェストも一瞬青ざめる。心臓がまだ動いている事を
確認したウェストは、竜彦に飲んだ水を吐かせ、すぐに人工呼吸を開始した。
 竜彦の顔色は蒼白だ。ウェストの吹き込んだ息に、機械的に胸が上下する。
数回それが繰り返された後、突然竜彦の体が揺れてむせ返ると、気道にわずか
に残った最後の水が吐き出され、竜彦の息は何とかふき返した。早期発見と処
置の早さが良かったのだろう。竜彦の意識が戻り、その瞳がうっすらと開く。
「浅月…?…。」
 かすれた声が目的の人物を探す。その声に、ウェストは腰が抜けて呆然とし
ていた浅月の手を引き、竜彦の手を握らせる。
「浅月、そこにいたのか…。」
 竜彦の焦点が一瞬定まり、少女の姿を認めると薄い笑みを目元に浮かべた。
その目がそのまますうっと閉じられ、体全体から力が抜け落ちる。
「竜彦っ!」
「大丈夫、気を失っただけですよ。呼吸も落ち着いたし、もう心配ありません」
 ウェストの表情が、いつもの温和なそれに戻る。そして、よかったですねと、
浅月に微笑んだ。
「目を覚まして一番にあなたを探すなんて、余程あなたに惚れてるんでしょう
 ね。うらやましい」
 ウェストの言葉にほっと気が緩んだのか、浅月の瞳が涙に潤む。そして、何
故驚かないのですかとウェストに尋ねた。おそらく自分が竜から変化(へんげ)
した場面を見ているはずなのにと。
「驚きませんよ、私は竜の研究家ですからね。本物と出会えて光栄なくらいで
 す」
 そう言い、ウェストは本当に嬉しそうに微笑んだ。
 浅月は竜彦の乱れた髪をきれいに手で整えてやり、静かな呼吸を繰り返す彼に、
思わずはらりと涙を流した。
「竜彦を助けてくれて、ありがとう…。本当に、ありがとう」
 浅月は、竜彦の手に自分の頬をすり寄せながら、しばらくの間何度も何度も、
ウェストへと礼を言い続けたのだった……。
                              《続く》

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『宇宙刑事モザイク』   陵 しお

 放たれた矢は、レオの心臓に刺さった。
 レオは次第に正気に戻って行く。
「………ほんものの天使!」
 ダイヤは振りかざした斧を落と
 その音と共に、人間達は次々と頭を抱えながら倒れていった。
 レオの特技、催眠音波である。彼のエメラルドの瞳は、再び燃えるような赤
に変わっていた。
「ありがとう、レオ」
 しかし、眠っていない人物が数人いた。
 先程、後から出てきた男達と司祭、そして事の成り行きを見物していたマイ
タレーヤである。
 緊張した雰囲気が数秒続いた。誰も話す者もいない。
 つかの間の静寂は、一昔前の黒電話の呼び出し音によって消された。すると
ナナカが元の姿に戻ったのであった。
「この姿は、5分しかもたないのであった、まる」
「僕が発した音波は人間にしか効かない。ということは、君たちは人間ではな
いということになるのではないかな」
 レオは胸ポケットに差していた深紅のバラを取り、司祭の足下へと投げつけ
た。バラは、まるでナイフのように、舞台へと突き刺さった。
「そのとおりだ!!」
 司祭は、レオを見据え言葉を吐いた。
「私は、魔界の大司祭シバである!」
 だが……。
「シバだってぇー。レオ、知ってる?」
「さぁ。ぼかぁ、そんな低俗なもの知るはずもないさ。マイン、君は知ってい
るかい?」
「しーらなーーい」
 マインだけちょっと二人より離れた場所に居た。
「あ、ナナカ、パニアなら知ってるぅ」
「はははははは、パニアか。奴はもうすぐ死ぬ。そして我輩がとってかわるの
だ! パニアの魂を取り入れてな!」
「w(゜o゜)w オォー」
 と三人は拍手をした。
「じゃあ、シバ様がこの世を支配するんだ」
 マイタレーヤは一歩一歩近づきながら言った。
「その通り」
「すっごいなぁ、かっこいいなぁ、ぼく憧れちゃうなぁ」
 レオが赤い眼を輝かせながら言った。
「そうだろうそうだろう」
「おっさんおっさん♪ さっきのべっぴんの姉ちゃんは一体誰なのだ?」
「ああ、あいつか。あいつは、クリスタル三世の娘ダイヤだ。またの名を堕天
使ビャクヤと言う。そういえば、おちびさんも堕天使じゃないのかな」
 シバはあっさりと告白してしまったd。
「あたしは、恋のキューピッドなんちゃってくれちゃって」
 その時、一人の男が大広間に飛び込んできた。
「司祭殿! 申し上げます! 花橘コンツェルンの川原が死にました!」
「なんと!」
 その声を上げたのはナナカであった。
「ほう。川原誠一を知っているのか」
「全然しらない」
 きっぱりはっきり言った。彼女は単に相づちを打っただけなのであった。
「報告を続けろ」
「はい。例の探偵が、国会議事堂を爆破したまでは良かったのですが、皆殺し
というわけには行きませんでした。そこで、作戦その2ホワイトハウス爆破を
要求したところ、探偵らがこちらの事情をかなり詳しく調べていまして、あや
うく川原は彼らの口車に乗せられて話してしまうところでした」
 司祭は少し考え、レオ・マイタレーヤを見、視線を元に戻した。
「それで、川原が依頼した探偵というのは」
「はい。藤沢探偵事務所です。藤沢悠輔なる人物とその助手となっております」
「そうか……。さて、そこの吸血鬼と青い髪の君。話を聞いていたからには、
協力してもらわないとな」
 レオとマイタレーヤは顔を見合わせて笑顔を作った。
「おじさん♪ その藤沢悠輔って人を殺せばいいんでしょ」とマイタレーヤ。
「シバ様と呼べ!」
「でもさ、なんで花橘コンツェルンとおじさんがつるんでいるの?」
「シバ様と呼びな……」
「教えてくださいシバ様!!」
 二人とも元気一杯の声で言った。
「よかろう。教えてしんぜよう。花橘コンツェルンとは我々の表向きの組織な
のだ。世界制覇の第一歩は日本からと相場が決まっている。日本の市場を独占
すれば、世界の市場を抑えたも同然。利益はどんどん膨らんで、賄賂を政治家
に送り、我々のいいように彼らを操る。日本で成功すれば、世界でも通用する
のだーーーーーーーーー!!!」
 部下たちは呆気にとられた。普段は口数の少ない司祭が、こうもあっさりと
話してしまうとは。それもそのはず、マイタレーヤのせいなのである。彼は大
気の精霊を使って、頭に浮かんだことをすべて言葉に変えて話させているので
あった。魔界の司祭といえども、油断をすると相手の術にかかってしまうので
あった。まぁ、もっとも彼らは『青髪の少年』が精霊使いだなんて思ってもみ
なかったことだろう。
「では君たち、頼んだよ。天使ちゃんは私たちと一緒に来るんだ。良い報告を
期待しているよ」
 そのとき、また別の男が静かに入って来た。
「司祭様、例のものが完成しました」
「そうか。よし、宣戦布告だ。ホワイトハウスを狙え」
「はい!!」
 司祭の足下から半径五メートルの円状にホワイトハウスの情景が映し出され
た。
「発射!」
 合図から三秒後、ホワイトハウスは跡形もなく撃破された。

                               《続く》
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
モザイク的あとがき
 60億人のレオファン(ライオンズのことじゃないよ)のみなさま。
ごきげんよう♪
 ぼくの活躍みてくれたかな。
(活躍って、超音波で人眠らせただけ…:悠輔談)
いやいや、ぼくの活躍はこれだけじゃないさ チィチッ
これから、惡の手先となったぼくは、悠輔を……
をををっと、ここからは、次回を見てくれたまえ。
それじゃ、また来月会おう♪

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ぜひ感想をお寄せください!お待ちしています。
さて、増刊号は、夫を溺愛する奥様が大暴走を起こしている『愛の寸劇劇場』
と聖獣戦記をお届けします。
それでは、次回お会いしましょう。
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 月刊小説「君が好き!」メールマガジン  2000/11/15 10号
 発行責任者 :篠原美姫緒  kimigasuki@1-emishop.com
 Webページ:http://kimigasuki.hoops.ne.jp/
 発行システム:『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』
 マガジンID:0000025584 m00012567 ms00000142  loveyou
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