月刊小説メールマガジン君が好き！ 2000/09/16

メルマガ：月刊小説メールマガジン『君が好き！』
タイトル：月刊小説メールマガジン君が好き！ 2000/09/16

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝月刊小説メールマガジン　　　　　　　　　2000年9月15日　発行『君が好き！』　　vol.8 ＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝こんにちは。『君が好き！』web担当の篠原です。日本列島、お天気がすぐれないこのごろ。篠原は脳にカビが生えてます。こんど、「お出かけライブ」で地方に委託参加します。ヾ（＞▽＜）ゞ　日程は以下の通りになります。お近くのかたは是非起こしください！　９月２３日　お出かけライブin四国　　四国新聞社大ホール１０月　１日　お出かけライブin山形　　山形ビックウイング時間はともに１１：００～１５：００までみんなきてね。ＨＰでは通販もやってます（笑）感想など下さると嬉しいです。君が好き！はリンクフリーなので、どんどんリンクお願いします。こちらでもリンクします！ ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 　今月のラインナップ　　 ●『ドラゴン　ラヴァ7　第二章』　瀬乃美智子 ●『宇宙刑事モザイク』陵　しお ●『聖獣戦記』篠原美姫緒 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 『ドラゴン　ラヴァ７　第二章　正体　』瀬乃美智子　　ドラゴン　ラブァ・７「じゃあ、着替えてくる」　そう言い、竜彦が浅月の部屋を去って行ったのは、ついさっきの事だった。占いの支度をしにいったのだ。部屋に一人きりになった浅月は、使用人を呼び戻そうともせず、しばし一人の時間を過ごす。たまには一人で考え事をしたい時もあるのだろう。「一体、どこにいるの…？」　『浅月』がぽつりと言葉を漏らす。今行った竜彦の事ではあるまい。彼女は何かを深く悩んでいるようだった。　…当主浅月は、十代半ばの若さでこの太刀見家に来て以来、ある少女と親しくなった。彼女は太刀見家とある契約をしており、使用人とは全く違った役割を持っていた。　元来、太刀見家に現れる占いの力を持つ者の能力は、そんなに万能ではない。占い師は自分の未来を占えないという世間の『常識』に反し、太刀見の能力者は自分の未来しか占えないのである。その自分の内部に集中してしまうビジョンを、他の…例えば占ってほしいという相手の未来に移るよう導いてあげるのが、彼女の役割であった。　しかし仕事以外にも、彼女は使用人がいないすきを突いては浅月の元を訪れ、親しく話してくれた。この太刀見家から外に出る事が許されぬ者同士、気が合ったのかもしれない。彼女は姿形を似せると、浅月に本当に瓜二つになる事が出来、二人は同じ着物や櫛飾りでお互いを飾っては本当にそっくりねと言って、楽しい時を過ごしていた。「今思えば、あの想いを許したのが間違いだったのかもしれない」　『浅月』は深いため息を漏らす。　…しばらくして、浅月には好きな人が出来た。彼と会えたのは、彼がこの太刀見家を訪れた折りの、庭先での偶然の出会いの一度だけ。それからは、…これは古めかしい太刀見家にしては意外かもしれないが、浅月のたっての希望で自室に一台だけ置かれていたパソコンで連絡を取り合っていた。太刀見家の当主は、在任中は精神を統一する為、異性との交際を禁止されているのである。二人の中を隠さなければならない。プラス、浅月の相手の男性というのは外国暮らしであった。なかなか会う事を許されぬ二人には、Ｅメールは交際手段として一番合っていたのだった。「…浅月。やはりあなたは今もあの男の人の所にいるの？」　当の本人の浅月であるはずの『浅月』が、苦しそうに呟く。　……そう。彼との交際をひた隠しにしていた浅月だが、もはや親友と呼べる関係であった彼女には、全てを話し、相談していた。そして、浅月はある日彼女に一生に一度のお願いをした。どうしても一度彼に会いに、彼の元に行きたい。でも太刀見家の者たちはきっとそれを許さないだろう。だから自分が行って帰ってくる間、ほんの数日、自分と入れ替わり、浅月として生活してくれないかと。『大丈夫。元々、使用人たちと私は親しく話した事はないし、私たちは瓜二つ　だもの。絶対分からないわ。…お願い、一生に一度の我がままだから、…ほ　んの数日でいいの、私と入れ替わって？』　親友である彼女は最初は断ったものの、浅月の必死さと、普段からその若さでこの屋敷から一歩も外に出る事の許されぬ身の上の彼女に同情していた事もあり、渋々、入れ替わる事を承知したのだった。今でも、いいわよと行った時の浅月の本当に嬉しそうな笑顔が忘れられない。しかし……。　浅月は…、それ以来、帰って来なかった。　『浅月』として過ごしていた親友は焦った。本物の浅月に連絡しようにも、連絡先が分からない。パソコンのデータから浅月の付き合っている男性のアドレスを調べ、メールを送ってみたが返事は来ない。　そうしている内に、占いの仕事が来た。しかし、彼女には占いを導く力はあるが、『視る』力はないのだ。最初は体調が悪く『視る』事が出来なかったとごまかしていた彼女だが、その内彼女の異変に気づく者が出て来た。もう万事休すかと思った彼女だが、使用人たちは浅月に占いの力がなくなったのだと勘違いし、何とか力を復活させようとした。…そんな事をしても、元々『視る』力がない彼女には効果はないのに。それは、偽物の浅月を追い詰めるのに十分であった。　そう、偽物なのだ、ここにこうして悩み苦しんでいる『浅月』は。本物の浅月の一生に一度のお願いをきいて入れ替わり、そのまま真実を言い出せず、浅月として生きている…浅月の親友なのだった。「竜彦…、彼が来てくれなかったらどうなっていた事か」　『浅月』は自分を救ってくれた恩人の名を口ずさむ。二年前のあの時、『竜の池』に突然現れた彼。彼がこの太刀見家に現れたお陰で、彼女を取り巻く環境はガラリと変わった。　まず、太刀見家当主として最大の仕事である占いがとどこおりなく行う事が出来るようになったのが一番の成果だった。自分と浅月が結ばれるという未来を『視た』という彼。……浅月の世話をしていた使用人……元々は浅月の近しい親族である彼女らは、本来ならそんな血迷った事をぬかす者などすぐにでも追い出すところだが、それをしなかった。それどころか、彼の言い分を許婚という形を取る事で満足させ、そのかわりある事をするよう『交換条件』を出したのだ。…占いである。未来を『視る』、…太刀見家の人間に言わせれば竜のお告げを『聞く』事の出来なくなった浅月の代わりに、占いをする事を彼に求めたのである。それが使用人たちが言う、浅月が好きでもない竜彦を追い出せない『理由』。彼の占いなしにはこの太刀見家は滅びてしまう。だから浅月の力が戻るか、太刀見家に未来を『視る』力を持つ者が現れるその日まで、彼を手放す訳にはいかなくなったしまったのである。浅月はその為の生け贄。だから、浅月様は可哀想だと使用人たちは嘆くのである。…自分たちが勝手にそうしてしまったくせに。　そしてもう一つ、身代わりの浅月にとっては、竜彦が現れたのにはもう一つの利点があった。使用人たちは皆、竜彦のあまりの奇行の多さに気をとられて、彼女が本物の浅月と多少違った行動をしても気にも止めなかったのである。「浅月の『運命の人』…。」　彼は本物の浅月が、想い人を追って外国に行ってしまった事をまだ知らない。自分の『視た』未来を、頑なに信じているのだ。信じて、…偽物の浅月を、それとは知らず、大切にしてくれている。それがなにより、『浅月』には辛いのである。彼が本当に大切にすべきなのは、自分ではないのに。自分は偽物なのに…。（私が、本物の彼の『運命の人』だったらよかったのに…！）　『浅月』の頬から、涙がひとしずく、流れ落ちる。いつからだろうか？　こう思うようになったのは。もしかしたら、あの『竜の池』で彼と初めて会った時かもしれない。自分が本物の彼の運命の人だったらどんなにいいか！　最近の浅月はそればかり考えていた。「浅月、入るぞ」　竜彦の帰りに、浅月は慌ててベールで潤んだ目元を隠す。　しかし、入って来た竜彦は目ざとくそれを見つけ、浅月の正面に膝をつく。そのいでたちは、普段のそれとは違い、純白の着物をまとっていた。占いの為の身支度なのだろう。「何を泣いている？」　竜彦の問いに、ただただ浅月は首を横に振るばかりである。そんな浅月に、竜彦は軽くため息を一つつき、浅月を抱き寄せる。　浅月の顔が、見る間に紅潮していく。「浅月。お前は俺といる時、ときどきそうやって悲しそうな顔をするな。俺が　原因なのか？」（気づいていた！？）　浅月の顔から一瞬にして、血の気が引く。「俺は…お前と結ばれる未来を視てから、ずっと『お前』の事ばかり考えてい　た。たとえ自分の『視た』未来でも、気に入らなかったら従う気もなかった　けど。一目で俺はお前を気に入ったから。でも、お前は違ったのか？俺とい　ると、辛いのか？」「いえ、違います。あなたのせいではないんです」　自分が彼の本物の運命の人でない事も、彼がそれを知らずに自分を大切にしてくれる事も辛い。…でも、ここでこうして自分を抱き締めてくれる彼の優しさを、たとえ自分が偽物であっても受けられる事が嬉しいのだ。たとえ理不尽な我がままだと言われても、彼のそばにいたい。その欲望にどうしても勝てない。　浅月の言葉に、ほっと竜彦が安堵のため息をつく。「よかった、俺もお前に気に入られてたみたいで。相思相愛なら、他に何の問　題はないさ」　実際は、問題だらけなのだが…。　占いまでの一時の間、二人は複雑な事情を持ちながら、…それでもしっかりと、寄り添い合っていたのであった………。《続く》 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 『宇宙刑事モザイク』　　　陵　しお　翌日、花橘コンツェルン代表取締役秘書川原誠一氏から、今度は『ホワイトハウス爆破』の以来が来たのであった。　バン！！「川原さん！　我々は危険を冒してまで国会議事堂を爆破したのです！　今度は何故ホワイトハウスなのですか！」　理由を言わずに実行だけして欲しい、という川原に悠輔は頭に来ていた。「……分かりました。お答えしましょう。我々のライバル会社であるツツミ建設は、アメリカ大統領と密約が出来ているのです。今度のラーダスリゾート開発もそうです。ラーダスの主導権を握るアメリカ側についている彼らの方が有利だからです」「では何故、ラーダス国王クリスタルⅢ世まで殺そうとした？　何故国会議事堂でなければならない？」　横から恭彬が口をはさんできた。「ｓｐれから、ツツミ建設がライバル会社と言うのも嘘だ。ツツミ建設は元々花橘コンツェルンの子会社だ」　川原氏は顔が青くなった。　この二人はただものではない。　突然、川原氏の様子がおかしくなった。心臓発作を起こしてしまった。「お、おい！　どうした！！」　時既に遅し、川原氏はあっけなく死んでしまった。「メラル、この人を地下室まで運んで」　メラルは魔法を使った。すると死体は宙に浮き、恭彬のあとを追うようについていった。「どうする？　この人」　悠輔が面倒くさそうに言った。「蘇生させる。この人はまだ仮死状態だから、このまま電気ショックを与えて生き返らせてもいいんだけど、奴らにとっては不都合だから、生体冷凍保存させていただきます。」　てきぱきと恭彬は保存用タンクを用意すると彼を眠らせた。「催眠術？」「そう、川原さんは催眠術にかけられていたんだ。せっぱ詰まったとき、一瞬うつろな目をしたんだ。秘密がばれそうになると心臓発作を起こさせて口封じをする。心臓発作なら一応自然死だからね」「すごいですね。今時の地球人は催眠術なんか使って人殺しまでするんですね」　メラルが感心したように言った。「どうしてそんな手のこんだことまでするのかしら」「簡単だよ。世界征服のためさ。内側から徐々にゆっくりと確実に侵略していく。宗教も一つの道具さ」　恭彬の雄弁はさらに続く。「昔からキリスト教やイスラム教は戦争にかかせない『道具』だった。アスティカ文明やインカ文明が滅びたのも十字軍遠征も湾岸戦争もみんな宗教がからんでいる。そこでだ。メラルに救世主（メシア）をやってもらいたいんだ」　メラルは知らないふりをしながら大好きなキリマンジャロコーヒーをすすっていた。「えっ？　何か言いました？」　といってまたコーヒーをすすった。「ねぇ、恭彬。三つ分からないことがあるんだけど」「何？」「一つは、どうしてラーダス国王を狙っているのかしら。二つ目は、ダイヤ王女のこと。入星データがあるのに出星データがないってことは、彼女は元々、地球人じゃないってことでしょ。ビャクヤの裏付けになる決め手にはならないけど、もし仮に彼女がビャクヤだとして、どうやってダイヤになることができたのかしら。三つ目は、国会議事堂爆破が失敗してもしなくても、なんでホワイトハウスを狙うの？」「今の三つの質問は一本の糸で繋がっているんだ。まず、クリスタル三世なんだけど、敵の作戦の邪魔な人物だということだろう。しかし敵は魔力を持っているのだから人間なんて簡単に殺せるはず。ゲリラ戦を仕掛けるということは、クリスタル三世に深い秘密があると思って間違いない。この謎が解ければ必然的にダイヤとビャクヤのこともわかる。彼女が堕天使ならひょっとするとクリスタル三世も天使かもしれない。天使は他の人間にいれかわることができないしね。クリスタル三世の次の訪問地がアメリカで、もちろんホワイトハウスも見学する予定だ。彼のいるところに事件をおこせば、世界のラーダス国王への信頼が薄まり、もし彼がアメリカで殺されば、ラーダス公国はアメリカに戦争を挑むだろう。一種の宣戦布告だね。ちなみに国会議事堂とホワイトハウスの再建はツツミ建設が請け負っている」　恭彬の熱弁にみんな「ほーーーっ」と声を上げた。　敵の目的は世界征服である。それがはっきりした以上、全力でそれを阻止する！「ナナカは元気かしら」　沙明はポツリ呟いた。　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　《続く》 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ 『聖獣戦記』　篠原美姫緒　　　　　　　第五章　礼門院　「田中咲羽さん。僕と付き合ってもらえませんか」　学校のアイドルは、白昼堂々、皆の見ている前で咲羽に交際を申し込んだ。　咲羽は特別かわいい訳ではなく、しかも貧民であった。それがフォ－ルラ－ドゥングの僧侶の息子から交際を申し込まれたのである。この私立の学校は、一般階級民でもかなり裕福な家の者が多く通っていた。だれもが咲羽に嫉妬する。そんな咲羽を守るように、毅彦は優しかった。しかしそれも仮面であった。咲羽に近づいた目的は別にある。それに最初に気がついたのは星だった。「北原毅彦、貴様自身北殿の僧侶だな」「よく調べられたな」「何が僧侶の息子だ。父親は北殿領内の県令じゃないか！　よくこのフラメに来ることが出来たな！」「ヘスリヒの軍など、ごまかすのは簡単さ」「咲羽を連れ戻しに来たのか！」「そうだ。イアンなんかに渡すものか！　北殿へ必ず連れていく。何せ実の妹だからな」　咲羽の母は、シヴァの温泉街にある遊女屋の花魁であった。しかし金が出来るとすぐに山をおりて、貧民の住む町に移り住んだ。そのスポンサ－が長年遊女屋で咲羽の母をひいきにしていた、毅彦の父である。　それを知った咲羽はますます毅彦にのめり込んだ。毅彦に修業層達が身に付ける技など伝授され、北殿に行こうと決意したとき、その咲羽を止めたのが、本殿の大神官イアンであった。　イアンと咲羽は直接会ったことがない。もっぱら『夢の中』で会っている。イアンは夢の中の少女を探していた。そして自分の手で彼女の力を引き出そうとしていた。自分の後を継ぐのは咲羽だと考えてもいた。　咲羽が見る夢は、現実である。正夢なのだ。　人を探すとする。その人がどこにいるのか、夢を見る。すると、現実にそこにいるのだ。　あるときは、夢の中で怪我をした。起きてみると現実に夢の中で怪我したところが、実際に怪我をしていたりする。　しかしそれは決まって、星が側にいるときだけであったが、それは咲羽自身しか気づいていなかった。　咲羽はこの力がいやだった。けれども前向きに考えるように仕向けてくれたのが、毅彦であった。「大寺院に行けばもっと大きな力を得ることが出来るかも知れない」　咲羽はそう考えるようになった。　毅彦は北殿へ戻らねばならなくなった。一緒に咲羽を連れて行きたかったが、咲羽はまだ迷っていた。星と離れれば、自分の力が発揮出来なかったからだ。　毅彦はリヒトの人間なので、しかも北殿の地位のある僧侶だったので、あとのことを考えると、ここで存在を消さねばならなかった。簡単にみんなの記憶を消すことができれば、一番いいのだが、そういうことはできない。　それは『死』という形で、みなの前から姿を消した。しかも愛する咲羽を庇って、というシナリオである。そして咲羽への遺言は、「北殿で待っている」　誰にも聞かれないように、そっと咲羽に耳打ちした。　けれども、咲羽はまだ迷っていた。力が欲しいし、毅彦にも会いたかった。そんな咲羽の背中を押したのが透弥である。ひょんなことから、咲羽たちと関わったため、彼自身負傷した。透弥の左足は義足である。医学の進歩で見た目には普通の足となんら変わりはない。歩き方だって普通だ。ただ、痛みは感じない。透弥は、咲羽の相談相手だった。「大寺院に行ってから、決めたら？　自分の目で真実を確かめて来るといい。本殿に行くか、北殿に行くか、それとも南殿に行くのか、そして引き返すのか。どの選択肢が一番いいのか、見て決めたほうがいい。自分の人生なんだから」　だから咲羽は危険を冒して、メ－ル山へ行ったのだ。　咲羽はリヒトの出身である。しかし、まだフラメとかろうじてリヒトが友好関係にあったときに、リヒトに母親を残しフラメに来た。だが、しばらくすると事態は一変した。　メ－ル山から異国が攻めて来たのである。オ－カスは聖獣タイタンを呼び出して、敵を追い払った。そのことがきっかけで、フラメはもともと国交断絶状態であったエルデに加え、エルデに同調しているリヒトとも国交の断絶をし、僧侶といえどもリヒトに直接出入国することは禁じられた。見つかれば国境警備のフラメ軍に即射殺される。よってリヒトに行くには、一度ヴェッサ－へ行き、そこからエルデ・リヒトへと行かなければならない。でも、それも行くのは簡単だが、エルデやリヒトに入国したことがばれれば、よっぽどの理由がない限り、フラメへの帰国が認められないのである。　咲羽には大寺院に行かなければならない理由がある。けれども、理由が理由なだけに、ヘスリヒに知られれば間違いなく、身柄が拘束されるであろう。数少ない召喚士と能力者はどの国でも喉から手が出るほど欲しい。「毅彦が自由にリヒトとフラメを行き来出来るんだ。あたしだって」　咲羽は国境越えを選んだ。国境には樹海があった。その真中には湖が存在し、支流は新川へ流れている。　樹海にも監視が置かれ、湖にも監視がついている。動物一匹すら逃さない厳戒体制のなか、咲羽は見事に突破した。「北殿の忍者の頭が、直々に伝授された技の数々。これしきの包囲網を抜けれなければ、毅彦に申し訳ない」　樹海を抜けたところで、北殿の僧侶たちに拉致された。　フラメを出て三日目の朝方、咲羽は久しぶりに夢を見た。イアンが夢に出てきた。「私やセイヤやヴィシュヌに会えば、そなたは力を得ることができるかもしれない。神にだってなれるであろう。一度のその色に染まってしまえば、もう自分の運命を変えることは出来ない。そなたはまだ十四歳‥‥。」　そこで目が覚めた。「毅彦も言ってた。『幼いうちにセイヤに自分を捧げた。おかげで力は歳とともに強くなる。しっかり自分の運命を受け入れることが大切』って。それは、今、自分の人生を決めろってことなのよね」　咲羽はますますイアンに会いたくなった。力が欲しいとかではなく、直接会って話したいことがあった。星と咲羽の誰にも言えない恐ろしい秘密をイアンになら打ち明けられる、そして将来どうしたらいいのか、ヒントが得られると思った。　機会を見て、北殿の僧侶から逃げた。本殿の修業僧たちに事情を簡単に説明すると、上手く紛れ込むことが出来た。急いで本殿を目指す。　ところが、本殿の登山道の第一休憩所付近で毅彦に捕まった。　　　　　　　《続く》 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ モザイク的あとがきこんにちわ。沙明です。　どの連載小説もいよいよ核心に迫ってきましたね。浅月様は浅月様であって浅月様でないし、毅彦って一体何者？！　って感じでどきどきです。　モザイクも決戦が近付いてきました！（ナナカがいないとずいぶん静かだべ：悠輔談）（今回は登場人物がコンパクトにまとまってましたね：メラル談）　そういうわけで、次回も楽しみに待っていてください！感想とか下さると、嬉しいです（笑） ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ ぜひ感想をお寄せください！お待ちしています。さて、増刊号は、夫を溺愛する奥様が大暴走を起こしている『愛の寸劇劇場』と聖獣戦記をお届けします。それでは、次回お会いしましょう。＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝　月刊小説「君が好き！」メールマガジン　　2000/9/15 8号　発行責任者　：篠原美姫緒　kimigasuki@1-emishop.com 　Ｗｅｂページ：http://kimigasuki.hoops.ne.jp/ 　発行システム：『まぐまぐ』『melma!』『Mailux.com』『E-Magazine』　マガジンＩＤ：0000025584　m00012567　ms00000142　　loveyou 　君が好き！メールマガジンの、転載、複写など著作権法違反行為は禁止です。＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝

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